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第289話 それが目的か!
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「だからスクナさんは座敷牢に入れられているのです」
そんな286話からの続きを、いきなり言われても。
今回はヒダ国ハクサン家の事情である。
「私を使ってユウさんを脅迫するつもりなのね」
「とんでもありません。ただ、こちらにはあなたの大事な人がいるといって強気に出ていやいや言うことを聞かせようというだけですよ?」
「それ、立派な脅迫だから。不正行為だから。むしろ犯罪だから!」
「そうですね、はいはい。じゃ、そゆことで私は失礼おば」
「待ちなさいっての! そゆことで、じゃないでしょうが。まさかユウさんに犯罪の片棒を担がせようってこと?」
「とんでもありません! その2」
「その2はいいから、どういうことか説明しないさいよ」
「片棒じゃなくて、罪を犯すのはイズモ公だけですから」
「どういうことよ?」
「まだ分かりませんか。ユウさんには決算書の偽造をしてもらうのですよ」
「偽造って、ミノウ紙を使う以上そんなことできるわけが」
「ミノウ様はユウさんの眷属なのでしょう?」
「そう、ですね。それが?」
「それならば、ミノウ様に命令するだけです。他の者にはできなくても、この紙に魔法をかけた本人ならそのぐらいのこと簡単でしょう」
「そういうものなの?」
「たぶん」
「たぶんで言ってんのかい!」
「だ、だ、ダメなら魔法のかかってない紙をミノウ紙だと言って出してもらっても良いのです。ともかく、オオクニ様に提出する書類ができればいいのですから。オオクニ様だってイズモ公の提出書類なら信じるでしょ」
「バカなことを。そんなことをして来年からはどうするつもりなのよ!」
「来年以降もずっとしてもらいますよ?」
「それまで私をここに閉じ込めておくつもり?!」
「とんでもありません その3」
「3までいくのは珍しいわね」
「そうですね。この話では初ではないでしょうか」
「で、私なしでどうやってユウさんを脅迫するつもりなの?」
「1度犯罪に手を染めてしまえば、もう足を洗うことなどできないのですよ。今年不正をしてしまえば、来年以降も続けざるを得なくなるのです。今の私たちみたいに」
「犯罪に手を染めたのなら、足じゃなくて手を洗うべきじゃないの?」
「そういうことを言ってるんじゃありません!」
「あはははは、スクナっておもしろーい」
「ナガタキ様も同調しない!」
「ねぇ」
「な、なんですか」
「シロトリさんはそれを言うために、わざわざ私のところまで話をしにきたの?」
「いえ。余計なことまでずいぶんしゃべってしまいました。実は用件は1つしかなかったのですよ」
「ずいぶんたくさんあったようだけど。いったいどれが本命だったの?」
「ナガタキ様が、あなたとお友達になりたいと」
「……バカなの、その子」
「バカとはなんだ、バカとは。このやろ。ぺいっ」
「痛っ! 茶壺を投げやがった。このわがまま姫。仕返しだ、ばいんっ」
「あたたたた。だからって鉄製の茶瓶を投げるな!! 仕返しが大きすぎるとあれほど言ってるだろうが!」
「そういうことをしたかったのですよ。私はきっかけ作りのためのお話をすれば良かったのです」
「はぁ?!」
「この地では、ナガタキ様は皆に人々にかしずかれる存在です。小さい頃からハクサン家に君臨して、ずっとそういう立場を守って来られました。普通の子がするように、対等に友達と遊んだりげんかをしたり仲直りをしたり。そんな経験をしたことがありません。兄弟姉妹さえいないのです」
「そ、それは気の毒ね」
「だからナガタキ様はどうしたらスクナさんの気を引けるか、それをずっと考えておられました」
「普通に友達になって、と言えば良さそうなものなのに」
「ハクサン家の人間は、代々人たらしの一族です」
「ここでそれを自慢されても」
