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第187話 エチ国とイズモ国の酒で乾杯
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イズナに勧められて勝手に入り込んだ場所は土間だった。そのすぐその横は座敷となっており、座敷の中央には火の入った囲炉裏があった。ありがたい、すぐに暖まろう。
農家の家の造りに良く似ている。昔アニメで見た豪農の家みたいだ。
「それ、なんて気になるノです?」
「やかましいよ」
部屋の隅にはなんと座布団が積んであり、それを各自勝手に持ち出して囲炉裏を囲んで座った。なかなかに良いクッションである。
「座布団があるじゃないか。これ2,3個売ってくれないかな?」
あるとこにはあるんだな、と思っていたらひとりの老人がやってきた。
「いやいや。みなさんお待たせしましたな。ワシがキスキというものジャ。イズナ、こちらの方たちはどなたジャな?」
「これひゃはじめまふて。俺がゆふです」
「がしがしがしがしがし」
「短い足で蹴るな!!」
「短くて悪かったな。ほら、その調子でしゃべれ」
あれ?
「失礼した。俺がユウだ。訳あっていまはこの国の太守になっている」
あ、調子が戻った。ウエモンのおかげか? 全然ありがたくはないから感謝なんかしないけど。
「そうでした……かぁ?? なんですって? ということは、オオクニ様はいったいどうされたので?」
「オオクニも訳あって、ツブツブ堂という会社の社長に就任している。まあ俺の太守は代行のようなものだ。ここが落ち着いたらまたオオクニが復帰することになっているから心配はいらない」
「そ、そう、そうでしたか。ここが落ち着くとはいったい? それより代理とはいえ、まさか太守様がこんなお若い方とは」
ヤマタノオロチ……じゃないキスキは、もう70才ぐらいの頭髪から髭まで真っ白な爺さんだった。対応は柔らかで、かつて若い娘を食べまくった猛龍のなごりはない。
「食べまくったわけではいのジャが」
「そうなのか?」
「ちょっとつまんだだけジャないか」
「それがいかんっての!!」
「だって、あの娘らはそろいもそろって佳人薄命でしてな」
「佳人はともかく薄命ってどういうことだ?」
「知りませぬか。美人は早死にするという意味ですジャよ」
「俺に敬語は不要だ、面倒くさい」
「それならそうしよう。こちらも楽ジャ」
「薄命の意味ぐらいは知ってるよ。聞きたいのはそういうことじゃなくて、その娘らがどうして早死にしたのかってことだ」
お前が食ったんだろ?
「ああ、そうか。ええと、長女は嫁に来て3日後に崖から転落した。ワシのために野草を取りに行ったときジャった。次女は一月後に流行病で急逝した。三女は食中毒で、四女は水虫の薬を買いに行って何者かに拉致された、五女は」
「待った待った待った。どこかで聞いたような話が混じってるぞ。そいつらは亡くなったのか? さらわれたのか? どちらにしてもそれ、ただの運の悪いおっさんじゃないのか?」
「そうジャよ? 結果的につまみ食いしたみたいになったのジャが、全員が3ヶ月と持たずにいなくなったのジャ。それでもワシは死後1年は喪に服して次の嫁は娶らないようにしていたのジャ」
神話と話が違うじゃないか。食べたことになってたぞ。お食事的な意味で。……確かに食べちゃいるんだろうけど、性的な意味では。
あの話。ヤマタノオロチに生け贄を出したことになっていたが、嫁にやったという意味だったのか。しかしその娘らは事故だの病気だので次々に亡くなって、最後のひとりになったときに。
「じゃあ、なんでスサノウに退治されたんだ?」
「あれはスサノウの私怨じゃよ。その末娘にスサノウが惚れたのじゃ」
「はぁ?!」
「ワシの嫁になることが決まっておったのに、奪ったのジャ。NTRジャ。けしからんであろう?」
「魔人がNTR(寝取られ)とか言うな」
「それで揉めに揉めてな。じゃあ、男らしく決闘で勝負を決めようということになったのじゃ」
「あれは決闘だったのか。それもひとりの女を巡っての」
「そうじゃよ。西部劇みたいで格好良いジャろ?」
良かねぇよ。それよりなんで西部劇を知ってんだ。
「それで負けて斬られちゃったのか」
「ああ、戦う前に景気づけに一杯と思って酒を飲んだのだが」
「ああ、それスサノウの策略なのに」
「それは後から知ったのジャ。そのときちょうど酒を差し入れてくれた村の衆がおってな。その酒のうまかったこと。ついつい、樽に7杯もお代わりをしてしまった。さすがにあのときは調子に乗りすぎたの。スサノウの策略だと知っていれば……飲んだけど」
「それでも飲んだのかよ!!」
「こいつは、根が好きなのだゾヨ。酒さえあれば幸せなやつだ」
「あ、女もいたほうがもっと幸せじゃよ」
うん、神話っていったいなんだろうね?
