両親が出会わなくなってしまって自分の存在が脅かされたので、過去へ行ってみた

オフィス景

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奇跡の治療

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 部屋の空気は最悪だった。
 病室のベッドの上。葉山辰巳は険悪な空気を撒き散らしていた。とは言え、今日は直接的な被害を受けている人間は昨日に比べれば格段に減っていた。
 昨日までは六人部屋にいたのが、個室に移ってきたせいである。
 一番入口に近いベッドに寝て、入ってくる人間全て――医者であろうが他の患者の見舞客であろうが委細構わず地獄目で睨みつける。相手が目を逸らせばそれだけで済むのだが、なまじ目を合わせてしまうと、今度は低い唸り声を上げて威嚇する。理屈の通じないその姿は獣そのものとナースステーションなどでも問題視されていた。
 入院からこっち、ずっとこの調子なので、ついに同室の患者たちからクレームがつき、辰巳は今日個室へと移されたのである。
 それでも辰巳の様子は全く変わらない。定時の検診や食事を運んできてくれる賄い婦さんなどにも凶悪な表情を見せていた。
 ただ、協調性というか、周囲に対する気配りゼロのこの男、ある理由から病院の関係者から嫌われてはいない。むしろ同情混じりの生温かい視線を受けている。実はそれがまた辰巳をいらつかせているのだが、これはもうどうしようもない。
 もちろん辰巳が同情されているのにはそれなりの理由がある。
 葉山辰巳は、日本サッカー界において将来を嘱望された、若手ではナンバーワンのストライカーだった。先のワールドユース選手権では得点王を獲得し、日本代表の準優勝に貢献。その後五輪代表にもノミネートされ、順調にステップアップしつつあるところであった。
 つい先日までは。
 出場権獲得に大きく貢献した五輪代表での合宿中、チームメイトと激突した際に彼の膝は壊れてしまったのだ。
 右膝十字靭帯断裂。
 サッカーに限らず、肉体の接触を伴うスポーツをする者にとっては耳に馴染みのある怪我である。が、足が命のサッカー選手にとって、この怪我は致命傷になることも多い。このせいで以前の輝きを取り戻せぬまま選手生命を終えていった者たちは枚挙に暇がない。
 辰巳に下された宣告も「全治六ヶ月。歩けるようにはなるだろうが、元通りトップレベルでのプレーができるようになるかどうかは微妙」という非情なものだった。
 それでも辰巳はめげなかった。基本的な性格が前向きな――と言うよりも前しか見れないようなこの男は、非常な宣告に対しても敢然と戦いを挑んだ。間違いなく患者の中で一番と誰もが認める勤勉さでもってリハビリに取り組み、それに応えるかのように右膝も驚異的な回復力を示した。
 このまま行けば復帰も秒読みかと言われていたのだが、やはり心のどこかに焦りがあったのだろう。ある日、医師の指示を遥かに超えるメニューを敢行した辰巳の膝は、再び嫌な音を立てた。
 今度は更に深刻だった。「全治一年。サッカ-については絶望的」との診断を告げられるに至り、さすがの辰巳もめげた。
 これで全ては終わった。
 そう思った。
 間近に迫ったオリンピックも、その先に思い描いていた海外生活も、全ては泡のようにあっけなく消えてしまった。
 期待が大きかっただけに、それがくじけた時の落ち込みも激しい。そんなわけで辰巳の態度も「しょうがないよね。まだ若いんだし」と、大目に見られていたのであった。
「くそっ、おもしろくねえ」
 大人気とは無縁の呪詛に満ちた呟き。こんなところへ見舞客など来ようものならいい餌食である。が、その心配はほとんどなかった。再起不能を宣告されて以降、辰巳への見舞いはがくんと減っていた。そしてそれもまた辰巳の気分にマイナスの影響を与えていたのである。
 結局俺はサッカー以外にゃ用無しってことかい。
 これまでの友人づきあいがいかに薄っぺらなものであったかを思い知らされた格好で、辰巳の気分は果てしなくブルーだった。あまりにブルーが濃くなりすぎて、かなりブラックに近づいている。
 こんな時の常として、辰巳の思考はどんどんと泥沼にはまっていく。しまいには自分はこの世の中に必要ない人間じゃないのかと言うところまで突っ走ってしまう。
とめどなく暴走する辰巳の思考を断ち切ったのは、控えめなノックの音だった。
「あ!?」
 反射的に凶悪な声が出る。既に習慣となってしまっているようだ。
「失礼します」
 声と共にドアを開け、病室に顔をのぞかせたのは、辰巳と同じ年頃の少女だった。
「誰だ?」
 見覚えのない顔だった。清楚な印象の少女である。外見だけなら好みのタイプだったが、今は恋を語らう気分ではない。辰巳の表情が険を増した。
 だが、少女はそれを恐れる風もなく辰巳に微笑みかけた。
「こんにちは」
「……」
 辰巳は答えない。ただ地獄目で睨みつける。
 その表情を見て、なぜか少女は更に表情を和らげた。なんだかほっとしたような表情にも見える。
「?」
 さすがに辰巳もいぶかしんだ。
 自分の地獄目で睨まれた者の反応は、これまで大体二つに分かれていた。慌てて目を逸らすか、負けじと睨み返してくるか、である。が、睨み返してきた者でも、たいていが三秒ともたずに目を逸らした。微笑まれたのはいまだかつて記憶にない。
「葉山辰巳さんね」
「見りゃわかるだろ」
「あ、しょってるんだ。他の人がみんな自分のこと知ってると思ってる」
 少女は悪戯っぽく笑った。辰巳に対する遠慮も恐れも全く感じられない。
「ぐ――」
 辰巳は言葉を詰まらせた。普通なら怒鳴りつけるところだが、この少女が相手だとどうも調子が狂う。
「ま、いいからいいから」
 少女は勝ち誇ったような笑顔を浮かべながらベッドに近づいてくる。
「ちょっと待っててね。今、治してあげるから」
「は?」
 辰巳は間抜け面をさらした。
「治すって…何をだ?」
「脚に決まってるでしょ。頭の方までは面倒見きれないわ。そっちは自分でやって」
「あ!?」
 ただでさえ凶悪な地獄目が更に凄みを増す。もう少し鍛えれば、睨むだけで相手を金縛りにする、いわゆる邪眼になりそうだ。
 だが無論少女が金縛りに遭うようなことはなかった。ベッドの脇まで来ると、乱暴に掛け布団を剥ぎ取る。
「何しやがる!」
 辰巳は声を荒げた。
「傷見なきゃ治せないでしょ」
「何言ってんだ。おまえ、正気か?」
 これ以上ないくらい刺々しい口調で辰巳は言った。医者にも見離された膝である。こんな小娘がどうこうできるはずがない。
「あたりまえでしょ。何よ、治してもらいたくないわけ?」
 あくまでも少女は自信満々である。口調もかなり砕けた感じになった。まるで古くからの知り合いでもあるかのように親しげで、遠慮のない口調である。
「…何しようってんだ?」
 気圧されたように辰巳が訊いた。自分がやや劣勢なのが自覚できる。
「あなたの脚に魔法をかけてあげる」
「魔法?」
 辰巳の眉が寄る。
 やっぱ駄目だ、こいつ。正気じゃない。
 辰巳は確信した。これ以上関わらないのが得策だ。間違いない。
「今ぱっぱっと治してあげるからね」
 そう言って少女は辰巳の右膝に手を伸ばした。
「触るな!」
「何よ!」
 少女は不満そうに唇を尖らせた。
「信用できない。俺に触るな」
 辰巳がそう言った瞬間、少女が柳眉を逆立てた。
「何ですってぇ。もう一度言ってごらんなさい」
「何度だって言ってやる。魔法なんてわけわからんものが信用できるか。そもそもおまえが信用できない。何が狙いだ? 放っといても俺はもうサッカ-できないんだぞ」
「何よそれ。あたしがあなたを潰しに来たとでも思ってるわけ?」
「そう考えるのが一番自然だ」
「不自然極まりないわ。自分で言ってたでしょ。誰が手を下すまでもなく、あなたはもう終わっちゃってるのよ。このままならね。そうしないためにあたしは来たの」
「……」
 窺うように辰巳は少女を見た。認めたくはなかったが、少女の言うことは正しい。今のままでは自分に未来はないのだ。
「いいから信用して。あなたに治ってもらわなきゃいけないわけがあるの」
 少女はこの上なく真剣だった。
 しばし躊躇した辰巳だったが、すぐに決断した。どうせ今以上悪くなることはないのだ。ここは好きなようにさせてみて、本当に治ればめっけもんぐらいの感覚でいい。このへんの割り切りのよさ、切り替えの速さはFWとして大成するためには欠かせない性格である。
「わかった。信用する。やってくれ」
「オッケー!」
 少女は嬉々として辰巳の膝を覗き込んだ。
 すぐに悲鳴が上がる。
「うわ、これはすごいわ」
 傷跡は想像以上に壮絶だった。何針入っているのか数えるのも嫌になるくらいの縫い目が生々しく残っている。
「なにせ再起不能だからな」
 できるものならやってみろと言わんばかりの挑発的な態度。
 少女はにっこり微笑んだ。
「でも、少し時間かかっちゃうけど、この程度なら何とかなりそうだわ」
「え?」
 辰巳はぽかんとした。傷を見せればひくだろうと思ったのだが、少女は事も無げに治ると言ってのけた。
「ま、まじ?」
 毒気を抜かれて素に戻ってしまう。
「そのために来たって言ってるじゃない」
 あっさり言って、少女は右掌を患部に当てた。
 すぐにそこから脚全体に温かい流れが生じた。
「お」
 思わず声が漏れる。
「わかる?」
「ああ。いい気分だ」
「このまま十分くらい我慢してて」
「それだけでいいのか!?」
 辰巳はおったまげた声を上げた。
「これも言ったでしょ。魔法をかけるって」
 確かに聞いた。もしこのまま本当に治るのなら、まさしく魔法だ。
「…あんた、何者だ……?」
「内緒」
 小悪魔的な笑み。少女に対する見方が変わったせいか、ドキッとするほど可愛らしい。
「どうして?」
「魔法だって言ったでしょ。あんまりおおっぴらにするわけにいかないの」
「むむ……」
 そういう言われ方をされてしまうと、それ以上の追求はしにくい。
 しばしまったりとした時間が流れる。
 少女は興味深そうに辰巳の顔を見つめている。
 最初は素知らぬ顔をしていたのだが、そのうちに観察するような視線に耐え切れなくなり、辰巳は眉間にしわを寄せた。
「俺の顔に何かついてるか?」
 美少女にうっとりと見つめられるような男前でないことは、誰よりも自分が承知している。女の子とのおつきあいの経験がないわけではないが、相手はいずれも「サッカー選手の葉山辰巳」に憧れていただけであった。辰巳個人ではなく、そのブランドが目当てだったのだ。
 そのためだろう。これまでのつきあいは、いずれも長続きしなかった。辰巳自身が嫌になってしまったのだ。そのため、今は完全にフリーの状態である。正直、彼女が欲しいとも思わない。
 だが、少女の視線はこれまでの相手が辰巳に向けたものとは何かが違うような気がしていた。上手く言えないが、値踏みされている感じがない。そんな風に辰巳は感じていた。
「変わってないな、と思って」
 少女はニコニコしながら言う。
「変わってない?」
 辰巳は眉をひそめた。その言い方は以前に何処かで会っているということだろう。しかし、辰巳にはその記憶はなかった。これだけの美少女であるから、会っていれば当然覚えているはずだが、記憶の片隅にも少女の顔はなかった。
「…何処かで会ったか?」
「それも内緒」
 少女は澄まして答える。
「何だよ、それ」
 少々ムッとしたように辰巳は言った。
「何処かで会ってるんなら、それくらい教えてくれたっていいだろ」
「楽しみは後にとっておいて」
 少女は邪気のない笑みで辰巳の質問を封じる。
「じゃあせめて名前だけでも教えてくれ。そしたら思い当たるかもしれない」
「だからあ、じきにわかるってば。とりあえずは魔女とでも呼んで」
「魔女?」
「そう。魔法使いだからね」
 にっこりと微笑む。
「何なんだよ。そっちばっかり納得して、こっちは何もわからないってのはあんまり気分いいものじゃないぜ」
 そう言うと、少女は不意に甘えるような仕種を見せた。
「お願い。今日この場では許して。次の時に必ず話すから」
 何で今日じゃ駄目なんだと更に問い詰めることもできたが、辰巳はそうしなかった。少女の甘える仕種にころっと参ってしまったのだ。
「わかった。もう訊かない」
「ありがと」
 少女は微笑むと、傷から手を離して立ち上がった。
「これでもう大丈夫。十分もすれば歩けるようになってると思うわ。でも、落ちちゃった筋肉なんかは元に戻せないから、そっちはトレーニングで何とかしてね」
「もうこれでいいのか?」
 辰巳の表情は半信半疑といったところである。
「すぐにわかるわ。じゃあ、頑張ってね、オリンピック。っと、その前に来週の試合か。インターハイで頑張らないと、オリンピックもないもんね」
 何の未練も見せず、少女は病室から立ち去っていこうとする。
「なあ、本当にまた会えるのか?」
「大丈夫。それは間違いないわ」
「わかった。その時を楽しみにしてるよ」
「じゃあね」
「ああ。サンキュー」
 感謝の言葉に、少女は極上の笑みを見せた。
 少女のいなくなった病室で、辰巳は魂を抜かれたようにボーッとした。
 何だったんだろうな、今の?
 いなくなってみると、少女は幻だったのではないか、煮詰まった自分の頭が生み出した幻覚だったのではないかという疑惑が頭をもたげてくる。
 不思議だった。
 少女の存在も、自分の反応も、何もかもが不思議だった。
 その時、辰巳は右足から違和感が消えているのに気づいた。怪我をして以来、ずっと重りのようにつきまとっていた違和感がきれいさっぱりなくなっている。
「え?」
 おそるおそる辰巳は床に足を下ろしてみた。とりあえず足をつけても痛みはない。
 ゆっくりと体重をかけてみる。
 痛まない。
 目が丸くなる。
 ためしに軽くジャンプしてみた。
 着地しても大丈夫だった。
 顔が輝いた。
「痛くない!」
 その場で三歩ダッシュ。
 全然平気だった。
「治ってる!!」
 歓喜は絶叫となって迸った。
 叫びを聞きつけた看護婦が何事かと病室に駆け込んでくる。そして、自分の足で跳ね回っている辰巳を見て仰天した。
「は、葉山さん!?」
「治った! 治った!!」
 辰巳は看護婦の手を取って踊り狂った。
 少女の言葉は嘘ではなかった。再起不能と言われた辰巳の膝は完璧に治っていた。後はコンディションを戻すだけである。
 魔法って言ってたけど、本当だったな。
 今度会ったら何と礼を言おう。
 辰巳は早くもそんなことを考えていた。
 
 
「上手くいったのか?」
 正面玄関を出たところで待っていた慎也は、出てきた満里奈を見て安堵の息をついた。
 満里奈に言われて待っていたのだが、辰巳を逆上させることになったらどうしようと気が気ではなかったのだ。
「ええ。明日にはサッカーできるようになってるわよ」
「助かる」
「さーて、言うこときいてもらいましょうか」
「何すりゃいいんだ?」
「泊めて」
「へ?」
「慎也くんのところに泊めて欲しいの。今日寝る場所がないのよ」
「ちょ、ちょっと待て。何でそうなるんだ?」
「何よ、あたしに野宿しろって言うの?」
「い、いや、そうは言ってねえけど」
「どうせ一人暮らしなんでしょ。けちけちしないで泊めてよ」
「けちけちしてるわけじゃねえ。一人暮らしだから問題なんじゃねえか」
「問題? 何が?」
「あんたは女で、俺は男だ」
「大丈夫。自分の身は自分で守るから」
 満里奈はまるで意に介していない。
「多分あたしのほうが強いから大丈夫よ」
 そこまで虚仮にされると、男として黙ってはいられなくなる。
「あんまり男を馬鹿にするもんじゃないぜ」
「してないわよ。大体、がたがた言う資格はないんだからね。あたしの言うことなんでも聞いてくれる約束でしょ」
「ぐ――」
 それを言われると弱い。ちゃらちゃらしている慎也だが、約束を破るという行為に対しては心理的な抵抗が大きいのだ。
「こんな可愛い女の子と一緒に住めるのよ。普通なら喜ぶところでしょ」
「状況がありえないだろ。普通じゃねえよ」
「あー、うるさい。これはもう決定事項。行くわよ」
 先に立って満里奈は歩き出す。渋々といった感じで慎也が後に続く。
「そう言えば、冷蔵庫の中身はちゃんとある?」
「へ?」
 唐突な話題の転換に、慎也はついていけない。
「お腹すいちゃった。作ってあげるから、材料提供して」
「できんのかよ」
「馬鹿にしないでよね。これでも料理はちょっとしたものなんだから」
「へえ、じゃあお手並み拝見といこうか」
「いいわよ。あまりの美味しさにほっぺた落とさないようにね」
 古典的な表現に、慎也は微妙な表情を見せる。
 と、そこで慎也はいつの間にか泊めることになってしまっていることに気づき、舌打ちした。
 まあいいか。一日だけのことだし。
 慎也は自分に言い聞かせた。
 
 
 その日、満里奈が冷蔵庫の残り物で作った炒飯は素晴らしく美味しかった。
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