298 / 336
第298話 うろん部屋
しおりを挟む
「前話では、本筋からだいぶ離れてしまったわけだが」
「ハルミのエロシーンは定期的に出さないと、アクセスが稼げないノだ」
「うっぎゃぁぁぁぁぁ!!」
野生の雄叫びね。まだ出てないから大丈夫。
ここからはいつもの解説風に。ちょっとだけホシミヤについてのお話から。
ホシミヤの地名は、もともとこの地に勢力を張ったホシミヤ氏の名前をとったものである。
ホシミヤ氏が没落したあと、地元の有志によって神社が建てられた。それがいまに残るホシミヤ神社である。
そのホシミヤ神社の下にダンジョンを建設したのは、比叡山の僧侶・タカミツであった。
フジワラ氏の血を引くタカミツは仏教に帰依し、魔物退治のスキルを身につけていた。神仏戦争のときには、そのスキルで大いに神側(オオクニたち)を苦しめた。タカミツが仏法をかけた弓矢は、神さえも射殺すことができたからである。
「タカミツって物騒なやつだな」
「あの頃は戦争だったから仕方あるまい。いまはセキのほうにいる。普通の修行僧だぞ」
「セキってすぐそこじゃないか」
「そうだ。会いに行くなら紹介状を書いてやるが」
「いや、いらないいらない。それよりも、そのタカミツの作ったダンジョンを、カネマルはどうやって見つけたんだ?」
「見つけたわけではない。タカミツに依頼されたのだ」
「依頼された?」
「入り口にキーアイテムが欲しいというのでな、あの道祖神を彫ってやったのだ。お前らも見ただろ?」
あんただったんかい!! 怨み重なるあの像を彫った張本人がここにいやがるとは!!
「道理で、精密に彫ってあると思ったよ」
「タカミツはこちらに戻ってきたから知り合ったのだが、なかなか良い男でな、よく酒をおごってもらったものだ。ところでなんか急に寒くなったのだが?」
ぷんぷんぷん。凍らせてやる!
どこの司馬深雪ヨ。
「気にするな。タカミツはどうしてダンジョンなんか作ろうと思ったんだろう?」
「もともと、この場所には洞窟が点在していたのだ。タカミツはそこを修行の場とするために、点在していた洞窟をいくつか繋げてひとつのダンジョンにしたのだ」
「それはそれですごい力だな」
「仏法ならではの事象干渉力だ。この国の神々が太刀打ちできなかったのも頷けるであろう」
「そんなことぐらいなら、我でもできるヨ?」
「ああ、魔王なら可能だろうな」
「ミノウってそんなすごいやつなのか」
「当たり前だヨ。そもそもお主は我を軽く見過ぎているヨ」
「そうか、それはすまなかった。ほら、ポテチ食べていいから」
「それはもともと我が出したものだヨ。食べるけどポリポリ」
軽く見ているわけではないと思う。可愛いがっているのよ。でも、ミノウの場合、修行のためって理由でダンジョン作ったりはしないわよね。
「タカミツはいったいなんの修行をしていたんだ?」
「入ったのなら知っているだろう。あそこは昔から弱い魔物がたくさん集まる場所なのだよ。奴はもともと魔物退治のエキスパートだ。その力を強めるために、仏法を使った新しい修法を開発していたのだ」
「仏法と修法の融合ってことか」
「そうだ。仏法はその成り立ちから、魔法より修法に近いからな」
「ボクらの天敵だモん」
「おや。その可愛らしい姿は、サルトラヘビではないか」
「いえ、この子はネコウサイタチです。私の眷属です」
「ネコウサイタチか。そういえばそういう名前もあったな。スクナと言ったな、お主は良いものを眷属にしたぞ」
「えっへんモん」
「え? 良いものですか?」
「まあ、それはそのうち分かるであろう。当時は、そのサルトラ……ネコウサイタチもたくさんいたのだ。魔物の約7割はネコウサイタチだった」
「ええっ!? そうだったモん?」
「念のために言っておくが、減ったのはタカミツとは無関係だぞ。さほど悪さをするわけではない魔物を、むやみやたらと退治するようなやつではない。頭を撫でたりして遊んでいたこともあった。しかしある日、大事件が起こったのだ」
「大事件とは?」
