白銀の王

春乃來壱

文字の大きさ
14 / 20

14.練習再開。

しおりを挟む




未だに遠くを見つめたままのフィーをなんとか呼び戻し、魔法の練習を再開してもらう。

輝璃は何度か練習した後にはコツを掴み、すんなりと“黒霧”を出せるようになったので、今度は霧の量を減らしたり増やしたりして魔法に慣れる為の練習を始めていた。


それを見て碧は視線を雪達の方へ移す。

雪の方は光魔法の“光刃”を練習するらしく むいが頑張って説明をしていた。

“光刃”は魔力で作られた光の刃を放ち対象を切りつける魔法で、それだけ聞くと“鎌鼬”と同じように思えるが、光刃は“対象としたもの”しか切りつけないらしい。


ーー例えば、固定した風船の後ろに缶を置く。

その缶に向かって魔法を放った時、“鎌鼬”なら風船ごと切りつけてしまう。

でも“光刃”で『 缶 』だけを対象にして放てば、風船には傷一つ付けずすり抜けて、対象とした缶だけを切りつけることが出来る。
使用者の意思によって切るものと切らないものが選択できるのだ。

ただ、その性質故に光刃は使い方によっては悪事に使われることもある。

悪事とは言いきれないが、何十年か前に起きた獣人達による抵抗軍レジスタンスの中心となった青年も光刃を使い、奴隷の証である首輪を“切ってはずして”回った。

本来、奴隷の首輪は主人の命令に背いたり無理に外そうとすると激痛がはしる仕組みになっていて主人の許可なしでは外れないようになっている。だが、光刃にはその仕組みなど関係なかった。
ただ、“首輪を対象として”魔法を放てばいいのだから。

当時、光刃は使用できる者がほとんど居らず対策が取られてなかったのが原因となり帝国は多くの獣人奴隷に逃げられてしまった。

帝国はそれを受けて今では首輪ではなく奴隷紋に切り替えたらしい。
奴隷紋の解除には白魔法の最上級の解呪でないと効果がなく、最上級魔法を使える者は限られている上、白魔法の使い手自体少ない。

碧の周りではフィー、むい、雪も自分も白魔法を使えるのであまり実感はないが白魔法の中級が使えるだけでも、帝国にある白魔法の使い手が集まる聖協会から声がかかるらしい。
聖協会に入れただけでも名誉なこととされ、白魔法の使い手は聖協会から声をかけて貰えるよう必死に魔法の上達に励むらしい。


話が脱線したが、まぁ結局の所どんな魔法も使い方一つでいい事も悪い事もなんでもできてしまう、ということなのだと思う。

「…俺も気をつけよ」

ただでさえ自分のもつ【傲慢】と【怪盗2つのスキル】は使い勝手が良すぎる面がある。1度見たスキルを無条件で習得できる、なんて帝国に居た時に知られてたらと思うとゾッとする。

そう思うと自分は幸運だったなと思う。
…まぁ、刺されたことに関しては全く良くないんだけど。それでも2つのスキルがばれて帝国に利用されるよりかはマシだったかなとは思う。そんなことを考えていたらむいと雪の練習も始まる様なので視線を戻した。

「えっとねー。じゃあここに木の実をふたつおくからー…おくの方だけ切ってみてね!」

そう言いながらむいが碧の腰ほどの高さの岩の上に青い木の実を2つ並べて置いた。

「は、はいっ……【光刃】!」

雪の手から光が放たれたが、刃とは言い難いふにゃふにゃとしたその光は木の実に当たるとポフンッ、と音だけ残して消えてしまった。

「あ、あれ?」

「ユキおねーちゃん今なに考えながら魔法うったー?」

「えっ?えっと木の実に魔法が当たるイメージで…」

「うんとね、魔法ってイメージがすごく大事でね、自分がその魔法をどう使いたいのかをちゃんとかんがえて使った方がいいの。次はおくの方だけ切るぞー!ってかんがえながらやってみて!」

