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83 加護
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「おぬし、我の加護を受けぬか?」
「へ?」
突拍子もないことを言われて、ケントの目が点になる。
「加護、って……?」
「む、そうか、この時代だと加護を与えられるような存在はいないのか」
ドラゴンは首を傾げる仕草を見せた後、少し困った口調で言った。
「簡単に言うと、我の力の一部を使えるようになる、ということだ」
「え!?」
ケントは心底驚いた。
「そ、それってとんでもないことなんじゃーー」
「少なくとも我が加護を与えるのは初めてのことであるな。他のやつらでもそうそうはないはずだが」
「…そんなすごい話、俺なんかでいいんですか?」
相当ビビりながらケントが言うと、ドラゴンは呵呵大笑した。
「そう謙遜することもあるまい。ヴァンパイアを倒したのだ。ヒトとしては大いなる偉業であろうよ」
「そ、そうですか」
ベタ褒めされ、ケントはかえって恐縮してしまう。ヴァンパイア戦については、あまり自分の手柄という認識がないのだ。
「で、どうだ?」
「本当にいただけるものなら、ぜひいただきたいです」
変に遠慮することなくケントは言った。過分な力のような気もするが、これからだって何が起きるかはわからない。ヴァンパイアクラスの敵が現れることだってないとは言えない。そんな時に皆を守れる力があるなら、それはぜひとも欲しいと思ったのだ。
「うむ。では加護を授けよう」
ケントの身体が光に包まれる。
同時にケントは身体の奥底から渾々と力が湧いて来るのを感じた。
「…何だこれ…すげえ……」
「だ、大丈夫なの?」
人知を超えた現象を目の当たりにして、フローリアは心配を隠せない。
「ふむ、番なら構わぬかーーおぬしにも加護をやろう」
「え? きゃあっ!?」
不意に訪れた、力が溢れ出すような感覚にフローリアは悲鳴をあげた。
「何これ? 今なら何でもできそうな気がするんだけど」
「ほんとそれ」
ケントは大きく頷いた。ヴァンパイアクラスはともかくとして、サイクロプスやミノタウロスくらいなら瞬殺できそうだ。
「おぬしら、夫婦喧嘩の時は気をつけろよ。本気でやったら国が滅ぶぞ」
「え?」
「マジで?」
「自分たちが一番わかるだろう。ひとつ加減を間違えたらどうなるか」
「ははっ、本当に国を滅ぼせそうな気がしてきたな」
「滅ぼしちゃダメだよ!?」
「そのつもりがなくてもものの弾みでーー」
「そんなの絶対ダメ! ちゃんと力を使いこなせるように特訓するわよ」
「それがいいかもな」
ため息混じりにケントは同意した。
「では、我の背に乗るがよい。空の旅に連れて行ってやろう」
「お、いいねえ」
空を飛べると聞いて憧れないわけがない。ケントもフローリアも喜んでドラゴンの背に乗った。ドラゴンの背は広く、あと十人くらいは余裕で乗れそうだった。
「しっかりつかまっておれよ」
ドラゴンがふわりと舞い上がる。
「おおおおーー」
「すごーい!」
思わぬご褒美に、二人の声は弾みまくるのであった。
「へ?」
突拍子もないことを言われて、ケントの目が点になる。
「加護、って……?」
「む、そうか、この時代だと加護を与えられるような存在はいないのか」
ドラゴンは首を傾げる仕草を見せた後、少し困った口調で言った。
「簡単に言うと、我の力の一部を使えるようになる、ということだ」
「え!?」
ケントは心底驚いた。
「そ、それってとんでもないことなんじゃーー」
「少なくとも我が加護を与えるのは初めてのことであるな。他のやつらでもそうそうはないはずだが」
「…そんなすごい話、俺なんかでいいんですか?」
相当ビビりながらケントが言うと、ドラゴンは呵呵大笑した。
「そう謙遜することもあるまい。ヴァンパイアを倒したのだ。ヒトとしては大いなる偉業であろうよ」
「そ、そうですか」
ベタ褒めされ、ケントはかえって恐縮してしまう。ヴァンパイア戦については、あまり自分の手柄という認識がないのだ。
「で、どうだ?」
「本当にいただけるものなら、ぜひいただきたいです」
変に遠慮することなくケントは言った。過分な力のような気もするが、これからだって何が起きるかはわからない。ヴァンパイアクラスの敵が現れることだってないとは言えない。そんな時に皆を守れる力があるなら、それはぜひとも欲しいと思ったのだ。
「うむ。では加護を授けよう」
ケントの身体が光に包まれる。
同時にケントは身体の奥底から渾々と力が湧いて来るのを感じた。
「…何だこれ…すげえ……」
「だ、大丈夫なの?」
人知を超えた現象を目の当たりにして、フローリアは心配を隠せない。
「ふむ、番なら構わぬかーーおぬしにも加護をやろう」
「え? きゃあっ!?」
不意に訪れた、力が溢れ出すような感覚にフローリアは悲鳴をあげた。
「何これ? 今なら何でもできそうな気がするんだけど」
「ほんとそれ」
ケントは大きく頷いた。ヴァンパイアクラスはともかくとして、サイクロプスやミノタウロスくらいなら瞬殺できそうだ。
「おぬしら、夫婦喧嘩の時は気をつけろよ。本気でやったら国が滅ぶぞ」
「え?」
「マジで?」
「自分たちが一番わかるだろう。ひとつ加減を間違えたらどうなるか」
「ははっ、本当に国を滅ぼせそうな気がしてきたな」
「滅ぼしちゃダメだよ!?」
「そのつもりがなくてもものの弾みでーー」
「そんなの絶対ダメ! ちゃんと力を使いこなせるように特訓するわよ」
「それがいいかもな」
ため息混じりにケントは同意した。
「では、我の背に乗るがよい。空の旅に連れて行ってやろう」
「お、いいねえ」
空を飛べると聞いて憧れないわけがない。ケントもフローリアも喜んでドラゴンの背に乗った。ドラゴンの背は広く、あと十人くらいは余裕で乗れそうだった。
「しっかりつかまっておれよ」
ドラゴンがふわりと舞い上がる。
「おおおおーー」
「すごーい!」
思わぬご褒美に、二人の声は弾みまくるのであった。
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