「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第32話「反撃の狼煙」

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「小賢しい真似を……!」

 ザルヴァークは最初の動揺からすぐに立ち直り、新たな命令を下した。

「鉄槌は次の充填まで時間がかかる! 全員突撃せよ! あの壁がどれだけ硬かろうと、門を破り内部へ侵入すれば同じこと!」

 鬨の声と共に、教団の兵士たちが黄金に輝くエルドラナの城門目掛けて殺到した。
 その中にはシンとレンの姿もあった。
 彼らは他の兵士たちとは比較にならない速度で、城壁を駆け上がろうとしている。

「エリアスさん!」

 俺が叫ぶとエリアスは心得たとばかりに弓を構えた。

「エルフの戦士たちよ! 聖なる森を穢す者どもに、我らの矢の雨を降らせよ! 放て!」

 エリアスの号令一下、城壁にずらりと並んだエルフの射手たちが一斉に矢を放つ。
 風を切る音と共に無数の矢が教団の兵士たちに降り注いだ。
 エルフの矢は正確無比で、兵士たちの鎧の隙間を的確に射抜いていく。
 次々と兵士たちが倒れていくが、彼らは狂信者の集団だ。
 死を恐れず仲間たちの死体を踏み越えて、なおも前進してくる。

「カイ殿! 門が!」

 ソフィアラの指さす先で、数人の屈強な兵士たちが巨大な丸太を抱えて城門に突撃を繰り返していた。
 俺の力で強化された城門はびくともしないが、いつまでもつか分からない。

「ルミナ! 援護を頼む!」

「ええ!」

 俺は城壁から飛び降り、城門の前へと舞い降りた。
 背後ではルミナが聖なる光の矢を放ち、俺に近づこうとする敵兵を牽制してくれる。

「どけえええっ!」

 俺はミスリルもどきの剣を振るい、丸太を抱えた兵士たちに斬りかかった。
 修行を経て俺の剣術も以前とは比べ物にならないほど洗練されている。
 世界樹との対話は俺の身体能力そのものをも向上させてくれていた。
 剣が閃くたびに、教団の兵士たちが血しぶきを上げて倒れていく。

 だが敵の数はあまりにも多い。
 倒しても倒しても、次から次へと新たな兵士が襲いかかってくる。
 その時、城壁を駆け上がっていたシンとレンが、ついに壁の上へと到達した。

「邪魔だ、エルフ!」

 二人の双剣が嵐のようにエルフの戦士たちを薙ぎ払っていく。
 エルフたちも屈強な戦士だが、影の教団でも最強クラスの実力を持つこの二人を同時に相手にするのは荷が重すぎた。

「エリアス!」

 シンが指揮官であるエリアス目掛けて、一直線に突っ込んでいく。

「くっ!」

 エリアスも弓を捨て腰の長剣を抜いて応戦するが、シンの超人的なスピードに翻弄され徐々に追い詰められていく。
 戦況は一進一退。
 いや、数の上ではこちらが圧倒的に不利だ。

 何か戦況をひっくり返す決定的な一手を……!
 俺は敵兵を薙ぎ払いながら、思考を巡らせる。
 そうだ、この都を強化した時のように、もっと大規模な《概念編集》を攻撃に転用できないか?

 俺はエルドラナの城壁を支える、世界樹の巨大な根に意識を集中させた。
 この根は都の地下を縦横無尽に走り、大地そのものと繋がっている。

 この根を……『敵を捕らえる巨大な茨の鞭』に!

 俺が強く念じると、大地が大きく揺れた。
 次の瞬間、教団の兵士たちがいる地面の至る所から、バスケットボールほどもある太さの鋭い棘が無数に生えた巨大な木の根が、まるで巨大な蛇のように突き出してきたのだ。

「な、なんだこれは!?」
「うわあああっ!」

 根は生き物のようにうねり、教団の兵士たちを薙ぎ払い締め上げ地面に叩きつけていく。
 戦場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
 この一撃で教団の兵士たちの半数近くが、戦闘不能に陥った。

「やったか!?」

 俺が安堵の息をついた、その時。

「――甘いな」

 冷徹な声と共に、一陣の黒い風が俺の目の前を通り過ぎた。
 風が止んだ時、そこには大司教ザルヴァークが立っていた。
 彼は巨大な根の攻撃を、涼しい顔で全てかわしきっていたのだ。
 そしてその手には禍々しい紫色の光を放つ、巨大なカマが握られていた。

「小僧。貴様のその力、なかなか面白い。だがそれもここまでだ」

 ザルヴァークの全身から、これまでの誰とも比較にならない絶望的なまでの魔力があふれ出す。
 ラスボスが、ついに俺の目の前に立った。
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