「はい!……【光刃】っ!」

今度は鋭い光の刃が放たれ、1つ目の木の実をすり抜けて2つ目の物だけをスパンッと切った。

ーー【白魔法・光刃を取得しました】


「…ん?なんで今?」

1度目の失敗した時は出てこなかったのに2度目に成功したら出てくる事から考えるともしかしたら【怪盗】が盗む物にも、魔法が成功してないと盗れないなどといった一定のルールがあるのかもしれない。

「いきなり使えなくなっても嫌だし、そこも含めて今度確かめないとなぁ」

時間は沢山あるからゆっくり確かめよう。

「やりました!できました!!」

「やったー!」

考えていたら雪達の喜ぶ声の大きさに少し驚く。普段は引っ込み思案な雪がここまではしゃいで喜ぶのも珍しい。
雪にとっては自分で使った魔法が初めて成功したのが嬉しいらしく、むいと手を取って飛び跳ねながら喜んでいる。むいも自分の事のように喜んでいて微笑ましくて思わず笑ってしまう。

くすくす笑っていると笑っていたことがバレてしまい、雪が少しだけ顔を赤くしながらこちらに歩いてきた。

「笑いましたね、みーくん」

「ふふっ…ごめっ…ふ、あははっ」

笑いを堪えようとするが、少し恥ずかしそうに見てくる雪がおかしくてつい笑ってしまう。

「みーくんは意地悪です」

拗ね初めてしまったので碧は笑いすぎて出てきた涙を拭い謝りながら雪の頭を撫でる。

「あー!ずるい!むいにも!」

雪を撫でていると、むいが走ってくる。
走る程の距離でもないのにパタパタとこちらに向かってくるむいが可愛くて雪と2人でむいの頭を撫でる。

するとむいの頭から狼の耳がぴょこんとでてくる。

フィーに聞いた話によると変化出来るようになってすぐの間は感情が高ぶると気が緩んで耳や尻尾だけ変化が解けてしまう事があるらしい。
それをみた雪がパッと笑顔になる。

「もふもふです。ふわふわもふもふ…」


雪が両手でむいを撫でながら幸せそうにしている。そのまま数分程撫でた後、雪もむいもとても満足そうな顔をしていた。そのまま練習を再開するようなので次の内容を聞いてみる。


「2人は次何を練習するの?」

「えっとねー。次は回復魔法やるー!」

「回復魔法、ですか?」

「うん!ミドリ、魔力へってるよね?」

「え?あ、うん。さっき使ったから減ってるけど…」

「じゃあそれを回復する!」

「魔力って魔法で回復できるんですか?」

雪がきょとんとしながらむいに尋ねる。正直碧も魔力を回復できる魔法があるなんて驚きだ。それがあったら永遠と魔法を使い続けることも可能なんじゃないのか、と考えているとむいが首を横に振る。

「普通はむりー。でもむいたちいっぱい生きてるから長達が教えてくれたの」

もう伝えられなくなってしまったやり方の為、今の人間達は知らないがどうやらフェンリル達は長命なので知っていたらしい。


むいの話を聞くと非常にシンプルな話だった。

今の人たちにとって、ヒールとは“怪我を治す為のもの”で魔力回復はレベルを上げるか休憩や食事をしないと回復しない物と考えがガチガチに固定化されている。

魔法とはイメージがとても大きく作用するもので、むいたちはただ魔力回復するようにイメージしながら使っているだけらしい。
だが、もしその事を人に教えたとしても1度思い込んでしまったものを根本から覆すのは難しいので使えない可能性が高いんだそうだ。

「でもユキおねーちゃんはルーティアの人じゃないからそんな思い込みはしてないしー。やったらできると思うよ! 」

「私それ覚えたいです!」

「うん!じゃあむいが最初にお手本みせるね!……【魔力回復ヒール】」

【回復魔法・魔力回復ヒールを取得しました】


むいが碧に手をかざしながら呟くと碧の体は暖かい何かに包まれる。温かさが消えた後、むいからステータス確認してみて、と言われたのでステータスを開く。

「“ステータス”」




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
Lv.24
名前:小鳥遊 碧
性別:男
年齢:18歳
種族:人類種
体力:15700/15700
魔力:10000/12500
攻撃力:6400
防御力:4850
命中率:Lv.5
回避率:Lv.1
幸運力:Lv.Max
状態:ー

