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11 初仕事

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 駆け込んで来た男は、そのままの勢いでルミさんの前にやって来た。俺よりは年上だろうが、まだ若そうだ。

「あら、オランドさん。どうしたんですか、そんなに慌てて」

「大至急馬を手配できないか!?」

「馬ですか?」

 困った感じにルミさんの眉が寄る。

 シルヴィアから教えてもらったこの世界の事情だと、馬は希少だったはずだ。王宮にも五頭もいなかったと思う。

「心当たりは全部当たったんだが、全て出払ってしまっていて……」

「そうですか……」

「ルミちゃんだけが頼りなんだよ。ルミちゃんの顔の広さで何とかならないか!?」

 こうやって緊急時に頼られてるところを見ると、ルミさんは本当に仕事はできるらしい。

 ただ、そのルミさんをもってしても、馬の手配は手に余るようだ。困り果てている。

「急ぎの荷なんですか?」

「今日中にこれをセリアに届けなければならないんだ」

「今日中にセリアって……馬でも無理ですよ!?」

「しかし、今日中にこれを届けなければ、セリアの商会が潰されてしまうんだ。そうなれば、百人以上が路頭に迷うことになる……」

「……」

 場の空気が重くなる。

「セリアって遠いの?」

 首を突っ込んでいいか迷ったが、とりあえず訊いてみた。

「普通は歩いて一日半というところです。ですが、もう日が傾きかけています。馬を手配できたとしても、夜道は無理が利きませんので今日中というのは……」

 一時間に四キロで八時間歩けば一日三十二キロ。五割増しで約五十キロってところか。こないだの感触なら何とかなるかな……

「行けるかもしれない」

「「え!?」」 

 ルミさんとオランドさんの素っ頓狂な声が重なった。

 頭の中でした計算をルミさんに確認すると、概ね間違いないとのお墨付きをもらえた。

「その距離なら多分行けると思うけど、どうする?」

「こちらの方は?」

 訝しげなオランドさん。まあ、この反応が普通だよな。

「今日冒険者になったコータローさんです」

「今日!?」

 …そりゃ驚くだろう。そこは嘘でも少し盛って話すところじゃないのか?

「確かにまだ何の実績もありませんが、コータローさんは絶対大物になります。あたしの勘がそう言ってます。どうしますか?」

「むむう…ルミちゃんのお勧めか……しかし、人間があの距離をあの時間で走れるのか?」

「普通なら無理だろうが、俺の称号は『韋駄天』だぜ」

 カッコよく決めたつもりだったのだが……

「イダテン?」

「何だ、それ?」

 通じなかった……

 ルミさんが首を傾げる。

「…あれ……イダテンって…どこかで聞いたような…それも、つい最近……あーっ!」

 こらこら、人を指さすのは良くないぞ。

「シルヴィア様のお相手の、風みたいに走ってた人!?」

 ルミさんのテンションがいきなり跳ね上がった。

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