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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」
第23話「束の間の休息と新たな旅立ち」
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その夜、エルフの里では俺たちのための盛大な宴が開かれた。
広場には大きな焚き火が焚かれ、エルフたちが自慢の料理や果実酒を振る舞ってくれた。普段は物静かな彼らも、今夜ばかりは陽気で、美しい歌を歌い、軽やかな踊りを披露してくれた。
「カイ、ルミナ! この森の恵みを存分に味わってくれ!」
屈強なエルフの戦士が、巨大な牙猪の丸焼きを豪快に切り分けてくれる。それは、俺たちが森の入り口で倒したのと同じ種類の魔物だったが、エルフたちの手にかかれば、絶品の馳走に変わるらしかった。
「すごい……美味しい!」
ルミナも、久しぶりの心からの笑顔で、果実のパイを頬張っている。彼女がこんな風に笑っているのを見ると、俺も嬉しくなった。
俺は、エリアスと共に少し離れた場所で、静かに酒を酌み交わしていた。エルフの作る酒は、花の蜜のように甘く、それでいて芳醇な香りがした。
「カイ」
エリアスが、真剣な眼差しで俺を見た。
「君の力、《概念編集》と言ったか。それは、神の領域にすら届きうる、諸刃の剣だ」
「……はい」
「使い方を誤れば、世界を滅ぼすことすら可能だろう。だが、君はそれを、森を救うために使った。君の心根が、正しい方向へと力を導いたのだ」
彼は、俺の心の奥底まで見透かしているようだった。
「決して、忘れるな。力の源は、君の心だ。心が濁れば、力もまた濁る。常に、その心を正しく保つよう、努めるのだ」
それは、俺の力を認めた上で与えてくれた、心からの忠告だった。
「肝に銘じます」
俺は、彼の言葉を胸に深く刻んだ。
宴が終わり、俺たちは出発の準備を整えた。エルフたちは、俺たちの旅に必要な物資を、惜しみなく提供してくれた。新しい丈夫な旅装束、栄養価の高い保存食、そして、エリアスからは、森のエルフにしか作れないという、魔力を少しずつ回復させる効果のあるお守りまで贈られた。
翌朝、俺たちは里の入り口で、見送りに来てくれたエルフたちと向き合っていた。
「世話になったな、エリアス。みんなも、本当にありがとう」
「我らのほうこそ。君たちの武勇は、歌にして、末代まで語り継ごう」
エリアスが、にこりと笑う。普段は厳格な彼の、珍しい笑顔だった。
「カイ、ルミナ」
一人の若いエルフの少女が、駆け寄ってきた。彼女は、手ずから編んだという花の冠を、俺とルミナの頭にそれぞれそっと乗せてくれた。
「森の祝福が、あなたたちと共にありますように」
「ありがとう」
ルミナが、優しく少女の頭を撫でる。
温かい祝福に見送られ、俺たちはついに、エルドラナへと続く最後の道へと足を踏み出した。エリアスが案内役として、自ら先導してくれることになった。
これまでの薄暗い森とは打って変わり、その先は、まるで別世界のように神秘的な光景が広がっていた。
巨大な古代樹が天を覆い、その幹や枝には、淡い光を放つ苔やキノコが群生している。足元には、人の動きに呼応してキラキラと光る花々が咲き乱れ、空気はどこまでも清浄だった。
「ここから先は、古き森の精霊たちが守る聖域。邪な者は、一歩たりとも足を踏み入れることはできない」
エリアスが、静かに説明する。
影の教団の追手も、もうここまで来ることはできないだろう。俺たちは、ようやく安息の地へとたどり着こうとしていた。
だが、俺の心は、ただ安堵しているだけではなかった。
エルドラナへ行けば、ルミナは守られる。でも、それは、彼女が再び『聖女』としての役割を背負うことを意味するのかもしれない。そして、俺は? 異世界人である俺は、そこに居場所があるのだろうか。
新たな旅立ちは、希望と共に、一抹の不安を俺の心に落としていた。
広場には大きな焚き火が焚かれ、エルフたちが自慢の料理や果実酒を振る舞ってくれた。普段は物静かな彼らも、今夜ばかりは陽気で、美しい歌を歌い、軽やかな踊りを披露してくれた。
「カイ、ルミナ! この森の恵みを存分に味わってくれ!」
屈強なエルフの戦士が、巨大な牙猪の丸焼きを豪快に切り分けてくれる。それは、俺たちが森の入り口で倒したのと同じ種類の魔物だったが、エルフたちの手にかかれば、絶品の馳走に変わるらしかった。
「すごい……美味しい!」
ルミナも、久しぶりの心からの笑顔で、果実のパイを頬張っている。彼女がこんな風に笑っているのを見ると、俺も嬉しくなった。
俺は、エリアスと共に少し離れた場所で、静かに酒を酌み交わしていた。エルフの作る酒は、花の蜜のように甘く、それでいて芳醇な香りがした。
「カイ」
エリアスが、真剣な眼差しで俺を見た。
「君の力、《概念編集》と言ったか。それは、神の領域にすら届きうる、諸刃の剣だ」
「……はい」
「使い方を誤れば、世界を滅ぼすことすら可能だろう。だが、君はそれを、森を救うために使った。君の心根が、正しい方向へと力を導いたのだ」
彼は、俺の心の奥底まで見透かしているようだった。
「決して、忘れるな。力の源は、君の心だ。心が濁れば、力もまた濁る。常に、その心を正しく保つよう、努めるのだ」
それは、俺の力を認めた上で与えてくれた、心からの忠告だった。
「肝に銘じます」
俺は、彼の言葉を胸に深く刻んだ。
宴が終わり、俺たちは出発の準備を整えた。エルフたちは、俺たちの旅に必要な物資を、惜しみなく提供してくれた。新しい丈夫な旅装束、栄養価の高い保存食、そして、エリアスからは、森のエルフにしか作れないという、魔力を少しずつ回復させる効果のあるお守りまで贈られた。
翌朝、俺たちは里の入り口で、見送りに来てくれたエルフたちと向き合っていた。
「世話になったな、エリアス。みんなも、本当にありがとう」
「我らのほうこそ。君たちの武勇は、歌にして、末代まで語り継ごう」
エリアスが、にこりと笑う。普段は厳格な彼の、珍しい笑顔だった。
「カイ、ルミナ」
一人の若いエルフの少女が、駆け寄ってきた。彼女は、手ずから編んだという花の冠を、俺とルミナの頭にそれぞれそっと乗せてくれた。
「森の祝福が、あなたたちと共にありますように」
「ありがとう」
ルミナが、優しく少女の頭を撫でる。
温かい祝福に見送られ、俺たちはついに、エルドラナへと続く最後の道へと足を踏み出した。エリアスが案内役として、自ら先導してくれることになった。
これまでの薄暗い森とは打って変わり、その先は、まるで別世界のように神秘的な光景が広がっていた。
巨大な古代樹が天を覆い、その幹や枝には、淡い光を放つ苔やキノコが群生している。足元には、人の動きに呼応してキラキラと光る花々が咲き乱れ、空気はどこまでも清浄だった。
「ここから先は、古き森の精霊たちが守る聖域。邪な者は、一歩たりとも足を踏み入れることはできない」
エリアスが、静かに説明する。
影の教団の追手も、もうここまで来ることはできないだろう。俺たちは、ようやく安息の地へとたどり着こうとしていた。
だが、俺の心は、ただ安堵しているだけではなかった。
エルドラナへ行けば、ルミナは守られる。でも、それは、彼女が再び『聖女』としての役割を背負うことを意味するのかもしれない。そして、俺は? 異世界人である俺は、そこに居場所があるのだろうか。
新たな旅立ちは、希望と共に、一抹の不安を俺の心に落としていた。
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