66 / 87
第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」
第33話「大司教ザルヴァーク」
しおりを挟む
ザルヴァークから放たれる魔力の奔流は、肌を刺すように痛かった。
それはただ強大なだけではない。
触れただけで精神を汚染されそうな、濃密な邪気が渦巻いていた。
「カイ! 離れて!」
城壁の上からルミナの悲鳴のような声が聞こえる。
だが俺は動けなかった。
蛇に睨まれた蛙のように、ザルヴァークの圧倒的な存在感に身体が金縛りにあったように動かない。
「さて、どこまで耐えられるかな?」
ザルヴァークは巨大なカマをこともなげに一振りした。
特別な動きではない。
ただ横に薙いだだけ。
しかしその一振りから、漆黒の斬撃が放たれた。
それは空間そのものを切り裂くかのような、鋭い衝撃波だった。
「ぐっ……!」
俺はとっさに剣で防御するが衝撃を殺しきれず、数メートル後方まで吹き飛ばされた。
両腕が痺れ、剣を取り落としそうになる。
なんて威力だ……!
ただの一振りで、これほどの……!
俺が体勢を立て直す間もなく、ザルヴァークは次の攻撃を仕掛けてきた。
今度は無数の黒い魔法弾を、雨のように降らせてくる。
「聖光の盾(ホーリーシールド)!」
城壁の上からルミナが防御魔法を放ってくれる。
光の盾が俺の頭上で黒い魔法弾を受け止めるが、その一枚一枚が邪神の鉄槌の一撃に匹敵するほどの威力を持っているようだった。
光の盾は数秒ももたずに砕け散る。
俺は地面を転がり、必死で魔法弾を回避する。
その間にも戦場の他の場所では、激しい戦いが繰り広げられていた。
エリアスはシンと互角の剣戟を繰り広げている。
さすがはエルフの長、その技量はシンに勝るとも劣らない。
しかしそのエリアスを援護しようとするエルフの戦士たちを、レンが的確に妨害していた。
完璧な連携。
エリアスがシンを打ち破るのは容易ではないだろう。
俺が作り出した茨の鞭も、顔に傷のある男――彼の名は後で知ったが、教団の幹部の一人である『剛腕のゲルド』――がその名の通り規格外の腕力で、巨大な根を力任に引きちぎり破壊していた。
戦況は再び膠着状態に陥っていた。
そしてその均衡を崩す鍵は、間違いなく俺とザルヴァークの戦いの結果にかかっている。
俺がこいつを倒さなければ、みんながやられる……!
俺は痺れる腕に力を込め、剣を握り直す。
そして再び《概念編集》を発動させる。
俺の剣を、『邪を滅する聖なる光の剣』に!
ミスリルもどきの剣が、まばゆい黄金の光を放ち始める。
ルミナの聖なる力とはまた違う、俺自身の意志の光。
世界樹との対話で得た、新たな力の発現だった。
「ほう、面白い」
ザルヴァークは俺の剣の変化を見ても、全く動じない。
「その光、確かに邪を滅する力を持っているようだ。だがその器である貴様自身が、我の闇に耐えられるかな?」
俺は光の剣を構え、ザルヴァークに向かって突進した。
「うおおおおおっ!」
渾身の一撃を、ザルヴァークの胴体目掛けて叩き込む。
しかしザルヴァークはそれを、持っていたカマの柄でいとも簡単に受け止めた。
硬い金属音が響き、俺の全力の斬撃はぴたりと止められた。
「……なっ!?」
「光が強ければ影もまた濃くなる。その程度の理も分からぬか」
ザルヴァークの仮面の奥の目が、嘲るように細められる。
そして彼の身体からさらに濃密な闇があふれ出し、俺の光の剣を包み込んでいく。
黄金の輝きが黒い闇に侵食され、みるみるうちに光を失っていく。
「俺の、力が……!」
《概念編集》の効果が強制的に解除されていく。
これが格の違いか。
「終わりだ、小僧」
ザルヴァークのカマが、無防備になった俺の胸元目掛けて振り下ろされた。
もう避けられない。
死を覚悟した。
それはただ強大なだけではない。
触れただけで精神を汚染されそうな、濃密な邪気が渦巻いていた。
「カイ! 離れて!」
城壁の上からルミナの悲鳴のような声が聞こえる。
だが俺は動けなかった。
蛇に睨まれた蛙のように、ザルヴァークの圧倒的な存在感に身体が金縛りにあったように動かない。
「さて、どこまで耐えられるかな?」
ザルヴァークは巨大なカマをこともなげに一振りした。
特別な動きではない。
ただ横に薙いだだけ。
しかしその一振りから、漆黒の斬撃が放たれた。
それは空間そのものを切り裂くかのような、鋭い衝撃波だった。
「ぐっ……!」
俺はとっさに剣で防御するが衝撃を殺しきれず、数メートル後方まで吹き飛ばされた。
両腕が痺れ、剣を取り落としそうになる。
なんて威力だ……!
