異世界でカイゼン

soue kitakaze

文字の大きさ
129 / 336

第129話 コマを巡る戦い

しおりを挟む
「弟子とは言っても、ちっとも言うことなど聞かないやつだったノだ。だからいろいろ教えようにも教えられなかったノだよ」
「その節は大変ご迷惑を」

 クラークが平身低頭している。あんなでかくて怖い顔したやつがねぇ。

「ユウ、なんか失礼ないこと思っていないか?」
「い、いやいや、思ってないよ? それよりどうするんだ、ミノウから決算書類を買うか?」
「紙代だけといっても、いくらぐらい払えばいいのだ?」

「こっちはオウミのとこと人口は同じくらいだヨ。だけど会社は半分ほどしかないらしいのだヨ。だから紙も半分でいい。オウミからはいくらもらってたっけ?」

 覚えてないのかーい。ってか、個人への税金はないのか、すごいなここ。じゃあ、俺がいくら儲けても税金なしなんだ、うはうはうは。

(現在のユウの収入はほとんど0だったようなヨ?)

「うちは毎年50万払っているノだ」
「じゃあ、その半分でいいヨ」
「ここの現状を考えると、それでもきついのではないか?」

「ああ、きついな。しかしそのほうがトータルコストは安くなる。お願いしよう」
「まあ、来年にはこの国の収入は倍にはなっているはずだから、楽々払えるようになるだろう」

「ば、倍になる? のか?」
「元が少ないからな、そのぐらいはなるだろう。そのあともしばらくは倍々成長となる見込みだぞ」

「そうなのか。そうなったらいいな」
「これも先行投資だ。初年度は俺の予算で負担してやろう。それでもいいだろ? ミノウ」
「もちろんかまわないのだヨ。よかったな、クラーク」

「お主らにはもう感謝のしようがない。ありがたくその提案には乗らせていただくよ」

 さて、お金の話が済んだところで、ゲーム開始である。

「ちょっと待て、俺のコマは?」
「今は7個しかないので、クラークは我慢しろ」
「ひどいな! おい」

「ユウは冷たいのか冷酷なのか分からないときがあるノだ」
「それ、どっちも同じだから」

「じゃ、行くぞ。せーのくるりんぱっ」

 7人の手からコマが一斉に放たれる。最初からまっすぐ中央に向かうコマもある。外側をぐるって回るコマもある。だがそれはいずれもお盆の傾斜に沿って徐々に中央に寄って行く。そこにあるのは、あらかじめ開けておいた穴だ。

 そこに最初に入ったコマが勝ち。そういうゲームである。軸が長いコマだからこそできるゲームだ。

 しかし、周りにはコマがうじゃうじゃとあり、それがうねうねと動いている。入りそうになると他のコマが邪魔をする。一瞬入ったかのように見えたコマも、すぐに横から来たコマに弾き飛ばされる。

 中央穴を独占するには、その競争に勝たないといけない。だがいずれは決着がつく。すこすこすこーん。あ、入った。

「……これは誰のコマだっけ?」
「しーん」

 そんなオノマトペいらないから。

「我のではないかと思うノだ」
「いや、あの山吹色のコマは我のだヨ」
「いえいえ、あれは私のやつですよ?」

 なんだこら、やんのかこら。おうやってやろうじゃないか。ちょっと私まで混ぜないで! ぼかすか、ぺちぱち。俺のだっての。ばかすか、私のですって。ばちぼち……。

 ぜんたーい、止まれ!

「いっち、に」ぴたっ。

 止まった。乗りがいいなお前ら。

「これは俺が悪かった。お前ら、自分のコマに名前でも番号でもなんでもいいので記入しろ。それがお前らの分身コマだ。他のコマと区別がつくようにすればいい」

「ふむふむ。かきかき。これでいいのかヨ?」
「ミしか書いてないじゃないか。分かるからいいけど」

「私はこんなふうにしたよ」
「ユウコは全部を真っ赤に塗りやがった!? 分かりやすくいいけどな」

「私は花柄をあしらってみました」
「モナカのが一番凝ってるな。芸術家かよ」

「俺のコマはないのか」
「しつこいな! あとで作ってやるから待ってろ」

 それぞれが思い思いにコマに自分の印をつけた。ゲーム再開である。

「そーれくるりんぱっ」

 最初から穴をめがけて回したのはユウコだった。一気に入れてしまおう作戦である。しかし、それが成功する確率はほぼない。同じことを考えているものが他にもいるからだ。すぐに別のコマと衝突して軌道が変わるのである。

 出番の少ないジョウは外側から回り込む作戦にでたようだ。最初に起こる中央での戦いで、皆が疲弊した頃に飛び込もうという算段である。
 しかしこれもうまく行かない。すこし軌道が落ちるだけで、やはり他のコマと当たってしまうからだ。直径25cmしかないお盆の上に7つのコマがある中で、孤高を保つことは難しい。

「行けーー。私のコマー」
「あぁ、今入りそうだったのに、邪魔されたヨ-」
「ああぁぁ、私の倒れちゃったぁ。誰よ!」
「きゃぁぁぁ」
「誰って言われても。コマのしたことだし」
「あぁぁ、ダメだ。ぬるぽ」
「あぁぁ、入るノだ、はいあぁぁぁ邪魔されたぁぁぁ」
「きゃぁぁぁ」
「そこよそこ。そこですっぽり入っちゃいなさい!」
「いけいけいけいけ、ガッ」
「がんばれー。俺の分身コマ!」
「きゃぁぁぁ」
「あぁぁそこまで行ってどうして入らないかなぁ」
「かすったぁぁ」
「あぁ、もうだめぽ」
「きゃぁぁぁ」
「よっしゃーー!! 入った!!!ヨ」

 いろいろ気になる発言があったし、定期的に悲鳴上げているやつもいたが、記念すべき第1回大会の優勝はミノウでした。ぱちぱちぱちぱち。

 予想以上の大盛り上がり。お前らがこんなに楽しそうしているとこ、ここへ来てから初めて見たぞ。

「というお遊びなわけだ。これならある程度の人数で一度に遊べるし、コマを独自に工夫したり装飾を施したり、いろんな楽しみ方が」

「「「「そんなこといいから、早く次をやろう!」」」」

 そこまで夢中かよ!? じゃあ、2回目行くでー。

「あっあっ。入るかぁぁぁ。惜しい」
「なんで私の邪魔をするのよ、もう」
「きゃぁぁぁ」
「まだまだ、もうちょっとがんばれ!」
「そこだ、そこから入るあぁぁぁ、だめか」
「きゃぁぁぁ」
「あぁ、なんでそこではじくノだ!!」
「よっしゃーーー入ったあぁぁ!! 俺の勝ち!」

 待て? なんでクラークが混じってる?

「クラークのやつ、ケントのコマを強奪したノだ。けしからんノだ」
「そうだそうだ。今の勝負は無効だヨ」
「やかましい! 俺の勝ちにケチをつけるな!」

 うむ。クラークまで盛り上がっとる。これは売れる。

「なあ、ユウコ。このお盆というか盤って量産は可能か?」
「そうですね。冬の間はエルフも暇なので、最大なら日に100個ぐらい作れると思いますよ」
「そうか。冬の間というと4ヶ月くらいか。120日×100=1.2万台か。いい線だな」

「え? これも私たちに作らせてもらえるのですか?!」
「ああ、それしかないと思う。そもそもこのコマはエルフにしか作れないのだから、ついでに盤もってことになるだろ。これはセット販売が前提だからな」

「ありがとうございます。里のものも喜びます。でも、あのコマの軸はどうしましょう?」
「ここにある7本で魔鉄はすべて使い尽くしたから、これからはステンレスで作ろう。うちには錆びない鉄というものがあるんだ。それなら長く使える」

「「「錆びない鉄だと?!」」」

 クラーク、ケント、ジョウのそろい踏みである。お前ら仲がいいのな。

「この世にそんなものがあるのか。ホッカイ国は田舎だとは思っていたが、それほど遅れているとは……」
「クラーク、それは違うノだ。ニホン中でも、錆びない鉄があるのはユウのとこだけなノだ」
「え? そうなのですか?」

「ああ、あれも俺が作ったものだ。それで作った包丁はうちの主力商品だよ。1本買わない? お高くしておくけど」
「所長、ここで高値で売る商売ですか?!」

「ユウを赤紙で呼んだのは、俺にとってはとてつもない幸運だったな。ユウの存在を教えてくれたシャインには感謝しかない」
「いや、ステンレス包丁をお前にやるとは言ってないけど」

「勘違いするな。それも含めてユウという人間と知り合ったことが幸運だったという意味だ。よし、俺は決心した!」

「ねぇ、そんなことより続きやろうよ」
「そうなノだ。クラークがインチキした2回目はノーゲームにするべききなノだ」
「早く早く、次なのだ次こそ我が勝つのだヨ」
「私のコマ、キズだらけになっちゃった」

「俺の重大決心よりも、そっちが大事かよ!!」

「「「「「そりゃ、もう」」」」」

 なんだ重大決心って? しかし放っておくとやかましいので、とりあえず3回目行くぞ。くるりんぱっ。

 コマをケントに返して、コマ回しに熱中する連中からも離れて、クラークは言った。

「俺をユウの眷属にしてくれ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

処理中です...