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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」
第9話「始まりの森と旅の誓い」
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旅が始まって、三日が過ぎた。
俺とルミナは、アルストリア王国と東の大森林の間に広がる、広大な丘陵地帯を歩き続けていた。街道を外れているため、他の旅人と会うこともなく、聞こえるのは風の音と鳥の声だけだ。
俺の《概念編集》の力は、旅の様々な場面で役立った。
切れ味の悪くなったナイフを研ぎ澄まし、破れた水袋の穴を塞ぐ。夜は、そこらへんの石を「熱を保つ石」に書き換えて、湯たんぽ代わりにした。ルミナは最初こそ驚いていたが、今ではすっかり慣れた様子で、時々「これはこうできない?」なんて無茶振りをしてくるようになった。
「カイ、この干し肉、もっと柔らかくジューシーにならない?」
「いや、それは元の素材の問題だから無理だろ……」
そんなやり取りも、今では日常だ。彼女も、最初の頃の刺々しさが嘘のように、少しずつ素の表情を見せてくれるようになってきた。
「見えてきたわ。あれが『始まりの森』よ」
丘の上から、ルミナが前方を指さす。
視線の先には、地平線の果てまで続くかのような、巨大な森が広がっていた。一本一本の木が天を突き、その威容はまるで緑の壁のようだ。あれが、エルドラナへ続く大森林の入り口。
「でかいな……。あの中を突っ切るのか」
「ええ。森の中には、強力な魔物もたくさんいるわ。リムベルの森とは比べ物にならない。ここからは、今まで以上に気を引き締めていかないと」
ルミナの言葉に、俺はごくりと唾をのんだ。
森の入り口で、俺たちは最後の準備を整えることにした。水袋を満たし、食料の残りを確かめる。そして、武器の確認だ。
「ルミナは、その魔法が武器なんだよな?」
「ええ。でも、私の聖光魔法は、攻撃よりも治癒や防御が得意なの。あまり、威力は期待しないで」
「そうなのか。じゃあ、攻撃は俺が担当しないとだな」
俺は、腰に差した一本の剣を抜いた。それは、旅の途中で拾った、錆びてボロボロの鉄の剣だった。もちろん、そのままじゃない。俺の力で『概念編集』済みだ。
【錆びた鉄の剣】→【軽く、鋭く、頑丈なミスリルもどきの剣】
刀身は銀色に輝き、振るってみると驚くほど軽い。試しに岩を斬りつけてみたら、豆腐のように真っ二つになった。我ながら、とんでもない物を作り出してしまったと思う。
「準備はいいか?」
「ええ。いつでも」
俺たちは顔を見合わせ、力強くうなずく。
「よし、行こう! 聖樹の都、エルドラナへ!」
俺の掛け声と共に、俺たちは巨大な森へと足を踏み入れた。
森の中は、昼間だというのに薄暗かった。高く生い茂った木々の葉が、太陽の光を遮っているからだ。湿った土の匂いと、むっとするような植物の匂いが鼻をつく。
時折、遠くから獣の咆哮のようなものが聞こえ、そのたびに俺はびくっと肩を震わせた。
「大丈夫。気配を探りながら進むから」
ルミナが、俺を安心させるように声をかけてくれる。彼女は感覚を研ぎ澄ませ、魔物の気配がないか常に警戒してくれていた。本当に頼りになる。
『俺も、彼女を守れるくらい強くならないと』
手の中の剣を、強く握りしめる。
この旅は、始まったばかりだ。これからどんな困難が待ち受けているか分からない。影の教団の追手も、いつまた現れるか分からない。
でも、不思議と不安はなかった。隣には、信頼できるパートナーがいる。そして、この手には、世界の理すら書き換える、無限の可能性を秘めた力がある。
俺はルミナの隣に並び、薄暗い森の奥をまっすぐに見据えた。
「絶対に着こうな、エルドラナに」
