異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

文字の大きさ
176 / 179

176 風神脚

しおりを挟む
「…コータロー、今のって……」

 カズサさんが目を丸くしている。

「本当に魔人だったんすかね。えらく弱かったんだけど」

「「「いやいや!」」」

 総ツッコミを受けた。

「今のはどう見てもコータローがおかしかったって」

「そうだよ。今のは人間が出せるスピードじゃなかったぞ」

「あたし、目の前から人が消えるの初めて見たわーー見たって言うか、見えなかったんだけど……」

 そこまで言われるか?   自分じゃそんな感じはまったくなかったが……

「魔人の動きが鈍かったんじゃないの?」

 同意を求めてシルヴィアたちを見たが、三人共に目を逸らされてしまった。

 シルヴィアたちまでこの反応ってことは、恐らく間違いないんだろうが、何で急にこんなことになったんだ?

「ねえコータロー、スキルはどうなってる?」

 首を傾げながらツブラが訊いてきた。

「スキル?」

 そう言えばそんなのもあったな。最近全然気にしてなかったけど。

 早速ステータスを確認してみる。

 するとーー



『風神脚』



 と出た。

「おお」

 なかなかカッコいいじゃないか。あの病気に罹患はしてないはずだが、なんだかくすぐられるものがあるぞ。

「何かあったの?」

「『風神脚』だって」

「「「おおー!」」」

 どよめく。

「何かすごそう」

「神の名前がつくスキルってすごいんじゃない?」

「それならあの早さも納得だな」

 みんなは褒めてくれるのだが、なんとなくピンとこない。自分の力のような気がしないのだ。

 ふと左腕に重みを感じた。

 顔を向けると、思い詰めたようなシルヴィアが俺の腕をつかんでいた。

「どうした、シルヴィア?」

「……」

 上手く言葉にできない様子のシルヴィアは、小さく首を振った。

「そりゃあ不安にもなるわよね。本当なら戦いになんて出てほしくないのに、どんどん深みにはまってってるようにしか見えないもんね」

 ユキノさんの苦笑混じりの言葉に、シルヴィアは小さく頷いた。

「と言われてもなあ……」

 この状況で前線に出ないということはありえない。何と答えていいか、正直わからなかった。

「その話は後にしましょう。少なくとも今ここでする話ではないわ」

「ですね」

 カズサさんの言葉に頷く。確かに敵地に等しい場所で余裕かましてる場合じゃない。

 探索に戻ったが、そこから先はさくさく進んだ。時折加減を間違えて壁にぶつかりそうになったりしたが、ほとんどのケースで俺のスピードは圧倒的で、反応を許さぬ接近からのオリハルコンの剣の一振りでケリがついた。

「…すごいわね」

「俺たちの出番がないな」

 スキルに馴染むために任せてもらったんだが、『風神脚』は想像以上にすごいスキルだった。これまで苦戦してきた魔人をまったく寄せ付けずに完封できてしまうのだ。

「こいつはすげえな」

 これは間違いなく俺の戦闘力を数段上に引き上げてくれるものだ。戦闘力不足を感じることの多かった俺にとっては願ってもないスキルだった。

 だから、俺は有頂天になっていた。万能感すらあった。

 決してそうではないのだが、今の俺は力を振るうことしか考えられなかった。

しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...