「つまりそれは、相手の資質を見抜く目を持っているということですよ」
「……」
「ナガタキ様は考えました。ハクサン家の当主として接している限り、スクナさんは絶対に心を開いてはくれないと」
「そ、そんなことは……あるかも知れない」
「それでもっと近しいキャラを演じたのです」
「どう見てもアレは素だったけどね」
「うん、私もそう思うきゃははは」
「そうですね。スクナさんの前でだけは、素のナガタキ様になれたのかも知れません。でもそのおかげで、ふたりはこんなに遠慮のない話ができる間柄になったではありませんか」
少しは遠慮してもらいたいものだが。あぁ、茶壺の当たったおでこが痛い。
「ナガタキ様はアレでも加減されていたのですよ」
「そ、そうかしら」
「ええ、物が当たった回数はスクナ様のほうが3割ほど少ないはずです」
「あっ!?」
「それに当たったものの硬さというか大きさまで考えれば、スクナさんが受けたダメージはナガタキ様の半分以下だと思います」
「ま、まさか、それをわざとやっていたというの?!」
「その通りです。わざと負けていたのですよ。ケンカで怨みを持つのは必ず負けたほうです。小さなケンカほど怨みは強くなるものです。ナガタキ様はそれをよくご存じなのですよ」
「ちょっと、あんた!!」
「な、な、なんです……、なによっ!」
「丁寧語で言いかけて途中で修正するな! これからはため口で話せ。それから物を投げるのは禁止する。それと」
「いろいろ注文がうるさいわね。まだなにかあるの?」
「私が姉だからね」
「はい?」
「私は前の世界で20代後半の女なのよ。あんたはその半分も生きていない。だから私がお姉さん。分かった?!」
「おばはん?」
「どついたろか!!」
「きゃははははは。スクナ面白い。いいわよ。私が妹ね。じゃあ、お姉ちゃんって呼ぶわよ?」
「い、いいわよ、それで」
「じゃ、お姉ちゃんは私をどう呼んでくれるの?」
「ナガタキで」
「そのまんまじゃないの!? もっと愛称らしくしてよ」
「わがままねぇ。じゃあ、タッキーで」
「&翼って弟ができそうですね」
「シロトリさんは茶化さないで!」
「スクナさん、ありがとうございます。これで、ナガタキ様に良いお友達ができました」
「まあ、それはいいわよ。じゃ、ここから出してくれるわね」
「あ、それは無理きゃはははは」
「なんでよ!!」
「スクナさんはイズモ公の伴侶になられる方でしょ?」
「は、はぁ?!」 なんでいきなりそんな話になるのよ。あぁ、どきどきした。顔が真っ赤になってないかしら。
「イズモ公の奥様なら、ハクサン家当主のご友人としてふさわしい格式があります。年齢も近くて申し分ありません。その方と姉妹のちぎりを結ばれたことは僥倖であります」
「それなら、ここから出してくれていいでしょ?」
「さきほど申し上げましたが、スクナさんを解放するのは、イズモ公が私たちに屈服……賛同していただいたあとです」
「すごい言い方だことで。でもそこは譲らないのね」
「ええ、スクナさんと我らが当主がお友達になり、その上にイズモ公をこちら側に引き込みたいのですよ。イズモ公の才覚があればハクサン家再興の道さえ……」
「そういうことだったのか、シロトリ。それがお前らの一番の目的か」
「ユ、ユウさん!!!」
「スクナ、よく話を引き出してくれたな、ハタ坊をホッカイ国に使わせて調べてもらった。俺が思った通り、カントはあのケントの弟だそうだ」
「こ、これは。ど、どういう、ことですか? どうやってここに?」
「それはあたしさ」
「あ、あなたは確かハタ坊様。でも魔王を含めて全部ホシミヤに置いてきたはずなのに……」
「そこのスクナの機転だよ。カントって魔人が来る直前にユウの中に隠れたんだ。だから拘束されずに済んだ。改めまして。私はアイヅの魔人・ハタ坊だ。ダンジョンの専門家だよ」
「ちょっとシロトリ。この人がいたこと忘れてたでしょ!」
「それはナガタキ様だって同じでしょう! ところで、イズモ公の眷属は3人ではなかったのですか?」
