トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

文字の大きさ
6 / 86
第2章~マナ生命体~

第6話 予兆――初見じゃ大体見落として後から気付くやつ。

しおりを挟む
 「生命の誕生ですか!!」

 それまでの警戒心はどこへやら、レイは生命の誕生という一大イベントに興味津々といった様子でリンネに詰め寄るように近づいた。リンネはそんなレイの反応が予想外だったのか若干押され気味である。

「厳密に言えばこの宇宙にある魂を宿した星も生命なのだけれどね。ま、今回の場合は星に寄生――じゃあ言い方が悪いな……星と共に生きる星よりもはるかに小さな生命ってところかな」

「ではその小さな生命を早速見てみましょう。確か『検索』と『千里眼』を併用しなければならないのでしたよね。ということは『検索』は僕の目か管理者部屋の窓を使用するということですね。で、あればリンネも見ることが出来るように管理者部屋の窓を使うことにしましょう。そうしましょう。」

 よほど新たな生命の誕生に興味があるのか、レイは興奮気味に早口でまくし立てる。リンネはそんなレイを落ち着けようと、

「レ、レイ君、新しい生命の誕生に興味津々なのはわかるけど、ここはいったん落ち着こう。はい、深呼吸してすーはーって、ここに空気なんかないや!あはははははは!」 

小粋なジョークを飛ばすもレイは無反応。予想外の出来事に弱いのかリンネも空回り気味だ。

 レイはそんなリンネの行動の一部始終を見届けると、無反応のまま管理者部屋の窓に近づき「あっ、検索の機能が追加されてる」とリンネを置いてけぼりで1人楽しそうにする。

「レイ君、いくらなんでも無視はないんじゃないかな、無視は。いいかいレイ君、よく言われるけど愛の反対は嫌いではなくて無関心なんだ。つまり無関心を装う行為である無視というのは下手をしたら敵意以上に人を傷つける――」

 レイに無視されたことがよほどショックであったのかリンネはぶつぶつと何か言い続けるが、言われたレイはどこ吹く風、レイは黙々と検索の機能で試行錯誤を繰り返している。

 そうしていると、

「リンネ!リンネ!検索結果が出ました!!ほら、見てください!!」

レイは大はしゃぎでリンネのことを手招きする。そんなレイの子供じみた様子にリンネはクスリと笑い「はいはい」とレイのすぐ隣に歩み寄る。

 管理者部屋の窓には『指定ノ生命反応ハ10箇所有リマス』と表示されている。

「リンネ、どうやら生命が誕生した星は10箇所もあるみたいです」

「そうだね、レイ君はどこを一番最初に見るつもりだい?」

 言われてレイは検索結果の詳細画面を確認する。詳細画面には星の位置情報と、保有するマナの量が記載されているが、強いて言えばマナの保有量がわずかに多い星が一つあるくらいだ。

「決めました。このマナの保有量が一番多い星にします。何か意見は……」

 言いながらレイはリンネの方をチラリと見る。レイにはリンネがどう答えるのかわかっていたが、なぜだかリンネに確認しておきたい気持ちが湧いたのだ。

「管理者レイ・アカシャのご意志のままに」

 リンネの芝居がかった恭しい一礼と共に、予想通りの返答が帰ってくる。

 レイはリンネの返答を確認すると、コクリと頷いてから『千里眼』を使用する。すると、管理者部屋の窓に映されていた画面が一瞬の暗転の後に切り替わる。

 切り替わった画面には岩だらけの星の地表と思われる場所が映し出されており、それを見る限り水がない。

「リンネ、どういうことでしょう。大気の有無は映像では判断できませんが、海はおろか水すら見当たりません。これでは生命は誕生などしないのでは?」

「……」

 リンネからの返事がない。レイがチラリとリンネの方を見ると、リンネは腕を組み、片手を顎に当てて何やら真剣に考えている。

 今リンネに意見を聞いても無駄なようだ。そう考えたレイは視線を管理者部屋の窓に移し、何かしらの見落としがないか表示されている画像を観察する。するとある点に気付く。

 この星のマナのは他の9の星よりもわずかに多かった。ならばそれ以外の星と比べたらどうなのか。

 レイは自身の目を使用して『検索』を行い、生命の誕生した星とそれ以外の星のマナ保有量を比べる。結果、生命の誕生した星はそれ以外の星と比べてマナ保有量が十倍以上あることが判明した。

 この結果が生命誕生に何か絡んでいるかもしれないと睨んだレイは、このことをリンネに報告しようとしたところ、

「レイ君!あそこを見たまえ!」

リンネが慌てた様子で管理者部屋の窓を指差す。

 その先には白く光輝く光球が宙を舞っているところが映し出されていた。それも一つだけではない、どこから出てきたのかは不明ではあるが、少なくとも10数個の光球が確認できた。

「リンネ、もしかするとあの光球がこの星で誕生した生命なのでは?」

「……」
 
 再び押し黙るリンネ。不思議に思ったレイがリンネ方を見ると、リンネは顔を管理者部屋の天井に向け、片手で自身の両目を覆っていた。しばらくの間リンネはその体勢のままであったが、やがて口を開いた。

「レイ君、君の予想通り、あれらが今回誕生した生命に間違いないだろう」

 レイはリンネの言葉に何かとても小さな違和感を持つ、が今はそんなことを気にしてる場合ではない

「そうなんですね!」

 嬉しそうに管理者部屋の窓に映る生命体を見るレイ。しかし、リンネはそうではないようだ

「そうなんだよ、私達という存在があるのだから、こういうことは予想していたさ、しっかし、一番最初に来るかね……」

 リンネは想定外の事態に怒り半分、諦め半分といった様子だ。
 レイは今日(何日かは不明だが)はリンネの以外な一面がよく見れるな、なんて呑気に考えるがハッと我に返り質問する。

「彼らに何か問題があるのですか?もしかして彼らに生きてもらわれたら困るとか……」

 レイが不安そうに尋ねる。尋ねられたリンネは優しく微笑むがレイはその笑みにどこか固さを感じた。

「あれらの抱える問題は今すぐにどうこうなるとかいう類のものではないよ。ただ、確実に処理しなければならない問題ではあるけどね」

――まただ。

 レイはまたリンネの言葉に違和感を持つ、それは小さな苛立ちを伴うものだ。

 しかし、今はそのことについて追求している場合ではない。レイはそう思い小さな苛立ちを無理矢理抑えこむ。

「そんなに大きな問題なのですか?」

「ああ、この問題を放置すると、最悪の場合宇宙の運営が立ち行かなくなる」

 リンネの言葉にレイは疑心が生まれる。なぜなら今、画面越しに見える生命たちに、宇宙の運営に支障をきたすようなことが出来るとは到底思えなかったからだ。

「宇宙の運営が立ち行かなくなるって、彼らがそんな存在であるとは僕には到底思えませんが」

「今のあれらにそんな意識はないからね。ただ純粋に一つの生命として生きている。ただそれが――」

――まただ

 レイはそう思いながらもその考えを押さえ込む、今は宇宙の命運がかかっているのだ。そんな些事気にしてはいけない。

 レイの心に小さな痛みが走った。今自分は何か大きな間違いを犯したのではないかとも思った。今ならばまだ間に合うとも――

 それでも時は公平に、容赦なく進む。

 リンネは続きを口にする。

「宇宙の……輪廻転生というシステムの完全停止を引き起こす可能性がある」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...