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ウォンテッド
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辰巳は苛立っていた。
その日、掲示板に貼り出された一枚の紙は、校内に大きな波紋を投げかけた。
「…ウォンテッド?」
「今どき賞金首かよ」
「まあ葉山らしいって言えばらしいけどな」
貼り紙を見ながら生徒たちが口々に言う。
掲示板に貼り出されていたのは、恐ろしいばかりに写実的な一枚の絵であった。精緻に描き込まれた美少女の顔は今にも微笑みそうな生気に溢れていたのだが、その下に記された『WANTED』の文字と『見つけた者は葉山まで』の但し書きがその愛らしさを台無しにしていた。
「この女、何やらかしたんだ?」
「わからんけど、かわいそうにな。相手が葉山じゃ逃げ切れねえよ」
この一言が、生徒たちの辰巳に対する認識を端的に表していた。
「ところで、これってウチの生徒なのか?」
「わかんねえからこうして情報募集してんだよ」
突然後ろからかけられた声に野次馬たちが振り返ると、そこに怖い顔をした辰巳が仁王立ちしていた。
「うわあっ、葉山!?」
野次馬が一斉に距離をとる。まるで磁石が反発したような反応だった。
「ばけもんが出たような驚き方するな」
辰巳は憮然とした表情で言った。
「で、この女なんだが、心当たりねえか?」
「い、いや。俺たちにはちょっと…なあ?」
「あ、ああ。見たことないな」
生徒たちはびくびくしながら答える。迂闊なことを言って逆鱗に触れたりしたら――それを知らない者は校内にはいない。
「そうか。もしこれに似た女見かけたら教えてくれや」
「…この女、何したんだ?」
「でっけえ借りがあんだよ」
「借り?」
この言葉が誤解を生んだ。朝のうちに全校に「あの葉山辰巳に無礼をはたらいた女がいて、葉山がそれを探している」というニュースはあまねく知れ渡った。
遅れて登校してきた慎也は、その貼り紙を見て、ぎょっとした顔を見せた。
「な、何だ、こりゃ?」
それは満里奈以外の何者でもなかった。
「た、辰巳、これは一体何だ?」
「手配書だ」
「それはわかる。何でこんなもんがここに貼ってあるのか聞いてんだ」
「何を慌ててる? 心当たりでもあるのか?」
「そ、そんなもんはねえ!」
常の慎也らしからぬ慌てぶりは疑問を誘うはずだったが、ちょうどその時辰巳に話しかけてきた教師がいたために見逃してもらえた。
おいおい、やばいんじゃねえか、これ。
慎也の背筋を嫌な汗が流れる。
なぜ辰巳がこんなことをしたのかはわからなかったが、どう考えてもいい徴候とは思えない。
実はこの賞金首、いまだに慎也の部屋に居座っている。
曰く、「帰る方法が見つかるまではここにいる」とのことであり、慎也が自由を取り戻す目処は、今のところたっていない。
復活した辰巳の大爆発により、無事にインターハイの出場権を掴むことには成功したのだが、何かと注文の多い居候のために、慎也の気はなかなか安まることがなかったのだ。
辰巳が満里奈を探していることは知っていたので、教えてもいいかどうかお伺いを立てたことがあったのだが、返答は「絶対駄目。そんなことしたら切り落とす」と宣告された。何を切り落とすのかは明言されなかったのだが、響きの不吉さに負けて、慎也は口をつぐむことにしたのだった。それを今更知ってると申し出るのもはばかられる。なぜ今まで黙っていたといじめられるのがオチだ。
でもおかしいな。どっちかと言うと、恩を受けた形だよな。何だって賞金首なんて話になるんだ?
もともと辰巳の行動は意味不明なことが多いが、今回は極めつけのように思われる。
ともあれ、見つからなければ辰巳が苛つく。辰巳が苛つけば自分たちにも被害が及ぶ。その方程式は生徒全員が理解していたので、辰巳が言うところの魔女探しに皆が奔走することになった。
「なあ、どうして辰巳に話しちゃいけないんだ?」
訊きながら慎也は夕食のメニューである豚の生姜焼きを頬張った。絶妙にタレのからまった肉は、ご飯が進む美味しさである。
「お、美味いな、これ」
「あたりまえじゃない。誰が作ったと思ってるの」
「料理だけは凄腕だよな」
「何か言った?」
聞こえないように言ったつもりだったのだが、満里奈には丸聞こえだったようだ。睨まれて、慎也は小さく肩をすくめた。
「何も。それよりもいい加減言わせてくれよ。辰巳の機嫌が悪くてこっちはかなわねえんだから」
正直、今の部の雰囲気はよくない。帯電しているかのような空気が蔓延し、誰もが萎縮してしまっているのだ。
それを何とかするには、辰巳を落ち着かせるしかない。そして辰巳を落ち着かせるには魔女と再会するしかない。
「あたしは単なる代理なの」
「代理?」
「そう。オリンピックで頑張れば会えると思うよ」
「その方向で操るしかないか……」
「慎也くんなら操るの簡単でしょ」
「んなわけあるか。何やらかすかまったく予測できねえんだぞ。上手く操ってるつもりでもいつ脱線するか予断をゆるさねえんだ。気が安まんねえよ」
「難儀な人ね」
「そう思うなら名乗り出てくれ。っていうか、その本物の魔女とやらがどこの誰なのか教えてくれ」
「それは駄目。そんなことしたら、歴史が変わっちゃう。あたしはね、できるだけ干渉しないようにしないといけないの」
「俺には十分すぎるほど干渉してるぞ」
「それはいいのよ。大勢に影響ないから」
「勝手なこと言ってやがる」
「何よ。十分恩恵受けてるじゃない。誰が慎也くんの栄養管理してると思ってるわけ?」
それを言われると慎也も弱い。満里奈の作る料理は、味だけでなくバランスもしっかり考えられており、そのおかげで、慎也の体調もすこぶる良いのだ。
「身体作る時期に無茶苦茶な食生活してると、後々響くことになるんだからね。プロで長くやっていこうっていう人なんだから、そのへんしっかりしなくちゃ駄目だよ」
「は? プロ?」
慎也はきょとんとした顔をした。
「誰がプロになるんだ?」
「慎也くん」
「俺、プロになるつもりはねえぞ」
「えー、どうして?」
「俺程度じゃプロは無理だよ。世の中もっと上手いヤツはいっぱいいるから。それとも何か、未来の世界じゃ俺はスーパースターにでもなってるのか?」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
満里奈的には言葉を濁さざるを得ない。未来の結果を教えてしまうのは、明らかに過干渉だ。
「プロなんていろいろ制約多そうだからな。俺は誰にも縛られたくねえの」
「……」
何と言っていいかわからず、満里奈は沈黙する。
この人、本当に慎也さんなの?
満里奈の知る慎也とはあまりにも違いすぎるのだ。第一に、こんなにちゃらんぽらんではない。満里奈が慎也に対して抱いていたイメージは「謹厳実直」というものだった。何よりもサッカーが好きで、一途という表現がしっくり来るくらいに打ち込んでいた。そんな慎也が好きだったのだ。
しかし、今目の前にいる慎也はそれとはかけ離れている。その発言からはサッカーに対する熱意も感じられなければ、女性に対する誠意もない。
このままでは未来が変わってしまう。そう思いながらも、満里奈に打つ手はなかった。
その日、掲示板に貼り出された一枚の紙は、校内に大きな波紋を投げかけた。
「…ウォンテッド?」
「今どき賞金首かよ」
「まあ葉山らしいって言えばらしいけどな」
貼り紙を見ながら生徒たちが口々に言う。
掲示板に貼り出されていたのは、恐ろしいばかりに写実的な一枚の絵であった。精緻に描き込まれた美少女の顔は今にも微笑みそうな生気に溢れていたのだが、その下に記された『WANTED』の文字と『見つけた者は葉山まで』の但し書きがその愛らしさを台無しにしていた。
「この女、何やらかしたんだ?」
「わからんけど、かわいそうにな。相手が葉山じゃ逃げ切れねえよ」
この一言が、生徒たちの辰巳に対する認識を端的に表していた。
「ところで、これってウチの生徒なのか?」
「わかんねえからこうして情報募集してんだよ」
突然後ろからかけられた声に野次馬たちが振り返ると、そこに怖い顔をした辰巳が仁王立ちしていた。
「うわあっ、葉山!?」
野次馬が一斉に距離をとる。まるで磁石が反発したような反応だった。
「ばけもんが出たような驚き方するな」
辰巳は憮然とした表情で言った。
「で、この女なんだが、心当たりねえか?」
「い、いや。俺たちにはちょっと…なあ?」
「あ、ああ。見たことないな」
生徒たちはびくびくしながら答える。迂闊なことを言って逆鱗に触れたりしたら――それを知らない者は校内にはいない。
「そうか。もしこれに似た女見かけたら教えてくれや」
「…この女、何したんだ?」
「でっけえ借りがあんだよ」
「借り?」
この言葉が誤解を生んだ。朝のうちに全校に「あの葉山辰巳に無礼をはたらいた女がいて、葉山がそれを探している」というニュースはあまねく知れ渡った。
遅れて登校してきた慎也は、その貼り紙を見て、ぎょっとした顔を見せた。
「な、何だ、こりゃ?」
それは満里奈以外の何者でもなかった。
「た、辰巳、これは一体何だ?」
「手配書だ」
「それはわかる。何でこんなもんがここに貼ってあるのか聞いてんだ」
「何を慌ててる? 心当たりでもあるのか?」
「そ、そんなもんはねえ!」
常の慎也らしからぬ慌てぶりは疑問を誘うはずだったが、ちょうどその時辰巳に話しかけてきた教師がいたために見逃してもらえた。
おいおい、やばいんじゃねえか、これ。
慎也の背筋を嫌な汗が流れる。
なぜ辰巳がこんなことをしたのかはわからなかったが、どう考えてもいい徴候とは思えない。
実はこの賞金首、いまだに慎也の部屋に居座っている。
曰く、「帰る方法が見つかるまではここにいる」とのことであり、慎也が自由を取り戻す目処は、今のところたっていない。
復活した辰巳の大爆発により、無事にインターハイの出場権を掴むことには成功したのだが、何かと注文の多い居候のために、慎也の気はなかなか安まることがなかったのだ。
辰巳が満里奈を探していることは知っていたので、教えてもいいかどうかお伺いを立てたことがあったのだが、返答は「絶対駄目。そんなことしたら切り落とす」と宣告された。何を切り落とすのかは明言されなかったのだが、響きの不吉さに負けて、慎也は口をつぐむことにしたのだった。それを今更知ってると申し出るのもはばかられる。なぜ今まで黙っていたといじめられるのがオチだ。
でもおかしいな。どっちかと言うと、恩を受けた形だよな。何だって賞金首なんて話になるんだ?
もともと辰巳の行動は意味不明なことが多いが、今回は極めつけのように思われる。
ともあれ、見つからなければ辰巳が苛つく。辰巳が苛つけば自分たちにも被害が及ぶ。その方程式は生徒全員が理解していたので、辰巳が言うところの魔女探しに皆が奔走することになった。
「なあ、どうして辰巳に話しちゃいけないんだ?」
訊きながら慎也は夕食のメニューである豚の生姜焼きを頬張った。絶妙にタレのからまった肉は、ご飯が進む美味しさである。
「お、美味いな、これ」
「あたりまえじゃない。誰が作ったと思ってるの」
「料理だけは凄腕だよな」
「何か言った?」
聞こえないように言ったつもりだったのだが、満里奈には丸聞こえだったようだ。睨まれて、慎也は小さく肩をすくめた。
「何も。それよりもいい加減言わせてくれよ。辰巳の機嫌が悪くてこっちはかなわねえんだから」
正直、今の部の雰囲気はよくない。帯電しているかのような空気が蔓延し、誰もが萎縮してしまっているのだ。
それを何とかするには、辰巳を落ち着かせるしかない。そして辰巳を落ち着かせるには魔女と再会するしかない。
「あたしは単なる代理なの」
「代理?」
「そう。オリンピックで頑張れば会えると思うよ」
「その方向で操るしかないか……」
「慎也くんなら操るの簡単でしょ」
「んなわけあるか。何やらかすかまったく予測できねえんだぞ。上手く操ってるつもりでもいつ脱線するか予断をゆるさねえんだ。気が安まんねえよ」
「難儀な人ね」
「そう思うなら名乗り出てくれ。っていうか、その本物の魔女とやらがどこの誰なのか教えてくれ」
「それは駄目。そんなことしたら、歴史が変わっちゃう。あたしはね、できるだけ干渉しないようにしないといけないの」
「俺には十分すぎるほど干渉してるぞ」
「それはいいのよ。大勢に影響ないから」
「勝手なこと言ってやがる」
「何よ。十分恩恵受けてるじゃない。誰が慎也くんの栄養管理してると思ってるわけ?」
それを言われると慎也も弱い。満里奈の作る料理は、味だけでなくバランスもしっかり考えられており、そのおかげで、慎也の体調もすこぶる良いのだ。
「身体作る時期に無茶苦茶な食生活してると、後々響くことになるんだからね。プロで長くやっていこうっていう人なんだから、そのへんしっかりしなくちゃ駄目だよ」
「は? プロ?」
慎也はきょとんとした顔をした。
「誰がプロになるんだ?」
「慎也くん」
「俺、プロになるつもりはねえぞ」
「えー、どうして?」
「俺程度じゃプロは無理だよ。世の中もっと上手いヤツはいっぱいいるから。それとも何か、未来の世界じゃ俺はスーパースターにでもなってるのか?」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
満里奈的には言葉を濁さざるを得ない。未来の結果を教えてしまうのは、明らかに過干渉だ。
「プロなんていろいろ制約多そうだからな。俺は誰にも縛られたくねえの」
「……」
何と言っていいかわからず、満里奈は沈黙する。
この人、本当に慎也さんなの?
満里奈の知る慎也とはあまりにも違いすぎるのだ。第一に、こんなにちゃらんぽらんではない。満里奈が慎也に対して抱いていたイメージは「謹厳実直」というものだった。何よりもサッカーが好きで、一途という表現がしっくり来るくらいに打ち込んでいた。そんな慎也が好きだったのだ。
しかし、今目の前にいる慎也はそれとはかけ離れている。その発言からはサッカーに対する熱意も感じられなければ、女性に対する誠意もない。
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