「魔王だけなら3人だわね」
「「魔王だけで3人!?」」
「あら。それも知らなかったの? ミノウにオウミ。それにホッカイ国のカンキチ」
「え? だったらイズナ様はいったい?」
「イズナはウエモンの眷属よ。あ、ウエモンってタケウチ工房の社員ね。ユウの部下みたいなものかしら」
正確には会社が違うけど、ユウさんの指示で働いているからそのようなものね。
「それではイズナ様だって眷属みたいなものでは」
「まあ、そうね。イズナもこの男には頭が上がらないから。その上にあたしがいるのよ」
「「ひえぇぇぇ」」
「だがいま使えるのはこのハタ坊しかいない。俺は、ダンジョンであいつらを一瞬で拘束したカントの力が怖かったんだよ。酔っていたとはいえ魔王たち3人が一網打尽だ。そいつにハタ坊だけで立ち向かえるか不安だったんだ。だからやつの情報が欲しかった」
「ああ、それであのとき私に調べろっと」
「そう。スクナのお手柄だ。いろいろ話を引き出してくれて助かった。その報告を聞いているうちに、俺はケントのことを思い出した。どこか似ている気がしたんだ。それでハタ坊にホッカイ国まで飛んで調べてもらったらビンゴだった」
「それでもカントさんが怖いことに変わりはないのでは?」
「確かに兄がこちら側だからといって勝てるとは限らない。だがそれは争いになった場合の話だ。ハタ坊がケントから聞いてきたことによると、カントは生粋のサカイの商人だということだった」
「サカイの商人だから、どうだというのよ!」
「ナガタキは子供だから分からないのだよ。サカイの商人ってのはな」
「「商人ってのは?」」
「金で動く」
「か、金、金で。動くってまさか」
「もう買収済みだよ?」
「「はぁぁぁ?!」」
「俺たちへの狼藉を不問にしてやった上で、グースとも相談してカンサイ国でのソロバンの独占販売権を渡してやった。ふたつ返事で俺に協力するってさ」
「そ、そんな卑怯なことを!!」
「なにが卑怯だ。スクナまで人質にとって俺を悪の道に誘い込もうとしやがったくせに。しかもカントは偽装決算のことは知らなかったぞ」
「そ、それは、その……」
「お前らはイッコウの取り引きのために、イリヒメに紹介されたカントと販売契約を結んだだけだろ。あの裏庭にカントを呼んで俺たちを拘束したのは、カントからすればアフターサービスだ。契約の範囲内じゃない」
「そ、それも、その……」
「カントは売れ筋商品を仕入れることができる。こっちは販路が作れる。いいことずくめじゃないか」
「そっちは良くてもこっちはわぁぁぁぁぁぁん」
「もう泣いたフリには騙されねぇよ!」
「ちっ」
「最初からこいつらとは、どうも気が合わないと思ってたんだ。ちっとも本当のことを言いやがれへん」
そういえば、ユウさんはずっとタッキーにはきつい言い方をしていた。そのときにはもう、気づいていたのかしら。
「ウソを言われるということは、事実を曲げられるということだ。事実を元に理屈を組み立てるカイゼン屋にとっては、ものすごく迷惑なことなんだよ。おかげで大恥かいちゃったじゃねぇかこんちくしお」
いや、それはあなたの暴走じゃないかしら。
「あら。簡単に騙されるなんて人生修養が足りませんわよ」
「やかましいわ! 10才児が言うな!」
「10才児に騙される40才ぷぷぷっ」
「こ、こ、このやろ! こうしてくれ痛たたたた。ちょっとスクナなんで止める。ってか止めるのに腕を後ろにねじるの止めて痛たた」
「ユウさんの力じゃ勝てませんよ」
「お、俺がこんな小娘に……勝てないかも知れないけど!」
「それより、この陰謀をどうしますか?」
「そんなもの簡単だろ」
「まあ、こうなってしまえば、話は簡単になりましたね」
「「それっていったいどういう?」」
「シロトリ、ナガタキ。決まってんだろ。悪事は発覚した。そっちの戦力は骨抜きにした。こちらには魔王に準じる魔力を持つハタ坊がいる。お前らの勝ち目はもうないんだよ。大人しくお縄につきやがれ」
「お縄につけとか、銭形平次の見過ぎじゃありませんか」