「地震だよ。ついこの間もあっただろう。あれはオンタケの噴火だったが、あれよりも数100倍は強い地震だった。しかも何度も何度も繰り返し揺れやがってな」
「それを思い出させるでないヨ。あれは我にもトラウマヨ」
「ミノウでも被害を防げなかったのか」
「噴火と違って地震はいきなり来るヨ。我の幸運力でもこの土地の持つ因縁にはかなわない。しかもあのときは、その前にひどい地震があって」
「ああ、そうだったな。その被害がようやく落ち着き始めた頃に、もっとすごい揺れがやってきた」
「普通は大きな地震があれば、その余震はそれよりは小さいものなのだヨ。それがあのときだけは」
「2回目が一番大きかったな。油断していたのはお前だけじゃない。この国の連中もみんなそう思っていた。俺もだ。その油断の上に、この国史上最大の地震が起こったんだ」
「そんなことがあったのか」
「このダンジョンも無事では済まなかった。床に亀裂が走ったあと、あちこちで底が抜けたんだ」
「底が抜けた、ってどこかに落ちたってことか?」
「おそらくはな。俺はたまたま外にいて現場を見ていない。おかげで助かったのだが、中にいた魔物たちは壁や岩にへばりついていたごく少数を除いて壊滅した」
「うぅぅぅぅモん」
「ウサネコ。こっちにいらっしゃい」 ぎゅっ。
「あの、僕の名前?」
「あああ、ゴメン! きゅぅぅぅぅっ」
「強く抱きしめて誤魔化きゅぅぅぅ、強すぎるモんモんモん!!」
「そうか、そこにはそいつのご先祖様もいただろうな。残念だが、落ちたものがどうなったのかは分からない。底の深さを測ることは、タカミツにもできなかったそうだ」
「いまはそんな形跡はなかったようだが?」
「床はのちにタカミツが少しずつ修復したのだ。もう二度とあんなことがないように、落ちなかった大岩同士に橋を渡すようにして、二重三重に法力をかけ床を張り直した。その上に、俺も虚空蔵菩薩を彫って念入りに修法をかけて奉納した。そのおかげか、それ以降も地震は何度もあったがいまのところびくともしていないな」
「なんで虚空蔵菩薩だったんだ?」
「虚空棒菩薩は、智恵と慈悲の仏だからな。あのクウカイを導いたことで有名だ」
「智恵でこの地が収まるとでも?」
「我らに足りないものは自然災害に対する智恵であり、足りない分は仏にすがるしかあるまい」
「仏の智恵と慈悲を、神社の地ですがるのか」
「そういうことだ。ここは神仏習合の聖地だけでなく、魔物も人も仲良く暮らせる土地だ。万物習合の地だよ」
「なるほどね」
「ここは自然にできたものじゃなかったのですね」
「自然を利用して作った、というべきだろうな。半人工的ダンジョンだ。人の世で言うところの里山に近いものだ」
「里山か。それなら魔物がたくさんいる、というのも分かるな」
「ユウさん、どういうこと?」
「人が農業や林業をやるために作った人工林のことを、里山と一般的に言う。そこは実に多種多様な生き物が暮らせる場所なんだよ。深山幽谷で生きられる生き物はごく少数だ。街中では人しか暮らせない。里山はその中間にあって、生き物のるつぼとも言うべき存在だ。生物多様性の象徴のような場所だ。なるほど、確かに万物習合だな」
「その通りだ。お主は話が分かるやつだな。タカミツの工事が終わってしばらくしてから、俺がここの存在を見つけたんだ」
「ここの存在?」
「お前らがいるこの場所だよ。どうしてできたのかは分からんが、ここは不思議な場所でな。時間の進みが緩やかで、ここに長くいると時間の感覚が狂ってくる。それに魔力も修法もかかりにくい。自由に使えるのは法力のみだ。俺はここをうろんなページと呼んで」
「待った待った待った。それはちょっとまずい。やめておけ!」
「どうしてだ? 別に良いであろう?」
「いやいやいや、いくらファンでもそれは止めたほうがいい。せめてうろんな部屋にするべきだ」
「そ、そうか。じゃ、そうするか」
それ、とある人の有名サイト名だからね。知らない人はぐぐってね。
そこまで言うのかヨ?
