53 / 66
第6章~人を喰らう者~
第48話 教会にて3~これも学びってやつかな?~
しおりを挟む
あれから数日間、私とイーターは毎日教会に通うようにした。神父様とヒュームさんの心変わりを期待してってのもあるにはあるけど、イーターの奴が出来うる限りヒュームさんと過ごしたいと言ってきたことがその大きな割合を占めていた。
私にはイーターの気持ちがわからない。なんで捕食者が捕食される側に感情移入できるのか、そんなことしてしまえば逆に食べられえなくなってしまうのではないか?そう疑問に思ってイーターに質問したら「それもまた捕食者の務めだ」なんてスカした答えが返ってきた。
「全く意味が解らない」
そんな感じで私が考え事に耽っていると、
「スキあり!!」
と私に向かって木剣が振るわれる。しかし、その一撃は勢いも、凄みも、攻撃力も何もかもが足りない。私はその一撃を木剣を用いて軽くいなしてみせ、私に一撃を見舞おうとした少年の方を見る。
「残念、隙なんてありませんでした」
そう言って意地悪な笑顔を少年――ジョージ君に向ける。
私はイーターとヒュームさんが話している間、孤児院の子供たちの面倒を見てあげていた。私自身子供は嫌いじゃないし子供相手とは言え剣の訓練を付けてあげることは私自身の成長にもつながる――なんて言ってるけどぶっちゃけ暇を持て余しているので子供たちに私の相手をしてもらっていると言った方が正しいのかもしれない。
「くっそーもう一本!」
「駄目だよジョージ、今度はあたしたちがお姉ちゃんと遊ぶの!」
「はいはい順番ね順番」
これが私の孤児院での一日の過ごし方だった。たまにボサノバ一家のゴロツキが教会にやって来ることがあったりしたけど私の華麗なるシャイニングウィザードによって退散させることが出来たし。おおむね平和な日々が続いていた。
そしてあれから一週間後ヒュームさんの最期の一日がやってきた。
神父さんたちと話し合った結果、決行は今晩子供たちが寝静まった後ということになった。それまでヒュームさんは子供たちに最後の別れの挨拶をして過ごすそうだ。
「ヒューム、今日でいなくなっちゃうの?」
「ええ、だからこれが最後のお話になってしまいますね」
「お姉ちゃん、もう一日だけ伸ばせないの?」
孤児院の女の子が私に向かって悲しそうな顔で懇願してくる。うう……心が痛いがここは引き延ばしたところで意味がないし、覚悟の決まっているヒュームさんにも失礼というものだ。
「ごめんね、それはちょっと出来ないの」
私は心を鬼にして女の子にきっぱりと告げる。
「すみません、ルナさん。子供たちが我儘を言ってしまって」
「いいんですよこれぐらい、子供たちの気持ちもわかりますしね」
「そうですか、そう言って頂けると助かります」
「そ・れ・よ・り・も!ヒュームさんは子供たちや神父様様たちと話を優先してください!」
「はは、そうですね」
私はそう言うとヒュームさんが立てかけられている場所を離れて遠くの方でヒュームさんと孤児院の明との別れの様子を眺めていた。因みに孤児院の子供たちには本当のことは伝えずにヒュームさんは私たち一緒に旅に出るという説明をしている。そうしなければ無用な恨みを買うことになるという神父様の助言があったからだ。子供たちに嘘をつくのは心苦しいが、嘘も方便、この場合は仕方のないことなのだろう。
私がそうこう考えていると、とある異変に気が付いた。
「ジョージ君がいない?」
いつも五月蝿くてしょうがないほどに騒がしい孤児院の元気っ子、ジョージ君の姿が見当たらないのだ。
「どこに行ったんだろう」
私はジョージ君を探しに孤児院や、孤児院の庭、教会の敷地をくまなく探して回る。しかしながらジョージ君の姿を見つけることは出来ない。
嫌な予感がする。なぜなら孤児院の子供たちは基本的に教会の敷地から一人で出ることを禁じられていることを私は知っていたから。ジョージ君は騒がしい子ではあるけれども、神父様の決めたルール進んで破るような子でないことを知っていたからだ。
私は急いで神父様の下に走って行く。すると神父様とシスターさんが深刻な顔をして何やら話し込んでいた。
「神父様!!」
「ルナさん……」
深刻な顔をする神父様とシスターさん。私は二人の顔を見て確信する。
「神父様ジョージ君がいないんです!!」
私がそう言うと神父様がシスターさんに目配せをする。するとシスターさんが私に一枚の紙を渡す。その紙には汚い字でこう書いてあった。ガキは預かった返してほしければ教会の土地の権利書を持ってボサノバ一家のアジトまでこい、と。
「クソッ!いずれはこうなることも予見できたはずなのに……よりにもよって今日なんて……」
珍しく神父様が悪態をついている。神父様の気持ちは痛い程理解できる。今日は孤児院の皆とヒュームさんの別れの日なのだ。悲しくて、寂しくて、皆の思い出に残る良い日でなければならないのだ。
だから、こんなことは許されない。許してはならない。決して、決してだ!!
