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第6章~人を喰らう者~
第50話 別れ~ああ~もったいない~
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「うわーん、こわかったよ~」
私とジョージ君が教会に帰ると、教会の外でシスターさんと神父様が待っており、二人を見たジョージ君は安心したのか堰を切ったように泣き出し。シスターさんに抱き着き、シスターさんもジョージ君を優しく抱きとめる。
「ありがとうございます。ルナさん。お怪我はありませんか?」
「大丈夫ですよかすり傷一つありません」
そう言って私は二の腕を強調するポーズをとって見せる。
「――けど、やっぱり良いものじゃありませんね。人を斬る感触ってものは」
未だに残る人の肉を切る感触、気持ち悪くてしようがない。よくもまああのクズどもはこんな感触を自慢できたものだ。いや、この世界はそうでもなければ生きていけないほど厳しくて、私がただ甘いだけなのだろうか?
私がそんなことを考えていると神父様が語りかけて来る。
「ルナさん、人を傷つけることから逃げた私が言うのもなんですが、貴方のその葛藤は至極まっとうなものだと思いますよ」
「そうですかね?」
「そうですよ。彼らはただ知らないだけなのです。人を傷つけること以外にも生きる術があることを、それはこの世界でも元の世界でも変わらないことなのです」
「そう言ってもらえると助かる気がします」
私がそう言うと神父様は優しい笑みを浮かべ、さて、と前置いて
「それでは全員がそろいましたしヒュームのお別れ会を始めましょうか」
それからはとても楽しい時間を過ごすことが出来た。ささやかではあるがいつもよりも少し豪華な食事を皆で囲んで孤児院の皆の昔話に花を咲かせる。孤児院の皆はこう思っただろう。この時間が永遠に続けばいいのにと、この楽しい時間が終わって欲しくないと。
しかし、時間というものは時に残酷なほど公平だ。お別れの時間は必ずやってくるのだ。
「さて、お別れ会もここまでといたしましょうか」
神父様がお別れ会の終了を告げると子供たちがまだ続けたいと口々に文句を言いだす。
「みなさん、寂しい気持ちはわかりますがもう夜も遅いですし、これ以上は明日に差し支えます――だから、ここまでです」
「だったら!!」
ジョージ君が突然大声を出し、自身のポケットの中から一つの木製のペンダントを取り出した。
「これ、ヒュームに」
そこで私は合点がいった。なぜ、普段教会の敷地外に出ることを禁じられているジョージ君が教会の敷地外に出たのかを、そう、全てはヒュームさんのためだったのだ。ヒュームさんのためにわざわざ危険を冒してまでペンダントを買いに教会の外に出かけていたのだ。
「ジョージ、これを私にくれるのかい?」
「うん、本当はヒュームでも付けられるような魔石とかが良かったんだけど、僕のお小遣いじゃこれしか買えなくて……」
「いいや、これほどうれしい贈り物はないよ」
「本当に?」
「本当だとも、一生大切にするよ」
「うん」
こうしてヒュームさんのお別れ会は終わり、孤児院の子供たちが皆眠りに着くまで私たちは待つことにした。
「イーター」
「何だルナ」
「本当に良いの?」
「くどいぞ」
「だって、今なら断ることだってまだ間に合うんだよ」
「そしてヒューム殿に永遠の苦しみを与えるのか?」
「ぐ、それは……」
「お前の望むところではないだろう――だからこうするしかないのだ」
これは私が納得するとか納得しないとかそういった次元のはなしではないのだろう。それは頭では理解できる。だけど、感情がわかりたくないと我儘を言っている。まだあきらめるなと言っている。しかし、時間は確実にやって来るものなのだ。
「ルナさん、イーターさん。準備が整いました。こちらへ」
「――はい」
私は神父様に促されるままその後に続く、すると孤児院の庭にヒュームさんが立てかけられていた。
「準備は出来ています。彼も……私もです」
私は動けなかったいや、これ以上先に進むことを躊躇した。進んでしまえばもう後には引けない。今逃げ出してしまえば――
「ルナさん、私を解放してください」
その言葉を聞いて私は自然と歩み出していた。自分でも信じられないくらいに真っ直ぐとだ。
「イーター準備は良い?」
「良いぞ」
「ヒュームさん、準備は良いですか」
「ええ、その前に少しだけよろしいですか?」
「はい、何でしょう?」
「イーターさん貴方には少し無理をさせてしまうかもしれませんがこのペンダントと一緒に私を逝かせてはくれませんか?」
「その程度の無茶、無茶とは言わん」
「フフ、ありがとうございます」
会話の後、私はイーターを構える。そしてゆっくりと静かに呪文を唱えようとしたところでイーターが言った。
「ルナ呪文を変えるぞ」
「何よ突然」
「俺は気付いたのだ、いや、気付かされたのだ我が種族の罪深さをな」
「それと呪文に何の関係があるのよ」
「あるさ、それは心の在り方だ」
「心の在り方、ねぇ、それはわかったけどなんて唱えれば良いの?」
「粗食だ」
「わかった。粗食」
私がそう唱えるとイーターはいつもと同じ様に変形し、大きくその口を開く。そして一口でヒュームさんを喰らった。
「ありがとう」
私の耳にヒュームさんの声が届いた気がした。その感謝はイーターにも届いたのであろうイーターは何も言わずに黙っていた……
私とジョージ君が教会に帰ると、教会の外でシスターさんと神父様が待っており、二人を見たジョージ君は安心したのか堰を切ったように泣き出し。シスターさんに抱き着き、シスターさんもジョージ君を優しく抱きとめる。
「ありがとうございます。ルナさん。お怪我はありませんか?」
「大丈夫ですよかすり傷一つありません」
そう言って私は二の腕を強調するポーズをとって見せる。
「――けど、やっぱり良いものじゃありませんね。人を斬る感触ってものは」
未だに残る人の肉を切る感触、気持ち悪くてしようがない。よくもまああのクズどもはこんな感触を自慢できたものだ。いや、この世界はそうでもなければ生きていけないほど厳しくて、私がただ甘いだけなのだろうか?
