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31 凶報
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「で、どうだ? 仕事の方は」
訊かれたアリサは満面の笑みを浮かべた。
「最高」
「この娘にとっては天職なんじゃないかな」
サンディも笑いながら言った。
「はい! ホントにそう思います」
「気に入ってくれたんなら何よりだ」
一応責任を感じていたので、ケントはほっと胸を撫で下ろした。
「ホントにありがとう。ケントには何てお礼を言ったらいいかーー」
「水くせえこと言うな」
「それでもお礼は言わせてよ。恩返しはチーズケーキを流行らせることでするけど」
「おう、頑張ってくれ」
限定生産品であることが周知された結果、店舗における混雑は解消された。その代わりに予約が半年以上先まで埋まるというとんでもない事態になっていたのではあるが。
「まさかここまでの人気になるとはなあ……」
ケントは苦笑いを浮かべた。
「…ちょっと手を広げすぎたかもしれないなあ」
チーズケーキだけでなく、石鹸についても品薄状態が続いている。
生産は任せているが、完成品の品質チェックはまだケント自身でやらなければならない。それに伴って販売計画も取り仕切っているので、ケントは非常に多忙な日々を過ごしていた。
「こういうのは商人に任せた方がいいのかな」
とも思ったのだが、何となく自分でやらないと気が済まない部分があるのだ。
そんなことを考えながら城へ戻ると、フローリアから手紙が届いていた。
贈った石鹸の礼が述べられていたのだが、本題はそこではなく、かなり恐ろしい情報が綴られていた。
「これは……」
ケントは急いで王のところに向かった。
「大変だ」
「何だ、いきなり」
「ラスティーンが帝国にケンカ売ろうとしてる」
「はあ!?」
素っ頓狂な声が上がる。
「マジなんだ。フローリアから連絡がきたんだ。ガジャの街に戦力を集めてるらしい」
「何をとち狂いやがった? 勝ち目なんかあるわけねえだろうが」
誰に聞いても同じ答えが返ってくるはずだ。それほどラスティーンと帝国では、国力に差がありすぎる。
「止めないと、あの国、マジで滅ぶぞ」
「止めるってどうやって!?」
ケントの声は裏返りかけている。
「何でこうなったか探れ。理由がわかれば手が打てるかもしれんーーそれと、軍を動かす準備はしておく。いざというときはおまえも出ろ」
「わかった」
固い表情で頷くと、ケントはすぐに情報収集に取りかかった。
一体何がどうなってるんだ?
何をどうこねくりまわしても、帝国に戦争をふっかける理由がわからない。自殺願望でもあるのかと本気で疑いたくなるレベルだ。
でも、それにつきあわされる方はたまったもんじゃねえよな……
何が何でも止めなきゃなんねえよな。
「カルピン商会になら何か情報あるかもしれないな」
とケントは考えたのだが、それよりも手掛かりになりそうなものが手元に届いた。
「ラスティーンからお手紙が届いておりますが、いかがいたしますか?」
嫌な予感に襲われたケントは全身に鳥肌を立てた。
「…誰から……?」
一応訊いてはみたものの、返答は聞く前から何となくわかっていた。
そして、そういう予感は絶対に外れることはないものなのだ。
「差出人はーーアルミナ姫です」
訊かれたアリサは満面の笑みを浮かべた。
「最高」
「この娘にとっては天職なんじゃないかな」
サンディも笑いながら言った。
「はい! ホントにそう思います」
「気に入ってくれたんなら何よりだ」
一応責任を感じていたので、ケントはほっと胸を撫で下ろした。
「ホントにありがとう。ケントには何てお礼を言ったらいいかーー」
「水くせえこと言うな」
「それでもお礼は言わせてよ。恩返しはチーズケーキを流行らせることでするけど」
「おう、頑張ってくれ」
限定生産品であることが周知された結果、店舗における混雑は解消された。その代わりに予約が半年以上先まで埋まるというとんでもない事態になっていたのではあるが。
「まさかここまでの人気になるとはなあ……」
ケントは苦笑いを浮かべた。
「…ちょっと手を広げすぎたかもしれないなあ」
チーズケーキだけでなく、石鹸についても品薄状態が続いている。
生産は任せているが、完成品の品質チェックはまだケント自身でやらなければならない。それに伴って販売計画も取り仕切っているので、ケントは非常に多忙な日々を過ごしていた。
「こういうのは商人に任せた方がいいのかな」
とも思ったのだが、何となく自分でやらないと気が済まない部分があるのだ。
そんなことを考えながら城へ戻ると、フローリアから手紙が届いていた。
贈った石鹸の礼が述べられていたのだが、本題はそこではなく、かなり恐ろしい情報が綴られていた。
「これは……」
ケントは急いで王のところに向かった。
「大変だ」
「何だ、いきなり」
「ラスティーンが帝国にケンカ売ろうとしてる」
「はあ!?」
素っ頓狂な声が上がる。
「マジなんだ。フローリアから連絡がきたんだ。ガジャの街に戦力を集めてるらしい」
「何をとち狂いやがった? 勝ち目なんかあるわけねえだろうが」
誰に聞いても同じ答えが返ってくるはずだ。それほどラスティーンと帝国では、国力に差がありすぎる。
「止めないと、あの国、マジで滅ぶぞ」
「止めるってどうやって!?」
ケントの声は裏返りかけている。
「何でこうなったか探れ。理由がわかれば手が打てるかもしれんーーそれと、軍を動かす準備はしておく。いざというときはおまえも出ろ」
「わかった」
固い表情で頷くと、ケントはすぐに情報収集に取りかかった。
一体何がどうなってるんだ?
何をどうこねくりまわしても、帝国に戦争をふっかける理由がわからない。自殺願望でもあるのかと本気で疑いたくなるレベルだ。
でも、それにつきあわされる方はたまったもんじゃねえよな……
何が何でも止めなきゃなんねえよな。
「カルピン商会になら何か情報あるかもしれないな」
とケントは考えたのだが、それよりも手掛かりになりそうなものが手元に届いた。
「ラスティーンからお手紙が届いておりますが、いかがいたしますか?」
嫌な予感に襲われたケントは全身に鳥肌を立てた。
「…誰から……?」
一応訊いてはみたものの、返答は聞く前から何となくわかっていた。
そして、そういう予感は絶対に外れることはないものなのだ。
「差出人はーーアルミナ姫です」
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