「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第2話「聖なる光と亜麻色の髪」

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 目を開けていられないほどの強い光が収束し、俺は恐る恐る目を開けた。

 目の前の光景に、言葉を失う。

 俺を取り囲んでいたはずのグレイホーンたちが、黒い塵となって崩れ落ちていく。まるで、存在そのものを消し飛ばされたかのようだ。何が起きたのか全く理解できず、呆然と立ち尽くす俺の耳に、凛とした声が届いた。

「……大丈夫?」

 声のした方へ振り返る。そこに立っていたのは、一人の少女だった。

 亜麻色の髪が風に揺れ、森の木漏れ日を浴びてキラキラと輝いている。透き通るような白い肌。大きな翠色の瞳は、強い意志を宿しながらも、どこか警戒の色を浮かべて俺を見ていた。歳は俺と同じくらいだろうか。身にまとっているのは簡素な旅人のマントだが、その下に着ている白い衣は上質なものに見える。何より、彼女の存在そのものが、この殺伐とした森の中では異質なくらいに神聖な雰囲気を放っていた。

「あ、あの……君が?」

「ええ。ギリギリ間に合ったみたいね」

 少女は淡々と答えると、俺の足元に転がっていた石に視線を落とした。それは俺が先ほど投げつけた、ただの石ころだ。

「……あなた、何者? その石……尋常じゃない魔力の残滓を感じる」

「え? 石?」

 訳が分からず、俺もその石を見る。何の変哲もない、ただの石だ。魔力と言われても、俺には何も感じられない。

「いや、ただの石だけど……。それより、さっきの光は君が?」

「……そうよ。聖光魔法。あなたを助けた」

 少女はそう言うと、再び俺を値踏みするように見つめる。その瞳は、まるで危険な生物でも観察するかのようだ。

『助けてもらったのはありがたいけど、なんかすごい警戒されてるな……』

 まあ、当然か。森の中で怪しい魔物に襲われている男なんて、関わり合いになりたくないだろう。

「と、とにかく、助けてくれてありがとう。俺はカイ。カイ・アサギリ」

 咄嗟に名前を名乗る。異世界とやらで本名を名乗るのが正しいのかは分からないが、他に思いつかなかった。

「……ルミナ」

 少女は少し間を置いて、ぽつりと自分の名前を告げた。

「ルミナ、か。本当に助かったよ。君がいなかったら、今頃……」

 想像して、ぶるりと身体が震えた。本当に死ぬところだったのだ。

「礼はいいわ。それより、あなた。どうしてこんな森の奥深くに一人でいるの? 服装も見たことがないし……。それに、さっきの魔力。あなたは一体……」

 ルミナは矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。彼女にとって、俺は得体のしれない存在なのだろう。

「いや、それが俺にもさっぱり……。気づいたら、ここにいたんだ。服装は、まあ、俺が元々いた場所の普通の格好なんだけど」

「元々いた場所?」

「ああ。日本っていうんだけど……知ってる?」

 俺の問いに、ルミナは静かに首を横に振った。

『だよな。やっぱり異世界ってやつか……』

 だんだんと、この非現実的な状況を受け入れざるを得なくなってきた。

「とにかく、私はもう行くわ。あなたも早く森を抜けた方がいい。ここは魔物が多いから」

 ルミナはそう言って、俺に背を向けようとする。

「え、ちょっと待ってくれ!」

 俺は慌てて彼女を呼び止めた。

「何?」

「俺、この世界のことも、この森のことも何も知らないんだ! どこに行けばいいのかも分からない。だから……その、町まで案内してもらえないだろうか?」

 情けないとは思う。でも、この状況で一人放り出されたら、次に魔物に遭遇した時に助かる保証はない。この少女は、あのグレイホーンを一瞬で消し飛ばすほどの力を持っている。彼女についていくのが、最も安全な選択肢のはずだ。

 ルミナはしばらく黙って俺を見ていたが、やがて深いため息をついた。

「……分かったわ。ただし、変なことをしたら、容赦しないから」

 彼女の翠色の瞳が、鋭く俺を射抜く。その視線に、俺はぶんぶんと首を縦に振ることしかできなかった。

 こうして、俺の異世界での生活は、聖なる光を操る謎の美少女、ルミナとの出会いから始まった。
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