「それで酔わされてスサノウに斬られたという伝説ができたわけか」
「ほほぉ。お主はカミカクシであろう。その世界ではワシは伝説なのか。そこんとこくわしく」
「やかましいよ! それよりなんで俺がカミカクシだってことを知っているんだ?」
「ワシも魔王候補じゃからな。イズナには先を越されたが、いずれは魔王になってみせるのジャ。カミカクシだというのは、お主と話しているうちに分かったのジャよ」
「魔王にはそんな能力があるのか?」
「お主、NTRを知っておったではないか」
そこでかよ! こいつもあっちの世界をちょくちょく見てやがるな。ある意味、それが能力と言えなくもないが。
しかし、キスキは12才(にしか見えないはずの)俺に、尊大な態度は見せない。とても感じの良い爺さんなのである。乱暴もので退治されたという神話の魔物とは到底思えない。それもそのはずである。あれは、誰かの手によってねつ造された物語だったのだ。
こっちの世界での話だよ?
「キスキの態度は、ユウも見習うべきなノだ」
「やかましい。人には向き不向きがあるんだよ」
「キスキも若いころはやんちゃもしてたゾヨ。だからオロチなんて名前を付けられたゾヨ」
「それはワシの黒歴史ジャな。だがそのころのことを知るものは、もうイズナぐらいになってしまったなわっはっは」
「キスキ、もう手は空いたのか。土産にエチ国の酒を持ってきたゾヨ。久しぶりに今日は飲み明かそうじゃないか」
「イズナ、それどうやって持ってきた?!」
「ワシのアイテムボックスにはいつでも入っているゾヨ。ボトルキープと言うのだ。オウミも飲むだろ?」
ボトルキープってどこのスナックだよ。アイテムボックス……お前も持ってんのか?!
「ごごごごご相伴にあずかるノだずるずるずる」
「オウミ、よだれよだれ」
「じゅるじゅるジャ、じゅりゅりゅりゅりゅジャ」
「キスキ、お前もか!」
「それは嬉しいのジャ。イズモの酒はだいたいが甘口でな。それはそれでうまいのだが、たまには辛口の酒も飲みたくなるのジャ。エチ国の酒は端麗で辛口なのが良いな。コメもたくさん獲れるが、あそこは特に水が良いのジャろうなぁ」
「これで久しぶりの宴会といこうゾヨ」
と言って酒の入った徳利を4本テーブルに置いた。よっ、イズナ。太っ腹!
「だがその前に、俺は仕事の話をしたいのだが」
「まぁまぁ。久しぶりの再会ジャ、今日は仕事の話はなしにしようぞ」
「「「「おー!!!」」」」
またこのノリか。なんか、このままここに泊まってしまいそうな伊予柑。
「じゃがワシはまだ片付けが残っているから、しばらくはこの干物でもつまんでいてくれ。すぐに戻ってくる」
そう言って奥の作業場に戻ろうとした。あ、現場に戻るのならちょっとちょっと。
「片付けを手伝わせるから、現場を見せてもらえないだろうか?」
と言ってゼンシンに目配せをする。
「え? いや、それはちょっと、あまり他人に見せたくはないのジャが」
「あの、僕はゼンシンといいます。ミノ国で鉄を作っている者です。ぜひここの作業現場を見せてください」
「そうか。ゼンシンさんは鉄の専門家とな。それじゃ、お主だけは見てもいいことにしよう。後の人はすまんがここで待っていてくれ」
やはり機密漏洩を心配しているのではないか、と俺は思った。
「テレクサイだけだと思うゾヨ。やつはああ見えて照れ屋だからな」
「隠すつもりなら、わざわざ経験者のゼンシンを連れて行かないノだ」
あ、そうか。オウミもたまにはするどいことを言う。
そしてテーブルの上にはアジのみりん干しがどっさり置かれた。その1枚をかじってみた。
おっ、うまい。むちっ。アジのうまみにほのかな甘みが口に広がる。皆も手を伸ばして食べ始めた。うまいうまい。
「こうなると、ご飯とお茶が欲しいな」
「まくまくまく。うまいノだ。我もご飯が欲しいノだ。ちょっとタケウチまで行って貰ってくるノだ」
「頼んだ」
むっしむっしぶっちん。もしゃむしゃ。もう12月も半ば過ぎかぁ。俺がこの世界に来てから3ヶ月が経つんだなぁむしゃ。
「あはは、これ。おいしいねー。ぐびぐびぐび。この干物がまたこのお酒にすごく合うね」
「おい! ウエモン、お前はまだ酒は」
「ぐびぐびぐび。まあ、ユウさんもご一献。こんなのお酒の成分は少ないから水みたいなものよ、ほらほら、ぐぐっと」
「スクナ、お前もか……」
イズナが置いていった酒をこいつらは勝手に飲み始めた。何度も言うけど、この世界では酒を飲むのに年齢制限はない。だから12才の俺でも、6才のスクナでも……いいのかなぁ。
じゃあちょっとだけと言って、ウエモンにおちょこ1杯だけ注いでもらった。ちびっ。うぇぇぇ。全然うまくない。どこが端麗だか辛口だか、俺にはさっぱり分からん。
「飲み慣れてないからよ。ほらほらユウさん、こちらの甘口を飲んでみたらどうかな。いけると思うよ」
酒を飲み慣れている6才児とはいったい……。はいはい、今度はスクナに注いでもらってちょいっ。味なんか全然分からない。というかまずい。デラマッズイ。太ったニワトリ並にまずい。
「どうしてこんなものをこのひひょはひはもふのこひょはあぁ?」
「ろれつが回ってないユウ、かわいいぃぃ」
「あはははは、もう顔が真っ赤だ、わはははは」
くてっ。
「「あ、落ちた?!」」
ということで、本日の俺の出番は完了である。そして例によってこういうときにエライことが起きるのである。
「予定調和なノだ」
農家の家の造りに良く似ている。昔アニメで見た豪農の家みたいだ。
「それ、なんて気になるノです?」
「やかましいよ」
部屋の隅にはなんと座布団が積んであり、それを各自勝手に持ち出して囲炉裏を囲んで座った。なかなかに良いクッションである。
「座布団があるじゃないか。これ2,3個売ってくれないかな?」
あるとこにはあるんだな、と思っていたらひとりの老人がやってきた。
「いやいや。みなさんお待たせしましたな。ワシがキスキというものジャ。イズナ、こちらの方たちはどなたジャな?」
「これひゃはじめまふて。俺がゆふです」
「がしがしがしがしがし」
「短い足で蹴るな!!」
「短くて悪かったな。ほら、その調子でしゃべれ」
あれ?
「失礼した。俺がユウだ。訳あっていまはこの国の太守になっている」
あ、調子が戻った。ウエモンのおかげか? 全然ありがたくはないから感謝なんかしないけど。
「そうでした……かぁ?? なんですって? ということは、オオクニ様はいったいどうされたので?」
「オオクニも訳あって、ツブツブ堂という会社の社長に就任している。まあ俺の太守は代行のようなものだ。ここが落ち着いたらまたオオクニが復帰することになっているから心配はいらない」
「そ、そう、そうでしたか。ここが落ち着くとはいったい? それより代理とはいえ、まさか太守様がこんなお若い方とは」
ヤマタノオロチ……じゃないキスキは、もう70才ぐらいの頭髪から髭まで真っ白な爺さんだった。対応は柔らかで、かつて若い娘を食べまくった猛龍のなごりはない。
「食べまくったわけではいのジャが」
「そうなのか?」
「ちょっとつまんだだけジャないか」
「それがいかんっての!!」
「だって、あの娘らはそろいもそろって佳人薄命でしてな」
「佳人はともかく薄命ってどういうことだ?」
「知りませぬか。美人は早死にするという意味ですジャよ」
「俺に敬語は不要だ、面倒くさい」
「それならそうしよう。こちらも楽ジャ」
「薄命の意味ぐらいは知ってるよ。聞きたいのはそういうことじゃなくて、その娘らがどうして早死にしたのかってことだ」
お前が食ったんだろ?