「……ええ、必ず」
短く、しかし力強い言葉を交わす。
こうして、平凡な大学生だった俺の、人生を懸けた大冒険の幕は、本格的に上がった。
俺とルミナは、アルストリア王国と東の大森林の間に広がる、広大な丘陵地帯を歩き続けていた。街道を外れているため、他の旅人と会うこともなく、聞こえるのは風の音と鳥の声だけだ。
俺の《概念編集》の力は、旅の様々な場面で役立った。
切れ味の悪くなったナイフを研ぎ澄まし、破れた水袋の穴を塞ぐ。夜は、そこらへんの石を「熱を保つ石」に書き換えて、湯たんぽ代わりにした。ルミナは最初こそ驚いていたが、今ではすっかり慣れた様子で、時々「これはこうできない?」なんて無茶振りをしてくるようになった。
「カイ、この干し肉、もっと柔らかくジューシーにならない?」
「いや、それは元の素材の問題だから無理だろ……」
そんなやり取りも、今では日常だ。彼女も、最初の頃の刺々しさが嘘のように、少しずつ素の表情を見せてくれるようになってきた。
「見えてきたわ。あれが『始まりの森』よ」
丘の上から、ルミナが前方を指さす。
視線の先には、地平線の果てまで続くかのような、巨大な森が広がっていた。一本一本の木が天を突き、その威容はまるで緑の壁のようだ。あれが、エルドラナへ続く大森林の入り口。
「でかいな……。あの中を突っ切るのか」
「ええ。森の中には、強力な魔物もたくさんいるわ。リムベルの森とは比べ物にならない。ここからは、今まで以上に気を引き締めていかないと」
ルミナの言葉に、俺はごくりと唾をのんだ。
森の入り口で、俺たちは最後の準備を整えることにした。水袋を満たし、食料の残りを確かめる。そして、武器の確認だ。
「ルミナは、その魔法が武器なんだよな?」
「ええ。でも、私の聖光魔法は、攻撃よりも治癒や防御が得意なの。あまり、威力は期待しないで」
「そうなのか。じゃあ、攻撃は俺が担当しないとだな」
俺は、腰に差した一本の剣を抜いた。それは、旅の途中で拾った、錆びてボロボロの鉄の剣だった。もちろん、そのままじゃない。俺の力で『概念編集』済みだ。
【錆びた鉄の剣】→【軽く、鋭く、頑丈なミスリルもどきの剣】
刀身は銀色に輝き、振るってみると驚くほど軽い。試しに岩を斬りつけてみたら、豆腐のように真っ二つになった。我ながら、とんでもない物を作り出してしまったと思う。
「準備はいいか?」
「ええ。いつでも」
俺たちは顔を見合わせ、力強くうなずく。
「よし、行こう! 聖樹の都、エルドラナへ!」
俺の掛け声と共に、俺たちは巨大な森へと足を踏み入れた。
森の中は、昼間だというのに薄暗かった。高く生い茂った木々の葉が、太陽の光を遮っているからだ。湿った土の匂いと、むっとするような植物の匂いが鼻をつく。
時折、遠くから獣の咆哮のようなものが聞こえ、そのたびに俺はびくっと肩を震わせた。
「大丈夫。気配を探りながら進むから」
ルミナが、俺を安心させるように声をかけてくれる。彼女は感覚を研ぎ澄ませ、魔物の気配がないか常に警戒してくれていた。本当に頼りになる。
『俺も、彼女を守れるくらい強くならないと』
手の中の剣を、強く握りしめる。
この旅は、始まったばかりだ。これからどんな困難が待ち受けているか分からない。影の教団の追手も、いつまた現れるか分からない。
でも、不思議と不安はなかった。隣には、信頼できるパートナーがいる。そして、この手には、世界の理すら書き換える、無限の可能性を秘めた力がある。
俺はルミナの隣に並び、薄暗い森の奥をまっすぐに見据えた。
「絶対に着こうな、エルドラナに」
「……ええ、必ず」
短く、しかし力強い言葉を交わす。
こうして、平凡な大学生だった俺の、人生を懸けた大冒険の幕は、本格的に上がった。
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