愚兄剣帝 ~頭が悪いと実家を追放されたけど、この剣があれば生きていけます~

オフィス景

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2 規格外の新人

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「ブライアントさん、いますか?」

    倉庫の入口からフィーナが声をかけると、奥から筋骨隆々とした大男が現れた。

「おう、嬢ちゃんか。どうした?」

「素材の買取りをお願いします」

「おう、じゃあ素材をーーって、手ぶらじゃねえか」

「あ、ストレージ持ちなんで」

    言いながら素材を出していく。

「すげえな。ストレージ持ちなんて。久しぶりに見たぜ」

    ブライアントさんが軽い口笛を吹く。

    ストレージというのは所謂亜空間収納のことで、結構稀少価値の高いスキルである。ストレージの性能はピンキリで、容量も全然違う。ちなみに俺のは容量無限大に加えて時間停止機能もついた最高級のストレージだ。

    そこから素材を次々と引っ張り出す。

「おお、サイクロプスにミノタウロスだと!?   しかも複数!?」

    ブライアントさんが驚いた声をあげる。多分ゴブリンやオークだと思ってたんだろうな。でも、この段階でこんなに驚かれたら、この先がちょっと怖い。

「…まだあるのか?」

    ブライアントさんの顔がひきつってきた。そろそろ止めといた方がいいのかな?

「じゃあこれ最後で」

    これまでで一番大きな素材を取り出す。

「ワイバーン!?」

    悲鳴が上がった。



「…俺はもうどうしていいかわからんよ……」

    ブライアントさんは疲れきったようにポツリと呟いた。

「…これで全部でいいんだな?」

「あ、はい」

    本当はまだ地竜が一匹収納されているが、それは言わない方が良さそうだな。

「わかった。量が量だけに少し時間がかかる。待ってるか?」

「その間に簡単な依頼を受けてきます。夕方に伺えばいいですか?」

「それまでには終わらせとくーーあんまり変なモノ狩ってくるなよ?」

「あはは、善処します」

    こればっかりは巡り合わせだからな。何とも言えん。ゴブリンにしか遭わないかもしれないし、ドラゴンとぶつかるかもしれないし、出たとこ勝負になるから、約束はできない。でもまあブライアントさんなら、嫌な顔をしながらも、しっかり仕事してくれるだろう。そんな信頼感がある。

「じゃあよろしくお願いします」

    後を託して受付へ戻る。今日の依頼を見るが、低ランクで受けられる依頼に大したものはない。早くランクを上げたいが、こればっかりは地道にやっていくしかない。

「俺のランクだと薬草採取とかかな」

「そうですね。討伐依頼はEランクからになりますね」

「ちなみにさ、採取中に魔物に遭遇して、それを討伐したらどうなるの?」

「むちゃくちゃグレーなところ突いてきますね」

    フィーナはものすごく嫌な顔をした。「おまえ絶対それやる気だろ」という目で俺を睨んでくる。

 「依頼ではないので、ポイントにはなりません。ただ、素材の買取は可能です」

「えー、ポイントにならないの?」

    追及すると、フィーナは苦笑いを浮かべた。

「建前上はね。公的に認めちゃったら、無茶する人が後を絶たなくなっちゃうでしょ」

「そうだな。でもそれを俺に言っちゃってよかったの?」

「何を今更」

    フィーナのジト目が怖い。

「規則破る気満々のクセに」

「いやいやそんなことは」

「だまされませんよ。きちんと見張らせてもらいますーーということでジェフくんはあたしの専属になります」

「専属?」

「担当ってことです。そうすればあたしが上手くやってあげます」

「じゃあお願いしようかな」

「はい」

    俺はフィーナと握手を交わした。

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