トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

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第9章~眷属教育~

第65話 試合――死合じゃないよ、試し合いだよ。

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 ヴァリスとガヘリスによる座学と魔法に見事――ギリギリ合格を果たした4人は翌日のメルリリスによる戦闘の試験を受けるため、それぞれが自信のエモノを持ち込み、エクノルエ家の屋敷の庭に集合していた。

「それじゃー戦闘の試験を始めたいと思いまーす!!」

 メルリリスがいつものように軽い調子で言う。すると、レイがメルリリスに近寄り訊く。

「メルリリス、戦闘の試験はどのような形式で行うのですか?」

「ん~やっぱ戦闘の試験と言えば試合でしょ」

 試合と聞いてトリオラとデュオスが苦い顔になる。

「メ、メルリリス様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」

 トリオラとが恐る恐る口を開いた。

「なーに?」

 気さくに返事をするメルリリスに、トリオラは慎重に言葉を選びながら訊く。

「その、試験の合否に、試合の勝敗は関係するのでしょうか?」

 トリオラの弱気ともとれる言葉に気を悪くしたのか、メルリリスの纏う雰囲気が僅かに冷たくなる。

「何?試合の前から負けたときのこと考えてるの?」

 メルリリスが不機嫌な顔をしてズバリと言う。言われたトリオラとはシュンと肩を落とすが、そんなトリオラの姿を見たメルリリスは「はぁ」と短くため息をつき、

「ちゃんと実力差を考えて試合を組んでるし、試合の勝敗よりもその中身を重視してるからね。安心して、戦士らしく試験に臨みなさい!!」

と、しっかりトリオラをフォローする。するとトリオラだけでなく、デュオスも同様の不安を感じていたらしく、両者ともホッと胸を撫で下ろして、

「「はい!!」」

と元気に現金な返事を返した。すると、メルリリスが呆れ顔で、

「デュオスあんたもだったのね」

言われたデュオスはしまったと言う顔をした後に、

「すみません」

と居心地悪そうに謝った。

「いいわよ別に謝んないでも。それで試合の組み合わせだけど……」

 トリオラとデュオスに緊張が走る。

「トリオラ対デュオスと、アリアちゃん対カトレアちゃんね」

 発表された対戦相手にトリオラとデュオスは両者ともわかりやすいほどにホッと胸を撫で下ろし、その態度に互いに互いがカチンと不満。

「デュオス、その態度は、まさか僕になら勝てるとでも?」

「そんなこと思っていないですよ兄さん。ただ、あまり油断し過ぎると足元をすくわれますよ」

「何だと!!」

「何でしょう」

 兄弟が火花を散らす。メルリリスはそんな二人の様子を楽しそうに眺めながらも、

「それじゃあ、最初の試合はトリオラ対デュオスからね、二人とも準備してー」
 
 言われた二人は庭の中央に互いに10メートルほどの距離をとって立つ。トリオラは刃引きされた剣を、デュオスは弓のみを持っている。

「それじゃあ二人とも準備は良い?」

 メルリリスが両者をに確認する。

「「はい!!」」

「それじゃあ……試合開始!!」

 動いたのはほぼ同時、トリオラは攻撃するための前身を、弓を持つデュオスは距離をとるためのバックステップを、この勝負、定石で考えるのであれば、トリオラが自身の間合いに持ち込めるか否かが勝敗の決め手となる。それは当然本人たちも理解しており、トリオラは必死に距離を詰めようとするが、デュオスによる牽制のための魔法矢により思うように距離が詰められないでいた。

「どうしたデュオス、そのような攻撃にもならない牽制だけでは僕は倒せないぞ!!」

「トリオラ兄さんこそ、先程から僕の牽制をいなすことばかり、これでは的を相手に戦っているよう
なものですよ」

「ハハ、中々上手いこと言うじゃないか、それじゃあお望み通り攻撃を始めようか!!」

 言ってトリオラは剣を持たない左手をデュオスにつき出す。すると突風がデュオスに向かって吹きつけられた。

「その程度で!!」

 デュオスはそう言うと手をつき出すことなく、自身の前に防御壁を展開、トリオラの放った魔法の突風を完璧に防御してみせる。

「やるなデュオス」

 それはトリオラからの素直な賛辞であった。

「兄さんだからといって、負けられませんから」

 デュオスもまた、思ったことを口にする。

「だがなデュオス」

 トリオラが剣に魔力を集中させる。それに気付いたデュオスは、これは撃たせてはならぬと牽制の魔法矢を放つ。が、その魔法矢はトリオラに命中することなく、反らされるように外れてしまう。

「な、まさか!?」

「そうだよデュオス、僕はお前に突風を放った時点で準備完了していたんだ。風の防御壁をな!!」

 言われてデュオスはチッと舌打ち、トリオラの防壁を貫くための魔法矢の生成にかかるが、

「遅い!!」

 既に剣に魔力を込め終わっていたトリオラが剣を横なぎに振るう。すると、風の刃がデュオスを襲った。
 この時デュオスは頭に魔力を集中させ脳機能を強化。思考を加速させて考える。今から防御をしても間に合わない。前方、後方に逃げ場はなし。なれば下は?駄目だ避けられる高さではない。残るは一つ。

「上なら!!」

 デュオスは足に魔力を集中させ、跳躍、そして必殺の一矢を放つべく下方にいるトリオラを――いない!?

「ハハ、引っ掛かったなデュオス」

 デュオスの上方からトリオラの声が聞こえる。そこでデュオスは自身が誘い出されたことに気付く。おそらくこれからトリオラによる振り下ろしの一撃が自身を襲うだろう。痛いだろうな、ものすごい衝撃だろうな、嫌だな、怖いな、もしかしたら気を失うかもしれない――だからなんだ!!
 メルリリスの『秩序コスモス』の戦士長の弟子がその程度のことで止まってたまるか!!
 デュオスは頭上のトリオラを睨み付ける。トリオラもデュオスのことを対等の敵として見ている。トリオラは笑う、デュオスも笑うこの敵に出会えて良かったと。そして二人は放とうとする。最上の殺意を込めて互いが互いを殺すために。その結果は――

「終ー了ー!!」

 メルリリスとレイが今にも攻撃を放とうとする両者を無理やり止める。止められた二人は、羽交い締めにされつつも、互いに牙をむき出し合う。

「どーどーどー、はい終了試合はもう終わったよー。これ以上は死合になるからねー」

 物騒なことを言いつつ両者をなだめるメルリリスとレイ。ややあって二人は落ち着きを取り戻しレイとメルリリスに謝る。

「すみません冷静さを欠きました」

 トリオラがそう謝ると、デュオスも言う。

「僕もです。兄さんを敵として見てしまい危うく殺そうと――」

 自身の行動を反省する二人、しかし、メルリリスは満足いったように笑う。

「謝る必要はないよ。だって貴方たちを育てたんだもん。だから二人とも合格。因みに勝敗までわかってるんだけど聞いておく?」

 言われてトリオラとデュオスは互いを見合って言う。

「「必要ありません」」

 言われてメルリリスは満面の笑みを浮かべた。
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