異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第312話 魔王報告会

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 ユウという人間がオオクニを部下にしたということは、オオクニの下の組織に属する俺たちは、いったいどういう立場になるのだろうか。

 それがイセの杞憂である。ただでさえクマノ国との交戦で大変なときに、これ以上ややこしい問題を起こさないでもらいたいものである。

 7名の魔王は、アメノミナカヌシノミコトの直接指名で領地に君臨している。それは役立たずだった旧領主と交代という形であり、オオクニからその権力を取り上げたという意味を持っている。

 魔王の格式は、オオクニの配下である他国の領主たち(ハクサン家やシャチ家など)と、ほぼ同格といって良いであろう。

 納税の義務がない(ミノウは例外)ことや、オオクニから直接指示をされることはないという魔王特権はあるものの、オオクニよりも格下の地位であることは言をまたない。

 そのオオクニに上司ができたというのだ。魔王とて、平静でいられるはずは。

「ふわふわほよよん、ほーんほん」

「平静だな、お前だけは!!」
「な、なんなノだ? 急にツッコむでないノだ。びっくりするであろうが」
「のんきに雲なんかに乗りやがって」
「これはふわふわなノだ。ふわんふわん」

 こっちがどれだけ大変な思いで領地運営をしているのか知っているのか、と言おうとしたが、それはただの愚痴に過ぎないと思い直し、イセはそこで自重した。それはこいつだって同じはずだ。

「オウミ、それはどうやって作ったゾヨ。また、新しい呪文でも発見したのか。それなら我にも教えて欲しいゾヨ」
「あ、それな。我もまだ詳しく聞いてないヨ。教えてくれヨ」

「これの元は、あの水晶なノだ」
「水晶って、ホシミヤにいたネコウサのか?」
「そうなノだ。あのとき、我らでいろいろ作ったではないか。あのときの創作物が元になっているノだ」

「あのときって、オウミが魔王の杖を作ったときのことだよゾヨ?」
「そう、それそれ。それを識の魔法使いとなったアチラに渡したら、これができたノだ」

 渡したのではなく、ユウに取り上げられたのだが。

「それだけかゾヨ?」
「それだけなノだ」
「お主が作ったわけじゃないのかヨ」

「我の作った魔王の杖が元なノだ。だから我が作ったも同然なノだ」
「あれかぁ。ん? ということは、我の勾玉もアチラに魔力を入れてもらえば、そうなるということゾヨ?」

「おそらくはなると思うノだ。ミノウの自転車だって……あっ」
「そ、そんなことになっていたのかヨ……orz」

「ようし、帰ったらさっそく我もふわふわを作ってもらおう。アチラに頼めば良いゾヨ?」
「ユウに話を通す必要があるノだ。これもユウが権利を持っているノだ」

「そうか。面白半分で勾玉を作ってはみたものの、よく考えると使い道がまるでなかったゾヨ。持て余しておったゾヨ。ふわふわなら毎日使えるゾヨ、わくわくわくゾヨ」

「orz」
「ミノウ、イキロ」
「そんなこととはつゆ知らず、自転車をスクナにやってしまった我なんか死んでしまえヨ orz」
「だからイキロって」

「また作ればいいノだ」
「また作るといっても、もうあの原料はタダではないのだヨ。あのときはふんだんにあると思って、37個も使って作ったヨ。それを時価で買うとなったらどれだけの費用が……orz」

「1個百万とか、ユウは言ってたようだったゾヨ」
「水晶を37個も使ったノか!? 我は23個なノだ。お前は使いすぎ、というかそんなに魔力を使ったノか」
「お前らすごいな。ワシは17個が限度だったゾヨ。ところで、そのふわふわは使った水晶の数は関係あるゾヨ?」

「まったく分からんノだ。その辺はユウに聞いて欲しいノだ」
「それもそうだった。オウミに分かるはずはないゾヨ。帰ったら聞いてみよう」
「イズナはいいヨ。まだ可能性は高いから。だけど我はもう(´・ω・`)ダメヨ」

「自転車をスクナに返してもらうとか?」
「そ、それだけはできんヨ。一度やると言ってしまったものを返せとか、魔王のキンコラカンケンに関わるヨ」
「おかしなものに関わるやつなノだ」
「もしかして、それは沽券に関わるではないかゾヨ?」

「そろそろ時間だ。お前らもわけの分からん話をしてないで、そろそろ会議を始めよう。遅刻したヤマトは後回しにするやん」
「ヤマトはほんとうに来るのか?」

「なにかの実の中に閉じ込められて痛っノだ!!」
「オウミ!」
「す、すまなかったノだ」

「まだ連絡はないけど、ひとりだけを待っているわけには行かないやん。去年もミノウがいなかったし。始めよう」
「それはすまなんだヨ」

「それでは、まずは各領地の報告からして欲しいやん。それが終わったらこちらで用意した議題について、話し合ってもらうやん」
「マイドの用意した議題って、どうせまたあの件ゾヨ?」
「どうせまた、その件やん」

「それ、毎年出しているが、もう諦めたらどうなノだ」
「いいや、俺は諦めやん。もしそれ以外に議題があったら、自分の順番のときに言ってくれて良いぞ。では、今回の報告順は北からにしよう。クラーク……じゃなかった、カンキチ。始めてくれ」

「分かった。それからすまんが、まだ所用が残ってるんだ。自分の報告が終わったら戻ってもいいか?」
「そこまで忙しいのか。今晩は宴会の準備もしてあるやん。せめてそれまでここにいられんか?」

「うむ。ユウの世話になってからというもの、息つく暇もなくてな。嬉しい悲鳴を上げているのだ。惜しいが宴会には参加できん。すまん」

「そうか。それなら仕方ない。魔王が多忙ということは、領地にとては良いことだろう。それでは、ハチミツのお礼にきんつばのセットを持っていってくれやん」

「おお、それはありがたい。部下も喜ぶ。では、さっそく始めよう。我がホッカイ国の経済状況だが……」

 ユウを知っている魔王(オウミ、ミノウ、イズナ)には、特に目新しい情報はなかった。

 だが、イセとマイド。ふたりの魔王にとっては、目を見張るようなことばかりであった。

 貧困を絵に描いたようなエルフの里で、イテコマシというゲームが発明されたこと。爆裂コーンもポテチもここで作られたこと。作ったお菓子を運ぶ(湿気らせない)ための、紙袋もエルフ里で考案されたこと。余り物の薄力粉からはユウご飯という軽食も発明されたこと。

 いずれも、この国にかつてなかったものばかりであった。さらに、アカシヤハチミツ、エルフ治療薬、木材など、ホッカイ国の名産ともなりうる商品が次々と生まれていた。そして謎の旋盤だのボール盤だの、よく分からない機械の部品も生産しているという。

「そ、それがすべてユウという少年がやったことか?!」
「その通りだ。それもたった2ヶ月足らずでのことだ。その上に、甜菜とそこからとれる砂糖の生産。広い農地を生かして改良小麦(強力粉用)の栽培も始めている。爆裂コーン用のイエローコーンも増産だ。そのすべてを、ユウが買い取ってくれることになっている。来年からは、その売り上げもホッカイ国の利益に貢献するだろう」

「今年、ホッカイ国で餓死者がひとりもでなかった、ということに納得がいったやん。仕事を作れば金が動く。金が動くと人は豊かになる。ユウとはそういうことを熟知している人間やんな」

「それだけではないノだ。ユウはカイゼンをするノだ」
「カイゼンか。そういえば、最初に問題解決のプロとか言っていたな」

「そうなのだヨ。ホッカイ国の飢餓問題も、ミノ国のタケウチ工房の倒産問題も、エチ国とオワリ国との戦争問題も、関ヶ原での温泉宿の浴室破壊事件も、イズモ国の借金問題も、ヒダ国の不正問題も、いずれもカイゼンして片付けたのヨ」

「温泉宿だけちょっとジャンルが違う気がするが。それだけのことを、1年とかからずにやったということか」

「その合間に、このポテチや爆裂コーン、ニホン刀やイズモソロバンなどなど、多種多様な商品を作り出しているヨ」

「ものすごいのはもう分かったやん。お腹いっぱいやん。では、カンキチはそこまででいい。戻って仕事の続きをやってくれ」
「それでは帰らせてもらうよ。来年はもう少しゆっくりできると思う、きんつばありがとうな、では」

「行ったか。よほど多忙なのだろうなぁ。残念だが残りの者で続きをしよう。次の順番は」
「ちょっと待ってもらいたいのだが、良いか?」

「イセが口を挟むとは珍しいやん。どうした?」
「すまんが、俺の話を先に聞いてもらって良いだろうか」

「次はミノウの順番だったが」
「別にかまわんヨ。イセはなにか相談に乗って欲しいのではないかヨ?」

「その通りだ、ミノウ。というより、そのユウという人間に依頼したいことがある」
「クマノとの関係ゾヨ?」

「そうだ。そのために、まずは我がイセ国の現状を聞いてもらいたい」

「分かったヨ。我も気になっていたヨ。イセとクマノは特にケンカするような間柄ではなかったヨ。なにがあったのヨ?」
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