「ああ、そうか。ええと、長女は嫁に来て3日後に崖から転落した。ワシのために野草を取りに行ったときジャった。次女は一月後に流行病で急逝した。三女は食中毒で、四女は水虫の薬を買いに行って何者かに拉致された、五女は」
「待った待った待った。どこかで聞いたような話が混じってるぞ。そいつらは亡くなったのか? さらわれたのか? どちらにしてもそれ、ただの運の悪いおっさんじゃないのか?」
「そうジャよ? 結果的につまみ食いしたみたいになったのジャが、全員が3ヶ月と持たずにいなくなったのジャ。それでもワシは死後1年は喪に服して次の嫁は娶らないようにしていたのジャ」
神話と話が違うじゃないか。食べたことになってたぞ。お食事的な意味で。……確かに食べちゃいるんだろうけど、性的な意味では。
あの話。ヤマタノオロチに生け贄を出したことになっていたが、嫁にやったという意味だったのか。しかしその娘らは事故だの病気だので次々に亡くなって、最後のひとりになったときに。
「じゃあ、なんでスサノウに退治されたんだ?」
「あれはスサノウの私怨じゃよ。その末娘にスサノウが惚れたのじゃ」
「はぁ?!」
「ワシの嫁になることが決まっておったのに、奪ったのジャ。NTRジャ。けしからんであろう?」
「魔人がNTR(寝取られ)とか言うな」
「それで揉めに揉めてな。じゃあ、男らしく決闘で勝負を決めようということになったのじゃ」
「あれは決闘だったのか。それもひとりの女を巡っての」
「そうじゃよ。西部劇みたいで格好良いジャろ?」
良かねぇよ。それよりなんで西部劇を知ってんだ。
「それで負けて斬られちゃったのか」
「ああ、戦う前に景気づけに一杯と思って酒を飲んだのだが」
「ああ、それスサノウの策略なのに」
「それは後から知ったのジャ。そのときちょうど酒を差し入れてくれた村の衆がおってな。その酒のうまかったこと。ついつい、樽に7杯もお代わりをしてしまった。さすがにあのときは調子に乗りすぎたの。スサノウの策略だと知っていれば……飲んだけど」
「それでも飲んだのかよ!!」
「こいつは、根が好きなのだゾヨ。酒さえあれば幸せなやつだ」
「あ、女もいたほうがもっと幸せじゃよ」
うん、神話っていったいなんだろうね?
「それで酔わされてスサノウに斬られたという伝説ができたわけか」
「ほほぉ。お主はカミカクシであろう。その世界ではワシは伝説なのか。そこんとこくわしく」
「やかましいよ! それよりなんで俺がカミカクシだってことを知っているんだ?」
「ワシも魔王候補じゃからな。イズナには先を越されたが、いずれは魔王になってみせるのジャ。カミカクシだというのは、お主と話しているうちに分かったのジャよ」
「魔王にはそんな能力があるのか?」
「お主、NTRを知っておったではないか」
そこでかよ! こいつもあっちの世界をちょくちょく見てやがるな。ある意味、それが能力と言えなくもないが。
しかし、キスキは12才(にしか見えないはずの)俺に、尊大な態度は見せない。とても感じの良い爺さんなのである。乱暴もので退治されたという神話の魔物とは到底思えない。それもそのはずである。あれは、誰かの手によってねつ造された物語だったのだ。
こっちの世界での話だよ?
「キスキの態度は、ユウも見習うべきなノだ」
「やかましい。人には向き不向きがあるんだよ」
「キスキも若いころはやんちゃもしてたゾヨ。だからオロチなんて名前を付けられたゾヨ」
「それはワシの黒歴史ジャな。だがそのころのことを知るものは、もうイズナぐらいになってしまったなわっはっは」
「キスキ、もう手は空いたのか。土産にエチ国の酒を持ってきたゾヨ。久しぶりに今日は飲み明かそうじゃないか」
「イズナ、それどうやって持ってきた?!」
「ワシのアイテムボックスにはいつでも入っているゾヨ。ボトルキープと言うのだ。オウミも飲むだろ?」
ボトルキープってどこのスナックだよ。アイテムボックス……お前も持ってんのか?!
「ごごごごご相伴にあずかるノだずるずるずる」
「オウミ、よだれよだれ」
「じゅるじゅるジャ、じゅりゅりゅりゅりゅジャ」
「キスキ、お前もか!」
「それは嬉しいのジャ。イズモの酒はだいたいが甘口でな。それはそれでうまいのだが、たまには辛口の酒も飲みたくなるのジャ。エチ国の酒は端麗で辛口なのが良いな。コメもたくさん獲れるが、あそこは特に水が良いのジャろうなぁ」
「これで久しぶりの宴会といこうゾヨ」
と言って酒の入った徳利を4本テーブルに置いた。よっ、イズナ。太っ腹!
「だがその前に、俺は仕事の話をしたいのだが」
「まぁまぁ。久しぶりの再会ジャ、今日は仕事の話はなしにしようぞ」
「「「「おー!!!」」」」
またこのノリか。なんか、このままここに泊まってしまいそうな伊予柑。
「じゃがワシはまだ片付けが残っているから、しばらくはこの干物でもつまんでいてくれ。すぐに戻ってくる」
そう言って奥の作業場に戻ろうとした。あ、現場に戻るのならちょっとちょっと。
「片付けを手伝わせるから、現場を見せてもらえないだろうか?」
と言ってゼンシンに目配せをする。
「え? いや、それはちょっと、あまり他人に見せたくはないのジャが」
「あの、僕はゼンシンといいます。ミノ国で鉄を作っている者です。ぜひここの作業現場を見せてください」
「そうか。ゼンシンさんは鉄の専門家とな。それじゃ、お主だけは見てもいいことにしよう。後の人はすまんがここで待っていてくれ」
やはり機密漏洩を心配しているのではないか、と俺は思った。
「テレクサイだけだと思うゾヨ。やつはああ見えて照れ屋だからな」
「隠すつもりなら、わざわざ経験者のゼンシンを連れて行かないノだ」
あ、そうか。オウミもたまにはするどいことを言う。
そしてテーブルの上にはアジのみりん干しがどっさり置かれた。その1枚をかじってみた。
おっ、うまい。むちっ。アジのうまみにほのかな甘みが口に広がる。皆も手を伸ばして食べ始めた。うまいうまい。
「こうなると、ご飯とお茶が欲しいな」
「まくまくまく。うまいノだ。我もご飯が欲しいノだ。ちょっとタケウチまで行って貰ってくるノだ」
「頼んだ」
むっしむっしぶっちん。もしゃむしゃ。もう12月も半ば過ぎかぁ。俺がこの世界に来てから3ヶ月が経つんだなぁむしゃ。
「あはは、これ。おいしいねー。ぐびぐびぐび。この干物がまたこのお酒にすごく合うね」
「おい! ウエモン、お前はまだ酒は」
「ぐびぐびぐび。まあ、ユウさんもご一献。こんなのお酒の成分は少ないから水みたいなものよ、ほらほら、ぐぐっと」
「スクナ、お前もか……」
イズナが置いていった酒をこいつらは勝手に飲み始めた。何度も言うけど、この世界では酒を飲むのに年齢制限はない。だから12才の俺でも、6才のスクナでも……いいのかなぁ。
じゃあちょっとだけと言って、ウエモンにおちょこ1杯だけ注いでもらった。ちびっ。うぇぇぇ。全然うまくない。どこが端麗だか辛口だか、俺にはさっぱり分からん。
「飲み慣れてないからよ。ほらほらユウさん、こちらの甘口を飲んでみたらどうかな。いけると思うよ」
酒を飲み慣れている6才児とはいったい……。はいはい、今度はスクナに注いでもらってちょいっ。味なんか全然分からない。というかまずい。デラマッズイ。太ったニワトリ並にまずい。
「どうしてこんなものをこのひひょはひはもふのこひょはあぁ?」
「ろれつが回ってないユウ、かわいいぃぃ」
「あはははは、もう顔が真っ赤だ、わはははは」
くてっ。
「「あ、落ちた?!」」
ということで、本日の俺の出番は完了である。そして例によってこういうときにエライことが起きるのである。
「予定調和なノだ」
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