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「食らえ! 『プロミネンス・レイ』」
ケントのありったけを込めた光魔法と、ドラゴンの超高熱ブレスが溶け合い、一条の熱光線が発せられる。
極限まで凝縮された細い光線は、狙い違わずヴァンパイアの胸を貫いた。
「がっ!?」
ヴァンパイアの身体が僅かに痙攣し、そのまま動きが止まる。
「…え……?」
何が起こったのか、すぐにはわからなかった。
「…当たった、んだよな……?」
呟いた直後、ヴァンパイアの身体がぐらりと揺れ、そのまま大地に倒れ伏した。
「おおっ!」
思わずケントは歓声をあげた。
それでも罠である可能性を考え、少しの間その場にとどまり、様子を伺う。
しばらく待って、それでもピクリとも動かないのを確認して、ようやくケントはおっかなびっくり動き出す。
「うお……」
ヴァンパイアの心臓部分には指の太さくらいの穴が空いていて、そこから薄い煙が立ち上っていた。超高温によって傷口が炭化したせいで出血はなかったらしい。
完全に絶命していた。
「終わった、んだよな……」
安堵のあまり腰が抜けた。ケントは思わずその場にへたりこんでしまう。
「…死ぬかと思った……って言うか、半分死んでたよな……」
こうして生きているのは奇跡のようなものだ。
「っと、フローリアーー」
ケントはうつ伏せに倒れているフローリアに駆け寄る。気が抜けたせいか身体中が痛み、意識を手放しそうになっていたが、もう一踏ん張りはしなければならなかった。
「フローリア、大丈夫か?」
「…生きてるわよ……」
フローリアは、腕をついてゆっくりと身を起こした。傷だらけではあるものの、命に別状はなさそうだ。
「ありがとうな。助かったよ」
フローリアが時間を稼いでくれなければ逆転はなかった、とケントは頭を下げた。
「お礼言われるようなことじゃないわ」
「それでも、だよ」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「よかった。生きてて」
しみじみしたフローリアの言葉にケントは頷いた。
「嬉しいって言うよりはホッとしたって感じかな。雄叫び上げる気になれん」
大きく息をついたケントにフローリアが寄り添う。お互いの温もりを感じることで、生を強く実感した。
「よく勝てたよねー」
「まったくだ」
「ケント、最高だったよ」
「そう?」
「うん。惚れ直した」
台詞も男前っぽいフローリアである。
笑顔のケントはフローリアを抱きしめる。フローリアも素直に身を預けた。
周囲の状況をブッちぎって二人の感情が高まったその時ーー
「ミギャア!」
俺のことも忘れるなとばかりに子ドラゴンが二人にのしかかった。
ケントのありったけを込めた光魔法と、ドラゴンの超高熱ブレスが溶け合い、一条の熱光線が発せられる。
極限まで凝縮された細い光線は、狙い違わずヴァンパイアの胸を貫いた。
「がっ!?」
ヴァンパイアの身体が僅かに痙攣し、そのまま動きが止まる。
「…え……?」
何が起こったのか、すぐにはわからなかった。
「…当たった、んだよな……?」
呟いた直後、ヴァンパイアの身体がぐらりと揺れ、そのまま大地に倒れ伏した。
「おおっ!」
思わずケントは歓声をあげた。
それでも罠である可能性を考え、少しの間その場にとどまり、様子を伺う。
しばらく待って、それでもピクリとも動かないのを確認して、ようやくケントはおっかなびっくり動き出す。
「うお……」
ヴァンパイアの心臓部分には指の太さくらいの穴が空いていて、そこから薄い煙が立ち上っていた。超高温によって傷口が炭化したせいで出血はなかったらしい。
完全に絶命していた。
「終わった、んだよな……」
安堵のあまり腰が抜けた。ケントは思わずその場にへたりこんでしまう。
「…死ぬかと思った……って言うか、半分死んでたよな……」
こうして生きているのは奇跡のようなものだ。
「っと、フローリアーー」
ケントはうつ伏せに倒れているフローリアに駆け寄る。気が抜けたせいか身体中が痛み、意識を手放しそうになっていたが、もう一踏ん張りはしなければならなかった。
「フローリア、大丈夫か?」
「…生きてるわよ……」
フローリアは、腕をついてゆっくりと身を起こした。傷だらけではあるものの、命に別状はなさそうだ。
「ありがとうな。助かったよ」
フローリアが時間を稼いでくれなければ逆転はなかった、とケントは頭を下げた。
「お礼言われるようなことじゃないわ」
「それでも、だよ」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「よかった。生きてて」
しみじみしたフローリアの言葉にケントは頷いた。
「嬉しいって言うよりはホッとしたって感じかな。雄叫び上げる気になれん」
大きく息をついたケントにフローリアが寄り添う。お互いの温もりを感じることで、生を強く実感した。
「よく勝てたよねー」
「まったくだ」
「ケント、最高だったよ」
「そう?」
「うん。惚れ直した」
台詞も男前っぽいフローリアである。
笑顔のケントはフローリアを抱きしめる。フローリアも素直に身を預けた。
周囲の状況をブッちぎって二人の感情が高まったその時ーー
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