「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第35話「光と闇の激突」

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 天と地が、光と闇に二分された。

 ルミナとザルヴァークが同時に動いた。
 二人の姿は常人の目ではもはや捉えられない。
 黄金の閃光と漆黒の斬撃が戦場を縦横無尽に駆け巡り、そのたびに天地を揺るがすほどの衝撃波が発生した。

「聖光連斬(ホーリーブレード)!」

 ルミナの光の剣が無数の残像を描き、ザルヴァークに襲いかかる。
 一撃一撃が山をも砕くほどの威力を持っているだろう。

「無駄だ!」

 ザルヴァークは禍々しいカマを巧みに操り、その全ての斬撃を弾きあるいは受け流していく。
 両者の技量は完全に互角だった。
 剣戟の合間に魔法が飛び交う。
 ルミナが天に手をかざせば無数の光の槍が降り注ぎ、ザルヴァークが地を薙ぎ払えば漆黒の炎が津波のように押し寄せる。
 その余波だけで周囲の地形は原型を留めないほどに破壊されていった。
 俺たちはただその光景を、なすすべもなく見上げることしかできない。

「すごい……。あれがルミナ様の、本当の……」

 エルフの戦士たちが畏敬の念を込めてつぶやく。
 俺も彼女の強さに圧倒されていた。
 だが同時に胸の奥が締め付けられるような、痛みに似た感情も感じていた。
 彼女はあまりにも遠い場所へ行ってしまった。
 もう俺が守るべきか弱い少女ではない。
 世界を背負って戦う、女神のような存在だ。

 俺はもう彼女の隣にはいられないのか……?
 そんな弱音が心をよぎる。
 戦いはさらに激しさを増していく。

「消えろ、聖女! 奈落の渦(アビスヴォルテックス)!」

 ザルヴァークがカマを天に突き上げると、彼の背後に全てを吸い込むかのような巨大な闇の渦が出現した。

「そんなもので私の光は消せません! 天の裁き(ジャッジメントレイ)!」

 ルミナもまた光の翼を大きく広げ、天から極大の聖なる光線を召喚する。
 闇の渦と光の奔流が、戦場の中心で激突した。
 凄まじいエネルギーの衝突に空間が歪み、世界が悲鳴を上げているかのようだ。

 拮抗は長くは続かなかった。
 わずかに闇の渦が、光の奔流を押し始めたのだ。

「ぐっ……!」

 ルミナの表情に苦悶の色が浮かぶ。
 覚醒したとはいえ邪神の力をその身に宿すザルヴァークの力は、彼女の想像を上回っていたのかもしれない。

「ハハハ! どうした聖女! 神の力もその程度か! 我が主の闇は無限だ!」

 ザルヴァークが高笑いする。
 まずい。
 このままではルミナが押し負ける。

 俺に何かできることはないのか!?
 この超次元の戦いに、俺が介入できる隙なんてあるのか?
 いや、あるはずだ。
 《概念編集》は世界の理に干渉する力。
 神々の戦いだろうと例外ではないはず。
 だが何を、どうすればいい?

 ザルヴァークの闇を「光」に書き換える?
 いや、彼の魔力はあまりにも強大すぎる。
 俺の力が逆に飲み込まれて弾き返されるだけだろう。

 もっと根本的な部分に干渉しないと……。
 俺はルミナの放つ光とザルヴァークの放つ闇、その二つの巨大なエネルギーの奔流を必死に見つめた。
 そして気づいた。
 二つの力はただぶつかり合っているだけではない。
 互いの力を中和し、消滅させ合っている。

 そうだ……。
 この世界の理は光と闇が互いに存在することで、成り立っているんだ。
 どちらか一方が一方的に勝つことはない。
 必ずそこには「法則」が存在する。
 なら俺がやるべきことは一つ。
 その「法則」そのものを、書き換える。

 俺は自分の力の全てを、精神の全てを一つのイメージに集中させた。
 この戦場に満ちる、全てのエネルギーの「法則」を書き換える……!

『「光は闇を滅する」のではなく、「光は闇を浄化し、癒すもの」と、なれ!』

 それは世界の根幹を揺るがす、禁忌の力の発動だった。
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