魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人

文字の大きさ
11 / 13

第10話「E=mc²、神々の黄昏と新生の夜明け」

しおりを挟む
 勇者カインの心が、憎しみと疑念の間で激しく揺らいだ、その刹那だった。
 天が、まるで裂けたかのように、禍々しい紫色の光が戦場に降り注いだ。「まったく……使えん駒は、まとめて処分するに限る」
 王都の方角から響き渡ったのは、増幅された最高司祭の冷徹な声だった。彼は王都の神殿の地下で、古代文明の遺産である禁断の魔法を発動させていたのだ。対立を煽るための道具であった勇者と魔王が、和解する可能性が見えた今、両者を証拠ごと消し去るつもりだった。

 紫の光の中から、天を突くほどの巨大な体を持つ異形の存在が姿を現す。神話に語られる、破壊神ラグナロク。最高司祭が、自らの野望のために召喚した、古代の最終兵器だった。その圧倒的な存在感と、周囲の理を歪めるほどの邪悪な魔力は、僕が生み出した絶対零度の世界すらも、たちまち蒸発させていった。

「あいつが……本当の敵だ!」
 僕が叫ぶ。カインはハッと我に返り、迷いを振り払うように聖剣を握り直した。
「俺は……俺は今まで、一体何と戦っていたんだ……!」
 自分の憎しみが、まったく見当違いの相手に向けられていたことを、彼はこの瞬間、痛いほど理解した。

「二人とも、下がって!」
 リリスが、僕とカインの前に出る。彼女は自らの内に秘めた魔王としてのすべての力を解放した。茨の蔦のような魔力の鎖が無数に放たれ、破壊神の巨体を拘束する。しかし、格の違いは明らかだった。ミシミシと音を立てて、魔力の鎖に亀裂が入っていく。長くは持たない。

「勇者カイン! あの化け物の胸にある核を覆っている、魔法障壁を破れるか!?」
 僕は破壊神の弱点を見抜き、叫んだ。
 カインは僕の言葉に、力強くうなずく。「聖剣の全力を解放すれば、一瞬だけなら!」
「それでいい! その一瞬で、奴の核に、僕の最後の一撃を叩き込む!」

 カインはうなずくと、聖剣に自らの魂と神聖力のすべてを注ぎ込む。リリスもまた、最後の力を振り絞り、破壊神の動きを完全に封じた。
 そして、カインは渾身の一撃を放った。白く輝く巨大な閃光が、破壊神ラグナロクの胸部を守る紫色の魔法障壁を、ガラスのように打ち砕いた。

「今だ!」

 僕は、自らの内に秘めた最後の概念を、この世界に解き放つ。
 それは、僕がいた世界の物理学を象徴する、最も美しく、そして最も恐ろしい数式。

【概念置換:特殊相対性理論 E=mc²】

 エネルギー(E)は、質量(m)と光速(c)の二乗を掛け合わせたものに等しい。
 僕は、自らの生命力そのものを、ごく極小の「質量」へと変換する。そして、それを再び「エネルギー」へと転換させた。魔力ゼロの僕だからこそ可能な、不純物のない、純粋な質量エネルギー変換。

 僕の指先に、まるで星が生まれたかのように輝く、ごく小さな光点が生まれる。
 それは、たった僅かな質量から解放された、この世界の誰も見たことのない、想像を絶する莫大なエネルギーの奔流だった。

 僕はその光を、魔法障壁を失い剥き出しになった、破壊神の核へと撃ち放った。

 世界から、音が消えた。

 純白の光がすべてを飲み込み、破壊神は悲鳴を上げる間もなく、塵一つ残さず、原子レベルで完全に消滅した。
 はるか彼方、王都の神殿の方角からも、天を貫く巨大な光の柱が立ち上り、やがてすべては静寂に包まれた。

 力のすべてを使い果たした僕は、その場に崩れ落ちる。薄れゆく意識の中、僕の頬に落ちるエリアの温かい涙と、僕を包み込むリリスの優しい魔力の光を感じていた。

 やがて僕が目を覚ました時、そこには新しい世界の夜明けの光が差し込んでいた。
 僕の前には、白銀の鎧を脱いだカインが、深く、深く頭を下げていた。
「俺は、間違っていた。本当に、すまない……。これからは、この剣を偽りの正義のためではなく、真実と、お前たちが守ろうとした未来のために振るうと誓う」

 人間と魔族、そして異世界からの科学者。
 まったく出自の違う者たちが手を取り合い、偽りの神を打ち破った。
 世界の歴史が、大きく、そして確かに変わる、新しい夜明けだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】 それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。 剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず… 盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず… 攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず… 回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず… 弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず… そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという… これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。 剣で攻撃をすれば勇者より強く… 盾を持てばタンクより役に立ち… 攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが… それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。 Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに… 魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし… 補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に… 怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。 そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが… テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので… 追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。 そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが… 果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか? 9月21日 HOTランキング2位になりました。 皆様、応援有り難う御座います! 同日、夜21時49分… HOTランキングで1位になりました! 感無量です、皆様有り難う御座います♪

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...