役職:怪盗 Lv.Max
【⠀効果 】あらゆるモノを盗むことが出来る。

〖 ライト 〗〖 鎌鼬 〗〖 風詠 〗〖 結界 〗〖 ファイヤ 〗〖 ウォーター 〗〖 氷柱 〗〖 氷翼 〗〖 水破 〗〖 炎舞 〗〖 縛 〗〖 ボックス 〗〖 転移 〗〖 浄化 〗〖 ヒール 〗〖 捕縛 〗〖 飛行 〗〖 身体強化 〗〖 煉獄 〗〖 神楽 〗〖 領域 〗〖 影渡 〗〖 結界 〗〖 疾風 〗〖 星詠 〗〖 火弾 〗〖 竜巻 〗〖 黒雷 〗〖 雷神 〗〖 鑑定 〗〖 天撃 〗〖 念話 〗〖 硫酸 〗〖 跳躍 〗〖 糸操 〗〖 収納 〗〖 黒霧 〗〖 大賢者 〗〖 魔力回復 〗

“亜空間・狭間”    収納数0

【大罪スキル・傲慢】
【 効果 】
無から有を作り出す。モノとモノを掛け合わせて作ることも可。
ただし、作る際には魔力を消費する。消費する魔力は作るものに比例する。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「本当だ、回復してる…」

「今回はユキおねーちゃんがまだやるからちょっとしかしてないけど、なれると1回で“全回復”出来るようになるよ!」

「が、がんばります!…【魔力回復ヒール】」

碧の体が再び暖かい何かに包まれる。それが消えてからまた碧はステータスを開く。

「“ステータス”」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
Lv.24
名前:小鳥遊 碧
性別:男
年齢:18歳
種族:人類種
体力:15700/15700
魔力:12500/12500
攻撃力:6400
防御力:4850
命中率:Lv.5
回避率:Lv.1
幸運力:Lv.Max
状態:ー

役職:怪盗 Lv.Max
【⠀効果 】あらゆるモノを盗むことが出来る。

〖 ライト 〗〖 鎌鼬 〗〖 風詠 〗〖 結界 〗〖 ファイヤ 〗〖 ウォーター 〗〖 氷柱 〗〖 氷翼 〗〖 水破 〗〖 炎舞 〗〖 縛 〗〖 ボックス 〗〖 転移 〗〖 浄化 〗〖 ヒール 〗〖 捕縛 〗〖 飛行 〗〖 身体強化 〗〖 煉獄 〗〖 神楽 〗〖 領域 〗〖 影渡 〗〖 結界 〗〖 疾風 〗〖 星詠 〗〖 火弾 〗〖 竜巻 〗〖 黒雷 〗〖 雷神 〗〖 鑑定 〗〖 天撃 〗〖 念話 〗〖 硫酸 〗〖 跳躍 〗〖 糸操 〗〖 収納 〗〖 黒霧 〗〖 大賢者 〗〖 魔力回復 〗

“亜空間・狭間”    収納数0

【大罪スキル・傲慢】
【 効果 】
無から有を作り出す。モノとモノを掛け合わせて作ることも可。
ただし、作る際には魔力を消費する。消費する魔力は作るものに比例する。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「…あ、今ので全回復したよ」

「よかったです!」


魔力回復これ、自分自身に掛けても効果あるのか今度試してみよう、と考えているとフィーから声がかかる。

「ユキちゃんの方も成功したっすか?」

「うん!ユキおねーちゃん上手だったよ!」

どうやら一気に練習しても輝璃達の魔力も底を尽きてしまうし、そろそろ中断して明日に備えてゆっくりしようということらしい。

「…また、教えてね」

「お願いします!」

フィーとむいが笑顔で承諾したのを見てから碧達は家に入った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

処理中です...