異世界でカイゼン

soue kitakaze

文字の大きさ
302 / 336

第302話 ネコウサ族が管理人

しおりを挟む
「じゃ、これはうちのものっと。えへへへへ」
「ぐぅっ」
「これもこれも、それもこれも。あ、それ勝手に触らないでよ、私んとこのものだからね」
「ぐぬぬぬぬ」

「タッキー。いいの? それで」
「え? スク姉、私はいいよ?」
「それをタッキーが魔力を込めて紅くするとして」

「うんうん。それだけなら私にもできるよね」
「それを誰に売るの?」

「……そいつ」
「買うかぁ!!」

「だって必要なのでしょ? これがないとその紅いガラス? とかができないんでしょ?」

「いるかどうか分からんと言っただろ。試験をやってみないことにはな。だが、もうやる気をなくした。別の方法を考える。別に急ぐことではないし、この水晶にこだわる理由もないんだ」

「試験をやんなさいよ!」
「お前の態度が気に入らないから止めた」

 もう、どっちも意地っ張りなんだから。

「へぇ。それでどうしてもできなくて、あとで泣きついてきても知らないわよ?」
「誰が泣きつくか。俺のいた世界では紅いガラスは普通にあったんだ。魔法を使わずにな。だからこちらでもできないはずはない。その方法を俺が見つけてやる」

「そうか、勝手に頑張ればいいわ。どうしても欲しかったら土下座しなさいよ。そしたらものすごい高値で売ってあげるからね」
「まあ、その頃にはハクサン家は破綻しているだろうがな」

「ちょ、ちょっと。どうしてそんなことになるのよ!」
「ハクサン家は太守の座から降ろすと言っただろ。同時に貴族の資格も剥奪される。そうなれば国から支給される金はなくなる。無収入になって赤字を抱えて身売りでもなんでもするがいい」

「そ、そんなこと!? ミ、ミノウ様?」
「それは魔王が口出しすることではないヨ。オオクニが決めることヨ。オオクニはユウのことならたいがい聞くだろう。そのぐらいの信頼を得ているヨ。まあ家の断絶なんてこと過去に例はいくらでもあるし、没落貴族も山といるヨ。また頑張って再興すれば良いヨ」

「そ、そんな!?」
「その水晶だが、ある程度の大きさがあるものなら1個1,000円ぐらいでカントが引き取ってくれるらしいぞ。もうかなり売り払ったあとだから、良いものはあまり残ってないかも知れないがな」

「ちょっと、ちょっと待ちなさいよ! そんなことして良いと思ってんの? ハクサン家は1,500年以上も続いてきた伝統ある旧家よ。それを潰そうっての?」
「この間は1,300年って言ってたぞ?」
「測定誤差よ!」
「どんな測定をしたどんな誤差だよ!!」

「ともかく長く続いた家が潰れるなんて、あっちゃいけないことよね?」
「潰れるかどうか。それは俺の知ったことではない。なるようにしかならない世の常だ」
「世の常だ、じゃないわよ! そんなことして」

「世知辛い世の中は、いつまでも同じだな。俺はそういうのが嫌でここに逃れて来たのだが」
「お師匠様。我が工房に来ませんか? そちらでゆっくり仏像のお話を伺いたいです。僕の作品も見てください。僕たちはもういいでしょ、ユウさん」

「あ、ああ。そうだった。カネマル、付き合わせて済まなかった。ここはもういいから、ゼンシンをよろしく頼む。みっちり仕込んでやってくれ。ゼンシンはしばらくは、通常業務から外すようにじじぃに言っておこう」

「ありがとうございます。それではお師匠様。ご案内します」
「ちょっと待ってくれ、ゼンシン。それとナガタキ」
「「は、はい」」

「その水晶だが、お前が魔力を注いで色を付けたら、もっと高く売れるのではないか?」

 ユウさん、あっちゃー気づかれたか!? って顔をしているけど。

「あ、そうか。色を付けるとすごくキレイだし、この色で定着するのなら」
「そうだ。それはほとんど宝石のレベルであろう。色落ち? しないのであれば高値で売れるのではないか?」

「わぁぁい。そうだそうだ。売れるね、これなら高く売れるよね。思い付かなかった。カネマルさんありがとう! さっそく私が魔力を込めて紅色を付けてしまいましょう。それを持って帰ってさっそく売りさばく段取りを……」

「ちょっと待つモん?」
「どうしたの、ネコウサ?」
「みんな勝手に売ったりもらったりしているけど、それ、もともとボクらのだモん」

「「「「「ああっ!!」」」」」

「だ、だけど、あんたは別に使い道がないでしょうが!」
「ないけど、勝手に持って行かれるのはおかしいかなって思うモん?」

「その通りだ!」
「なによ、ユウは大きな声を出して」

「いままではたいした価値がなかったから、見つけたものが勝手に持ち出していたが、それは本来このダンジョンに住む魔物たちのものだ。その管理者がネコウサなんだよ」

「そんなこと分かってるわよ。それがどうしたのよ」
「それなら、この生成物の正統な持ち主はこのネコウサだということになる」
「あんたは自分のものにならないからって、そうやって……そ、そんなことって、そんな?」

「ネコウサはスクナの眷属だ。だからその生成物は俺のものというごぉぉぉん」
「それは言い過ぎです!」
「スクナは力強過ぎだ! 痛たたたた」

 文字数合わせるのって楽しいね。

「ミノウ様? これはいったい?」
「うむ。我も失念しておったヨ。これはネコウサ。お前のものだヨ。ユウもナガタキも勝手にこれを持ち出すことは、今後は許さないヨ」
「やっぱりそうだった。良かったモん。ミノウ様ありがとう」

「「じゃあ、それを俺に私に売ってくれちょうだい!!」」

 ……

「「一緒にしゃべるんじゃないねぇよわよ!!」」

 ダブルで来たか。それで、ネコウサどうするの?

「どうって。ここをボクたちの住み処として認めて欲しいモん」
「もともと住み処だろ?」
「だけど、いままで何度も侵略されているモん。昨日だってたくさんの仲間を失ったモん。あんなこと、もう嫌だモん」

「それはこいつが悪いぃぃぃぃ」
「タッキー!」
「あ、ふぁい。すひはへん、ふくねぇ」

 ネコウサのその悲しみを、私は嫌というほど知っている。そうだ。ここは私の出番だ。ここをこの子たちの安寧の場所にするチャンスだ。もう冒険者にこの子たちが蹂躙されないように。

 ついでに、にっくきアレも処分してしまおう。

「それでは皆さん、私から提案です!!」

 なんだなんだ? どうしたスクナ。スクナがなんか格好いいぞ。さすが私のスク姉。やかましい、さすがは俺のスクナだ。だまらっしゃい、私のスク姉だと言っているだろう。俺の秘書だ、お前なんか後付けだろうが。ケンカはよすノだ、良く聞くノだ。なんか面白そうだヨ。ウエモンにもこの姿を見せてやりたいゾヨ。

 みんなが静かになるまで3分かかりました?

「このダンジョンはこのネコウサが管理していました。それをいまは妹が引き継いでいますが、正式にネコウサ一族をここの管理人として認めましょう」

 ふむふむ、それで?

「まず第1。このダンジョンには、ネコウサ族が承認したものしか入れないようにします」

 ということは、水晶を勝手に持って行こうとしたナガタキは、当然出禁だな。なによ、あんだってネコウサにはすごく嫌われているじゃないの、あんたも出禁よ。んなことあるかい! 私だってないわよ!!

「だからあのゲートは廃止します!」

 え? そそそそそんな。私は気に入ってたのに。やかましいわ。あんなもんがあるから話が面白くなったんだろうが! それ、良いことだよね? あれ、そうか。

 俺の作品なのに気に入らない人もいたのだな。気に入らないというか、気恥ずかしいというか。スクナは憎んでさえいたようだヨ? そこまでか?!

「こほん!! 文句のある人は、あとでぶっ飛ばします」

 し~ん。

「でも、このダンジョンを攻略しようという冒険者などがやってきた場合、それを排除するだけの力はネコウサにはありません。それで、ここの出入りに関してはイリヒメに委任しようと思います。ヤサカの里からならここにはすぐに来られます。それに力のある一族ですから、不逞なやからを追っ払うぐらいのことは簡単でしょう。その人たちに入り口の管理をしてもらうのです」

「スクナ、それはタダってわけにはいかないぞ?」
「はい、その通りです。だからネコウサ族には、商売というものを覚えていただきましょう」

「え? 商売をするモん? ボクたちが?」
「そうよ、するの。自分たちのためにね。大丈夫、私たちが全面バックアップするから」
「そ、そうか、自信はにないけどやってみるモん」

 ユウさんがにやにやしている。私の言わんとすること、分かっちゃったかな?

