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8 珍しい夕食
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『黎明の翼』は順調過ぎるくらい順調にステップアップを続けていた。多分あと一つか二つクエストをクリアすれば銀ランクに昇格できるはずだ。
ナディア、アーノルドの強さは既に新人のレベルではなく、個人ランクは二人とも銀ランクだ。ここみたいに小さなギルドだと一人か二人しかいないことも多い。
俺はと言えば、それほど評価は変わっていない。メンバー二人からはサポーターとして高く評価されているが、他人には伝わりにくい、と言うか伝わらない。
というわけで、今日も俺たちは平常運転である。
今日はちょっと遠出で、馬車で二日ほどの距離にある森までモンスターの素材採集に来ている。
目当てはこの森にしか生息しない蜘蛛のモンスター、ポイズンスパイダーである。縫製系の職人から絶大な支持を受ける糸の採集依頼だ。
その他にもこの森には希少価値の高い素材を持つモンスターが多数生息している。せっかくだから色々とゲットするつもりだ。
「いた、ポイズンスパイダーだ!」
いきなり本命に遭遇するとは思わなかったが、このチャンスは逃せない。
「らあっ!」
雄叫びを上げたアーノルドがポイズンスパイダーに突っ込む。
ポイズンスパイダーはアーノルドを絡め取ろうと糸を吐き出した。
「そんなもん食らうか!」
アーノルドの剣が糸を両断する。これはこれで重宝するらしいが、やはり長ければ長いほど素材としての価値は高くなる。
「切りすぎないでね!」
「わかってる! 次ちょっと試してみたいことがある」
続けて吐き出された糸を、アーノルドはわざと剣に巻きつかせた。
「うおりゃあっ!」
何をするかと思ったら、アーノルドは力任せにポイズンスパイダーを振り回し始めた。
「へ?」
俺だけでなく、ナディアもビックリしている。
振り回される勢いでポイズンスパイダーが吐く糸がものすごい勢いで伸びていく。もしかしたら、ポイズンスパイダーもパニックになっているのかもしれない。
「ピギィーーッ」
体内の糸を吐き尽くしたところで、ポイズンスパイダーは弱々しい声を発して絶命した。
「え? こういう退治の仕方ってありなの?」
そもそもポイズンスパイダーが糸を吐き尽くしたら死ぬなんて初めて知った。
「この取り方だと糸がすごくきれいに取れるね」
実際に糸を手に取ったナディアは感心の声をあげた。
「これなら依頼者さんも喜んでくれるわね」
その後も狩りは順調に進み、これまでにないくらいの成果が挙がった。当然、夜営の際も気持ちが弾む。
「今日は豪勢にいきたい気分ね」
期待のこもった視線が飛んでくる。
「豪勢ってのとはちょっと違うけど、おもしろいものではあるぞ」
「お、期待できそうだな」
「何、また新しいCを思いついたの?」
「ああーーカップラーメン」
唱えると、眩い光と共にこの世界では見たことのない物体が現れた。
「何これ?」
筒状の容器を受け取ったナディアは不思議そうにいろんな角度から眺めている。
「ふたを開けて、お湯を入れて、三分待ってくれ。そしたら食えるから」
やって見せると、二人も後についてくる。
「いい匂いがしてきたぞ」
「ホントだ。すごく食欲をそそる匂いだけどーーこれ、何の匂い?」
「鶏ガラと醤油の匂いだ」
「何それ?」
「まあ食ってみてくれ」
ふたを剥がすと、本能を刺激しまくる匂いが立ち上った。
「ふわあ」
「やべえ。メチャクチャ美味そうだ」
「熱いから気をつけてな」
言いながら一足先に麺をすする。記憶の中の味よりも遥かに美味く感じる。久しぶりのせいか?
何はともあれ、カップラーメンがCであることを思い出した自分を褒めてやりたい。
「美味い!」
俺の様子を伺っていた二人も、麺を口に運んだ。
「!?」
「何じゃこりゃ!?」
「美味いだろ?」
激しく頷くと、二人は一心不乱にラーメンを食べ始めた。どうやら気に入ったみたいだな。
俺も久しぶりの味を堪能し、幸せな夕食を終えたのであった。
ナディア、アーノルドの強さは既に新人のレベルではなく、個人ランクは二人とも銀ランクだ。ここみたいに小さなギルドだと一人か二人しかいないことも多い。
俺はと言えば、それほど評価は変わっていない。メンバー二人からはサポーターとして高く評価されているが、他人には伝わりにくい、と言うか伝わらない。
というわけで、今日も俺たちは平常運転である。
今日はちょっと遠出で、馬車で二日ほどの距離にある森までモンスターの素材採集に来ている。
目当てはこの森にしか生息しない蜘蛛のモンスター、ポイズンスパイダーである。縫製系の職人から絶大な支持を受ける糸の採集依頼だ。
その他にもこの森には希少価値の高い素材を持つモンスターが多数生息している。せっかくだから色々とゲットするつもりだ。
「いた、ポイズンスパイダーだ!」
いきなり本命に遭遇するとは思わなかったが、このチャンスは逃せない。
「らあっ!」
雄叫びを上げたアーノルドがポイズンスパイダーに突っ込む。
ポイズンスパイダーはアーノルドを絡め取ろうと糸を吐き出した。
「そんなもん食らうか!」
アーノルドの剣が糸を両断する。これはこれで重宝するらしいが、やはり長ければ長いほど素材としての価値は高くなる。
「切りすぎないでね!」
「わかってる! 次ちょっと試してみたいことがある」
続けて吐き出された糸を、アーノルドはわざと剣に巻きつかせた。
「うおりゃあっ!」
何をするかと思ったら、アーノルドは力任せにポイズンスパイダーを振り回し始めた。
「へ?」
俺だけでなく、ナディアもビックリしている。
振り回される勢いでポイズンスパイダーが吐く糸がものすごい勢いで伸びていく。もしかしたら、ポイズンスパイダーもパニックになっているのかもしれない。
「ピギィーーッ」
体内の糸を吐き尽くしたところで、ポイズンスパイダーは弱々しい声を発して絶命した。
「え? こういう退治の仕方ってありなの?」
そもそもポイズンスパイダーが糸を吐き尽くしたら死ぬなんて初めて知った。
「この取り方だと糸がすごくきれいに取れるね」
実際に糸を手に取ったナディアは感心の声をあげた。
「これなら依頼者さんも喜んでくれるわね」
その後も狩りは順調に進み、これまでにないくらいの成果が挙がった。当然、夜営の際も気持ちが弾む。
「今日は豪勢にいきたい気分ね」
期待のこもった視線が飛んでくる。
「豪勢ってのとはちょっと違うけど、おもしろいものではあるぞ」
「お、期待できそうだな」
「何、また新しいCを思いついたの?」
「ああーーカップラーメン」
唱えると、眩い光と共にこの世界では見たことのない物体が現れた。
「何これ?」
筒状の容器を受け取ったナディアは不思議そうにいろんな角度から眺めている。
「ふたを開けて、お湯を入れて、三分待ってくれ。そしたら食えるから」
やって見せると、二人も後についてくる。
「いい匂いがしてきたぞ」
「ホントだ。すごく食欲をそそる匂いだけどーーこれ、何の匂い?」
「鶏ガラと醤油の匂いだ」
「何それ?」
「まあ食ってみてくれ」
ふたを剥がすと、本能を刺激しまくる匂いが立ち上った。
「ふわあ」
「やべえ。メチャクチャ美味そうだ」
「熱いから気をつけてな」
言いながら一足先に麺をすする。記憶の中の味よりも遥かに美味く感じる。久しぶりのせいか?
何はともあれ、カップラーメンがCであることを思い出した自分を褒めてやりたい。
「美味い!」
俺の様子を伺っていた二人も、麺を口に運んだ。
「!?」
「何じゃこりゃ!?」
「美味いだろ?」
激しく頷くと、二人は一心不乱にラーメンを食べ始めた。どうやら気に入ったみたいだな。
俺も久しぶりの味を堪能し、幸せな夕食を終えたのであった。
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