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3 パーティー結成
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「うおりゃあっ!」
気合一閃。アーノルドの豪剣がオークを真っ二つに斬り裂く。スキルの恩恵なのか、以前と比べても破壊力が段違いに増しているようだ。
「チャージ完了! アーノルド、下がって」
ナディアの言葉に反応したアーノルドがオークの群れから距離を置く。
「ウインドスラッシュ!」
強力な風の刃が放たれ、群れたオークが一匹残らず上半身と下半身に両断された。
「…すげえな……」
ナディアの成長っぷりも半端ない。元々優秀な後衛だったが、今はソロでも十分にやっていけるんじゃないかと本気で思う。
今日は二人に連れ出されて狩りに来ているのだが、今のところ俺の出る幕はこれっぽっちもない。多分俺が腐っていると思って気を使ってくれたんだろうが、これはこれでかなり微妙だ。
比べるのは無意味だとわかってはいても、比べずにはいられない。
そして、懊悩は深くなっていく。
その後も二人の無双が続き、俺は単なる見学者になっていた。
「その後、何か新しいことはわかった?」
昼飯時、ナディアが遠慮がちに訊いてきた。
「さっぱり」
お手上げのポーズで答える。
「そっか……」
少しの逡巡の後、ナディアは意を決したように顔を上げた。
「例えケイジのスキルが使えないものだとしても、あたしはケイジとパーティーを組みたい!」
「へ?」
「お、おい、ナディア」
俺の目は点になり、アーノルドは少しだけ慌てた様子を見せた。
「ダメ?」
その上目遣いは反則だろう。ちょっと破壊力がありすぎる。
「…いや、唐突にそんなこと言われてもな……」
「全然唐突じゃないよ。前からずっと言ってたもん」
「う……」
何のてらいもなく正面から来られると、対処に困ってしまう。
「だって、ケイジがいないと外での食事が悲惨なことになるじゃない」
「そこかよ」
苦笑するしかない。
元々俺は料理が好きで、パーティーの食事係を務めることが多かった。実際、そこらのパーティーより美味いものを出していたという自負はある。
そこを評価されたのは嬉しいが、この話の流れだと素直には喜びづらい。
その時、何かが引っ掛かった。
ん? 料理……りょうり……クッキングって、C…だよな? 多分……
「ちょっと待ってくれ」
急いでもう一品作る。ちゃんと「クッキング」と唱えてから。
するとーー
「何これ!?」
「う、美味すぎる!」
どうやら仮説は当たっていたらしい。俺のスキルは「C」がつく言葉のようだ。まあ、本当にそうなのかはもう少し検証が必要だけど、取っ掛かりができたのは間違いない。
「ねえねえ、一体何したのよ。同じ材料なのに、味が全然違うんだけど」
「今までのでも十分に美味かったけど、これはちょっと次元が違うぞ。マジで店を開けるーーどころか大繁盛するぞ」
「もしかして、これがケイジのスキルなの!?」
ナディアに詰め寄られる。ちょっと待て、近いって。
「どうなのよ!?」
「んと…なんつーか、スキルと言えばスキルだし、スキルじゃないと言えばスキルじゃない…かな?」
「何よ、それ」
ナディアの目が物騒な光を帯びる。おちょくったつもりはまったくないのだが、そう取られたらしい。
「しょうがねえだろ。俺にもよくわかんねえんだよ」
「は?」
俺は自分の仮説を二人に説明した。自分でもよくわかっていないので、どうしてもたどたどしいものになってしまったが、何とか最後まで話し終えた。
「じゃあ何? こないだ見たよくわからない文字の着いた言葉をスキルとして使えるってこと?」
「そういうこと、だと思うんだけど」
返答はどうしても歯切れが悪いものになってしまう。
「それが合ってたと仮定して、どんなことができるわけ?」
「それが……よくわかんねえんだ……」
「何で?」
「どんな言葉にCが使われてるのかわかんねえんだ」
正確には思い出せないのだが、そこを話し始めると転生者云々まで広がってしまう。そこには触れたくなかったので、曖昧な言い方にした。
「何それ。それじゃスキル使えないって言ってるのと同じじゃない」
「う……」
まったく反論できない。
「でも、料理の味が上がったのはスキルのおかげなのね」
「多分……たまたま知ってた言葉を言ってみたら当たりだったんだ」
「ふうん」
ナディアは「嘘ついたら承知しないわよ」と強い視線で語ってくる。
多分これは目を逸らしたら負けのやつだよな。秘密にしていることがある分後ろめたかったが、なんとか耐えた。
「…何か釈然としない部分があるけど、まあいいわーーじゃあケイジはあたしたちの料理係ってことでいいわね」
「何でそうなる!?」
「逆にどうする気よ? スキルなしで仕事探すの? 絶対ろくな仕事ないわよ」
「それは……」
切ないが確かにその通りだ。この世界ではスキルを活かせる職業に就くのが普通で、それ以外の道を選ぶと、本来しなくてもいいはずの苦労を強いられることになる。
「いいじゃない。冒険者しながらスキルの手がかり探すことだってできるでしょ」
「…わかったよ」
俺が頷くと、ナディアは満面の笑みを見せる。不覚にも見とれてしまうような笑顔だった。
こうして俺はナディア、アーノルドとパーティーを組むことになった。
気合一閃。アーノルドの豪剣がオークを真っ二つに斬り裂く。スキルの恩恵なのか、以前と比べても破壊力が段違いに増しているようだ。
「チャージ完了! アーノルド、下がって」
ナディアの言葉に反応したアーノルドがオークの群れから距離を置く。
「ウインドスラッシュ!」
強力な風の刃が放たれ、群れたオークが一匹残らず上半身と下半身に両断された。
「…すげえな……」
ナディアの成長っぷりも半端ない。元々優秀な後衛だったが、今はソロでも十分にやっていけるんじゃないかと本気で思う。
今日は二人に連れ出されて狩りに来ているのだが、今のところ俺の出る幕はこれっぽっちもない。多分俺が腐っていると思って気を使ってくれたんだろうが、これはこれでかなり微妙だ。
比べるのは無意味だとわかってはいても、比べずにはいられない。
そして、懊悩は深くなっていく。
その後も二人の無双が続き、俺は単なる見学者になっていた。
「その後、何か新しいことはわかった?」
昼飯時、ナディアが遠慮がちに訊いてきた。
「さっぱり」
お手上げのポーズで答える。
「そっか……」
少しの逡巡の後、ナディアは意を決したように顔を上げた。
「例えケイジのスキルが使えないものだとしても、あたしはケイジとパーティーを組みたい!」
「へ?」
「お、おい、ナディア」
俺の目は点になり、アーノルドは少しだけ慌てた様子を見せた。
「ダメ?」
その上目遣いは反則だろう。ちょっと破壊力がありすぎる。
「…いや、唐突にそんなこと言われてもな……」
「全然唐突じゃないよ。前からずっと言ってたもん」
「う……」
何のてらいもなく正面から来られると、対処に困ってしまう。
「だって、ケイジがいないと外での食事が悲惨なことになるじゃない」
「そこかよ」
苦笑するしかない。
元々俺は料理が好きで、パーティーの食事係を務めることが多かった。実際、そこらのパーティーより美味いものを出していたという自負はある。
そこを評価されたのは嬉しいが、この話の流れだと素直には喜びづらい。
その時、何かが引っ掛かった。
ん? 料理……りょうり……クッキングって、C…だよな? 多分……
「ちょっと待ってくれ」
急いでもう一品作る。ちゃんと「クッキング」と唱えてから。
するとーー
「何これ!?」
「う、美味すぎる!」
どうやら仮説は当たっていたらしい。俺のスキルは「C」がつく言葉のようだ。まあ、本当にそうなのかはもう少し検証が必要だけど、取っ掛かりができたのは間違いない。
「ねえねえ、一体何したのよ。同じ材料なのに、味が全然違うんだけど」
「今までのでも十分に美味かったけど、これはちょっと次元が違うぞ。マジで店を開けるーーどころか大繁盛するぞ」
「もしかして、これがケイジのスキルなの!?」
ナディアに詰め寄られる。ちょっと待て、近いって。
「どうなのよ!?」
「んと…なんつーか、スキルと言えばスキルだし、スキルじゃないと言えばスキルじゃない…かな?」
「何よ、それ」
ナディアの目が物騒な光を帯びる。おちょくったつもりはまったくないのだが、そう取られたらしい。
「しょうがねえだろ。俺にもよくわかんねえんだよ」
「は?」
俺は自分の仮説を二人に説明した。自分でもよくわかっていないので、どうしてもたどたどしいものになってしまったが、何とか最後まで話し終えた。
「じゃあ何? こないだ見たよくわからない文字の着いた言葉をスキルとして使えるってこと?」
「そういうこと、だと思うんだけど」
返答はどうしても歯切れが悪いものになってしまう。
「それが合ってたと仮定して、どんなことができるわけ?」
「それが……よくわかんねえんだ……」
「何で?」
「どんな言葉にCが使われてるのかわかんねえんだ」
正確には思い出せないのだが、そこを話し始めると転生者云々まで広がってしまう。そこには触れたくなかったので、曖昧な言い方にした。
「何それ。それじゃスキル使えないって言ってるのと同じじゃない」
「う……」
まったく反論できない。
「でも、料理の味が上がったのはスキルのおかげなのね」
「多分……たまたま知ってた言葉を言ってみたら当たりだったんだ」
「ふうん」
ナディアは「嘘ついたら承知しないわよ」と強い視線で語ってくる。
多分これは目を逸らしたら負けのやつだよな。秘密にしていることがある分後ろめたかったが、なんとか耐えた。
「…何か釈然としない部分があるけど、まあいいわーーじゃあケイジはあたしたちの料理係ってことでいいわね」
「何でそうなる!?」
「逆にどうする気よ? スキルなしで仕事探すの? 絶対ろくな仕事ないわよ」
「それは……」
切ないが確かにその通りだ。この世界ではスキルを活かせる職業に就くのが普通で、それ以外の道を選ぶと、本来しなくてもいいはずの苦労を強いられることになる。
「いいじゃない。冒険者しながらスキルの手がかり探すことだってできるでしょ」
「…わかったよ」
俺が頷くと、ナディアは満面の笑みを見せる。不覚にも見とれてしまうような笑顔だった。
こうして俺はナディア、アーノルドとパーティーを組むことになった。
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