「――神父様、ボサノバ一家のアジトの場所、わかりますか?」
「ええ、わかりますが――いけませんルナさ――」
そこまで言った神父様を私は手で制する。
「神父様、私この世界に来て色んな理不尽に遇ってきました。一姫のせいで覚えのない恨みを買ったり、したくもない戦いを強いられたり、こないだなんか人殺しまでしちゃったんですよ」
「ルナさん……」
私はギュッと拳を握りしめる。
「でも……こんなに怒りを覚えたことは初めてです。私に奴らのアジトを教えてください」
私にはイーターの気持ちがわからない。なんで捕食者が捕食される側に感情移入できるのか、そんなことしてしまえば逆に食べられえなくなってしまうのではないか?そう疑問に思ってイーターに質問したら「それもまた捕食者の務めだ」なんてスカした答えが返ってきた。
「全く意味が解らない」
そんな感じで私が考え事に耽っていると、
「スキあり!!」
と私に向かって木剣が振るわれる。しかし、その一撃は勢いも、凄みも、攻撃力も何もかもが足りない。私はその一撃を木剣を用いて軽くいなしてみせ、私に一撃を見舞おうとした少年の方を見る。
「残念、隙なんてありませんでした」
そう言って意地悪な笑顔を少年――ジョージ君に向ける。
私はイーターとヒュームさんが話している間、孤児院の子供たちの面倒を見てあげていた。私自身子供は嫌いじゃないし子供相手とは言え剣の訓練を付けてあげることは私自身の成長にもつながる――なんて言ってるけどぶっちゃけ暇を持て余しているので子供たちに私の相手をしてもらっていると言った方が正しいのかもしれない。
「くっそーもう一本!」
「駄目だよジョージ、今度はあたしたちがお姉ちゃんと遊ぶの!」
「はいはい順番ね順番」
これが私の孤児院での一日の過ごし方だった。たまにボサノバ一家のゴロツキが教会にやって来ることがあったりしたけど私の華麗なるシャイニングウィザードによって退散させることが出来たし。おおむね平和な日々が続いていた。
そしてあれから一週間後ヒュームさんの最期の一日がやってきた。
神父さんたちと話し合った結果、決行は今晩子供たちが寝静まった後ということになった。それまでヒュームさんは子供たちに最後の別れの挨拶をして過ごすそうだ。
「ヒューム、今日でいなくなっちゃうの?」
「ええ、だからこれが最後のお話になってしまいますね」
「お姉ちゃん、もう一日だけ伸ばせないの?」
孤児院の女の子が私に向かって悲しそうな顔で懇願してくる。うう……心が痛いがここは引き延ばしたところで意味がないし、覚悟の決まっているヒュームさんにも失礼というものだ。
「ごめんね、それはちょっと出来ないの」
私は心を鬼にして女の子にきっぱりと告げる。
「すみません、ルナさん。子供たちが我儘を言ってしまって」
「いいんですよこれぐらい、子供たちの気持ちもわかりますしね」
「そうですか、そう言って頂けると助かります」
「そ・れ・よ・り・も!ヒュームさんは子供たちや神父様様たちと話を優先してください!」
「はは、そうですね」
私はそう言うとヒュームさんが立てかけられている場所を離れて遠くの方でヒュームさんと孤児院の明との別れの様子を眺めていた。因みに孤児院の子供たちには本当のことは伝えずにヒュームさんは私たち一緒に旅に出るという説明をしている。そうしなければ無用な恨みを買うことになるという神父様の助言があったからだ。子供たちに嘘をつくのは心苦しいが、嘘も方便、この場合は仕方のないことなのだろう。
私がそうこう考えていると、とある異変に気が付いた。
「ジョージ君がいない?」
いつも五月蝿くてしょうがないほどに騒がしい孤児院の元気っ子、ジョージ君の姿が見当たらないのだ。
「どこに行ったんだろう」
私はジョージ君を探しに孤児院や、孤児院の庭、教会の敷地をくまなく探して回る。しかしながらジョージ君の姿を見つけることは出来ない。
嫌な予感がする。なぜなら孤児院の子供たちは基本的に教会の敷地から一人で出ることを禁じられていることを私は知っていたから。ジョージ君は騒がしい子ではあるけれども、神父様の決めたルール進んで破るような子でないことを知っていたからだ。
私は急いで神父様の下に走って行く。すると神父様とシスターさんが深刻な顔をして何やら話し込んでいた。
「神父様!!」
「ルナさん……」
深刻な顔をする神父様とシスターさん。私は二人の顔を見て確信する。
「神父様ジョージ君がいないんです!!」
私がそう言うと神父様がシスターさんに目配せをする。するとシスターさんが私に一枚の紙を渡す。その紙には汚い字でこう書いてあった。ガキは預かった返してほしければ教会の土地の権利書を持ってボサノバ一家のアジトまでこい、と。
「クソッ!いずれはこうなることも予見できたはずなのに……よりにもよって今日なんて……」
珍しく神父様が悪態をついている。神父様の気持ちは痛い程理解できる。今日は孤児院の皆とヒュームさんの別れの日なのだ。悲しくて、寂しくて、皆の思い出に残る良い日でなければならないのだ。
だから、こんなことは許されない。許してはならない。決して、決してだ!!
「――神父様、ボサノバ一家のアジトの場所、わかりますか?」
「ええ、わかりますが――いけませんルナさ――」
そこまで言った神父様を私は手で制する。
「神父様、私この世界に来て色んな理不尽に遇ってきました。一姫のせいで覚えのない恨みを買ったり、したくもない戦いを強いられたり、こないだなんか人殺しまでしちゃったんですよ」
「ルナさん……」
私はギュッと拳を握りしめる。
「でも……こんなに怒りを覚えたことは初めてです。私に奴らのアジトを教えてください」
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる