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42 勇者召喚
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「勇者召喚?」
ある日耳に飛び込んできた言葉はそこそこ衝撃的だった。
「どうも神聖国で召喚の儀式が行われたらしいんです」
そう言ってアスカさんは顔をしかめた。
「そう言えば、アスカさんは召喚されたの?」
「ううん、よくあるパターンで、トラックに轢かれたところでの転移」
「あ、それってよくあるんだ」
俺もそのパターンだな。
久しぶりにその時を思い出した。
美咲のやつ、元気でやってるかな。
二度と会うことはないだろうけど、元気でいてくれればいいな。女神様が言うには助かったってことだったもんな。
「ゲンさん、どうしました?」
「ちょっと思い出してた」
「ゲンさんも転移でしたっけ?」
「うん。同じくトラック事故」
「ホントに定番なんですね。こんなに事例があるなんて」
「まったくだ」
そこは笑うしかない。
「で、わざわざ召喚するってーと、どうもキナ臭さしか感じないんだが」
召喚した連中が良からぬことを考えてるとしか思えない。
「戦争とかにならなきゃいいけどな」
「どうもそういうわけにはいかなさそうじゃな」
アレックスさんが渋い表情でやってきた。
「神聖国がアリストへ侵攻したらしい」
「アリストって?」
「神聖国の隣国です」
「マジか……」
言葉が出てこない。戦争って、こんなに簡単に始まっちまうもんなのかよ。
「ここまでする以上、アリストだけで満足することはあるまい。我が国も周辺国と協力して、迎撃体勢を整えねばなるまい」
アレックスさんの声は苦渋に満ちていた。
「アレックスさんも戦場に出るんですか?」
「そうなるかもしれんな。自分で言うのも何だが、わしが陣頭に立てば、兵の士気も少しは上がるだろう」
大将が先頭に立つなら、士気が上がらんわけがない。だが、それはかなりのリスクを伴うものだ。
できればアレックスさんのような人には危険を犯して欲しくはない。
「俺も一緒に行っていいですか?」
「ゲンタ殿が?」
「これでもドラゴンスレイヤーですから。それなりに役に立つとは思いますよ」
戦争に参加するのは本意ではないが、この際仕方ないだろう。こっちから手を出すというのなら参加しないが、降りかかる火の粉は払わにゃならん。
「それは心強い限りだな。その時はよろしく頼む」
「お任せください」
俺は胸を叩いて見せた。
「ゲンさんが強いのは知ってるけど、あんまり無理はしないでね」
カレンさんが気遣わしげな目を向けてくる。
「魔物相手と人間相手じゃ勝手が違うと思うから」
言われてみれば確かに、魔物狩りをしたことはあっても、人間を相手に戦ったことはなかったな。
「十分気をつけるよ」
と話が一段落したところでメシにしよう。腹が減っては戦もできないし、何よりも美味いものは人を幸せにする。
「難しい話はそこまで。飯にしよう。みんな、何食いたい?」
「ハンバーグ!」
「餃子」
「生姜焼き。肉厚め」
「カレーが食べたい、かも」
遠慮のないリクエストが飛び交う。
「わかったわかった。今日は何でも作ってやるよ」
肩を回して、俺は調理に取りかかった。
ある日耳に飛び込んできた言葉はそこそこ衝撃的だった。
「どうも神聖国で召喚の儀式が行われたらしいんです」
そう言ってアスカさんは顔をしかめた。
「そう言えば、アスカさんは召喚されたの?」
「ううん、よくあるパターンで、トラックに轢かれたところでの転移」
「あ、それってよくあるんだ」
俺もそのパターンだな。
久しぶりにその時を思い出した。
美咲のやつ、元気でやってるかな。
二度と会うことはないだろうけど、元気でいてくれればいいな。女神様が言うには助かったってことだったもんな。
「ゲンさん、どうしました?」
「ちょっと思い出してた」
「ゲンさんも転移でしたっけ?」
「うん。同じくトラック事故」
「ホントに定番なんですね。こんなに事例があるなんて」
「まったくだ」
そこは笑うしかない。
「で、わざわざ召喚するってーと、どうもキナ臭さしか感じないんだが」
召喚した連中が良からぬことを考えてるとしか思えない。
「戦争とかにならなきゃいいけどな」
「どうもそういうわけにはいかなさそうじゃな」
アレックスさんが渋い表情でやってきた。
「神聖国がアリストへ侵攻したらしい」
「アリストって?」
「神聖国の隣国です」
「マジか……」
言葉が出てこない。戦争って、こんなに簡単に始まっちまうもんなのかよ。
「ここまでする以上、アリストだけで満足することはあるまい。我が国も周辺国と協力して、迎撃体勢を整えねばなるまい」
アレックスさんの声は苦渋に満ちていた。
「アレックスさんも戦場に出るんですか?」
「そうなるかもしれんな。自分で言うのも何だが、わしが陣頭に立てば、兵の士気も少しは上がるだろう」
大将が先頭に立つなら、士気が上がらんわけがない。だが、それはかなりのリスクを伴うものだ。
できればアレックスさんのような人には危険を犯して欲しくはない。
「俺も一緒に行っていいですか?」
「ゲンタ殿が?」
「これでもドラゴンスレイヤーですから。それなりに役に立つとは思いますよ」
戦争に参加するのは本意ではないが、この際仕方ないだろう。こっちから手を出すというのなら参加しないが、降りかかる火の粉は払わにゃならん。
「それは心強い限りだな。その時はよろしく頼む」
「お任せください」
俺は胸を叩いて見せた。
「ゲンさんが強いのは知ってるけど、あんまり無理はしないでね」
カレンさんが気遣わしげな目を向けてくる。
「魔物相手と人間相手じゃ勝手が違うと思うから」
言われてみれば確かに、魔物狩りをしたことはあっても、人間を相手に戦ったことはなかったな。
「十分気をつけるよ」
と話が一段落したところでメシにしよう。腹が減っては戦もできないし、何よりも美味いものは人を幸せにする。
「難しい話はそこまで。飯にしよう。みんな、何食いたい?」
「ハンバーグ!」
「餃子」
「生姜焼き。肉厚め」
「カレーが食べたい、かも」
遠慮のないリクエストが飛び交う。
「わかったわかった。今日は何でも作ってやるよ」
肩を回して、俺は調理に取りかかった。
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