「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第24話「大森林の奥へ」

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 エリアスに導かれ、俺たちは大森林の最深部を歩いていた。

 そこは、まさに精霊の庭と呼ぶにふさわしい場所だった。木々の間を流れる小川の水は、それ自体が淡い光を放っているかのようで、川底の小石の一つ一つまでくっきりと見えた。時折、羽の生えた小さな光の粒のような生き物――森の精霊ピクシーが、俺たちの周りを興味深そうに飛び回っては、姿を消していく。

「すごいな……。おとぎ話の世界みたいだ」

「ここは、世界の創世から姿を変えていない、原初の森の一部だからな。時間の流れすら、外の世界とは違う」

 エリアスは、懐かしむような目で周囲を見渡しながら言った。

 旅は、信じられないほど順調に進んだ。凶暴な魔物の気配は一切なく、むしろ森の動物たちが、俺たちを歓迎するかのように姿を見せることすらあった。銀色の毛並みを持つ美しい狐が、道案内をするかのように、しばらく俺たちの前を走ったりもした。

 穏やかな旅路の中、俺はエリアスの言葉を何度も思い出していた。

『力の源は、君の心だ』

 嘆きの沼で、俺は確かに、呪いの核の悲しみを感じ取った。そして、それを癒したいと、心から願った。だからこそ、あの奇跡は起きたのかもしれない。

 もし、俺があの時、核の憎悪に飲み込まれていたら? もし、俺がこの力を、自分の欲望のために使おうとしたら?

 ぞっとするような想像が、頭をよぎる。この力は、俺が思っている以上に、繊細で危険なものなのだ。俺は、この力と、そして自分自身の心と、真剣に向き合わなければならない。

 隣を歩くルミナも、物思いに沈んでいるようだった。エルドラナが近づくにつれて、彼女の表情には、安堵と共に、ある種の覚悟のようなものが浮かんでいた。

 彼女は、自分の故郷で、何と向き合うことになるのだろうか。逃げ出した場所へ戻るというのは、きっと簡単なことではないはずだ。

「……なあ、ルミナ」

 俺は、彼女に声をかけた。

「エルドラナに着いたら、どうするんだ? 君の一族の人たちとか、いるのか?」

 俺の問いに、ルミナは少しだけ視線を伏せた。

「……分からないわ。私が逃げ出した時、両親は私を逃がすために教団と戦っていた。他の同族たちがどうなったのかも、分からない。もしかしたら、もう誰もいないのかもしれない」

 その声は、震えていた。

「でも、行かなければならないの。確かめないと。そして、もし誰もいなくても……私が、一族の聖なる力を受け継いでいかなければならない。それが、私の使命だから」

 彼女の瞳には、悲しみと、それを乗り越えようとする強い意志が宿っていた。

 俺は、彼女に何と声をかければいいのか分からなかった。ただ、そっと彼女の隣に寄り添って歩くことしかできない。

 やがて、三日ほど歩き続けた頃、エリアスが足を止めた。

「……着いたぞ」

 目の前に、信じられない光景が広がっていた。

 巨大な崖がそそり立ち、その中央から、膨大な量の水が滝となって流れ落ちている。だが、それはただの水ではなかった。滝の水そのものが、虹色の光を放っているのだ。

 光の粒子が、水しぶきとなって舞い上がり、周囲を幻想的な光で満たしている。

「『虹の飛泉(アイリスフォール)』……。聖樹の都、エルドラナへの、唯一の入り口だ」

 エリアスが、厳かに告げる。

 この光の滝の向こうに、ルミナの故郷が、そして俺たちの旅の目的地がある。

 俺は、ゴクリと唾を飲み込み、目の前の壮大で美しい光景を、ただ見つめていた。
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