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第268話 スクナの疑問
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「イッコウが完全に戻ってくれば、少しはマシな決算書が書けるって、重鎮どもが言うものだから」
「それはおかしいでしょ?」
という前回のヒキから始まる。
「え? そうですか。どこがおかしいですか?」 シロトリさんが言う。
「別に間違ったことを言ってないよ?」 なにも考えてないナガタキ様も言う。
ふたりで言われると、ちょっと自信が揺らぐ私である。ユウさんみたいに自信満々にはなれないのだ。
あれ? なんか私、間違ったかしら? 的な思考に襲われる。ここは良く考えないといけないところね。
「決算書を少しでも良くするために、イッコウが減るのを避けたかったという重鎮の気持ちに偽りはないと思いますが?」
「うん、シロトリさん。その人たちがそう言ったのは事実なのでしょうね。だけど、それはおかしいのよ」
「と言いますと?」
「別にギャグは入ってないと思うよ?」
「そういう話じゃないから。その重鎮さんたちは、いわば不正行為ってやつをしていたのよね?」
「そ、そんなはっきり言わなくても」
「シロトリさん、どう言ったって同じでしょうが。つまり税金を払いたくないから、いままでは収入を少なく申告していた。しかし、ミノウ紙によってそれができなくなった。つまりヒダの収入はもっと多いということよね?」
「ま、まあ、そうなりますね」
「今年になって急に納税額が増えたのでは、去年までがいったいなんだったのか? と疑われることになる。それをイッコウの帰還率アップでカバーしようとした。ここまで合ってる?」
「ええ、はい、合ってます。その通りです。けしからんと言われるとそれには反論できません」
「それはけしからんけど、私が言うのはそういうことじゃなくて」
「では、それのなにか問題でしょうか?」
「重鎮さんたちは、今年の繁殖を犠牲にしてでも、イッコウを減らさないように画策した。結果はネコウサのおかげで失敗だったけどね。ということは、今年の収入を増やそうとしたということでしょう? 繁殖ができなければ売った分だけ数は減るけど、困るのは来年からですものね。今年に限れば1割ほどイッコウの数が減るのを防ぐことができる。つまり、在庫イッコウを減らさずに済む」
「はい、その通りですね」
「今年から急に納税額が増えるのを誤魔化すためなら、どうして収入を増やすようなことをするの?」
「「あれ?」」
「問題なのは、去年と今年の納税額の差でしょ?」
「そ、そうか。そうですね。それを誤魔化そうとして……逆のことをしたことになりますか」
「そうよ。その差をわざわざ大きくしてどうするのよ」
イッコウの帰還率を上げるということは、今年の収入が増えることである。それはより多くの税金を払うことでもある。それによって去年との差は更に広がってしまう。
それでは、誤魔化したことにならない。やっていることが真逆だ。
「あたくしにはそういう難しいことは良く分からないのでございますけれども」
ナガタキ様、どこかのコンペ―じゃないんだから!!
「つまり、誰かが嘘をついている、ということです」
「そういうことになっちゃうのか。私はそう説明されて、いつものことだと単純に信じてしまったけど、理屈に合わないのね」
「私がうっかりしていました。そう言われればつじつまが合わないですね。それに、イッコウ騒動で決算を先延ばしにするというのも、良く考えると不自然な話です」
「そう!! それよ、それ!! それもおかしいのよ」
「ということは……どういうこと?」
「もっと他の理由があるということよ。それがなにかは、グジョウに帰ってから重鎮たちをとっちめましょう」
「とっちめるんですか?!」
「いいわねぇ。とっちめるの、私は好きよ」
「なにも気づいてなかったくせに、そういうときだけは張り切るのね、ナガタキ様」
この世界の女は怖い定期。
「それは帰ってから考え……ああっ!! そうだ、そんなことよりも!!」
「どうしたのよスクナ。急に叫んだりして」
「ハタ坊、ユウさんとハルミさんたちって、ダンジョンに来ているのよね」
「もう来ている頃だろう。それがどうかしたゾヨ?」
「ダンジョンの中にいるのは、ネコウサの仲間でしょ?」
「全部じゃないけど、1/3ぐらいは仲間だモん。敵対する怖い魔物も多少はいるけど、それがどうしたのモん?」
「ハルミさんがダンジョンに入ったということは?!」
「「「あああっ!!!」」」
「ままままずいゾヨ。このままだとダンジョンの中の魔物が根絶やしにされるゾヨ」
「ふぁぁぁぁぁぁぁ!!! そんな、そんなこと、ダメだモん。やめて、お願い、誰かか止めてくれモん。お願いだモん!!!」
「すぐにダンジョンに入るわよ。みんな一緒に来て!」
「「「おー」」」
…… ……
「で、どうやって中に入るのかしら?」
「この本殿の横に、入り口にあったの同じ形の小型石像があるモん。それをここに来たときの要領でなでなでするモん」
…… ……
「ハタ坊、転送はできない?」
「ダンジョンの中には無理だ」
「あれ? 聞こえなかったモん? あの石像がキーアイテムで」
「イズナ、転送して」
「行ったことのないところには、魔法が使えないゾヨ」
「いや、だから、石像のアレをナニするだけ」
「ナガタキ様? シロトリさん?」
「「他に方法はないですよー」」
あぁあもう!! こんちくしお!!
(おいおい、それ、俺のやつ!?)
(お主の出番はもうしばらく先なノだ)
「それはおかしいでしょ?」
という前回のヒキから始まる。
「え? そうですか。どこがおかしいですか?」 シロトリさんが言う。
「別に間違ったことを言ってないよ?」 なにも考えてないナガタキ様も言う。
ふたりで言われると、ちょっと自信が揺らぐ私である。ユウさんみたいに自信満々にはなれないのだ。
あれ? なんか私、間違ったかしら? 的な思考に襲われる。ここは良く考えないといけないところね。
「決算書を少しでも良くするために、イッコウが減るのを避けたかったという重鎮の気持ちに偽りはないと思いますが?」
「うん、シロトリさん。その人たちがそう言ったのは事実なのでしょうね。だけど、それはおかしいのよ」
「と言いますと?」
「別にギャグは入ってないと思うよ?」
「そういう話じゃないから。その重鎮さんたちは、いわば不正行為ってやつをしていたのよね?」
「そ、そんなはっきり言わなくても」
「シロトリさん、どう言ったって同じでしょうが。つまり税金を払いたくないから、いままでは収入を少なく申告していた。しかし、ミノウ紙によってそれができなくなった。つまりヒダの収入はもっと多いということよね?」
「ま、まあ、そうなりますね」
「今年になって急に納税額が増えたのでは、去年までがいったいなんだったのか? と疑われることになる。それをイッコウの帰還率アップでカバーしようとした。ここまで合ってる?」
「ええ、はい、合ってます。その通りです。けしからんと言われるとそれには反論できません」
「それはけしからんけど、私が言うのはそういうことじゃなくて」
「では、それのなにか問題でしょうか?」
「重鎮さんたちは、今年の繁殖を犠牲にしてでも、イッコウを減らさないように画策した。結果はネコウサのおかげで失敗だったけどね。ということは、今年の収入を増やそうとしたということでしょう? 繁殖ができなければ売った分だけ数は減るけど、困るのは来年からですものね。今年に限れば1割ほどイッコウの数が減るのを防ぐことができる。つまり、在庫イッコウを減らさずに済む」
「はい、その通りですね」
「今年から急に納税額が増えるのを誤魔化すためなら、どうして収入を増やすようなことをするの?」
「「あれ?」」
「問題なのは、去年と今年の納税額の差でしょ?」
「そ、そうか。そうですね。それを誤魔化そうとして……逆のことをしたことになりますか」
「そうよ。その差をわざわざ大きくしてどうするのよ」
イッコウの帰還率を上げるということは、今年の収入が増えることである。それはより多くの税金を払うことでもある。それによって去年との差は更に広がってしまう。
それでは、誤魔化したことにならない。やっていることが真逆だ。
「あたくしにはそういう難しいことは良く分からないのでございますけれども」
ナガタキ様、どこかのコンペ―じゃないんだから!!
「つまり、誰かが嘘をついている、ということです」
「そういうことになっちゃうのか。私はそう説明されて、いつものことだと単純に信じてしまったけど、理屈に合わないのね」
「私がうっかりしていました。そう言われればつじつまが合わないですね。それに、イッコウ騒動で決算を先延ばしにするというのも、良く考えると不自然な話です」
「そう!! それよ、それ!! それもおかしいのよ」
「ということは……どういうこと?」
「もっと他の理由があるということよ。それがなにかは、グジョウに帰ってから重鎮たちをとっちめましょう」
「とっちめるんですか?!」
「いいわねぇ。とっちめるの、私は好きよ」
「なにも気づいてなかったくせに、そういうときだけは張り切るのね、ナガタキ様」
この世界の女は怖い定期。
「それは帰ってから考え……ああっ!! そうだ、そんなことよりも!!」
「どうしたのよスクナ。急に叫んだりして」
「ハタ坊、ユウさんとハルミさんたちって、ダンジョンに来ているのよね」
「もう来ている頃だろう。それがどうかしたゾヨ?」
「ダンジョンの中にいるのは、ネコウサの仲間でしょ?」
「全部じゃないけど、1/3ぐらいは仲間だモん。敵対する怖い魔物も多少はいるけど、それがどうしたのモん?」
「ハルミさんがダンジョンに入ったということは?!」
「「「あああっ!!!」」」
「ままままずいゾヨ。このままだとダンジョンの中の魔物が根絶やしにされるゾヨ」
「ふぁぁぁぁぁぁぁ!!! そんな、そんなこと、ダメだモん。やめて、お願い、誰かか止めてくれモん。お願いだモん!!!」
「すぐにダンジョンに入るわよ。みんな一緒に来て!」
「「「おー」」」
…… ……
「で、どうやって中に入るのかしら?」
「この本殿の横に、入り口にあったの同じ形の小型石像があるモん。それをここに来たときの要領でなでなでするモん」
…… ……
「ハタ坊、転送はできない?」
「ダンジョンの中には無理だ」
「あれ? 聞こえなかったモん? あの石像がキーアイテムで」
「イズナ、転送して」
「行ったことのないところには、魔法が使えないゾヨ」
「いや、だから、石像のアレをナニするだけ」
「ナガタキ様? シロトリさん?」
「「他に方法はないですよー」」
あぁあもう!! こんちくしお!!
(おいおい、それ、俺のやつ!?)
(お主の出番はもうしばらく先なノだ)
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