異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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168 激闘

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 一直線に魔族に突っ込む。

 虚を衝かれたか、一瞬だけ手が止まった魔族だったが、すぐに攻撃を再開してきた。

 ただ、相変わらず制御が甘いので、かわしながら距離を詰めることはできた。

 とは言え、それは紙一重の話であり、少しでも気を抜けば一発でお陀仏になりかねない危険な攻撃だ。

 こんな時、遠距離の攻撃手段があればいいなと切実に思うのだが、非常に残念なことに俺には魔法の適性はないんだ……

 まあ、ないものねだりしててもしょうがないんで、自分にできることをする。

 複雑な機動を駆使して間合いを詰める。一歩間違えれば自分の足がこんがらがってしまいそうなステップだったが、何とか破綻なく懐を取れた。

「しっ!」

 双剣を振り抜く。

 魔族の青い血が飛び散る。

 一気に畳み掛ける。限界まで手数を増やして魔族を追い込む。

 このまま押しきれるか、と思った時だった。

「危ないっ!」

 耳に届いたシルヴィアの声に、俺は反射的にバックステップを踏んでいた。

 同時に、胸に熱い痛みが走る。

「がっ!?」

 魔族の爪で切り裂かれたのだ。血が飛沫くが、こんなもんで済んでよかった。シルヴィアの警告がなければ、一撃でやられていたかもしれん。

「コータロー!」

 シルヴィアが飛ばしてくれた治癒魔法が、一瞬で傷を塞いでくれる。

  しかし、せっかく詰めた間がまた開いてしまった、もう一度やり直しだ。

 しかも、魔族の方は冷静さを取り戻したっぽい。ちとヤバいかも。

 しゃーない。消耗が激しいから、あんまり使いたくないんだけど、出し惜しみしてやられちまったら、それこそアホだ。

 意識を目に集中する。

 途端に右目が熱を帯びる。

「くうっ」

 身体の内側から灼かれる感覚にはなかなか慣れない。はっきり言って不快だ。

 ただ、その分得られる効果は絶大だ。

 強化された目で魔族を見ると、その右腰と左右のふくらはぎが光って見えた。

 …そこかよ……
 
 外見が人型だと、ついつい頭やら胸やらを狙っちまうが、それじゃ駄目らしい。

「では改めて」

 とは言え、いきなり急所を狙うのは下策だろう。まずは今まで通り頭狙い。

 嫌な笑いを顔に貼りつけた魔属は、今度は自ら間を詰めてきた。

 完全に勝った気でいるのが伝わってくる。弱点がバレているとは思っていないんだろう。

 すぐに吠え面かかせてやるぜ。

 と思ったのだがーー

 この魔族、思ったよりもずっと強い。これまでやりあった魔族と比べても桁違いに強い。

 ミネルヴァに施してもらった身体強化をフル活用してもついていくのがやっとだ。って言うか、これがなければ瞬殺されてた。

「くそっ」

 防戦一方で反撃のきっかけが掴めない。せっかく弱点がわかっても攻撃できなきゃ話にならん。

「コータロー!」

 悲痛な声が聞こえる。

 心配するなと言いたいところだが、この状態じゃあ強がりにもならない。

 かわしそこねた魔族の爪に二の腕を浅くだが切られた。

 すぐさまシルヴィアの治癒魔法で癒されるが、その頻度は増す一方で、このままではジリ貧だ。
 
 やるしかないか。

 これも身体の負担が大きいので、できれば避けたかったのだが、そうも言っていられないな。

「ーーミネルヴァ、頼む!」

 準備はしていたのだろう。すぐさま身体強化の魔法が重ね掛けされた。

 身体中がカッと熱くなる。

 力が溢れ出す感覚。じっとしていられない。何でもできそうな気分に包まれるが、勘違いしちゃいけない。この全能感には時間制限がある。しかもそれはかなり短いのだ。

 本能の命じるままに反撃に転じる。

 突如としてスピードとパワーを増した俺の動きに、魔族はついてこれなかった。

 脇を抜けながら右腰、返す刀で左のふくらはぎを斬る。

 十分な手応え。

 耳をつんざくような叫び声を上げて、魔族は倒れた。

 だが、俺の方もこれ以上は無理だった。まともに立っていられず、その場に尻もちをついてしまう。

「…まさか俺が人間ごときに負けるとはな……」

 苦しそうな息をしながら魔族は口を開いた。

「だがな、俺に勝ったからと言っていい気になるなよ。俺は幹部の中では一番弱いんだからな」

 はい、テンプレ来ましたよ。こういう台詞って、ホントに言うヤツいるんだな。

「貴様の情報は魔族全体に行き渡った。今から全ての魔族が貴様の命を狙う。覚悟しておけ。これ以降貴様に安息の日は訪れん」

「はっ、今更だな」

 そう、今更なのだ。何が変わるわけでもない。

「いつでも来いや。俺は逃げも隠れもしねえから」

 そう言って、最後の急所ーー左のふくらはぎに刃を立てると、魔族は息絶え、煙となって消えた。

 消えた跡には、拳大の紫色に光る石が残された。

「何だ、こりゃ?」

 拾ってみると、背筋がぞわっとした。かなりヤバい物のようだ。

「魔石を遺すということは、かなり上位の魔族だったようですね」

 近づいてきたツブラが言った。

「魔石?」

「その説明は後でしましょう。まずは休んでください」

 言われて、半端ない疲労感に気づく。身体が自分のものではないようだ。指一本動かすのも難儀だ。

「わりぃ、ちょっと休むわ」

 シルヴィアたちが駆け寄ってくるのを見ながら、俺は意識を手放した。

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