亜LIVEダンジョン探索記

ウツロうつつ

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第一章 探とサグルと「配信者」

第2話 探とリスナーと初接触

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 探が女神フェイスレスの手によってダンジョン――アビスホールに送り込まれてから2日、ダンジョン脱出目指す探の前に新たな壁が現れていた。
 その壁とはダンジョンの5層ごとに存在するボス部屋のことであり、探の目の前の扉には5の文字が、つまり第5層のボス部屋の扉が探の目の前にあった。

「くそ、やっぱりあの女神ろくでもねぇ性格してやがる。5層のボスなんて最初のボスでもパーティー戦推奨の相手じゃねぇか。そんなやつ相手にどうやったら勝てるってんだ!!」

 探の言う通り第5層のボススケルトンナイトは初心者が初めてパーティーを組んで戦うボスとして有名なボスである。無論ソロでの撃破記録も無いことはないが、それはあくまでもLevelを十分に上げ、Jobに就き、適切な装備を装備した上での話。何もかもが足りない探の現状では厳しいとしか言えない相手である。
 あまりの無理ゲーさに悪態をつく探であったが、そんな探の目の前に突如配信ウインドウが現れた。

「ん?今配信画面なんて見てる場合じゃ……」

 そこまで言って探の目にとある数字が入り込む。その数字とはLIVE配信の視聴者数。先日まで0名だった視聴者の数が急に40名程に増えていたのだ。

「なんで急にリスナーの数がこんなに増えてんだよ」

 そこで探は配信者ウインドウのコメント欄に目をやると

【おーい、探!!】
【見てるか、おーい!!】
【おーい】
【今見てると思うんだけどな】

 などと探に話しかけるコメントが大半を占めていた。

「なんで俺の名前がばれてんだよ!?」

 不思議に思う探であったが、次々と流れてくるコメントを追っているとその中に

【俺だよ加藤だよ】

 と探がアビスホールに召喚される原因を作り出した友人のコメントが流れてきた。

「あ!!てめえオイ加藤!!お前のせいで俺は行きたくもねぇダンジョンに来る羽目になったんだぞ!!どうしてくれんだコラ!!」

 そう加藤に向けて怒りを露にする探。すると加藤からの返信のコメントが流れてくる。

【やっと反応したな、その件については俺も悪いとは思ってる。だけどぶっちゃけ羨ましいぞコノヤロー!!】
「何が羨ましいだ。こちらとあの――」

 クソ女神、と続けようとして、探は自身のの口がそれ以上の言葉を紡げないことに気がつく。それと同時に探は女神にかけられた呪いについて思い出す。

――くそ!これが女神の呪いか、特定のワードを言おうとしたら強制的に黙らせられちまう

【ん?どうした?】
【なんで急に黙ったん?】
【もしや探クソザコ回線なのか?】
【ダンジョンに回線もくそもないだろうが】

 リスナーたちも急に黙り込んだ探に違和感を感じている。

「いや、なんでもねぇよ。それよりも今のリスナーのほとんどはうちのクラスの連中か?」
【そうだよ】
【正解】
【ありがたく思いな】

 どうやら急に増えたリスナーのほとんどが探のクラスの者たちのようであった。

「それで、お前たちどうして俺がダンジョン探索者になったって知ったんだ?」
【加藤が言ってた】
【加藤の野郎】
【同じく】
【加藤】

 加藤の名前を聞いて疑問符を浮かべる探。

「加藤が?どうして?」
【探が急にいなくなったってお前の家族からうちに連絡があったんだよ、それでもしかしたらと思って配信サイトで探の名前を検索したらヒットしたってわけ】
【と言うか探お前、本名で配信ってネットリテラシーどうなってんの?】
「うるせぇ、事情は話せないけど、こっちはこっちでいろいろ大変でそこまで気を配れなかったんだよ!!」
【だったら今からでも遅くないから配信者名考えろ】
【そうだな、そうしろ】
【俺たちも一緒に考えちゃる】
【サグキンTV なんてどうだ?】
「それじゃあhiKAKINとのパクりじゃねーか」
【名前なんてパクってなんぼだろ】
「あからさま過ぎるんだよ!なんだよサグキンって……」
【だったらサグっとチャンネル】
「却下」
【虎穴探】
「論外だ馬鹿」
【だったらSAGURUTVなんてどうだ?】
「SAGURUTVか……何かいいなそれ」
【結局本名じゃねーかwww】
【いや、逆にその方がいいのか?】
【もうめんどくさいからそれにしようぜwwwww】
「おう!SAGURU TV にするわ」

