白銀の王

春乃來壱

文字の大きさ
15 / 20

15.名前入りの特別。

しおりを挟む




家に入り、ソファーに座りながら碧は考え事をしていた。

先程手に入った【大賢者スキル】で“魔力消費軽減”と“無詠唱”が出来るようになった。

ルーティアではほとんどの人が魔法を使えるが、半数は生活魔法や初級魔法までしか使えない。

ベアルト王国の王都にある貴族達が通う学園等で魔法に関する勉強をしてやっと中級魔法が使えるようになるくらいで、上級魔法が使えたら宮廷魔法士に抜擢されるくらい難しいものらしい。

更に最上級魔法、神級魔法を使える人はルーティア全体で数えても数百人程なのではないかと言われているくらいに少ない。

「…そう考えると俺のステータスって誰かにバレたらやばそうだなぁ」

最強種であるフィーとむいの魔法を見せてもらい、普通は何十年かけても習得出来るかどうかの上級、神級魔法を怪盗スキルのおかげでなんの苦労もせず使えるようになった。
2人に見せてもらった魔法の中にはそれこそ国ひとつ壊滅させられるほどの威力の魔法もあった。

1度見た魔法は神級魔法でも即取得、更には魔力のある限り好きなモノが生み出せることが出来るなんてことが知れたらどうなるかなんて想像にかたくない。


「かなりやばいっすねぇ。死力を尽くしてミドリくんを捕まえて利用しようとするヤツらで溢れかえりそうっすね」

「…だよねぇ、便利なんだけどな」

「バレたとしても僕らで守るんで大丈夫っすよ」

「…絶対、渡さないから大丈夫」

碧が目を伏せていると輝璃が安心させるように撫でてくる。それに笑顔を返しながら、ふと思いつく。

「ねぇフィー、人のステータスを見る魔法って存在する?」

「あるっすね、本来の使い方とは違うんで広く知られてはないっすけど“透視”なら人の物も見えるっす。レベル差がありすぎると見れなかったりもするっすけど」

「…じゃあ逆に隠すスキルは?」

碧の質問にフィーは暫し考え込む。

「うーん…僕は聞いたことないっすね。昔読んだ文献にもそんなスキルはなかったと思うっす」

「そっか、じゃあステータスを隠すスキルを作っちゃえば面倒が減るよね?」

「…あ、そうか。もし見られたとしても問題ないようにしとけば、碧が狙われる危険も少なくなるね」

輝璃が碧の考えを理解して呟く。それを聞いて3人も納得したように頷いた。

「確かにそうっすね。危険を避けられるならそれに越したことはないっすし…ミドリくん、作れそうっすか?」


「ん。やってみるね。【スキル作成】」


ーー【スキルの内容を提示してください】ーー

「“ステータスを隠すスキル”」


ーー【該当スキル無し/新しくスキルを創りますか?】ーー
【 YES  /  NO 】

「“YES”」

ーー【スキル創りを受諾しました】ーー

ーー【候補スキルを提示します】

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


隠蔽:自身のステータスを認めたもの以外には見れないようにする。又は自身が見せたい内容に変更した物を見せる。内容は変更可。隠蔽中でも任意の相手には本来のステータスを見せることも可能。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



ーー【“隠蔽”を習得しますか?】ーー
【 YES / NO 】


「“YES”」


ーー【隠蔽スキルを取得しました】ーー



その声と共に、碧は何度か経験した魔力がごっそり持っていかれる感覚がくると身構えるが、少しの脱力感があるだけだった。

「あれ?…“ステータス”」

不思議に思いながらステータスを開く。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
Lv.24
名前:小鳥遊 碧
性別:男
年齢:18歳
種族:人類種
体力:15700/15700
魔力:10500/12500
攻撃力:6400
防御力:4850
命中率:Lv.5
回避率:Lv.1
幸運力:Lv.Max
状態:ー

役職:怪盗 Lv.Max
【⠀効果 】あらゆるモノを盗むことが出来る。

〖 ライト 〗〖 鎌鼬 〗〖 風詠 〗〖 結界 〗〖 ファイヤ 〗〖 ウォーター 〗〖 氷柱 〗〖 氷翼 〗〖 水破 〗〖 炎舞 〗〖 縛 〗〖 ボックス 〗〖 転移 〗〖 浄化 〗〖 ヒール 〗〖 捕縛 〗〖 飛行 〗〖 身体強化 〗〖 煉獄 〗〖 神楽 〗〖 領域 〗〖 影渡 〗〖 結界 〗〖 疾風 〗〖 星詠 〗〖 火弾 〗〖 竜巻 〗〖 黒雷 〗〖 雷神 〗〖 鑑定 〗〖 天撃 〗〖 念話 〗〖 硫酸 〗〖 跳躍 〗〖 糸操 〗〖 収納 〗〖 黒霧 〗〖 大賢者 〗〖 魔力回復 〗〖 隠蔽 〗

“亜空間・狭間”    収納数0

【大罪スキル・傲慢】
【 効果 】
無から有を作り出す。モノとモノを掛け合わせて作ることも可。
ただし、作る際には魔力を消費する。消費する魔力は作るものに比例する。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「あ、そっか。【大賢者】のおかげで取られる魔力が少なくなってるんだった」