「それで、スクナ。どんな商売をさせるんだ? それは人件費をまかなえるものなんだろうな?」

「ええ、大丈夫ですよ。入り口には守衛さんを置きます。3交代制で常に2人はいるようにしてもらいましょう。人数は様子を見て増減しますが、その原資はふたつです」

「ふたつ?」

「ひとつは魔ネコをここで育てること。現状では、魔ネコがここで生まれてから1年ほど育てる間に、消えてしまうことがあるそうです。冒険者に退治されるのは守衛さんで防げるとしても、自然に消滅したりここから逃亡したりするケースもあります。そうならないように、魔ネコを管理する仕事をネコウサ族に請け負ってもらいましょう」

「なるほど。それは魔ネコの歩留まり向上になるな。人がずっとダンジョン内に常駐するのは無理だから、人は入り口の管理だけ。中はここのラスボス・ネコウサ族が請け負うと」
「はい、その通りです。そうすれば、その管理費と守衛の常駐費でチャラになると思います」

「守衛よりは、中の管理費のほうが高いだろうな。まあ、それは交渉次第だ。それでもうひとつとは?」

「その生成物の販売です。ここには魔物はたくさんいます。1匹1匹の魔力は少なくても、全員でやればいろいろな色の水晶ができることでしょう。魔物が増えれば、その生成物も増えると思います。それを売るのです。ユウさんなら買うでしょう?」

「もちろん、全部、俺が買わせてもらうよ」
「待ちなさいよ! 私だって買うわよ」
「どちらに、どれだけ、いくらで売るか。それはウサネコが決めなさい」

「え? ボクが? そんな、難しいこと言われても」
「ダメよ。自分で考えなさい。あんたがここにいる間はあんたがトップなのよ」

「そんなこと言われてモん。困ったモん。その、仏師さんはどう思うかモん?」
「あ? 俺か。俺だって世間のことには疎いからうまくは言えないぞ。えぇと、月にどれだけできるのか分からんが、まずはいくつか渡して、その価値を見極めてから売値を決めれば良いのではないか」

「そ、そうかモん。では、双方に10個ずつサンプルとして渡すモん。それを売るなり使うなりして欲しいモん。そのあとで値段を付けてもらって、高い値を付けたほうに売るモん」

 高く買ってくれるほうに売るのね。ネコウサ、やるじゃん。カネマルさんもナイスアドバイス!

「よし! 俺はそれでいい。では、紅くしたやつだけ10個くれ」
「私は紅色、黄色、青色、紫色、緑色をそれぞれふたつずつね」
「分かったモん。作るからしばらく待つモん」

「それでいいのか、カネマル?」
「いいとは、どういう意味だ? ユウ」
「このダンジョンを作ったのはタカミツというやつだろ? それに好素を発生させているのは、カネマルの作った仏像だ。お前らも権利を主張できるのだが」

「俺には魔ノミをこれからも提供してくれる、ということでどうだ?」
「あれはおそらく減ることはないと思うが、いいだろう。研ぎが必要ならゼンシンがやる。万が一切れなくなったら作り直す。それでいいな?」

「ああ、充分だ。それならタカミツの説得は俺にまかせてくれ」
「大丈夫か?」
「ああ、やつは修行僧だ。現世利益には興味はない。ただ、やつにはここに自由に入る資格を与えてやってくれ。あ、それは俺もか」

「ここでボクらを退治しないのなら、OKだモん」
「それでいい。よろしくな」

「うん。こちらこそよろしくモん。困ったときには相談に乗って欲しいモん」
「いいとも。このダンジョン自体の維持管理もいままで通りするからな」

「あぁ、そういうのもあったんだ。いいのか、それは無報酬で」
「いままでだって報酬をもらっているわけじゃない。それでかまわんよ」
「タカミツって人がなにか求めてきたら、そのときは相談させてくれ。俺が窓口になる」
「分かった。そう言っておこう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

処理中です...