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第50話 鋼の材料
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「おおっ、オウミ。ふと気づいたときにはもう50話だよ。すごくね?」
「まだ、1匹も魔物を退治していないノだ。そんなラノベ聞いたことないノだ」
「お前がラノベ言うな。いっそお前を退治したろか」
「経験値を得たこともなくレベル1のお主ごときに、我が退治きゅぅぅぅ」
「このままお前を絞めたら、経験値はどのくらい入るんだろうな」
「よ、よすのだ、止めるのだ。そういうことをしたらダメなノだ。ミヨシが悲しむノだ」
一番困るのは俺だからやらんけどな。ってか、俺が首を絞めたぐらいで、1,400年も生きてきた魔王が死んだりするものか? なんか遊ばれているだけのようにも思えるのだが。
じゃばぁぁぁぁぁ、ぶっしゅぅぅぅぅ。じゅわぁ。
「で、お前はこんなとこでいったいなにをしているわけ?」
「あ、ユウさん、どもです」
轟々と燃えさかる窯の前である。俺のHPがどんどん削られて行くのが分かる。
「どもです、じゃなくて。今日から刀を作ろうという話だったろ?」
「以前にここでお世話になったときから思っていたのですが、どうもここの鉄は不純物が多すぎると思うんです」
は、はぁ。
「それで、鉄の製法を見直しして、もっと純度の高い鉄にしようかと」
は、はぁ? まさかそこからやるつもりなのか? 間に合うのかそれ。剣技大会までもう10日ちょっとしかないのだが。
「それで、どうして水を掛けてんだ?」
「これは、窯の温度が高すぎるような気がしたので、ときどきこうして水をぶっかけているんです」
じゃばぁぁぁぁぁ、ぶっしゅぅぅぅぅ。じゅわぁ。
おいおい、窯に水を掛けるだと? 気がするってだけで、そんなことして大丈夫なのか?
「窯にじゃなくて、鉄に掛けてます。もうそろそろできあがると思うので、ちょっと待っててください」
「そ、そうか。じゃあ、準備室で待ってるな はぁぁあ」
そろそろ限界だ。ててててつわんダッシュっ、で準備室に戻る。
はぁはぁ、ここは涼しくて落ち着くな。しかし、あいつはいったいなにを考えているのだろう。
鋼はすでにあるんだから、それですぐ作り始められると思っていたのだが。いろいろ聞く前に俺の限界がきてしまった。
「まったく根性のないやつなノだ」
「やかましいよ! 体質だから仕方ないだろ」
「しかしあの小僧、いいところをついていると思うノだ」
「どゆこと?」
「ここの鉄は純度が低いな、と我も思っていた」
「そうなのか?」
「うむ、ハルミのレイピアをよく見ると、あれだけ頻繁に削っているのにうっすらとだがサビが出ているのだ」
「え? そうなんか?」
「むしろ、サビを落とすために削っているのかもしれんが、純度の高い鉄ならそんなすぐにはサビないノだ。特にあの鉄からは硫黄の匂いがして臭いノだ。それが原因かもしれぬな」
硫黄は臭わねぇよ、臭うのは硫化水素だ。それにしてもなんつー敏感な鼻だことで。不純物の多い鉄かぁ。ん? 硫黄? 硫黄が多い? 硫黄って言えば水と反応したら硫酸になる……それか!!
「オウミ、偉いぞ。少し謎が解けた。犯人は硫黄だ」
「いや、それほどの、ことでも、ないかな」
魔王が照れるな。可愛いじゃねぇか。つんつんしたろ。
「きゃきゃ、きゃはは、よ、よすのだ。それはもういいから。くすぐったいではないか、きゃはは」
満更でもないご様子で。さて問題はだな、鉄から硫黄をどうやって取り除くかということだが。
「もう、終わりなノか?」
硫黄は鉄の中に不純物として存在している。だが、鉄が溶ければおそらくは酸化物になっているはずだ。
あれ? それなら還元してやればよかったりして? 還元すれば気体となって飛ぶんじゃないか? 還元となれば、これはもうアチラの出番だ、よし!
「急に立ち上がってどうしたノだ?」
「もういちど、こちらの部屋に、突入するぞーー」
「そんな、どこかの探検隊みたいに気合を入れるほどのことか。そこはただ少し暑いだけの部屋なノだ」
「俺が入るには、勢いがいるんだよ。中に入ってアチラに……あれ? 待てよ、そうか。オウミも覚醒魔法を使えるんだよな?」
「そんなもの初歩の初歩ではないか、当たり前なノだ。それがどした?」
「そうだよな。わははははは、そうだそうだ。俺にはタダで使える便利なオウミがいたんだった。忘れてたわははは」
「そのタダで使えるは、もういい加減に外して欲しいノだが。それで、我にどうしろと?」
「ちょっと一緒に来い。炉の中の鉄を還元してくれ」
「炉の中だと? ちょっと待……きゅぅぅぅ、そこをつかむなってのきゅぅぅぅ」
「いいから来いっ」
「ゼンシン、ゼンシン。まだ鉄は出てこないか?」
「あれ、ユウさん。もう少しですけど、どうしたんです……そ、その手に持っているのはあぁぁ???!!?!?」
あ、そういえばオウミはまだ、ゼンシンの前では姿を隠してたんだったか?
「え? は? ほ? へ?」
またそこからやるのか。こっちはそれどころじゃないんだが。
「に、虹色に輝く波動、その高尚なたたずまい? はともかくとして美しい羽根と麗しい容姿。そして愛らしいサイズ。ま、まさかあなた様は」
「きゅう?」
「私です! 以前に1度だけお会いしたことがあります。ゼンシンです。仏師のゼンシンです。ミノウ様!!」
違ごてるでぇ。
「きゅぅ?」
お前もそればっかりか。
「ゼンシン、そんなことはどうでもいい。それよりもだ、鉄はまだ中にあるんだな?」
「そ、そんなことって、ミ、ミ、ミノウ様といえばこの土地の大魔王様で、あらゆる魔物を統べる芸術の守護者ですよ!!」
「ああ、こいつ、ミノウじゃないから」
「え? 違うんですか? そう言われれば、ミノウ様はもう少しオレンジが強い虹色だったような……じゃあ、この高貴な方はいったい?!」
「ああ、もういい。オウミ。この中の鉄にサクッと覚醒魔法をかけろ。鉄が溶けてるうちにやらないと、おそらく意味がない」
「わ、分かったのだ。魔王使いの荒いやつなのだ。ほいっとな」
じゅわ~んと湿った音がした次の瞬間、バチッバツッと猛烈な音がして真っ白の火花が跳び散った。
「おぉっとっと、なんかこっちにも飛んできた、熱っ熱っ、小さいくせに熱っ。それから部屋が暑い、お、俺はもう戻る。あとはゼンシン頑張れ」
「もうなのノか? 早すぎるノだ!」
「わ、沸き花だ……沸き花なのか。これが沸き花か!! すごいすごい、これですよこれ! これが見たかったんです!!」
「そ、そうなノか?」
「この美しい火花こそ、いい鉄ができた証拠なんです。僕は始めて見ました。『優れた鉄のできるとき、真っ白な雷光がその身を包む』という伝説があります。でも、伝説ではなかったのですね。これがその雷光ですよ、ミノウ様……じゃないのですね、どちら様でしょうか?」
「うむ、我はオウミである。それよりも、そろそろ取り出さなくてよいノか?」
「ああ、そうでした。オウミ様、お礼はあとでゆっくりしますが、今は作業に徹します」
「うむ、それで良いぞ」
そうしてできた鉄を取り出し、水の中に放り込んで冷えたものをゼンシンは準備室に持ってきた。
「ユウさん、できました。これが不純物のない鋼の原料です」
「と言われましても?」
「感動のないやつなノだ」
だって、鉄の塊を見ていったいなにが分かるのかと。そこへヤッサンが休憩に入ってきた。
「お? なんだ。まだ鉄を作ってるのか?」
「ヤッサン、これ。これを見てください。これなんだか分かりますか」
「ん? これって。いつもの鉄の塊じゃないか。少し色が白っぽいかな」
「そうです。でも、これをですね。こうして」
と言いながらゼンシンはその塊を頑丈な作業台の上に乗せて、おもむろにハンマーでぶったたいた。どこかの桃みたいにぱっか~んと割れた。
おいおい、乱暴なやっちゃな。また破片が飛んできたじゃねぇか。あ、口の中に入ったぺぺぺぺ。
「「「おおおおっ」」」
俺を除く3人が同時に感極まった声で叫んだ。また、いつもの仲間はずれである。こんちくしお。
しかし、塊の中から出てきたものを見て、俺もようやく仲間入りをした。
黒い塊の中からでてきたのは、銀色に輝く金属であった。明らかに周りの鉄とは違う。神々しいまでの輝きを持つ金属塊であった。
「ほぉぉぉ。こんな、こんなキレイな鉄ができるものなのか」
すこし乱暴な説明であるが、周りの黒っぽい部分はスラグと呼ばれる酸化鉄に不純物を多く含んだ鉄である。そして割って出てきた銀色に輝く塊こそ、銑鉄(せんてつ)と呼ばれる鋼の原料である。
「これが、本当の純粋な鉄の姿なのですね。オウミ様のおかげでできたのです」
ヤッサンも初めて見たという表情である。
「じゃあ、もしこれで剣を作れば?」
「それだけでも、今までよりはずっと良い剣になるでしょうね」
「ゼンシン、これを俺に譲ってくれ。これで刀を打ってみたい」
「それはダメだヤッサン」
「ユウ……」
「分かっているとは思うが、これはゼンシンの作品であり、しかもまだ量がわずかだ。これはニホン刀の原料にする」
「そうか、そうだ、そうだったな。すまん。あまりに良いものを見たものだから、つい我を忘れてしまった。これをもらったところで、俺には今の仕事がある。使いようもなかったな、あははは」
ヤッサンの無理をした笑いが部屋に響く。しかし一緒に笑えるものなどひとりもいなかった。その心情が痛いほど分かるからだ。さすがの俺もほんのちょっとだけわかる。
「ほんのちょっとじゃダメなノだぞ?」
優秀な職人ならばこそ、この鉄の価値が瞬時に理解できたのだ。だからつい俺にくれと言ってしまった。しかしそれは最初からかなわぬことだった。
「ゼンシン、刀を作るにはこれだけじゃ足りない。これをもっとたくさん作ってくれ」
笑いこそしなかったが、同情することも空気を読むこともなく、たんたんと仕事の話を進めようとするやつ。
ワイやで。
「お前ってやつはもう、どうしていつもそうなノだ!」
「いや、いつもそうって言われましても、これがキャラなんで」
「まだ、1匹も魔物を退治していないノだ。そんなラノベ聞いたことないノだ」
「お前がラノベ言うな。いっそお前を退治したろか」
「経験値を得たこともなくレベル1のお主ごときに、我が退治きゅぅぅぅ」
「このままお前を絞めたら、経験値はどのくらい入るんだろうな」
「よ、よすのだ、止めるのだ。そういうことをしたらダメなノだ。ミヨシが悲しむノだ」
一番困るのは俺だからやらんけどな。ってか、俺が首を絞めたぐらいで、1,400年も生きてきた魔王が死んだりするものか? なんか遊ばれているだけのようにも思えるのだが。
じゃばぁぁぁぁぁ、ぶっしゅぅぅぅぅ。じゅわぁ。
「で、お前はこんなとこでいったいなにをしているわけ?」
「あ、ユウさん、どもです」
轟々と燃えさかる窯の前である。俺のHPがどんどん削られて行くのが分かる。
「どもです、じゃなくて。今日から刀を作ろうという話だったろ?」
「以前にここでお世話になったときから思っていたのですが、どうもここの鉄は不純物が多すぎると思うんです」
は、はぁ。
「それで、鉄の製法を見直しして、もっと純度の高い鉄にしようかと」
は、はぁ? まさかそこからやるつもりなのか? 間に合うのかそれ。剣技大会までもう10日ちょっとしかないのだが。
「それで、どうして水を掛けてんだ?」
「これは、窯の温度が高すぎるような気がしたので、ときどきこうして水をぶっかけているんです」
じゃばぁぁぁぁぁ、ぶっしゅぅぅぅぅ。じゅわぁ。
おいおい、窯に水を掛けるだと? 気がするってだけで、そんなことして大丈夫なのか?
「窯にじゃなくて、鉄に掛けてます。もうそろそろできあがると思うので、ちょっと待っててください」
「そ、そうか。じゃあ、準備室で待ってるな はぁぁあ」
そろそろ限界だ。ててててつわんダッシュっ、で準備室に戻る。
はぁはぁ、ここは涼しくて落ち着くな。しかし、あいつはいったいなにを考えているのだろう。
鋼はすでにあるんだから、それですぐ作り始められると思っていたのだが。いろいろ聞く前に俺の限界がきてしまった。
「まったく根性のないやつなノだ」
「やかましいよ! 体質だから仕方ないだろ」
「しかしあの小僧、いいところをついていると思うノだ」
「どゆこと?」
「ここの鉄は純度が低いな、と我も思っていた」
「そうなのか?」
「うむ、ハルミのレイピアをよく見ると、あれだけ頻繁に削っているのにうっすらとだがサビが出ているのだ」
「え? そうなんか?」
「むしろ、サビを落とすために削っているのかもしれんが、純度の高い鉄ならそんなすぐにはサビないノだ。特にあの鉄からは硫黄の匂いがして臭いノだ。それが原因かもしれぬな」
硫黄は臭わねぇよ、臭うのは硫化水素だ。それにしてもなんつー敏感な鼻だことで。不純物の多い鉄かぁ。ん? 硫黄? 硫黄が多い? 硫黄って言えば水と反応したら硫酸になる……それか!!
「オウミ、偉いぞ。少し謎が解けた。犯人は硫黄だ」
「いや、それほどの、ことでも、ないかな」
魔王が照れるな。可愛いじゃねぇか。つんつんしたろ。
「きゃきゃ、きゃはは、よ、よすのだ。それはもういいから。くすぐったいではないか、きゃはは」
満更でもないご様子で。さて問題はだな、鉄から硫黄をどうやって取り除くかということだが。
「もう、終わりなノか?」
硫黄は鉄の中に不純物として存在している。だが、鉄が溶ければおそらくは酸化物になっているはずだ。
あれ? それなら還元してやればよかったりして? 還元すれば気体となって飛ぶんじゃないか? 還元となれば、これはもうアチラの出番だ、よし!
「急に立ち上がってどうしたノだ?」
「もういちど、こちらの部屋に、突入するぞーー」
「そんな、どこかの探検隊みたいに気合を入れるほどのことか。そこはただ少し暑いだけの部屋なノだ」
「俺が入るには、勢いがいるんだよ。中に入ってアチラに……あれ? 待てよ、そうか。オウミも覚醒魔法を使えるんだよな?」
「そんなもの初歩の初歩ではないか、当たり前なノだ。それがどした?」
「そうだよな。わははははは、そうだそうだ。俺にはタダで使える便利なオウミがいたんだった。忘れてたわははは」
「そのタダで使えるは、もういい加減に外して欲しいノだが。それで、我にどうしろと?」
「ちょっと一緒に来い。炉の中の鉄を還元してくれ」
「炉の中だと? ちょっと待……きゅぅぅぅ、そこをつかむなってのきゅぅぅぅ」
「いいから来いっ」
「ゼンシン、ゼンシン。まだ鉄は出てこないか?」
「あれ、ユウさん。もう少しですけど、どうしたんです……そ、その手に持っているのはあぁぁ???!!?!?」
あ、そういえばオウミはまだ、ゼンシンの前では姿を隠してたんだったか?
「え? は? ほ? へ?」
またそこからやるのか。こっちはそれどころじゃないんだが。
「に、虹色に輝く波動、その高尚なたたずまい? はともかくとして美しい羽根と麗しい容姿。そして愛らしいサイズ。ま、まさかあなた様は」
「きゅう?」
「私です! 以前に1度だけお会いしたことがあります。ゼンシンです。仏師のゼンシンです。ミノウ様!!」
違ごてるでぇ。
「きゅぅ?」
お前もそればっかりか。
「ゼンシン、そんなことはどうでもいい。それよりもだ、鉄はまだ中にあるんだな?」
「そ、そんなことって、ミ、ミ、ミノウ様といえばこの土地の大魔王様で、あらゆる魔物を統べる芸術の守護者ですよ!!」
「ああ、こいつ、ミノウじゃないから」
「え? 違うんですか? そう言われれば、ミノウ様はもう少しオレンジが強い虹色だったような……じゃあ、この高貴な方はいったい?!」
「ああ、もういい。オウミ。この中の鉄にサクッと覚醒魔法をかけろ。鉄が溶けてるうちにやらないと、おそらく意味がない」
「わ、分かったのだ。魔王使いの荒いやつなのだ。ほいっとな」
じゅわ~んと湿った音がした次の瞬間、バチッバツッと猛烈な音がして真っ白の火花が跳び散った。
「おぉっとっと、なんかこっちにも飛んできた、熱っ熱っ、小さいくせに熱っ。それから部屋が暑い、お、俺はもう戻る。あとはゼンシン頑張れ」
「もうなのノか? 早すぎるノだ!」
「わ、沸き花だ……沸き花なのか。これが沸き花か!! すごいすごい、これですよこれ! これが見たかったんです!!」
「そ、そうなノか?」
「この美しい火花こそ、いい鉄ができた証拠なんです。僕は始めて見ました。『優れた鉄のできるとき、真っ白な雷光がその身を包む』という伝説があります。でも、伝説ではなかったのですね。これがその雷光ですよ、ミノウ様……じゃないのですね、どちら様でしょうか?」
「うむ、我はオウミである。それよりも、そろそろ取り出さなくてよいノか?」
「ああ、そうでした。オウミ様、お礼はあとでゆっくりしますが、今は作業に徹します」
「うむ、それで良いぞ」
そうしてできた鉄を取り出し、水の中に放り込んで冷えたものをゼンシンは準備室に持ってきた。
「ユウさん、できました。これが不純物のない鋼の原料です」
「と言われましても?」
「感動のないやつなノだ」
だって、鉄の塊を見ていったいなにが分かるのかと。そこへヤッサンが休憩に入ってきた。
「お? なんだ。まだ鉄を作ってるのか?」
「ヤッサン、これ。これを見てください。これなんだか分かりますか」
「ん? これって。いつもの鉄の塊じゃないか。少し色が白っぽいかな」
「そうです。でも、これをですね。こうして」
と言いながらゼンシンはその塊を頑丈な作業台の上に乗せて、おもむろにハンマーでぶったたいた。どこかの桃みたいにぱっか~んと割れた。
おいおい、乱暴なやっちゃな。また破片が飛んできたじゃねぇか。あ、口の中に入ったぺぺぺぺ。
「「「おおおおっ」」」
俺を除く3人が同時に感極まった声で叫んだ。また、いつもの仲間はずれである。こんちくしお。
しかし、塊の中から出てきたものを見て、俺もようやく仲間入りをした。
黒い塊の中からでてきたのは、銀色に輝く金属であった。明らかに周りの鉄とは違う。神々しいまでの輝きを持つ金属塊であった。
「ほぉぉぉ。こんな、こんなキレイな鉄ができるものなのか」
すこし乱暴な説明であるが、周りの黒っぽい部分はスラグと呼ばれる酸化鉄に不純物を多く含んだ鉄である。そして割って出てきた銀色に輝く塊こそ、銑鉄(せんてつ)と呼ばれる鋼の原料である。
「これが、本当の純粋な鉄の姿なのですね。オウミ様のおかげでできたのです」
ヤッサンも初めて見たという表情である。
「じゃあ、もしこれで剣を作れば?」
「それだけでも、今までよりはずっと良い剣になるでしょうね」
「ゼンシン、これを俺に譲ってくれ。これで刀を打ってみたい」
「それはダメだヤッサン」
「ユウ……」
「分かっているとは思うが、これはゼンシンの作品であり、しかもまだ量がわずかだ。これはニホン刀の原料にする」
「そうか、そうだ、そうだったな。すまん。あまりに良いものを見たものだから、つい我を忘れてしまった。これをもらったところで、俺には今の仕事がある。使いようもなかったな、あははは」
ヤッサンの無理をした笑いが部屋に響く。しかし一緒に笑えるものなどひとりもいなかった。その心情が痛いほど分かるからだ。さすがの俺もほんのちょっとだけわかる。
「ほんのちょっとじゃダメなノだぞ?」
優秀な職人ならばこそ、この鉄の価値が瞬時に理解できたのだ。だからつい俺にくれと言ってしまった。しかしそれは最初からかなわぬことだった。
「ゼンシン、刀を作るにはこれだけじゃ足りない。これをもっとたくさん作ってくれ」
笑いこそしなかったが、同情することも空気を読むこともなく、たんたんと仕事の話を進めようとするやつ。
ワイやで。
「お前ってやつはもう、どうしていつもそうなノだ!」
「いや、いつもそうって言われましても、これがキャラなんで」
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