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7 嘘つき

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「さて、これからどうするか、だが?」

 口火を切ったのは、ここに来てリーダーシップを発揮し始めた青木だった。

 あの後、一行は王城へと招かれた。歓迎の準備をしてくれている間に、皆の意思統一を図ろうと集まったのだ。

「どうするもこうするも、魔物退治をするしかねえんじゃねえの?」

「それはそうなんだけど、この中には戦闘に向かないスキルをもらった人もいるだろう。役割分担を決めた方がいいと思うんだけど、どうだろう?」

「そりゃそうだな」

「いいんじゃないかな」

「じゃあみんなが持ってるスキルを教えてもらえる?」

 その言葉に、美南は居心地悪そうに身を縮こまらせた。青木の言うことはわかるが、絶対に教えたくない。からかわれるか、変な目で見られるか、どちらにしてもロクなことにはならないはずだ。

「じゃああたしから」

 最初に名乗り出たのは由真だった。

「あたしのスキルは『鑑定』よ。このスキルを使えば鑑定対象の詳細を知ることができるわ。魔物の強さとかを知ることもできるから、かなり使えるスキルだと思うわ」

「それはすごいね。じゃあ俺のスキルも見れる?」

「いいの?」

「見てくれ。ついでに発表してくれ」

「わかった」

 由真は数秒青木に視線を据えた。

「えっと…『心眼』ってなってるわね」

「うん。それが俺のスキル。目を閉じた方がいろんなものが見えるってスキルなんだ」

 確かに鑑定にもそう出ていたので、由真は周りに頷いてみせた。

「すごいわね。その人が嘘ついてるかどうかまでわかっちゃうんだ」

「正直かなり便利なスキルだと思う」

 当人にとってはそれでいいかもしれないが、美南にとっては大問題だった。今から自分は嘘をつこうとしているのに、それを見破ってしまうスキルなのだから、穏やかでいられるわけがない。

 続けてクラスメイトたちが自分のスキルを披露していく。

 とは言え、それほどレアなスキルはなく、剣術や槍術、ちょっとした魔法が使える戦闘系のスキルを持つ者が多く、その他も鍛冶や革細工など生産系のスキルがほとんどで、特別皆の興味を引くようなものは出てこなかった。

「あたしのスキルはーー料理です」

 自分の番が来たとき、美南はそう言った。

 料理は元々得意分野なので、ごまかしきれると考えたのだ。ただひとつネックになりそうな青木をすがるような目で見つめる。

 青木はほんの一瞬だけ表情を動かしたが、その変化は誰にも気づかれなかった。

 そのまま青木が口を開くことはなかったので、美南はほっと胸を撫で下ろした。

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