43 / 44
43 勇者乱立
しおりを挟む
「また勇者召喚?」
まず自分の耳を疑った。
「今度はどこでだ?」
帝国、神聖国と来て、次はどこがやらかしたんだ?
「イーハ皇国だそうだ」
アレックスさんは苦虫を噛み潰している。
「どこです?」
初めて聞く名前だ。
「北の国だな。うちと国交はないはずだ。知られていないことが多い国だな」
「勇者召喚、流行りなんですか?」
「恐らくは抑止力だろうな」
「ああ、なるほど」
地球でいう核兵器と同じ理論か。おまえらがそれを使うなら、こっちも同じことをやり返すぞってやつね。
一応バランスが保たれたように見えるが、それは続く保証の何もない、極めて危ういものである。
「この国にそういう動きはないんですか?」
理由が抑止力ということならば、当然動きはあるのだろうが。
「必要なかろう。ここにドラゴンスレイヤーがいてくれるからな」
「と言われても、実際召喚勇者の強さってどれくらいのレベルなんですか?」
「ドラゴンを単独討伐できるのはそうおらんよ」
それを聞いて安心した。それなら俺でも抑止力になれそうだ。
「でも、もう戦争になってしまっているところもあるんですよね」
「うむ。神聖国が隣国に攻め入っているな」
「何で人間同士で争うんかね」
「ホントね。みんなで仲良くできればいいのに」
「きっと美味いもの食ってないんだろうな」
「「「は?」」」
何言ってんだ、こいつ。
そんな視線が刺さってくる。
そんなにおかしなこと言ったか?
「美味いもの食えてれば、誰かと争おうなんて気は起きないと思うんだがな」
そう言うと、アレックスさんが吹き出した。
「確かにそうかもしれんの。食が満たされれば、心も満たされる。ここにいればそれを実感できる」
「そうですよ。俺としてはもっと魔物食を広げるべきだと思いますけどね」
この近辺でこそ魔物食は普及しているが、一般的には浸透しているとは言い難い。魔物食が普及すれば、慢性的な食糧不足の解決策にもなる。まさにいいことづくめだ。
「ということで、俺は今まで以上に魔物料理道に精進することにします」
そう言いながらランチを提供する。今日のメニューは酢豚。肉はもちろんオーク肉である。
「おお、これも美味いな」
「独特の甘酸っぱさが素敵ですね。とても美味しいです」
先帝陛下御夫妻には好評のようだ。
ちなみに、俺は酢豚にパイナップルを入れる派だ。酸味に深みが加わると思うんだよな。
「もう少しお肉が多いと嬉しいです」
リクエストに応えてアスカさんの皿に肉を追加する。
「美味しいですぅ」
幸せいっぱいの表情。
「確かにこれだけ満たされていれば、誰かと争おうなどとは思わんな」
アスカさんの表情を見て、思わずといった感じでアレックスさんが呟く。
「やだ、恥ずかしいです」
照れるアスカさんは可愛かったとだけ言っておこう。
まず自分の耳を疑った。
「今度はどこでだ?」
帝国、神聖国と来て、次はどこがやらかしたんだ?
「イーハ皇国だそうだ」
アレックスさんは苦虫を噛み潰している。
「どこです?」
初めて聞く名前だ。
「北の国だな。うちと国交はないはずだ。知られていないことが多い国だな」
「勇者召喚、流行りなんですか?」
「恐らくは抑止力だろうな」
「ああ、なるほど」
地球でいう核兵器と同じ理論か。おまえらがそれを使うなら、こっちも同じことをやり返すぞってやつね。
一応バランスが保たれたように見えるが、それは続く保証の何もない、極めて危ういものである。
「この国にそういう動きはないんですか?」
理由が抑止力ということならば、当然動きはあるのだろうが。
「必要なかろう。ここにドラゴンスレイヤーがいてくれるからな」
「と言われても、実際召喚勇者の強さってどれくらいのレベルなんですか?」
「ドラゴンを単独討伐できるのはそうおらんよ」
それを聞いて安心した。それなら俺でも抑止力になれそうだ。
「でも、もう戦争になってしまっているところもあるんですよね」
「うむ。神聖国が隣国に攻め入っているな」
「何で人間同士で争うんかね」
「ホントね。みんなで仲良くできればいいのに」
「きっと美味いもの食ってないんだろうな」
「「「は?」」」
何言ってんだ、こいつ。
そんな視線が刺さってくる。
そんなにおかしなこと言ったか?
「美味いもの食えてれば、誰かと争おうなんて気は起きないと思うんだがな」
そう言うと、アレックスさんが吹き出した。
「確かにそうかもしれんの。食が満たされれば、心も満たされる。ここにいればそれを実感できる」
「そうですよ。俺としてはもっと魔物食を広げるべきだと思いますけどね」
この近辺でこそ魔物食は普及しているが、一般的には浸透しているとは言い難い。魔物食が普及すれば、慢性的な食糧不足の解決策にもなる。まさにいいことづくめだ。
「ということで、俺は今まで以上に魔物料理道に精進することにします」
そう言いながらランチを提供する。今日のメニューは酢豚。肉はもちろんオーク肉である。
「おお、これも美味いな」
「独特の甘酸っぱさが素敵ですね。とても美味しいです」
先帝陛下御夫妻には好評のようだ。
ちなみに、俺は酢豚にパイナップルを入れる派だ。酸味に深みが加わると思うんだよな。
「もう少しお肉が多いと嬉しいです」
リクエストに応えてアスカさんの皿に肉を追加する。
「美味しいですぅ」
幸せいっぱいの表情。
「確かにこれだけ満たされていれば、誰かと争おうなどとは思わんな」
アスカさんの表情を見て、思わずといった感じでアレックスさんが呟く。
「やだ、恥ずかしいです」
照れるアスカさんは可愛かったとだけ言っておこう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる