婚約破棄 ~ガチでやられると結構キツい~

オフィス景

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 ドラゴン襲来。

 その武威溢れる姿を目の当たりにした帝都民は等しく震え上がった。

 どう考えても人の力の及ぶところではない。一目見るだけでそのことは理解できた。と言うか、刻みこまれた。

「ヴァンパイアの次はドラゴンだと?   いつからここは魔界になったんだ?」

 皇帝の声はかなり投げやりだった。

「そもそもヴァンパイアは片付いたのか?   この後ヴァンパイアまで押しかけて来るようなことにはならんのか?」

 対策を協議するために帝国を訪れていたダスティン王もお手上げポーズである。

 だが、想像に反して、ドラゴンから攻撃を受けることはなかった。それどころか、帝城の中庭に着地してきた。

「フローリア!?」

「ケント!?」

 ドラゴンの背に乗った自分たちの子供を見て、二人の声は裏返った。

「おーい、敵じゃないからなー!   攻撃しちゃダメだぞー!!」

 ドラゴンの背からケントが呼びかける。

 いやいや、命令されても攻撃なんてできないから。

 居合わせた兵士たちは一様にそう思った。

「ケント、こいつは一体どういうことだ!?」

「あれ、親父も来てたのか。ちょうどいいや、手間が省けた。皇帝陛下もいるよなーードラゴンが、話があるってさ」

「ドラゴンが、話!?」

 常識を覆すような話に、ダスティン王は目を剥いた。

 奥から出てきた皇帝が隣に並ぶ。二人ともビビってはいるものの、正気を保ってドラゴンと相対しているところは流石と言うべきかもしれない。

「そなたらがヒトの世界のトップということで間違いないか?」

「うおーー」

「ほ、本当にしゃべった」

 二人とも驚きのあまりかなりの間抜け面を晒している。そこに王やら皇帝やらの威厳は欠片もなかった。

「間違いないのか?」

 重ねて問われて、二人は顔を見合わせた。

「…まあ、そういうことになるのか?」

「異論を唱えるヤツもいるとは思うが、大概の連中は頷いてくれるんじゃないか?」

 強国二国のトップが少々自信なさげなのは、目の前のドラゴンの存在の圧があまりにも強大なせいである。自分たちよりも遥かに格上の存在相手にトップを名乗るのはおこがましいと感じたのだ。

「ならば、そなたらに伝えておくことがある」

 重々しいドラゴンの声に、二人は自然と居ずまいを正した。



「この二人に我の加護を与えたーーこの二人は我の代理人と心得るがいい」


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