「おっさん臭が漂ってるわよぷぷぷっ」
「こいつら釜ゆでの刑にしてやる!」
そんな286話からの続きを、いきなり言われても。
今回はヒダ国ハクサン家の事情である。
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「とんでもありません。ただ、こちらにはあなたの大事な人がいるといって強気に出ていやいや言うことを聞かせようというだけですよ?」
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「そうですね、はいはい。じゃ、そゆことで私は失礼おば」
「待ちなさいっての! そゆことで、じゃないでしょうが。まさかユウさんに犯罪の片棒を担がせようってこと?」
「とんでもありません! その2」
「その2はいいから、どういうことか説明しないさいよ」
「片棒じゃなくて、罪を犯すのはイズモ公だけですから」
「どういうことよ?」
「まだ分かりませんか。ユウさんには決算書の偽造をしてもらうのですよ」
「偽造って、ミノウ紙を使う以上そんなことできるわけが」
「ミノウ様はユウさんの眷属なのでしょう?」
「そう、ですね。それが?」
「それならば、ミノウ様に命令するだけです。他の者にはできなくても、この紙に魔法をかけた本人ならそのぐらいのこと簡単でしょう」
「そういうものなの?」
「たぶん」
「たぶんで言ってんのかい!」
「だ、だ、ダメなら魔法のかかってない紙をミノウ紙だと言って出してもらっても良いのです。ともかく、オオクニ様に提出する書類ができればいいのですから。オオクニ様だってイズモ公の提出書類なら信じるでしょ」
「バカなことを。そんなことをして来年からはどうするつもりなのよ!」
「来年以降もずっとしてもらいますよ?」
「それまで私をここに閉じ込めておくつもり?!」
「とんでもありません その3」
「3までいくのは珍しいわね」
「そうですね。この話では初ではないでしょうか」
「で、私なしでどうやってユウさんを脅迫するつもりなの?」
「1度犯罪に手を染めてしまえば、もう足を洗うことなどできないのですよ。今年不正をしてしまえば、来年以降も続けざるを得なくなるのです。今の私たちみたいに」
「犯罪に手を染めたのなら、足じゃなくて手を洗うべきじゃないの?」
「そういうことを言ってるんじゃありません!」
「あはははは、スクナっておもしろーい」
「ナガタキ様も同調しない!」
「ねぇ」
「な、なんですか」
「シロトリさんはそれを言うために、わざわざ私のところまで話をしにきたの?」
「いえ。余計なことまでずいぶんしゃべってしまいました。実は用件は1つしかなかったのですよ」
「ずいぶんたくさんあったようだけど。いったいどれが本命だったの?」
「ナガタキ様が、あなたとお友達になりたいと」
「……バカなの、その子」
「バカとはなんだ、バカとは。このやろ。ぺいっ」
「痛っ! 茶壺を投げやがった。このわがまま姫。仕返しだ、ばいんっ」
「あたたたた。だからって鉄製の茶瓶を投げるな!! 仕返しが大きすぎるとあれほど言ってるだろうが!」
「そういうことをしたかったのですよ。私はきっかけ作りのためのお話をすれば良かったのです」
「はぁ?!」
「この地では、ナガタキ様は皆に人々にかしずかれる存在です。小さい頃からハクサン家に君臨して、ずっとそういう立場を守って来られました。普通の子がするように、対等に友達と遊んだりげんかをしたり仲直りをしたり。そんな経験をしたことがありません。兄弟姉妹さえいないのです」
「そ、それは気の毒ね」
「だからナガタキ様はどうしたらスクナさんの気を引けるか、それをずっと考えておられました」
「普通に友達になって、と言えば良さそうなものなのに」
「ハクサン家の人間は、代々人たらしの一族です」
「ここでそれを自慢されても」
「つまりそれは、相手の資質を見抜く目を持っているということですよ」
「……」
「ナガタキ様は考えました。ハクサン家の当主として接している限り、スクナさんは絶対に心を開いてはくれないと」
「そ、そんなことは……あるかも知れない」
「それでもっと近しいキャラを演じたのです」
「どう見てもアレは素だったけどね」
「うん、私もそう思うきゃははは」
「そうですね。スクナさんの前でだけは、素のナガタキ様になれたのかも知れません。でもそのおかげで、ふたりはこんなに遠慮のない話ができる間柄になったではありませんか」
少しは遠慮してもらいたいものだが。あぁ、茶壺の当たったおでこが痛い。
「ナガタキ様はアレでも加減されていたのですよ」
「そ、そうかしら」
「ええ、物が当たった回数はスクナ様のほうが3割ほど少ないはずです」
「あっ!?」
「それに当たったものの硬さというか大きさまで考えれば、スクナさんが受けたダメージはナガタキ様の半分以下だと思います」
「ま、まさか、それをわざとやっていたというの?!」
「その通りです。わざと負けていたのですよ。ケンカで怨みを持つのは必ず負けたほうです。小さなケンカほど怨みは強くなるものです。ナガタキ様はそれをよくご存じなのですよ」
「ちょっと、あんた!!」
「な、な、なんです……、なによっ!」
「丁寧語で言いかけて途中で修正するな! これからはため口で話せ。それから物を投げるのは禁止する。それと」
「いろいろ注文がうるさいわね。まだなにかあるの?」
「私が姉だからね」
「はい?」
「私は前の世界で20代後半の女なのよ。あんたはその半分も生きていない。だから私がお姉さん。分かった?!」
「おばはん?」
「どついたろか!!」
「きゃははははは。スクナ面白い。いいわよ。私が妹ね。じゃあ、お姉ちゃんって呼ぶわよ?」
「い、いいわよ、それで」
「じゃ、お姉ちゃんは私をどう呼んでくれるの?」
「ナガタキで」
「そのまんまじゃないの!? もっと愛称らしくしてよ」
「わがままねぇ。じゃあ、タッキーで」
「&翼って弟ができそうですね」
「シロトリさんは茶化さないで!」
「スクナさん、ありがとうございます。これで、ナガタキ様に良いお友達ができました」
「まあ、それはいいわよ。じゃ、ここから出してくれるわね」
「あ、それは無理きゃはははは」
「なんでよ!!」
「スクナさんはイズモ公の伴侶になられる方でしょ?」
「は、はぁ?!」 なんでいきなりそんな話になるのよ。あぁ、どきどきした。顔が真っ赤になってないかしら。
「イズモ公の奥様なら、ハクサン家当主のご友人としてふさわしい格式があります。年齢も近くて申し分ありません。その方と姉妹のちぎりを結ばれたことは僥倖であります」
「それなら、ここから出してくれていいでしょ?」
「さきほど申し上げましたが、スクナさんを解放するのは、イズモ公が私たちに屈服……賛同していただいたあとです」
「すごい言い方だことで。でもそこは譲らないのね」
「ええ、スクナさんと我らが当主がお友達になり、その上にイズモ公をこちら側に引き込みたいのですよ。イズモ公の才覚があればハクサン家再興の道さえ……」
「そういうことだったのか、シロトリ。それがお前らの一番の目的か」
「ユ、ユウさん!!!」
「スクナ、よく話を引き出してくれたな、ハタ坊をホッカイ国に使わせて調べてもらった。俺が思った通り、カントはあのケントの弟だそうだ」
「こ、これは。ど、どういう、ことですか? どうやってここに?」
「それはあたしさ」
「あ、あなたは確かハタ坊様。でも魔王を含めて全部ホシミヤに置いてきたはずなのに……」
「そこのスクナの機転だよ。カントって魔人が来る直前にユウの中に隠れたんだ。だから拘束されずに済んだ。改めまして。私はアイヅの魔人・ハタ坊だ。ダンジョンの専門家だよ」
「ちょっとシロトリ。この人がいたこと忘れてたでしょ!」
「それはナガタキ様だって同じでしょう! ところで、イズモ公の眷属は3人ではなかったのですか?」
「魔王だけなら3人だわね」
「「魔王だけで3人!?」」
「あら。それも知らなかったの? ミノウにオウミ。それにホッカイ国のカンキチ」