 そう言って探は配信ウインドウを操作し自身のチャンネル名をSAGURU TV に変更する。

「よし!これで俺はこれからSAGURU TV のサグルだ。皆も俺のことはサグルって呼んでくれよ!!」
【ういうい】
【りょーかい】
【あんまかわんねーけどな】
【ところでお前はなんでまだ制服なん?】
「それには深いわけがあってだな、要約すると俺は今ダンジョンの5
層にいて、5層のボスを倒して一度ダンジョンから脱出しなきゃならんのだよ」
【全然答えになってねーしw】
【脱出ってダンジョンは潜るもんだぞ】
【なんだそりゃ】
【www】

  クラスメイトたちとのやり取りを経て、先程まで絶望の縁に立っていたサグルの目に力が戻ってくる。

「それじゃあスケルトンナイト攻略の始まりだ!!で、俺は何をすれば良いんだ?」
【レベアゲだね】
【レベリングだな】
【レベルアップしかねーよ】
【つーかJobは?】
「……Jobはまだ就いてない」
【マジかよ……】
【Jobなしはキツくね?】
【それに装備もろくなもん装備してないぞこいつ】
【Orz】
「諦めるんじゃねえよ!諦めたらそこで俺の一生が終わるんだぞ!!」
【つーか食料と水はあとどんくらいあんの?】
「残り5日分ってところだな」
【食料は問題なさそうだな、武器は?】
「聞いて驚け調理用ナイフしかないぞ!!」
【RIPサグル】
「だから諦めるんじゃねえよ!!」
【だけどジョブ無し、武器もろくなもん無し、防御も紙装甲に毛が生えた程度、レベルは?】

 この2日間サグルはモンスター退治とダンジョン探索しかしてこなかった。故にレベルに関しては自信があった。故にサグルは胸を張って誇らしげに言う。

「聞いて驚けレベル4だ」
【まだ推奨レベルにも達してねえじゃねぇか】
【一体この2日間何をしていたんだ】
【序盤なんてモンスターも弱いしレベル上げしやすい方だぞ】
【そんなんでボスを倒そうなんて……RIPサグル】
「勝手に殺すな!!」
【でも、実際どうするんだ?】
「う~ん、レベル上げ?」
【だよな~因みに俺調べによるとスケルトンナイトのソロRTA記録ではレベル6が最小レベルだったぞ】
「だったらなんとかなりそうじゃね?」
【ならんわアホ、ソイツは防御重視の戦士で装備もガチガチに揃えてたからな、しかも大手クランのバックアップ付き】
「じゃあなんとかならんか……」
【でも、サグルは今ダンジョンから脱出しようとして第5階層で足止めを食らってるんだよな?】
「ああ、そうだよ」
【つまり、探は6階層以降にも降りられるってことだよな】
「まあ、そうだな」
【サグル、推奨レベルの秘密って知ってるか?】
「なんだそれ」
【推奨レベルってのは実はボスを倒すための推奨レベルではなくてだな、その階層を突破するのに一番効率の良いレベルのことを指しているんだ。】
【5階層ならレベル5以上にレベルを上げるには効率が突然悪くなるから推奨レベルは5にしてあるっていう風にな】
「ってことは俺が今いるのは5階層の出口側だから……」
【10階層の推奨レベルであるレベル10までは効率良くレベル上げが出来るってことだ】
「レベル10!?ってことは5階層の推奨レベルの2倍か!!」 
【それだけあれば現状でもなんとかなるんじゃないか?】
「確かに、それだけあればスケルトンナイトにも勝てるかもしれない」
 
 サグルの現状に希望の光が差してきた。

【だけどくれぐれも油断はするなよ。いくらレベルが倍はあってもあくまでお前は武器も防具もスキルも持っていないだからな!】
「お、おう。それは当然承知の上だ」
【それじゃあSAGURU TV 出発進行だ!!】
「おー!!」
【おー!!】
【おー!!】
【おー!!】
【おー!!】
【おー!!】

 サグルの目には先程のまでの絶望は感じられない。どうやら完全にヤル気を取り戻したようだ。
 こうしてクラスメイトもといリスナーとの交流を経て、虎穴探は配信者サグルとしての第一歩を踏み出したのでった。
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