俺のスキルは頭文字C

オフィス景

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9 Cはまたひとつ進化した

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「何だったんだ、今のは?」

 夢中になって勢いよく終わらせた食事の後、俺は二人に詰め寄られていた。

「カップラーメンって言って、異世界の食いもんだ」

「異世界?」

 俺は二人に全部話した。

 前世の記憶があること。

 スキルに関係するアルファベットが前世で使っていた文字であること。

 記憶が戻れば使えるスキルが増える可能性が高いこと。

 さすがにスペルを知らないとは言いにくかったので、記憶が戻りきっていないということにさせてもらった。

「じゃあケイジの記憶次第で美味しいメニューが増えるってことなの?」

 ナディアがすごい勢いで食いついてきた。

「いや、まあ、美味いものとは限らんけど……」

「可能性はあるわけよね。記憶が問題だってことなら、頭にショック与えたら思い出すかも」

「待て待て待て。何で杖を振りかぶる?」

「思い出すのを手伝おうかと」

「そんな手伝いいらねえからな!?」

 こいつは本気でやりかねん。慌てて距離を取る。

「冗談はともかく、真剣に期待してるからね。美味しいものたくさん思い出してね」

 そう言われても、Cがつく食べ物ってーー

「あ」

「何か思い出した!?」

 ナディアが食いついてきた。

「えーっと、もしかしたら、ってレベルだけど……」

「さあ、やってみよう。今すぐやってみよう!」

 メチャクチャ嬉しそうだな……

 こんなに期待されると断りづらい。チラリとアーノルドに目をやると、こちらもニコニコ顔で待っている。

「先に言っとくけど、ちょっと変わった食べ物だぞ。気に入るかどうかはわからんからな」

「きっと大丈夫。ケイジは信用できなくても、ケイジのスキルは信用できるから」

「ひでえ言われようだな。そんなこと言うヤツに出してやる義理はねえよな」

「冗談にいちいち目くじら立てないの。男らしくドンと構えてなさいよ」

 ナディアの物言いに今更腹を立ててもしょうがない。上手くいくかどうかはわからんが、とにかく試してみよう。

「カレーライス」

 上に向けて広げた掌の上に光の粒子が集まり、俺が想像した物を形作っていく。

 光が消えた後には、皿に盛られたカレーライスがあった。

「おお、できた!」

 食欲をそそるスパイシーな香り。記憶の通りだ。

「美味そうだ」

「ええーっ、何よ、それ」

 ナディアはなぜか嫌そうに顔をしかめている。アーノルドの表情も微妙にひきつっているようだ。

「何かおかしいか?」

「見た目がちょっと……」

「ああ」

 これは苦笑するしかない。何も知らなければ、見た目に抵抗が生まれるのは仕方ないかもしれない。

「じゃあ食べないでおくか?」

「う……」

「まあ、無理に食べろとは言わんよ。俺が食うから」

 一口食べたら、自然と表情が緩む。久方ぶりのカレーはメチャクチャ美味かった。

「美味しいの?」

「最高だね」

「うう……」

 何やら葛藤があるようだ。

「無理に食えとは言わんよ。むしろおまえに取られない分俺の食い扶持が増えてありがたい」

「何をぅ!?」

 挑発に乗ったナディアが荒ぶる。

「そこまで言われたら、女として引くわけにはいかないわね。ちょっと見た目があれだからって何だって言うのよ!」

 何やら勇ましいことを言っているようだが、口調は弱い。自分に言い聞かせているみたいだ。

 少しの間逡巡を見せていたナディアだったが、やがて覚悟を決めたようで、俺からスプーンをひったくった。

「ええい、女は度胸!」

 ガバッと大きくすくったカレーを一口で頬張る。

 最初こそキツく目をつむっていたナディアだったが、すぐに目を真ん丸に見開いた。



「何これ!?   メチャクチャ美味しい!」
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