愚兄剣帝 ~頭が悪いと実家を追放されたけど、この剣があれば生きていけます~

オフィス景

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1 追放

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「役立たずはこの家にはいらん。出ていけ」

「へ?」

    突然の追放宣言。反応が鈍くなってしまったのはしょうがないだろう。

「おまえみたいなバカをいつまでも養ってることはできんのだ」

    随分な言い草だが、学校の成績が良くなかったのは事実なので、その点については反論しない。

    それよりもーー

「いいの?」

    思わず聞き返していた。

    こんな家、出ていきたくてしょうがなかったのだ。どうやって消えるか知恵を絞っていたところだったので、そっちから追放してくれるのは望外の幸運だ。

「何だ、その反応は。自分が役に立ってるとでも思っているのか?」

    そう言って俺を軽蔑の視線で貫いてくるのは、実の父親にして王都でも有数の大商会であるクラマー商会の会長ヘリオス・クラマーだ。

    ちなみに俺はその長男で、ジェフ・クラマー。もっともすぐに姓の方は捨てることになりそうだけど。

「おまえはまったく商会に貢献していない。少しはカイルを見習え」

    カイルってのは俺の弟。俺と違ってよく勉強ができる。俺よりも商会の跡取りに向いているのは間違いない。

    俺としては跡取りに興味はないので、おやじの気が変わらない内にとっとと出ていくことにしよう。

「申し訳ございません。長い間お世話になりました。すぐに出ていきます」

「ふん、ようやく厄介払いができるわ。今後、クラマーの姓を名乗ることは許さん。わかったな」

「わかりました」

    おやじの捨て台詞を背に、俺は十九年を過ごした家を後にした。



    ずっと出ていくことを考えていたので今後の身の振り方については青写真がある。

    その第一歩として、俺は冒険者ギルドを訪れた。勉強はからっきしだが、剣にはそれなりに自信がある。冒険者として身を立てるのが一番手っ取り早いというのが結論だった。

「あれ、ジェフじゃない。どうしたの?」

    受付嬢から声がかかった。俺の幼なじみのフィーナだ。底抜けに明るい笑顔が持ち味で、ギルド受付嬢の中でも人気があるらしい。

「冒険者登録したいんだが」

「え?   じゃあーー」

    フィーナは俺が家を出たがっていたことを知っている。

「ああ、無事に追放されたよ」

「無事に追放っていうのも変な表現ね」

    とは言え、それ以外に言い表しようがない。

「とりあえず登録頼む」

「はいはい。じゃあこれに記入してくれるかな」

    渡された用紙に必要事項を記入して返却する。

「ちょっと待っててね。すぐにギルドカード作ってくるから」

    一旦奥に引っ込んだフィーナは、待つほどもなく戻って来た。

「これがギルドカード。初登録は無料だけど、紛失して再発行ってなったら有料だから気をつけてね。初登録だからF級からのスタートになるわ。だからカードも白。ランクアップして更新されればカードの色も変わるわ。他に何か訊きたいことはある?」

「登録前に討伐した魔物って買い取ってもらえるのか?」

「大丈夫よ。量は?」

「結構ある」

「じゃあ倉庫の方がいいかもね。案内するからついてきて」

    席を立ったフィーナに案内されて、俺は素材の買取倉庫へ向かった。

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