ただの一振りで、これほどの……!
俺が体勢を立て直す間もなく、ザルヴァークは次の攻撃を仕掛けてきた。
今度は無数の黒い魔法弾を、雨のように降らせてくる。
「聖光の盾(ホーリーシールド)!」
城壁の上からルミナが防御魔法を放ってくれる。
光の盾が俺の頭上で黒い魔法弾を受け止めるが、その一枚一枚が邪神の鉄槌の一撃に匹敵するほどの威力を持っているようだった。
光の盾は数秒ももたずに砕け散る。
俺は地面を転がり、必死で魔法弾を回避する。
その間にも戦場の他の場所では、激しい戦いが繰り広げられていた。
エリアスはシンと互角の剣戟を繰り広げている。
さすがはエルフの長、その技量はシンに勝るとも劣らない。
しかしそのエリアスを援護しようとするエルフの戦士たちを、レンが的確に妨害していた。
完璧な連携。
エリアスがシンを打ち破るのは容易ではないだろう。
俺が作り出した茨の鞭も、顔に傷のある男――彼の名は後で知ったが、教団の幹部の一人である『剛腕のゲルド』――がその名の通り規格外の腕力で、巨大な根を力任に引きちぎり破壊していた。
戦況は再び膠着状態に陥っていた。
そしてその均衡を崩す鍵は、間違いなく俺とザルヴァークの戦いの結果にかかっている。
俺がこいつを倒さなければ、みんながやられる……!
俺は痺れる腕に力を込め、剣を握り直す。
そして再び《概念編集》を発動させる。
俺の剣を、『邪を滅する聖なる光の剣』に!
ミスリルもどきの剣が、まばゆい黄金の光を放ち始める。
ルミナの聖なる力とはまた違う、俺自身の意志の光。
世界樹との対話で得た、新たな力の発現だった。
「ほう、面白い」
ザルヴァークは俺の剣の変化を見ても、全く動じない。
「その光、確かに邪を滅する力を持っているようだ。だがその器である貴様自身が、我の闇に耐えられるかな?」
俺は光の剣を構え、ザルヴァークに向かって突進した。
「うおおおおおっ!」
渾身の一撃を、ザルヴァークの胴体目掛けて叩き込む。
しかしザルヴァークはそれを、持っていたカマの柄でいとも簡単に受け止めた。
硬い金属音が響き、俺の全力の斬撃はぴたりと止められた。
「……なっ!?」
「光が強ければ影もまた濃くなる。その程度の理も分からぬか」
ザルヴァークの仮面の奥の目が、嘲るように細められる。
そして彼の身体からさらに濃密な闇があふれ出し、俺の光の剣を包み込んでいく。
黄金の輝きが黒い闇に侵食され、みるみるうちに光を失っていく。
「俺の、力が……!」
《概念編集》の効果が強制的に解除されていく。
これが格の違いか。
「終わりだ、小僧」
ザルヴァークのカマが、無防備になった俺の胸元目掛けて振り下ろされた。
もう避けられない。
死を覚悟した。
11
あなたにおすすめの小説
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
転生したら無自覚に世界最強になっていた件。周りは僕を崇めるけど、僕自身は今日も日雇い仕事を探しています。
黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ異世界に転生した元サラリーマンの星野悠。
彼に与えられたのは「異常な魔力」と「無自覚に魔術を使う能力」。
しかし自己評価が低すぎる悠は、自分のチート能力に全く気づかない。
「困っている人を助けたい」――その純粋な善意だけで、魔物を一撃で消滅させ、枯れた大地を蘇らせ、難病を癒してしまう。
周囲が驚愕し、彼を英雄と崇めても、本人は「たまたまです」「運が良かっただけ」と首を傾げるばかり。
これは、お人好しな青年が、無自覚なまま世界を救ってしまう、心温まる勘違いと奇跡の物語。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる