亜LIVEダンジョン探索記

ウツロうつつ

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第三章 サグルとチユと臆病「治癒師」

第23話 サグルとチユとチームの掟

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 チームSAGURUTVのミリア強化作戦成功の翌日、ゴライアス帰還したチームSAGURUTVの面々はしばしの休暇を楽しんでいた。
 ある日のこと。

「そういえば!!」

 サグルたちがいつものようにギルドの酒場で雑談をしているとミリアが突然席から立ち上がって言った。

「どうしたのミリアさん」

 サグルはそう尋ね、チユは我関せずと言った様子でコーヒーを飲んでいた。

「チユさんが加入してから例の儀式をまだしていなかったなと思いまして……」

 例の儀式と言われてもサグルの中にはそれらしいことを行った記憶がない。サグルは疑問符を浮かべながらミリアに問う。

「儀式ってそんなのあったっけ?」

 サグルがそう言うとミリアはショックを受けたようで一歩後退。サグルに言う。

「さ、流石サグル君、小一にしてチユさんと付き合っていただけのことはありますね。私なんか未だにあの儀式のことは忘れたくても忘れられないのに……」
「ちょ、チーちゃんとの件は関係ないでしょ」

 顔を赤くしながら周りの探索者に聞かれていないか周囲を見渡すサグル。チユもチユで自身のことが話題に上がったため耳だけをミリアたちの方に向けている。

「関係大有りですよ!なにせこの儀式を行うのはチユさんなのですから」

 言って何故か偉そうに胸を張りチユのことを指差すミリア。そんなミリアにチユはギロリと視線を向ける。

「私?私に何か用かしらミリアさん」

 未だにチユに対して苦手意識のあるミリアは「うっ」と言葉をつまらせる。が、なんとか持ち直して発言する。

「そうです私はチユさんに用があるのです」
「だから何の?」
「だから儀式の件です」
「だ・か・ら!何の儀式よ!」
「それは当然、探索者の覚悟の儀式です!!」

 その時、場の空気が凍った。これ以上ないほどに。あまりの凍り具合にサグルもチユも声を発することがかなわずしばらくの時間を要したほどである。

「あ、貴女本当にバカなの!?」

 素直な暴言が口をついて出た。

「あー!!チユさんがまた私のことをバカにしたー!!」

 子供が悪い子を見つけたときのようにチユのことを指差し糾弾するミリア。そんなミリアにチユは呆れ顔、サグルは未だに凍てついた時の中にいた。

「あのねぇミリアさん。アレは貴女が私に探索者としての覚悟を見せるために貴女一人が勝手に行ったことでしょう?それに私を巻き込むなんておかしいと思わないの?」
「思いませんし、あの儀式は私たちチームSAGURUTVにとっても重要なものです。いくら私と違ってスカウト枠のチユさんとはいえ、それをなしにしようなんて虫の良い話はありません!」
「む、虫の良いって――」

そこまで言う!?チユは呆れを通り越して怒りが沸いてきたのか冷静な顔の中に青筋が浮かんでいる。
 そんな険悪なムードの中、サグルが凍てついた時の中から戻り、ハッと我に返る。

「ミリアさん、勝手にそんな無茶苦茶なルールを作られても困るよ」

 サグルの時間差のある一言にミリアはショックを受ける。

「そんなサグル君まで……そうですか、サグル君は私だけの初めてが欲しくてチユさんと共謀して……」
「なんでそうなるのさ!?」
「いいえ、そう考えればチユさんの頑なな態度にも説明がつきます。それになんと言っても私は超絶美少女男の子であるサグル君が劣情を抱くのも仕方がありません――」
「いえ、私はただ単に――」

 チユが何やら釈明しようとするが、暴走するミリアの前には全てが無駄、ミリアの名推理という名の妄想は止まることを知らない。

「どうせチユさんはサグル君と10年前からチュッチュッチュッチュしてたのでしょう?今さらキスの一つや二つくらい問題ないはずです。なのにそこまで嫌がるということはなにか理由があるはず、ハッそうか!実はサグル君とは清いお付き合いの関係でキスをすることもなくサグル君は彼女がいるのにキスも出来ないという悶々とした日々を過ごすことによって性癖が曲がってしまって、そんな時に私という超絶美少女が現れたことによりチユさんと共謀。私のファーストキスを奪うという滞在を――」
「うっさいわバカ」

 横から割って入ってきたリリィがミリアの頭を平手ではたく。

「いったぁ~何をするんですかリリィさん」
「なにもするもクソないっつーの!!ギルドの中でギャーギャーギャーギャーわめきやがって。うるさいったらねぇ、一体何があったんだ?」

 そうミリアを問い詰めるリリィにサグルはこの人には絶対に知られてはいけない知られたら最後、絶対に面白がって状況を悪い方向にシフトさせられる。と、危機感を抱く。

「そんなことよりもリリィさん――」

 サグルはそう言って多少強引にでも話の誘導を試みる。が、

「サグル君とチユさんがチューしてくれないんです!!」

と、いう言葉がリリィの興味を引いて。

「わぐ!?」

 サグルはリリィに口を塞がれて強制的に黙らされてしまう。

「――ミリア、その話詳しく聞かせろ」

 言われたミリアは水を得た魚のように今回の妙な揉め事の一部始終を話だし、リリィはミリアの話を聞いてゆく内に段々とその顔に邪悪な笑みをたたえてゆく。

「と、いうわけなんですよ」

 全てを話し終えたミリアはどこか満足げな様子で立ち上がっており、全てを聞き終えたリリィはこれまでに見たこともない程の邪悪で愉悦に満ちた顔をしている。

「おう、話の全てよ~くわかった。ミリア、大変だったな。ここは私に任せておけ」
「リリィさん……」
「で、だ。そこのお二人さん」

 こっそりとギルドから脱出しようとしたサグルとチユはビクリとからだを跳ねさせてリリィの方を見る。

「「な、なんでしょう?」」
「お前らの席はそこじゃないぜ、こ・こ・だ」
「「いや、時間も時間ですしおいとましようかと……」」
「おいおい、まだ昼の一時にもなってないんだぜ。気にするような時間じゃあない。いいからここに来な」
「「はい……」」

 サグルとチユは絶望したような顔で元いた席に戻る。

「で、だ。お二人さん。お宅の大事な大事なタンク役が涙ながらに私に言ってきたこと……本当かい?」
「はい、一部誇張は入っていますが概ね本当のことです」
「ちょっとサッ君!?」

 サグルの認める発言にチユは裏切られたような顔をしてサグルを見る。

「チーちゃんここは嘘を吐くより認められるところは正直に認めて、意義のある所はちゃんと異議申し立てをする。ようにしよう。そうした方がこの裁判勝てないよ」
「サッ君、でも……」

 なにか言いたげなチユに対してサグルは真っ直ぐな瞳で見つめて有無を言わせない。

「それではここにチームSAGURUTVの裁判を開廷する」

 リリィは持ち前のノリの良さを生かして裁判官のような態度で話だす。が、

「判決、被告チエとサグルに対して熱いベーゼを要求する」
「異議あり!!審議も無しに判決では裁判の意味がありません!!」
「却下、こんな話に一話丸々使ってんだからそれだけで有り難いと思っとけ」
「何を言ってるんだ貴女は?」
「知らん気にするなそれで量刑についてだが――」
「さ、再審を、控訴を要求する」
「両方とも却下だ。ほら、さっさとチューしろよチュー。もちろん唇同士だからな。もしホッペなんて甘いことしてみろサグル、お前のリスナーにミリアとのこと言いふらすぞ」
「そ!?それはいくらなんでも卑怯過ぎるでしょう!?」

 もしサグルがミリアとの件についてリスナーにばれてしまったら怒り狂ったリスナーたちの手によりこの世から抹殺されてしまう。それだけはなんとしてでも避けなくてはならない。しかし、ここでミリアとリリィの要求通りにチユと熱いベーゼを交わしてしまえばリリィに対してまた新たな弱みを握らせてしまうことになる。サグルは頭を抱えて懊悩する。チラリとチユの方に目がいってそれはそれで有りかな?とか考えたが頭を振って甘い誘惑に耐えてみせ。結果。

「チーちゃんにお任せします」

 全てをチユにぶん投げた。

「ちょっとサッ君、それは男の子としてどうなの!?」
「言わないでくれチーちゃん。これでも十分に迷ったんだ。けど……だけど……こればっかりは俺には決められない!!」

 サグルは心底悔しそうにギルドの床を叩いている。 
 そんなサグルにチユはそっと肩を添えて微笑みながら言う

「サッ君……」
「チーちゃん?」
「このヘタレ」

 チユが言った次の瞬間チユはいつの間にか用意されていたジュース入りのジョッキを手に取りその中身を口内に頬張りサグルの口目掛けて自身の唇を覆い被せるように重ねる。

「んぐ!?」

 そしてサグルはチユにされるがまま送り込まれたジュースを嚥下して行きやがてその口内からすべてのジュースがなくなると、

「プハッ」

とサグルの口から自身の口を離す。そして、

「これで良いのでしょう?」

と、ミリアとリリィに言い放つ。するとリリィは口笛を「ヒューイ」と鳴らし、ミリアは呆気に取られてなにも言えない。

「ああ、これは文句無しの合格だ」

 一体何が合格なのか?最早当人たちにもわかっていない。しかし、チユはチームSAGURUTVの何らかの試験に合格したのだ。それは評価に値する。
 こうしてチユはチームSAGURUTVのメンバーとして正式に迎え入れられたのであった。 

 
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