「法力だけが使えるってのは卑怯なノだ」
「いや、卑怯って言われても。だが、お前ほどになれば使えないことはないだろ。魔力消費は激しいだろうけどな」
消費が激しい? だから魔王が水晶に魔力を注いだときに、魔力酔いを起こしたということかしら。でもそれならどうしてネコウサの力は強化されているのか、疑問だわ。ユウさんの魔法も……あれは規格外だから参考にはならないかな。
「考えるほどにここは不思議なところだ。もともと神社だったのだから神道系の土地だったのだろう。いわば神々のおわす土地だ。そこにかつては敵対していた法力僧がやってきてダンジョンを作った。そしたら魔物がたくさん住める場所になった」
「そうか。考えたことはなかったが、そういうことになるな」
「魔力も修法も使いにくい場所だから、強力な魔力を持つ魔物がいないのかも知れないな。ここではタランチュラも魔ネコも、戦闘力にたいした違いがないのではないか」
「なるほど。そうかもしれない」
「力の差が少なければ、物をいうのは数だということになる。個人技に頼る種は住みにくいだろう。ここで増えるのは群れで暮らす魔物がメインということになる」
「その通りだと思うが、お主はいつもそんなことを考えているのか?」
「あ、すまん。これが性分なもので。それで、ここにはあのキーアイテムを使わない限り来られないのか?」
「ああ、そのはずだ」
「そういえば私、不思議に思ってたのだけど」
「なにがだ?」
「ここにはどうしてネコウサの生成物がないのかしら?」
「なんだ生成物って?」
「それはボクのうんこだモん」
「あーあー、あれか。魔物たちがときどき体内に溜まった好素を排出している結晶か。あそこはこことは別のうろんなペー……部屋だ」
「ここの他にも、うろん部屋があるのか?」
「俺が見つけただけで7つはあるぞ。ネコウサイタチのトイレはそのうちのひとつだ。あそこはちょっと特殊でな、あのダンジョンと直接繋がっている」
「繋がっている? とは?」
「いや、そのままの意味だが。ダンジョンに入り口があるんだ。そのネコウサ? もそこから出入りしているのだろう?」
「そうだモん」
ってこととはなに、私があんな苦労しなくてもあそこにはそれぞれで行けたってこと?
「なにを苦労したのかは知らんが、その通りだが?」
わ、わ、わ、私の苦労って、私の立場って、私のアレのナニはいったいどんなソレだったのよ! ナニよ、なんなのよ! ネコウサ!
「ももももモん?」
「あんた知ってたんでしょ?」
「なななななにをだモん。スクナ怖い」
「あ、ごめん。ダンジョンからあの裏庭に直接行けるって」
「ボクらはいつも通ってるモん。だけど、サイズが小さいからスクナが通れるかどうかは知らないモん」
「あ……そうか。あのとき、ネコウサは直接行けるって言ったわね」
「言ったモん」
「そのとき、気づくべきだったわね、スク姉あははははは」
「タッキー。まさかあんた!?」
「さすがにそれは分からないよ、スク姉。だけど、知ってても黙ってたと思うけどきゃはははは」
「姉妹の縁を切るぞ!」
「あぁん、ごめんなさい、お姉様ぁぁぁ」
つまり。あのダンジョンからネコウサの生成物のあるうろん部屋には、いちいち入り口まで戻らなくても簡単に行けたのだ。私たちは行けないと思い込んでいただけだったのだこんちくしおぉぉぉ!!!
最近、スクナのしおが多いノだ?
魔王を漬物にしてやりたい。
八つ当たりは止すノだ!!
「ハルミのエロシーンは定期的に出さないと、アクセスが稼げないノだ」
「うっぎゃぁぁぁぁぁ!!」
野生の雄叫びね。まだ出てないから大丈夫。
ここからはいつもの解説風に。ちょっとだけホシミヤについてのお話から。
ホシミヤの地名は、もともとこの地に勢力を張ったホシミヤ氏の名前をとったものである。
ホシミヤ氏が没落したあと、地元の有志によって神社が建てられた。それがいまに残るホシミヤ神社である。
そのホシミヤ神社の下にダンジョンを建設したのは、比叡山の僧侶・タカミツであった。
フジワラ氏の血を引くタカミツは仏教に帰依し、魔物退治のスキルを身につけていた。神仏戦争のときには、そのスキルで大いに神側(オオクニたち)を苦しめた。タカミツが仏法をかけた弓矢は、神さえも射殺すことができたからである。
「タカミツって物騒なやつだな」
「あの頃は戦争だったから仕方あるまい。いまはセキのほうにいる。普通の修行僧だぞ」
「セキってすぐそこじゃないか」
「そうだ。会いに行くなら紹介状を書いてやるが」
「いや、いらないいらない。それよりも、そのタカミツの作ったダンジョンを、カネマルはどうやって見つけたんだ?」
「見つけたわけではない。タカミツに依頼されたのだ」
「依頼された?」
「入り口にキーアイテムが欲しいというのでな、あの道祖神を彫ってやったのだ。お前らも見ただろ?」
あんただったんかい!! 怨み重なるあの像を彫った張本人がここにいやがるとは!!
「道理で、精密に彫ってあると思ったよ」
「タカミツはこちらに戻ってきたから知り合ったのだが、なかなか良い男でな、よく酒をおごってもらったものだ。ところでなんか急に寒くなったのだが?」
ぷんぷんぷん。凍らせてやる!
どこの司馬深雪ヨ。
「気にするな。タカミツはどうしてダンジョンなんか作ろうと思ったんだろう?」
「もともと、この場所には洞窟が点在していたのだ。タカミツはそこを修行の場とするために、点在していた洞窟をいくつか繋げてひとつのダンジョンにしたのだ」
「それはそれですごい力だな」
「仏法ならではの事象干渉力だ。この国の神々が太刀打ちできなかったのも頷けるであろう」
「そんなことぐらいなら、我でもできるヨ?」
「ああ、魔王なら可能だろうな」
「ミノウってそんなすごいやつなのか」
「当たり前だヨ。そもそもお主は我を軽く見過ぎているヨ」
「そうか、それはすまなかった。ほら、ポテチ食べていいから」
「それはもともと我が出したものだヨ。食べるけどポリポリ」
軽く見ているわけではないと思う。可愛いがっているのよ。でも、ミノウの場合、修行のためって理由でダンジョン作ったりはしないわよね。
「タカミツはいったいなんの修行をしていたんだ?」
「入ったのなら知っているだろう。あそこは昔から弱い魔物がたくさん集まる場所なのだよ。奴はもともと魔物退治のエキスパートだ。その力を強めるために、仏法を使った新しい修法を開発していたのだ」
「仏法と修法の融合ってことか」
「そうだ。仏法はその成り立ちから、魔法より修法に近いからな」
「ボクらの天敵だモん」
「おや。その可愛らしい姿は、サルトラヘビではないか」
「いえ、この子はネコウサイタチです。私の眷属です」
「ネコウサイタチか。そういえばそういう名前もあったな。スクナと言ったな、お主は良いものを眷属にしたぞ」
「えっへんモん」
「え? 良いものですか?」
「まあ、それはそのうち分かるであろう。当時は、そのサルトラ……ネコウサイタチもたくさんいたのだ。魔物の約7割はネコウサイタチだった」
「ええっ!? そうだったモん?」
「念のために言っておくが、減ったのはタカミツとは無関係だぞ。さほど悪さをするわけではない魔物を、むやみやたらと退治するようなやつではない。頭を撫でたりして遊んでいたこともあった。しかしある日、大事件が起こったのだ」
「大事件とは?」
「地震だよ。ついこの間もあっただろう。あれはオンタケの噴火だったが、あれよりも数100倍は強い地震だった。しかも何度も何度も繰り返し揺れやがってな」
「それを思い出させるでないヨ。あれは我にもトラウマヨ」
「ミノウでも被害を防げなかったのか」
「噴火と違って地震はいきなり来るヨ。我の幸運力でもこの土地の持つ因縁にはかなわない。しかもあのときは、その前にひどい地震があって」
「ああ、そうだったな。その被害がようやく落ち着き始めた頃に、もっとすごい揺れがやってきた」
「普通は大きな地震があれば、その余震はそれよりは小さいものなのだヨ。それがあのときだけは」
「2回目が一番大きかったな。油断していたのはお前だけじゃない。この国の連中もみんなそう思っていた。俺もだ。その油断の上に、この国史上最大の地震が起こったんだ」
「そんなことがあったのか」
「このダンジョンも無事では済まなかった。床に亀裂が走ったあと、あちこちで底が抜けたんだ」
「底が抜けた、ってどこかに落ちたってことか?」
「おそらくはな。俺はたまたま外にいて現場を見ていない。おかげで助かったのだが、中にいた魔物たちは壁や岩にへばりついていたごく少数を除いて壊滅した」
「うぅぅぅぅモん」
「ウサネコ。こっちにいらっしゃい」 ぎゅっ。
「あの、僕の名前?」
「あああ、ゴメン! きゅぅぅぅぅっ」
「強く抱きしめて誤魔化きゅぅぅぅ、強すぎるモんモんモん!!」
「そうか、そこにはそいつのご先祖様もいただろうな。残念だが、落ちたものがどうなったのかは分からない。底の深さを測ることは、タカミツにもできなかったそうだ」
「いまはそんな形跡はなかったようだが?」
「床はのちにタカミツが少しずつ修復したのだ。もう二度とあんなことがないように、落ちなかった大岩同士に橋を渡すようにして、二重三重に法力をかけ床を張り直した。その上に、俺も虚空蔵菩薩を彫って念入りに修法をかけて奉納した。そのおかげか、それ以降も地震は何度もあったがいまのところびくともしていないな」
「なんで虚空蔵菩薩だったんだ?」
「虚空棒菩薩は、智恵と慈悲の仏だからな。あのクウカイを導いたことで有名だ」
「智恵でこの地が収まるとでも?」
「我らに足りないものは自然災害に対する智恵であり、足りない分は仏にすがるしかあるまい」
「仏の智恵と慈悲を、神社の地ですがるのか」
「そういうことだ。ここは神仏習合の聖地だけでなく、魔物も人も仲良く暮らせる土地だ。万物習合の地だよ」
「なるほどね」
「ここは自然にできたものじゃなかったのですね」
「自然を利用して作った、というべきだろうな。半人工的ダンジョンだ。人の世で言うところの里山に近いものだ」
「里山か。それなら魔物がたくさんいる、というのも分かるな」
「ユウさん、どういうこと?」
「人が農業や林業をやるために作った人工林のことを、里山と一般的に言う。そこは実に多種多様な生き物が暮らせる場所なんだよ。深山幽谷で生きられる生き物はごく少数だ。街中では人しか暮らせない。里山はその中間にあって、生き物のるつぼとも言うべき存在だ。生物多様性の象徴のような場所だ。なるほど、確かに万物習合だな」
「その通りだ。お主は話が分かるやつだな。タカミツの工事が終わってしばらくしてから、俺がここの存在を見つけたんだ」
「ここの存在?」
「お前らがいるこの場所だよ。どうしてできたのかは分からんが、ここは不思議な場所でな。時間の進みが緩やかで、ここに長くいると時間の感覚が狂ってくる。それに魔力も修法もかかりにくい。自由に使えるのは法力のみだ。俺はここをうろんなページと呼んで」
「待った待った待った。それはちょっとまずい。やめておけ!」
「どうしてだ? 別に良いであろう?」
「いやいやいや、いくらファンでもそれは止めたほうがいい。せめてうろんな部屋にするべきだ」
「そ、そうか。じゃ、そうするか」
それ、とある人の有名サイト名だからね。知らない人はぐぐってね。
そこまで言うのかヨ?
「法力だけが使えるってのは卑怯なノだ」
「いや、卑怯って言われても。だが、お前ほどになれば使えないことはないだろ。魔力消費は激しいだろうけどな」
消費が激しい? だから魔王が水晶に魔力を注いだときに、魔力酔いを起こしたということかしら。でもそれならどうしてネコウサの力は強化されているのか、疑問だわ。ユウさんの魔法も……あれは規格外だから参考にはならないかな。
「考えるほどにここは不思議なところだ。もともと神社だったのだから神道系の土地だったのだろう。いわば神々のおわす土地だ。そこにかつては敵対していた法力僧がやってきてダンジョンを作った。そしたら魔物がたくさん住める場所になった」
「そうか。考えたことはなかったが、そういうことになるな」
「魔力も修法も使いにくい場所だから、強力な魔力を持つ魔物がいないのかも知れないな。ここではタランチュラも魔ネコも、戦闘力にたいした違いがないのではないか」
「なるほど。そうかもしれない」
「力の差が少なければ、物をいうのは数だということになる。個人技に頼る種は住みにくいだろう。ここで増えるのは群れで暮らす魔物がメインということになる」
「その通りだと思うが、お主はいつもそんなことを考えているのか?」
「あ、すまん。これが性分なもので。それで、ここにはあのキーアイテムを使わない限り来られないのか?」
「ああ、そのはずだ」
「そういえば私、不思議に思ってたのだけど」
「なにがだ?」
「ここにはどうしてネコウサの生成物がないのかしら?」
「なんだ生成物って?」
「それはボクのうんこだモん」
「あーあー、あれか。魔物たちがときどき体内に溜まった好素を排出している結晶か。あそこはこことは別のうろんなペー……部屋だ」
「ここの他にも、うろん部屋があるのか?」
「俺が見つけただけで7つはあるぞ。ネコウサイタチのトイレはそのうちのひとつだ。あそこはちょっと特殊でな、あのダンジョンと直接繋がっている」
「繋がっている? とは?」
「いや、そのままの意味だが。ダンジョンに入り口があるんだ。そのネコウサ? もそこから出入りしているのだろう?」
「そうだモん」
ってこととはなに、私があんな苦労しなくてもあそこにはそれぞれで行けたってこと?
「なにを苦労したのかは知らんが、その通りだが?」
わ、わ、わ、私の苦労って、私の立場って、私のアレのナニはいったいどんなソレだったのよ! ナニよ、なんなのよ! ネコウサ!
「ももももモん?」
「あんた知ってたんでしょ?」
「なななななにをだモん。スクナ怖い」
「あ、ごめん。ダンジョンからあの裏庭に直接行けるって」
「ボクらはいつも通ってるモん。だけど、サイズが小さいからスクナが通れるかどうかは知らないモん」
「あ……そうか。あのとき、ネコウサは直接行けるって言ったわね」
「言ったモん」
「そのとき、気づくべきだったわね、スク姉あははははは」
「タッキー。まさかあんた!?」
「さすがにそれは分からないよ、スク姉。だけど、知ってても黙ってたと思うけどきゃはははは」
「姉妹の縁を切るぞ!」
「あぁん、ごめんなさい、お姉様ぁぁぁ」
つまり。あのダンジョンからネコウサの生成物のあるうろん部屋には、いちいち入り口まで戻らなくても簡単に行けたのだ。私たちは行けないと思い込んでいただけだったのだこんちくしおぉぉぉ!!!
最近、スクナのしおが多いノだ?
魔王を漬物にしてやりたい。
八つ当たりは止すノだ!!
0
あなたにおすすめの小説
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜
最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。
一つ一つの人生は短かった。
しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。
だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。
そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。
早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。
本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる