「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第1話「理不尽な目覚めと灰色の小鬼」

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 土と、草の匂いで目が覚めた。

『……ん? ここ、どこだ?』

 俺は寝ぼけ眼をこすりながら、ゆっくりと身体を起こした。見慣れた自室の天井じゃない。どこまでも高く、突き抜けるような青空が広がっている。視線を巡らせると、鬱蒼と茂る木々、小鳥のさえずり、そして穏やかな風が頬を撫でていった。
 ……いや、穏やかじゃない。全然穏やかじゃない。

「え、森? なんで俺、森の中にいるんだ?」

 俺の名前は朝霧 海。しがない大学二年生だ。昨日は確か、サークルの飲み会があって、終電ギリギリで帰宅してベッドにダイブしたはず……。その後の記憶がない。まさか、酔っぱらって高尾山あたりまで遠征してしまったとか? いやいや、だとしてもこの風景はあまりにも日本離れしすぎている。見たこともない植物が生い茂り、空気の密度まで違う気がした。

『落ち着け、俺。まずは状況確認だ』

 立ち上がって周囲を見渡す。服装は昨日着ていたままの、ごく普通のTシャツにジーンズ。財布とスマホがポケットに入っているのは不幸中の幸いか。早速スマホの電源を入れてみたが、案の定「圏外」と表示されているだけでGPSも機能していない。

「だよなー……」

 ため息をつきながら、改めて森を観察する。どこもかしこも木、木、木。方角なんてさっぱり分からない。下草が生い茂り、獣道のようなものすらない。完全に遭難状態だ。

『まずいな。とにかく人がいる場所を探さないと』

 やみくもに歩き出すのは危険だ。そう思いつつも、ここに留まっていても事態は好転しない。少しでも開けた場所を目指して歩き始めた、その時だった。

 ガサガサッ!

 近くの茂みから、何かが飛び出してくる音がした。熊か? イノシシか? 身構える俺の前に現れたのは、想像を絶する生物だった。

「……は?」

 身長は子供くらいだが、肌は不気味な灰色で、頭には折れた角のようなものが一本生えている。手には粗末な棍棒を握り、爛々と光る目でこちらを睨みつけていた。汚れた腰布一枚をまとっただけのその姿は、ゲームや映画で見た「ゴブリン」そのものだった。

『嘘だろ……。これ、ドッキリか何かの撮影か?』

 しかし、奴から発せられる生臭い獣の匂いと、殺気にも似た敵意が、これが現実だと告げていた。

「キシャァァァッ!」

 甲高い叫び声を上げ、灰色の小鬼――仮にグレイホーンと呼んでおこう――が、棍棒を振りかぶって突進してくる。

「うわっ!?」

 咄嗟に横へ跳んで避ける。棍棒が空を切り、風圧が頬をかすめた。冗談じゃない、当たったら頭蓋骨が砕けるぞ。

『なんで俺がこんな目に!』

 心の中で絶叫しながら、必死に逃げ惑う。運動神経には自信がない。すぐに息が上がり、足がもつれ始めた。グレイホーンは執拗に追いかけてくる。しかも、茂みの奥から仲間らしき個体が二体、三体と現れた。数は合計四体。完全に包囲されてしまった。

「マジかよ……」

 背後を木に阻まれ、俺は完全に追い詰められる。グレイホーンたちが、下卑た笑みを浮かべながらじりじりと距離を詰めてくる。手には棍棒。逃げ場はない。

『死ぬのか? 俺、こんな意味の分からない状況で……』

 恐怖で全身が震え、足がすくんで動かない。せめてもの抵抗にと、足元に転がっていた拳大の石を拾い上げた。震える手で、目の前のグレイホーンに投げつける。しかし、無軌道に飛んだ石は、奴の肩をかすって地面に落ちただけだった。

「キキッ!」

 嘲笑うかのような声を上げ、グレイホーンが棍棒を振り上げる。死を覚悟し、ぎゅっと目を閉じた。

 ――その瞬間だった。

 世界が、まばゆい光に包まれた。
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