異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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135 前夜(ミネルヴァ視点)

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 ドキドキが止まらない。前の晩でこれだったら、明日の本番はどうなっちゃうんだろう。

 コータローさんはといえば、落ち着いているように見える。

 ま、まあ、二度目ですもんね。あたふたなんてしませんよね。

 ちょっとだけ悔しい。

「コータローさん、シルヴィアさんとの時って緊張しなかったの?」

 気になったので訊いてみた。

「それなりにはしたと思うけど、他に気をとられることがあったから、そっちの方に気が行ってて、緊張してる余裕がなかったって感じかな」

「何ですか、それ?」

「結婚式の時って、まだ呪いが解けてなかったんだよ。変に茶々入れられて気まずくなるのが嫌だったから、色々シミュレーションしてたんだよ」

「なるほど。大変でしたね」

 確かにそれでは緊張どころではない、よね。

「結果的には最高の展開になってくれたからよかったんだけどな」

 そこはアンジェリーナさんやマリエールさんからも色々聞いたけど、ものすごく盛り上がったということだった。

 羨ましい。

 ものすごく羨ましい。

「わたしも後になってそう言えたらいいな」

「もちろんそうするさ。そこだけは絶対だ」

 期待した言葉を言ってもらえるのはホントに嬉しい。わたし、今にやけているかもしれない。

「コータローさんと出逢えて、ホントによかった」

 大好き。

「うん。俺もそう思うよ。ミネルヴァと出逢えてよかった」

 そんなことを言われたら、ますますとろけちゃう。

 ふとコータローさんがまじめな顔をした。

「俺とミネルヴァが出逢えたのって、完全にローザさんのおかげだよな」

 言われてみれば確かにそうだ。ローザが行動を起こしてくれなければ、わたしがコータローさんと出逢うことはなかったはずだ。

「そうね。何かお礼をしなくちゃいけないわね」

「ローザさんっていえば、王子とはどうなってるんだ?」

「相変わらずじゃないかな」

 始まりがどうだったのか、今となってはわからないが、今の二人が愛し合っているのはわかる。できれば二人には結ばれて欲しいが、それが難しいのもわかる。

「王子には縁談とか来てないのか?」

「全部断ってるみたい。まだ未熟者だからって」

 お兄さまが色々と画策してるんだと思いたい。

「なるほどな。まあ、王子の結婚なんて当人の自由にはなかなかならんって言うしな」

 何気なく言ったコータローさんの言葉が胸に刺さった。

「どうした?」

 訊いていいものか迷ったけど、引っかかってたことを思いきって訊いてみた。

「…わたしたちの結婚って、政略結婚じゃないよね?」

 前にお兄さまが言ってた。コータローさんとよしみを通じようとする人たちが増えて来るはずだって。わたしはタイミングよく利用されたのかもしれない、という思いを完全に拭うことができずにいたのです。

「は?」

 コータローさんが眉をひそめた。

「俺たちのどこに政略なんて不粋なものが入る余地があるんだ?」

 声が怒ってる。やっぱり訊かない方がよかった。

「そ、そうだよね。うん、よかった」

 さらっとなかったことにしようとしたけど、無理だった。

「よくはないーーミネルヴァ、ここに座れ」

 怒ってる。もう、バカなこと訊くんじゃなかった。

「え?   あ、ちょっと……顔が怖いんだけど……」

「うるさい。いいから座れ」

「はい……」

 ここは素直に言うことを聞いて、ひたすら謝るしかない。

 ごめんなさい。ホントにごめんなさい。二度としません。

「バンザイ」

「え?」

「バンザイ」

 びくびくしながら両手を挙げる。

 そうしたら、一瞬の早業で、夜着を脱がされてしまった。

「きゃあっ!?」

 お互い見慣れていても、恥じらいはなくしたくない。

 今度はコータローさんが自分の夜着を脱いだ。鍛えられたコータローさんの身体は、すごくカッコいい。何度見ても惚れ惚れする。

 でも今は怖い。

「な、な、何、何、何ですか!?」

「おいで」

 隣に腰をおろしたら、優しく抱き寄せられた。胸と胸を合わせる。

 愛撫されるでもなく、ただ温かく包まれていた。

 どうしたんだろう?

 訊こうとした瞬間、気づいた。

 とくん……とくん……とくん……

「…あ……」

「わかった?」

「ドキドキしてるね」

「だろ」

「これ、なんか嬉しい」

「お互いの鼓動を確かめられるのって、特別な関係の二人だけだろ。んでもって、このドキドキを実感すれば、変な疑いはしなくて済むだろ」

 確かに。言葉よりもダイレクトに響いてきた。

「ごめんなさい」

「わかればいいーー今日はせっかくだからこのまま寝るか」

「うん!」

 それ、すごく嬉しい。

 お互いの体温を感じられる幸せを噛みしめながら、わたしたちは眠りに就いた。
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