私がそんなことを考えていると神父様が語りかけて来る。
「ルナさん、人を傷つけることから逃げた私が言うのもなんですが、貴方のその葛藤は至極まっとうなものだと思いますよ」
「そうですかね?」
「そうですよ。彼らはただ知らないだけなのです。人を傷つけること以外にも生きる術があることを、それはこの世界でも元の世界でも変わらないことなのです」
「そう言ってもらえると助かる気がします」
私がそう言うと神父様は優しい笑みを浮かべ、さて、と前置いて
「それでは全員がそろいましたしヒュームのお別れ会を始めましょうか」
それからはとても楽しい時間を過ごすことが出来た。ささやかではあるがいつもよりも少し豪華な食事を皆で囲んで孤児院の皆の昔話に花を咲かせる。孤児院の皆はこう思っただろう。この時間が永遠に続けばいいのにと、この楽しい時間が終わって欲しくないと。
しかし、時間というものは時に残酷なほど公平だ。お別れの時間は必ずやってくるのだ。
「さて、お別れ会もここまでといたしましょうか」
神父様がお別れ会の終了を告げると子供たちがまだ続けたいと口々に文句を言いだす。
「みなさん、寂しい気持ちはわかりますがもう夜も遅いですし、これ以上は明日に差し支えます――だから、ここまでです」
「だったら!!」
ジョージ君が突然大声を出し、自身のポケットの中から一つの木製のペンダントを取り出した。
「これ、ヒュームに」
そこで私は合点がいった。なぜ、普段教会の敷地外に出ることを禁じられているジョージ君が教会の敷地外に出たのかを、そう、全てはヒュームさんのためだったのだ。ヒュームさんのためにわざわざ危険を冒してまでペンダントを買いに教会の外に出かけていたのだ。
「ジョージ、これを私にくれるのかい?」
「うん、本当はヒュームでも付けられるような魔石とかが良かったんだけど、僕のお小遣いじゃこれしか買えなくて……」
「いいや、これほどうれしい贈り物はないよ」
「本当に?」
「本当だとも、一生大切にするよ」
「うん」
こうしてヒュームさんのお別れ会は終わり、孤児院の子供たちが皆眠りに着くまで私たちは待つことにした。
「イーター」
「何だルナ」
「本当に良いの?」
「くどいぞ」
「だって、今なら断ることだってまだ間に合うんだよ」
「そしてヒューム殿に永遠の苦しみを与えるのか?」
「ぐ、それは……」
「お前の望むところではないだろう――だからこうするしかないのだ」
これは私が納得するとか納得しないとかそういった次元のはなしではないのだろう。それは頭では理解できる。だけど、感情がわかりたくないと我儘を言っている。まだあきらめるなと言っている。しかし、時間は確実にやって来るものなのだ。
「ルナさん、イーターさん。準備が整いました。こちらへ」
「――はい」
私は神父様に促されるままその後に続く、すると孤児院の庭にヒュームさんが立てかけられていた。
「準備は出来ています。彼も……私もです」
私は動けなかったいや、これ以上先に進むことを躊躇した。進んでしまえばもう後には引けない。今逃げ出してしまえば――
「ルナさん、私を解放してください」
その言葉を聞いて私は自然と歩み出していた。自分でも信じられないくらいに真っ直ぐとだ。
「イーター準備は良い?」
「良いぞ」
「ヒュームさん、準備は良いですか」
「ええ、その前に少しだけよろしいですか?」
「はい、何でしょう?」
「イーターさん貴方には少し無理をさせてしまうかもしれませんがこのペンダントと一緒に私を逝かせてはくれませんか?」
「その程度の無茶、無茶とは言わん」
「フフ、ありがとうございます」
会話の後、私はイーターを構える。そしてゆっくりと静かに呪文を唱えようとしたところでイーターが言った。
「ルナ呪文を変えるぞ」
「何よ突然」
「俺は気付いたのだ、いや、気付かされたのだ我が種族の罪深さをな」
「それと呪文に何の関係があるのよ」
「あるさ、それは心の在り方だ」
「心の在り方、ねぇ、それはわかったけどなんて唱えれば良いの?」
「粗食だ」
「わかった。粗食」
私がそう唱えるとイーターはいつもと同じ様に変形し、大きくその口を開く。そして一口でヒュームさんを喰らった。
「ありがとう」
私の耳にヒュームさんの声が届いた気がした。その感謝はイーターにも届いたのであろうイーターは何も言わずに黙っていた……
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