幸せな幻想

maru.

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なな

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「…お、にいさん……そんな食べるの?」
「だって、物心ついた時から欲しかったんだよ?早く俺の一部にしなきゃ」
 お兄さん大食いなんだなぁなんて気楽に流しておいた。人それぞれ、きっと思いの大小は違うから、そこに突っ込むなんて馬鹿のすることだ。私は小さいがそういう思いは少なからずあるから分かる。…理由は同じ立場だから。さっきのことと同じだ。
 彼が自分の取り分を持ってきたから、まな板に置いて少しずつ切り分けていく。
 彼が持ってきたのは、幼なじみの両手足。理由は簡単に言うと腕を組んだことがある、足が綺麗…そんな感じだった。好意の話になるとお兄さんは取り乱す節があるから途中で切った。
 小さく、一口サイズに切り分け彼に手渡した。
「…ありがとう」
 彼は心底嬉しそうに微笑んだ。彼女さんと妹さんもいつか食べるんだし、何回もこの笑顔を見れるな、と思うと自分が幸せ者だ…なんて思った。
 …あれ?おかしいな。私はお兄さんじゃなくあの人が、あの枕元にある彼が好きなはず。まぁなんでもいいか。お兄さんはお兄さん。それ以上でもそれ以下でもない。深く考えるのはよそう。面倒事は避けておきたい。
「ひなのちゃんはお父さんの片腕か…少食だよねいつもより」
「彼を手に入れたら、なんかお腹いっぱいになっちゃってさ」
「あー分かるその気持ち。満足感と達成感と安心感と…まぁそんな感じの」
「そうそう」
 お兄さんといろんな話に談笑しながら網の上にお肉を並べていく。間違えて取らないように箸で半分の印をつけておいたから、食べ間違うことはないだろう。
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