大賢者は取得した瞬間からスキル所持者の意思に関係なく使用され、碧が意識していなくとも勝手に仕事をしてくれるスキルらしく、良いスキルだなと思いながら早速“隠蔽”を使っていく。

「えっと、ここをこうしてこれを消して…」

あーでもないこーでもないと操作を繰り返して、他人が見れるステータスを名前、性別、年齢、種族など基本的なものだけに限定し、役職や会得したスキル、傲慢などの欄を隠蔽した。
魔法に関してはフィーからあまりにも魔法が書いてないと不自然なので初級魔法だけでも書いておいた方がいいと言われて生活魔法と初級魔法だけ書き込んである。


「うん。これで良し!」

「あ、できたんすか?」

「ばっちり!これで見られても大丈夫だと思う」


そんな会話をしていると何処からか、ぐぅ~と音がした。

音の鳴るほうへ向いてみると雪が顔を真っ赤にして恥ずかしそうにお腹をおさえていた。

「ち、ちがうんです!これはちょっと、あの、えっと…」

手をぶんぶん振りなんとか誤魔化そうとしていたが既に全員に聞かれてしまったので、どんどん声が小さくなっていき、下を向いたままいじけてしまった。

いじけた雪をどう慰めようと考えていたらむいが雪に笑顔で抱きついた。

「むいもお腹すいた!」

「むいちゃん……!」

むいに抱きつかれた嬉しさで恥ずかしさは消えたらしく今は機嫌を直してニコニコしながらむいの頭を撫でている。

輝璃がそれを見て珍しく肩を震わせながら笑っていた。

「嬉しそうだね、輝璃」

「…雪が楽しそうで、良かったなぁって」

「…ねぇフィー。今日のご飯も俺が作ってもいい?」

「もちろんすよ!僕も食べたいっす!」

「…何作るの?」

「オムライス。2人とも好きでしょ?」

家主の許可も得たので作ろうと立ち上がると輝璃が聞いてきたので答えると雪が勢いよくこちらを見る。ちなみにむいを撫でる手は止めてない。プロか。

「オムライスですか!?ふわふわのやつがいいです!」

「…碧。俺も、ふわふわのやつがいい」

「おむらいすってなにー?」

「それもミドリくん達の世界の料理っすか?」

「はい!みーくんが作るのはすっごく美味しいんですよ!」

「そう言ってくれると作りがいがあるよ」

「僕も手伝っていいっすか?この前作ってくれたのも美味しかったっすし、ミドリくんの世界の料理、興味あるっす」

「あ、本当?助かる」

フィーが手伝ってくれるようなので2人でキッチンに向かい作り始める。材料は置いてなかったので【傲慢スキル】で出した。
作り方も難しいものでは無い為、フィーもすぐ覚えたので碧の分のオムライスはフィーに作って貰った。

全員分作り終えたのでみんなの所へ持ってこうとするフィーを呼び止め、最後の仕上げをする。

「ん。これでよし、と」

「…ミドリくん達の世界は面白いこと考えるんすね」

「誰がやり始めたのかはわからないんだけど、自分の名前が書いてあるとなんだか特別みたいで嬉しくなるんだよね。俺も初めて奈那さんに作ってもらった時嬉しかったなぁ」

ケチャップで書いた文字をまじまじと見ながら言うフィーに返事をしながら3人のいるリビングへお皿を運んでいく。むいの名前を書く時に、ルーティアの文字が分からなかったのでフィーに教わりながら書いた。
それぞれの前にお皿を置くとむいが目を輝かせる。

「ねぇミドリ!これ、むいの名前書いてある!!」

「ふふっ…なんたって碧くんお手製のオムライスだからね」

得意気に胸を張りながら言った碧を見て輝璃と雪が嬉しそうに笑い始めたのでなんだか少し気恥ずかしくなりながら席に座り食べ始めた。

オムライスは好評で輝璃や雪はとても喜んでくれたし、特にむいは口にあったらしくまた作って、と言ってくれた。フィーとは碧達の世界の料理を教える約束をした。


お腹がいっぱいになって眠くなってきたのかむいがウトウトし始めたので、雪にむいを任せ、3人で寝る場所の準備をした。

お昼に比べると少し気温が下がっていたので風邪をひかないように暖かそうなふわふわの毛布を新しく【傲慢スキル】で創った。

それをむいと雪に掛けるとすぐに寝てしまった。
輝璃とフィーにも同じものを渡し、自身も同じものをかけて横になる。
横になって寝ようとしたが明日の事を考えてしまいソワソワして眠れない。

気分的に言うと遠足前にねられなくなるあの感じだろうか。2人とも寝たのかな、と両隣を見ると2人もまだ眠くないらしく起きていたので眠くなるまで話すことにした。

「…雪とむい、寝るの早かったね」

「さっきまではしゃいでたっすからねぇ」

「そうだね。疲れちゃってたんだね」

「…なんか、妹が増えた感じ」

「かなーり年上の妹っすね?」

「…確かにそうだね」

ーー雪達を起こさないよう小さく笑う3人の楽しげな話し声はしばらく続いた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...