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85 後継
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「この二人に我の加護を与えたーーこの二人は我の代理人と心得るがいい」
「は……?」
二人揃って理解が追いついていない。ポカンと口を開けたままフリーズしている。
心の準備もないままにこんなこと言われても、そりゃあ困るよな。
他人事のようにケントは思った。自分自身でさえ実感が湧かずにいるのだ。話についてこれるはずがない。
「困ってるね」
フローリアもどこか他人事のようだ。
「この二人は実に見所がある。ヴァンパイアを倒し、我の息子を助けた。よって加護を与えた。この二人に逆らうことは我に逆らうことと心得よ」
「あれ? あたしってヴァンパイア倒す役に立ったっけ?」
フローリアが首を傾げたが、ドラゴンは細かいことは気にしないらしく、更に言い募っていく。
「もっとも、我の加護を受けた二人を害することができる者がいるとは思えぬがな」
自慢するようなドラゴンの言葉に、皇帝は大きなため息をついた。
「はあーっ」
そんな皇帝の肩をダスティン王が叩く。
「わかるか? グリーンヒルの」
「ああ、痛いくらいにな」
「じゃあ俺が今何を考えてるか、わかるか?」
「多分同じことを考えてると思うぞ」
「まあ、そうなるよな」
うんうんと頷き合うオヤジ二人の姿は、ケントとフローリアの目には少々奇妙なものに映った。
「気のせいかな…何かよくない方向へ話が進んでるように感じる……」
フローリアはブルッと背筋を震わせた。
それにはケントもまったく同感だった。しかも、一秒ごとに嫌な予感はどんどん膨らんできている。
「じゃあここで答え合わせをしてみるか」
「そうだな。せーので今思ってることを叫んでみるか」
なぜか急に息ぴったりになる皇帝と国王。
「よし、せーの」
「「やってられるか!!」」
完璧なハモリ。投げやり具合もそっくりだった。
「俺は引退する。ケント、後は任せたからな!」
「へ!?」
父王の唐突過ぎる宣言に、ケントの目が点になる。
「俺も引退だ。フローリア、おまえ、ケントと国ごとくっつけ」
「何言ってるの!?」
フローリアは声を裏返した。
ケントと一緒になるのは問題ない。と言うか、フローリア的には望むところだ。しかし、いきなり国ごとくっつけと言われれば、途方に暮れるしかない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が急すぎて何が何だかーー」
「何だケント、うちのフローリアに何か不満でもあるのか」
「いやいやいや、フローリアに不満なんて、欠片もありませんよ。あるわけないじゃないですか」
「ならいいじゃねえか」
「俺が王なんて何の冗談ですか!?」
「冗談じゃねえよ。いずれ王国を継ぐことは決まってただろ。早いか遅いかの違いだけだろ」
「いくら何でも早すぎですよ。それに、帝国と一緒にって……」
自分はまだまだ未熟者だ。上手く国をまとめていけるとは、ケントには到底思えなかった。
だが、二人のトップは本気だった。
「今回の件で思い知ったよ。もう俺たちの時代じゃねえってことをな」
「そんなことないですよ。俺には荷が重すぎます」
「おまえに重すぎたら誰にも背負えねえよ」
ぶっきらぼうな言い方だったが、皇帝の言葉には重みがあった。
「引退するとは言え、それなりに手伝ってはやる。だから、覚悟を決めろ」
「は、はい」
そうまで言われて、首を横に振ることはできなかった。
かくして、帝国と王国は新時代を迎えることとなった。
「は……?」
二人揃って理解が追いついていない。ポカンと口を開けたままフリーズしている。
心の準備もないままにこんなこと言われても、そりゃあ困るよな。
他人事のようにケントは思った。自分自身でさえ実感が湧かずにいるのだ。話についてこれるはずがない。
「困ってるね」
フローリアもどこか他人事のようだ。
「この二人は実に見所がある。ヴァンパイアを倒し、我の息子を助けた。よって加護を与えた。この二人に逆らうことは我に逆らうことと心得よ」
「あれ? あたしってヴァンパイア倒す役に立ったっけ?」
フローリアが首を傾げたが、ドラゴンは細かいことは気にしないらしく、更に言い募っていく。
「もっとも、我の加護を受けた二人を害することができる者がいるとは思えぬがな」
自慢するようなドラゴンの言葉に、皇帝は大きなため息をついた。
「はあーっ」
そんな皇帝の肩をダスティン王が叩く。
「わかるか? グリーンヒルの」
「ああ、痛いくらいにな」
「じゃあ俺が今何を考えてるか、わかるか?」
「多分同じことを考えてると思うぞ」
「まあ、そうなるよな」
うんうんと頷き合うオヤジ二人の姿は、ケントとフローリアの目には少々奇妙なものに映った。
「気のせいかな…何かよくない方向へ話が進んでるように感じる……」
フローリアはブルッと背筋を震わせた。
それにはケントもまったく同感だった。しかも、一秒ごとに嫌な予感はどんどん膨らんできている。
「じゃあここで答え合わせをしてみるか」
「そうだな。せーので今思ってることを叫んでみるか」
なぜか急に息ぴったりになる皇帝と国王。
「よし、せーの」
「「やってられるか!!」」
完璧なハモリ。投げやり具合もそっくりだった。
「俺は引退する。ケント、後は任せたからな!」
「へ!?」
父王の唐突過ぎる宣言に、ケントの目が点になる。
「俺も引退だ。フローリア、おまえ、ケントと国ごとくっつけ」
「何言ってるの!?」
フローリアは声を裏返した。
ケントと一緒になるのは問題ない。と言うか、フローリア的には望むところだ。しかし、いきなり国ごとくっつけと言われれば、途方に暮れるしかない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が急すぎて何が何だかーー」
「何だケント、うちのフローリアに何か不満でもあるのか」
「いやいやいや、フローリアに不満なんて、欠片もありませんよ。あるわけないじゃないですか」
「ならいいじゃねえか」
「俺が王なんて何の冗談ですか!?」
「冗談じゃねえよ。いずれ王国を継ぐことは決まってただろ。早いか遅いかの違いだけだろ」
「いくら何でも早すぎですよ。それに、帝国と一緒にって……」
自分はまだまだ未熟者だ。上手く国をまとめていけるとは、ケントには到底思えなかった。
だが、二人のトップは本気だった。
「今回の件で思い知ったよ。もう俺たちの時代じゃねえってことをな」
「そんなことないですよ。俺には荷が重すぎます」
「おまえに重すぎたら誰にも背負えねえよ」
ぶっきらぼうな言い方だったが、皇帝の言葉には重みがあった。
「引退するとは言え、それなりに手伝ってはやる。だから、覚悟を決めろ」
「は、はい」
そうまで言われて、首を横に振ることはできなかった。
かくして、帝国と王国は新時代を迎えることとなった。
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