上 下
81 / 89

81 決着

しおりを挟む
「食らえ!   『プロミネンス・レイ』」



 ケントのありったけを込めた光魔法と、ドラゴンの超高熱ブレスが溶け合い、一条の熱光線が発せられる。

 極限まで凝縮された細い光線は、狙い違わずヴァンパイアの胸を貫いた。

「がっ!?」

 ヴァンパイアの身体が僅かに痙攣し、そのまま動きが止まる。

「…え……?」

 何が起こったのか、すぐにはわからなかった。

「…当たった、んだよな……?」

 呟いた直後、ヴァンパイアの身体がぐらりと揺れ、そのまま大地に倒れ伏した。

「おおっ!」

 思わずケントは歓声をあげた。

 それでも罠である可能性を考え、少しの間その場にとどまり、様子を伺う。

 しばらく待って、それでもピクリとも動かないのを確認して、ようやくケントはおっかなびっくり動き出す。

「うお……」

 ヴァンパイアの心臓部分には指の太さくらいの穴が空いていて、そこから薄い煙が立ち上っていた。超高温によって傷口が炭化したせいで出血はなかったらしい。

 完全に絶命していた。

「終わった、んだよな……」

 安堵のあまり腰が抜けた。ケントは思わずその場にへたりこんでしまう。

「…死ぬかと思った……って言うか、半分死んでたよな……」

 こうして生きているのは奇跡のようなものだ。

「っと、フローリアーー」

 ケントはうつ伏せに倒れているフローリアに駆け寄る。気が抜けたせいか身体中が痛み、意識を手放しそうになっていたが、もう一踏ん張りはしなければならなかった。

「フローリア、大丈夫か?」

「…生きてるわよ……」

 フローリアは、腕をついてゆっくりと身を起こした。傷だらけではあるものの、命に別状はなさそうだ。

「ありがとうな。助かったよ」

 フローリアが時間を稼いでくれなければ逆転はなかった、とケントは頭を下げた。

「お礼言われるようなことじゃないわ」

「それでも、だよ」

 二人は顔を見合わせ、小さく笑った。

「よかった。生きてて」

 しみじみしたフローリアの言葉にケントは頷いた。

「嬉しいって言うよりはホッとしたって感じかな。雄叫び上げる気になれん」

 大きく息をついたケントにフローリアが寄り添う。お互いの温もりを感じることで、生を強く実感した。

「よく勝てたよねー」

「まったくだ」

「ケント、最高だったよ」

「そう?」

「うん。惚れ直した」

 台詞も男前っぽいフローリアである。

 笑顔のケントはフローリアを抱きしめる。フローリアも素直に身を預けた。

 周囲の状況をブッちぎって二人の感情が高まったその時ーー
 


「ミギャア!」



 俺のことも忘れるなとばかりに子ドラゴンが二人にのしかかった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

離縁するので構いません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:40,439pt お気に入り:471

ニコニココラム「R(リターンズ)」 稀世の「旅」、「趣味」、「世の中のよろず事件」への独り言

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:425pt お気に入り:28

のんびりライオンとうっかりユキヒョウ

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:54

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,671pt お気に入り:3,502

ワンナイトLOVE男を退治せよ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:32

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:289

処理中です...