婚約破棄 ~ガチでやられると結構キツい~

オフィス景

文字の大きさ
83 / 89

83 加護

しおりを挟む
「おぬし、我の加護を受けぬか?」



「へ?」

 突拍子もないことを言われて、ケントの目が点になる。

「加護、って……?」

「む、そうか、この時代だと加護を与えられるような存在はいないのか」

 ドラゴンは首を傾げる仕草を見せた後、少し困った口調で言った。

「簡単に言うと、我の力の一部を使えるようになる、ということだ」

「え!?」

 ケントは心底驚いた。

「そ、それってとんでもないことなんじゃーー」

「少なくとも我が加護を与えるのは初めてのことであるな。他のやつらでもそうそうはないはずだが」

「…そんなすごい話、俺なんかでいいんですか?」

 相当ビビりながらケントが言うと、ドラゴンは呵呵大笑した。

「そう謙遜することもあるまい。ヴァンパイアを倒したのだ。ヒトとしては大いなる偉業であろうよ」

「そ、そうですか」

 ベタ褒めされ、ケントはかえって恐縮してしまう。ヴァンパイア戦については、あまり自分の手柄という認識がないのだ。

「で、どうだ?」

「本当にいただけるものなら、ぜひいただきたいです」

 変に遠慮することなくケントは言った。過分な力のような気もするが、これからだって何が起きるかはわからない。ヴァンパイアクラスの敵が現れることだってないとは言えない。そんな時に皆を守れる力があるなら、それはぜひとも欲しいと思ったのだ。

「うむ。では加護を授けよう」

 ケントの身体が光に包まれる。

 同時にケントは身体の奥底から渾々と力が湧いて来るのを感じた。

「…何だこれ…すげえ……」

「だ、大丈夫なの?」

 人知を超えた現象を目の当たりにして、フローリアは心配を隠せない。

「ふむ、番なら構わぬかーーおぬしにも加護をやろう」

「え?   きゃあっ!?」

 不意に訪れた、力が溢れ出すような感覚にフローリアは悲鳴をあげた。

「何これ?   今なら何でもできそうな気がするんだけど」

「ほんとそれ」

 ケントは大きく頷いた。ヴァンパイアクラスはともかくとして、サイクロプスやミノタウロスくらいなら瞬殺できそうだ。

「おぬしら、夫婦喧嘩の時は気をつけろよ。本気でやったら国が滅ぶぞ」

「え?」

「マジで?」

「自分たちが一番わかるだろう。ひとつ加減を間違えたらどうなるか」

「ははっ、本当に国を滅ぼせそうな気がしてきたな」

「滅ぼしちゃダメだよ!?」

「そのつもりがなくてもものの弾みでーー」

「そんなの絶対ダメ!   ちゃんと力を使いこなせるように特訓するわよ」

「それがいいかもな」

 ため息混じりにケントは同意した。

「では、我の背に乗るがよい。空の旅に連れて行ってやろう」

「お、いいねえ」

 空を飛べると聞いて憧れないわけがない。ケントもフローリアも喜んでドラゴンの背に乗った。ドラゴンの背は広く、あと十人くらいは余裕で乗れそうだった。

「しっかりつかまっておれよ」

 ドラゴンがふわりと舞い上がる。

「おおおおーー」

「すごーい!」

 思わぬご褒美に、二人の声は弾みまくるのであった。

しおりを挟む
感想 332

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

姉妹差別の末路

京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します! 妹嫌悪。ゆるゆる設定 ※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...