異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第333話 イベント開催

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「ヤマト様にオウミ様。そんな方々にため口で話す貧相な子供……」
「貧相で悪かったな!」

「で、ヤマトはなにしに来たノだ?
「ラーメンとやらをご馳走になりに来たに決まっているでしょ」

「決まってないノだ。これにだってコストがかかっているいるノだ」

「「え?」」

「なん、なんなノだ。ふたりして我を見つめるでないノだ。照れるノだ」
「いや、オウミがコストとか言ったので」
「びっくりしたのよ。ずいぶんと成長したものね」

「褒められている気がしないノだ? で、ユウ。そろそろ麺がなくなるノだが、こいつにもラーメン出しても良いか?」
「まあ、いいだろう、残りは全部食わしてやってくれ。そろそろ店じまいとしよう」

「なんだもう店じまいなのずずず……おおっ!? すごいね。これは極上のスープよ。ずずず。ダシは鶏ガラにコンブに、うむこれはサバとアゴの煮干しを使っているわね。それに加えてなんだろう、この複雑な味わいはずずず」

「一口飲んだだけでよくそこまで分かるものだな」
「ぶつぶつ言いながらスープしか飲んでいないノだ。麺を食べるからこそラーメンなノだぞ?」

「ちょっと待って。まだ分析中なの。ずずず。うん、うまい。どうして飲んだ少し後になってから言いようのない味わいがやってくるのでしょう、ずずずず。それにしてもうまい。これはやみつきになる味ね」

「時間差で味が来るのは後味って言い方をするな。それが重層スープの特徴なんだ。しかしそれが分かるとは、いい舌をしてるな。さすが食の街ヤマトの魔王だ」

「いえ、ヤマトにもこんなものは存在しないわ。最初の味と後からやってくる後味とのコラボレーションが素晴らしい。では麺もいただきましょう。ずるずるずる……おおっ!? なによこれ」

「だからラーメンなノだ?」
「そういうことじゃないと思うぞ」

「この細さでこんなぐにゃぐにゃなのに、どうしてこんなにコシがある麺ができるのよ。おかしい。しかしうまい。分からない。だけどうまい。お代わり!」

「ほい。もうこれで最後なノだ」
「ずるずるずるずる。うまいうまいうまい」

 最後のほうはうまいだけになってしまったが、ヤマトの舌はそうとう肥えていることが分かった。
 新しい食べ物を作ったらこいつに試食させよう。きっと的確な評価をしてくれるだろう。覚えておこうっと。

「あぁ、うまかった。ご馳走になりました。じゃあ、私はこれでぐぇっ」
「せっかく来たんだ、ちょっとぐらいお話をしていけよ」
「いやっ、なんか怖い」
「なんでだよ!」

「あ、あの。俺こそここらで失礼をぐぇぇぇ」
「お前は捕虜だっての。逃がしてなるものか」
「ええ?! 俺いつの間に捕虜になったの!?」

「ラーメンを食べた瞬間だ。文句があるなら。お前の食べた7杯分の代金を払いやがれ」
「そ、そんなもんぐらい払ってやるわ! いくらだ?」

「2,100円になります」
「え? あれ? そんなに高いの、これ。俺、手持ち78円しか」
「敵方用特別割増価格な」
「酷いなおい!!」

 定価は1杯200円ぐらいを想定しているが、まだ製法が固まっておらず、コスト計算はできていない。
 だからざっくりな数字でしかないが、敵方なら割り増しぐらい払いやがれで1杯300円である。

 ……手持ちの金、1杯分にも足りないじゃねぇか! それでよく諜報が勤まるな。

「なければ大人しくしていろ。まだ聞きたいことがあるんだ。ヤマト、お前もな」
「きゅぅ?」

「いや、魔王様にそんなぞんざいな口を利いては」
「俺はいいんだよ」
「なんでだよ!」
「俺はそういうことが気にならないタイプだから」

「タイプで済ませていい問題じゃないでしょ!!」
「ユウはイズもの太守なノだ」

「ええっ!? 太守様!! そ、それなら魔王様と対等ってことで?」
「ちなみに、オオクニは俺の部下だ」
「ふぁぁぁ?!」

「それと、魔王を4人従えている。魔人もふたりいるぞ」
「ふぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 ウソは言ってないよな?

「ムシンコ、顔が真っ白だぞ?」
「ムシマロです。もう血の気が失せましたよ。どんな方なんだ、あんたはいったい」

「俺はシキ・ミユウ。カイゼン士だ」
「俺にはさっぱり分から……分かりません」
「オオクニまで部下って……私にもさっぱり分からない、ませんわ」

「おかしな敬語使わんでいい。ふたりともタメで話せ。それより、ヤマトに聞きたいことがある」
「なんですの?」
「お前はイズモ国の連中と、仲は良いほうか?」

「悪くはありませんよ。年に1度は集まって宴会をしますからね」
「神無月ってやつか。それなら、ウズメをここに呼ぶことはできないか?」

「できますよ……って、ウズメならここにいるじゃないの」
「あれ? そうなの?」

 俺の知識ではたしかウズメはアマテラスの部下だったのだが。だからてっきりイズモについて行ったとばかり。

「あれ? ウズメはアマテラスと一緒にイズモに戻ったんじゃないのか」
「イセでサルタヒコと結婚しましたからね。いまでも仲悪く暮らしているそうよ」

「仲睦まじく、じゃないのか。ということは、呼び出すのは簡単だな」
「ヒマそうだったからすぐ来てくれるでしょう。ウズメになんの御用?」
「ちょっと仕事を依頼しようと思ってな」
「は?」

「イセにいるなら、それはイセにやらせればいいか。それと、ムシマロ」
「いや、だから俺の名はムシマ……合ってるじゃないか! なんです?」

「オヅヌに果たし状だ。これを持ってクマノに帰れ」
「果たし状?! それっていったい誰が」
「誰って主催は俺に決まってんだろ。明後日の晩、イセまでひとりで来いと伝えろ」

「明後日は了解です。でもオヅヌ様ひとりで、というのは飲めません」
「じゃあ、お前もついて来い」
「ヤマメもお願いします」
「じゃあ、計3名様ご案内だな。これから書状を書くからそれを渡せ」

「失礼ながら」
「なんだ?」
「あんたではとても相手にならないかと?」

「俺に眷属がどれだけついているか、さっき言っただろ?」
「ちょちょちょちょとちょっと待つノだユウ。我は無理無理無理無理ノだノだノだ」

「やかましい! 俺の眷属ならそのぐらいの仕事しやがれ! ここで一気にケリをつけるんだ。めんどくさい戦争なんかやってる場合じゃないだろ。もうじき大切な田植えじゃねぇか!!」

(どうしてこの人は田植えの心配なんかしているんだ? イズモの太守なんだろ?)

「こういうことは、じわじわやってちゃダメなんだよ。イベントを開催して一気にケリをつける。それが一番なんだ」

(イベントを開催? 一気にケリを……この人はまさか?)

「いや、田植えとオヅヌでは比較にならんノだよ。オヅヌと戦うぐらいなら我はトラクターになるノだ」
「そんなややこしいもんにならんでいい。また水晶で作ったりするなよ。ここに格好の人材がいるんだ。それを使わん手はないだろう」

(格好の人材……それがさっき話に出たウズメのことだとすると、俺の直感は正しいかも知れない。いや、間違いない。きっとそうだ)

「えっと。ユウさん、分かりました。明後日の晩ですね。暗くなる前にはイセに到着するようにしましょう」

 ムシマロは意外と察しが良いようだ。

「ノだノだノだ!! 無理無理無理。マジで死んじゃうノだ。やつは強いノだ。天敵なノだ」

 それに引き換えうちの眷属ときたら、もう。

「1,400年生きてきて、いまが一番不幸なノだノだノだ。ミノウと交代すれば良かったノだわぁぁぁぁ」
「ん? ミノウも当然参加させるよ?」
「わぁぁぁぁぁぁぁ。絶望なノだあぁぁぁ」

「ラーメン店は一旦引き上げだ。イズナもハタ坊も、そしてハルミも呼ぶ。俺の戦力を総動員する。それで決戦だ」

「了解でさっ!!」
「私も参加していいかしら?」
「ヤマトは別にどうでもいいけど?」
「なんかすっごい失礼なんだけど。殺しちゃおうかしら」

「お前のそのゆったりと物騒な言い方止めろ。見たきゃ見てもいいが手を出すなよ。お前は中立なんだろ?」

「面白いことに、国境はありませんわ」
「誰が国境の話をしてるんだ。お前は見境がないだけだろが」

 うまいこと言ったつもりだよ?

「その代わり、この戦争をうまく収めたら、我が領地でそのラーメン売ることを許してあげていいわよ?」
「ふーん。別に許してなんかもらわなくても、売るとこはほかにいくらでも(ハナホジ)」

「わか、分かったわよ! 土地でも店でもこちらで手配するから!! お願い、ヤマトにラーメン店を出して!」
「最初からそう言えよ。店までは作ってもらわなくていい。それはこちらの仕事だ。家賃だけタダにしてくれ」

「それでいいから、早くお願いね」
「さっきは、このイベントがうまくいったら、とか条件を付けてなかったか?」
「それは言葉のトゲよ」
「それを言うなら綾だ! お前の言葉はトゲだらけだけど!」

 ヤマトは食の街だとグースが言ってた。そこに出店の話が舞い込んできたことになる。しかも家賃タダというおまけ付きだ。

 これは儲かるぞ、うはうはうは。

「それより、我の命がともしびそうなノだが」
「まだ分かってないのか、お前は!!」
「ひぇぇぇ?! いったいなんなノだ???」
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