「え? だったらイズナ様はいったい?」
「イズナはウエモンの眷属よ。あ、ウエモンってタケウチ工房の社員ね。ユウの部下みたいなものかしら」
正確には会社が違うけど、ユウさんの指示で働いているからそのようなものね。
「それではイズナ様だって眷属みたいなものでは」
「まあ、そうね。イズナもこの男には頭が上がらないから。その上にあたしがいるのよ」
「「ひえぇぇぇ」」
「だがいま使えるのはこのハタ坊しかいない。俺は、ダンジョンであいつらを一瞬で拘束したカントの力が怖かったんだよ。酔っていたとはいえ魔王たち3人が一網打尽だ。そいつにハタ坊だけで立ち向かえるか不安だったんだ。だからやつの情報が欲しかった」
「ああ、それであのとき私に調べろっと」
「そう。スクナのお手柄だ。いろいろ話を引き出してくれて助かった。その報告を聞いているうちに、俺はケントのことを思い出した。どこか似ている気がしたんだ。それでハタ坊にホッカイ国まで飛んで調べてもらったらビンゴだった」
「それでもカントさんが怖いことに変わりはないのでは?」
「確かに兄がこちら側だからといって勝てるとは限らない。だがそれは争いになった場合の話だ。ハタ坊がケントから聞いてきたことによると、カントは生粋のサカイの商人だということだった」
「サカイの商人だから、どうだというのよ!」
「ナガタキは子供だから分からないのだよ。サカイの商人ってのはな」
「「商人ってのは?」」
「金で動く」
「か、金、金で。動くってまさか」
「もう買収済みだよ?」
「「はぁぁぁ?!」」
「俺たちへの狼藉を不問にしてやった上で、グースとも相談してカンサイ国でのソロバンの独占販売権を渡してやった。ふたつ返事で俺に協力するってさ」
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「なにが卑怯だ。スクナまで人質にとって俺を悪の道に誘い込もうとしやがったくせに。しかもカントは偽装決算のことは知らなかったぞ」
「そ、それは、その……」
「お前らはイッコウの取り引きのために、イリヒメに紹介されたカントと販売契約を結んだだけだろ。あの裏庭にカントを呼んで俺たちを拘束したのは、カントからすればアフターサービスだ。契約の範囲内じゃない」
「そ、それも、その……」
「カントは売れ筋商品を仕入れることができる。こっちは販路が作れる。いいことずくめじゃないか」
「そっちは良くてもこっちはわぁぁぁぁぁぁん」
「もう泣いたフリには騙されねぇよ!」
「ちっ」
「最初からこいつらとは、どうも気が合わないと思ってたんだ。ちっとも本当のことを言いやがれへん」
そういえば、ユウさんはずっとタッキーにはきつい言い方をしていた。そのときにはもう、気づいていたのかしら。
「ウソを言われるということは、事実を曲げられるということだ。事実を元に理屈を組み立てるカイゼン屋にとっては、ものすごく迷惑なことなんだよ。おかげで大恥かいちゃったじゃねぇかこんちくしお」
いや、それはあなたの暴走じゃないかしら。
「あら。簡単に騙されるなんて人生修養が足りませんわよ」
「やかましいわ! 10才児が言うな!」
「10才児に騙される40才ぷぷぷっ」
「こ、こ、このやろ! こうしてくれ痛たたたた。ちょっとスクナなんで止める。ってか止めるのに腕を後ろにねじるの止めて痛たた」
「ユウさんの力じゃ勝てませんよ」
「お、俺がこんな小娘に……勝てないかも知れないけど!」
「それより、この陰謀をどうしますか?」
「そんなもの簡単だろ」
「まあ、こうなってしまえば、話は簡単になりましたね」
「「それっていったいどういう?」」
「シロトリ、ナガタキ。決まってんだろ。悪事は発覚した。そっちの戦力は骨抜きにした。こちらには魔王に準じる魔力を持つハタ坊がいる。お前らの勝ち目はもうないんだよ。大人しくお縄につきやがれ」
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