35 / 87
第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」
第2話「聖なる光と亜麻色の髪」
しおりを挟む
目を開けていられないほどの強い光が収束し、俺は恐る恐る目を開けた。
目の前の光景に、言葉を失う。
俺を取り囲んでいたはずのグレイホーンたちが、黒い塵となって崩れ落ちていく。まるで、存在そのものを消し飛ばされたかのようだ。何が起きたのか全く理解できず、呆然と立ち尽くす俺の耳に、凛とした声が届いた。
「……大丈夫?」
声のした方へ振り返る。そこに立っていたのは、一人の少女だった。
亜麻色の髪が風に揺れ、森の木漏れ日を浴びてキラキラと輝いている。透き通るような白い肌。大きな翠色の瞳は、強い意志を宿しながらも、どこか警戒の色を浮かべて俺を見ていた。歳は俺と同じくらいだろうか。身にまとっているのは簡素な旅人のマントだが、その下に着ている白い衣は上質なものに見える。何より、彼女の存在そのものが、この殺伐とした森の中では異質なくらいに神聖な雰囲気を放っていた。
「あ、あの……君が?」
「ええ。ギリギリ間に合ったみたいね」
少女は淡々と答えると、俺の足元に転がっていた石に視線を落とした。それは俺が先ほど投げつけた、ただの石ころだ。
「……あなた、何者? その石……尋常じゃない魔力の残滓を感じる」
「え? 石?」
訳が分からず、俺もその石を見る。何の変哲もない、ただの石だ。魔力と言われても、俺には何も感じられない。
「いや、ただの石だけど……。それより、さっきの光は君が?」
「……そうよ。聖光魔法。あなたを助けた」
少女はそう言うと、再び俺を値踏みするように見つめる。その瞳は、まるで危険な生物でも観察するかのようだ。
『助けてもらったのはありがたいけど、なんかすごい警戒されてるな……』
まあ、当然か。森の中で怪しい魔物に襲われている男なんて、関わり合いになりたくないだろう。
「と、とにかく、助けてくれてありがとう。俺はカイ。カイ・アサギリ」
咄嗟に名前を名乗る。異世界とやらで本名を名乗るのが正しいのかは分からないが、他に思いつかなかった。
「……ルミナ」
少女は少し間を置いて、ぽつりと自分の名前を告げた。
「ルミナ、か。本当に助かったよ。君がいなかったら、今頃……」
想像して、ぶるりと身体が震えた。本当に死ぬところだったのだ。
「礼はいいわ。それより、あなた。どうしてこんな森の奥深くに一人でいるの? 服装も見たことがないし……。それに、さっきの魔力。あなたは一体……」
ルミナは矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。彼女にとって、俺は得体のしれない存在なのだろう。
「いや、それが俺にもさっぱり……。気づいたら、ここにいたんだ。服装は、まあ、俺が元々いた場所の普通の格好なんだけど」
「元々いた場所?」
「ああ。日本っていうんだけど……知ってる?」
俺の問いに、ルミナは静かに首を横に振った。
『だよな。やっぱり異世界ってやつか……』
だんだんと、この非現実的な状況を受け入れざるを得なくなってきた。
「とにかく、私はもう行くわ。あなたも早く森を抜けた方がいい。ここは魔物が多いから」
ルミナはそう言って、俺に背を向けようとする。
「え、ちょっと待ってくれ!」
俺は慌てて彼女を呼び止めた。
「何?」
「俺、この世界のことも、この森のことも何も知らないんだ! どこに行けばいいのかも分からない。だから……その、町まで案内してもらえないだろうか?」
情けないとは思う。でも、この状況で一人放り出されたら、次に魔物に遭遇した時に助かる保証はない。この少女は、あのグレイホーンを一瞬で消し飛ばすほどの力を持っている。彼女についていくのが、最も安全な選択肢のはずだ。
ルミナはしばらく黙って俺を見ていたが、やがて深いため息をついた。
「……分かったわ。ただし、変なことをしたら、容赦しないから」
彼女の翠色の瞳が、鋭く俺を射抜く。その視線に、俺はぶんぶんと首を縦に振ることしかできなかった。
こうして、俺の異世界での生活は、聖なる光を操る謎の美少女、ルミナとの出会いから始まった。
目の前の光景に、言葉を失う。
俺を取り囲んでいたはずのグレイホーンたちが、黒い塵となって崩れ落ちていく。まるで、存在そのものを消し飛ばされたかのようだ。何が起きたのか全く理解できず、呆然と立ち尽くす俺の耳に、凛とした声が届いた。
「……大丈夫?」
声のした方へ振り返る。そこに立っていたのは、一人の少女だった。
亜麻色の髪が風に揺れ、森の木漏れ日を浴びてキラキラと輝いている。透き通るような白い肌。大きな翠色の瞳は、強い意志を宿しながらも、どこか警戒の色を浮かべて俺を見ていた。歳は俺と同じくらいだろうか。身にまとっているのは簡素な旅人のマントだが、その下に着ている白い衣は上質なものに見える。何より、彼女の存在そのものが、この殺伐とした森の中では異質なくらいに神聖な雰囲気を放っていた。
「あ、あの……君が?」
「ええ。ギリギリ間に合ったみたいね」
少女は淡々と答えると、俺の足元に転がっていた石に視線を落とした。それは俺が先ほど投げつけた、ただの石ころだ。
「……あなた、何者? その石……尋常じゃない魔力の残滓を感じる」
「え? 石?」
訳が分からず、俺もその石を見る。何の変哲もない、ただの石だ。魔力と言われても、俺には何も感じられない。
「いや、ただの石だけど……。それより、さっきの光は君が?」
「……そうよ。聖光魔法。あなたを助けた」
少女はそう言うと、再び俺を値踏みするように見つめる。その瞳は、まるで危険な生物でも観察するかのようだ。
『助けてもらったのはありがたいけど、なんかすごい警戒されてるな……』
まあ、当然か。森の中で怪しい魔物に襲われている男なんて、関わり合いになりたくないだろう。
「と、とにかく、助けてくれてありがとう。俺はカイ。カイ・アサギリ」
咄嗟に名前を名乗る。異世界とやらで本名を名乗るのが正しいのかは分からないが、他に思いつかなかった。
「……ルミナ」
少女は少し間を置いて、ぽつりと自分の名前を告げた。
「ルミナ、か。本当に助かったよ。君がいなかったら、今頃……」
想像して、ぶるりと身体が震えた。本当に死ぬところだったのだ。
「礼はいいわ。それより、あなた。どうしてこんな森の奥深くに一人でいるの? 服装も見たことがないし……。それに、さっきの魔力。あなたは一体……」
ルミナは矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。彼女にとって、俺は得体のしれない存在なのだろう。
「いや、それが俺にもさっぱり……。気づいたら、ここにいたんだ。服装は、まあ、俺が元々いた場所の普通の格好なんだけど」
「元々いた場所?」
「ああ。日本っていうんだけど……知ってる?」
俺の問いに、ルミナは静かに首を横に振った。
『だよな。やっぱり異世界ってやつか……』
だんだんと、この非現実的な状況を受け入れざるを得なくなってきた。
「とにかく、私はもう行くわ。あなたも早く森を抜けた方がいい。ここは魔物が多いから」
ルミナはそう言って、俺に背を向けようとする。
「え、ちょっと待ってくれ!」
俺は慌てて彼女を呼び止めた。
「何?」
「俺、この世界のことも、この森のことも何も知らないんだ! どこに行けばいいのかも分からない。だから……その、町まで案内してもらえないだろうか?」
情けないとは思う。でも、この状況で一人放り出されたら、次に魔物に遭遇した時に助かる保証はない。この少女は、あのグレイホーンを一瞬で消し飛ばすほどの力を持っている。彼女についていくのが、最も安全な選択肢のはずだ。
ルミナはしばらく黙って俺を見ていたが、やがて深いため息をついた。
「……分かったわ。ただし、変なことをしたら、容赦しないから」
彼女の翠色の瞳が、鋭く俺を射抜く。その視線に、俺はぶんぶんと首を縦に振ることしかできなかった。
こうして、俺の異世界での生活は、聖なる光を操る謎の美少女、ルミナとの出会いから始まった。
19
あなたにおすすめの小説
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
転生したら無自覚に世界最強になっていた件。周りは僕を崇めるけど、僕自身は今日も日雇い仕事を探しています。
黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ異世界に転生した元サラリーマンの星野悠。
彼に与えられたのは「異常な魔力」と「無自覚に魔術を使う能力」。
しかし自己評価が低すぎる悠は、自分のチート能力に全く気づかない。
「困っている人を助けたい」――その純粋な善意だけで、魔物を一撃で消滅させ、枯れた大地を蘇らせ、難病を癒してしまう。
周囲が驚愕し、彼を英雄と崇めても、本人は「たまたまです」「運が良かっただけ」と首を傾げるばかり。
これは、お人好しな青年が、無自覚なまま世界を救ってしまう、心温まる勘違いと奇跡の物語。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる