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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」
第47話「奪われた楔と新たな使命」
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シンとレンの影が完全に消え去った後も、俺とルミナはしばらくその場から動けなかった。
空洞には楔が引き抜かれたことで空いた、虚無を象徴するかのような穴だけがぽっかりと口を開けている。
利用された。
まんまと奴らの手のひらの上で踊らされていたのだ。
「……くそっ!」
俺は怒りと無力感から、近くの岩壁を力任せに殴りつけた。
ゴッと鈍い音がして拳に鋭い痛みが走る。
だが心の痛みは、それ以上だった。
俺がもっと慎重だったら。
奴らの存在を少しでも警戒していたら。
こんなことにはならなかったかもしれない。
「カイ……」
ルミナが心配そうに俺の肩に手を置く。
彼女の温もりが逆上しかけていた俺の頭を、少しだけ冷ましてくれた。
その時だった。
空洞の隅で静かにしていたクリスタル・ドレイクが、ゆっくりと俺たちの元へ近づいてきた。
そしてその巨大な頭を、俺の目の前に差し出す。
「……どうしたんだ?」
俺が戸惑っていると彼の額にある、小さな水晶が淡い光を放ち始めた。
その光が俺の意識に直接流れ込んでくる。
脳裏に断片的な映像が浮かび上がった。
――吹き荒れる風が切り裂く険しい渓谷。その遥か上空に浮かぶ、翼を持つ神殿。
――灼熱の砂漠の果て、巨大な竜の骨の下に眠る地下都市。
――世界の果て、氷に閉ざされた海にそびえ立つ紺碧の塔。
それは古代の記憶。
この守護獣が遥か昔に感じ取った、他の楔が封印されている場所のビジョンらしかった。
『……アリガトウ……タノム……』
守護獣の心の声が聞こえた。
光が消え彼は深々と頭を下げると、静かに鉱山の奥深くへとその姿を消していった。
自分を蝕んでいた楔がなくなったことで、彼は役目を終えたと感じたのかもしれない。
「今の……」
「ああ。他の楔の場所のヒントみたいだ」
俺は拳を強く握りしめた。
落ち込んでいる暇はない。
奴らは残りの楔も同じように手に入れようとしている。
それを阻止しなければならない。
俺たちは鉱山を後にし、クロスロードの町へと戻った。
ギルドに立ち寄り鉱山の魔力汚染が完全に消え去ったことを報告すると、ギルド内は大きな歓声に包まれた。
鉱夫たちからも涙ながらに感謝され、依頼の報酬としてずっしりと重い金貨の袋を手渡された。
だが俺たちの心は晴れなかった。
「楔を、奪われてしまいました。影の教団の残党に」
俺の報告に、ギルドマスターは険しい顔をした。
「……そうか。君たちが解決してくれなければ鉱山は永久に閉鎖されていただろう。感謝する。だがそれよりも大きな問題が動き出してしまった、というわけか」
ギルドはこの件を最重要案件として各国に通達し、情報収集に協力してくれると約束してくれた。
その夜、宿屋の一室で俺とルミナは今後のことを話し合っていた。
テーブルの上にはソフィアラからもらった地図と古文書が広げられている。
「悔しいわ……。私たちが、あいつらの計画を手助けする形になってしまうなんて」
ルミナが唇を噛みしめる。
「ああ。だが下を向いていても始まらない。奴らが言っていた。残りの楔は六つ。奴らより先にそれを見つけ出して、守るんだ」
俺の言葉にルミナは顔を上げた。
その瞳には再び強い光が宿っている。
「ええ、そうね。それが私たちの新たな使命よ」
「クリスタル・ドレイクが見せてくれたビジョンとこの古文書を照らし合わせれば、次の場所が分かるかもしれない」
俺たちは顔を見合わせ、力強くうなずいた。
失敗は許されない。
世界の未来が、俺たちの双肩にかかっている。
敗北感と悔しさを、俺たちは次なる戦いへの決意へと変えた。
俺たちの本当の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
空洞には楔が引き抜かれたことで空いた、虚無を象徴するかのような穴だけがぽっかりと口を開けている。
利用された。
まんまと奴らの手のひらの上で踊らされていたのだ。
「……くそっ!」
俺は怒りと無力感から、近くの岩壁を力任せに殴りつけた。
ゴッと鈍い音がして拳に鋭い痛みが走る。
だが心の痛みは、それ以上だった。
俺がもっと慎重だったら。
奴らの存在を少しでも警戒していたら。
こんなことにはならなかったかもしれない。
「カイ……」
ルミナが心配そうに俺の肩に手を置く。
彼女の温もりが逆上しかけていた俺の頭を、少しだけ冷ましてくれた。
その時だった。
空洞の隅で静かにしていたクリスタル・ドレイクが、ゆっくりと俺たちの元へ近づいてきた。
そしてその巨大な頭を、俺の目の前に差し出す。
「……どうしたんだ?」
俺が戸惑っていると彼の額にある、小さな水晶が淡い光を放ち始めた。
その光が俺の意識に直接流れ込んでくる。
脳裏に断片的な映像が浮かび上がった。
――吹き荒れる風が切り裂く険しい渓谷。その遥か上空に浮かぶ、翼を持つ神殿。
――灼熱の砂漠の果て、巨大な竜の骨の下に眠る地下都市。
――世界の果て、氷に閉ざされた海にそびえ立つ紺碧の塔。
それは古代の記憶。
この守護獣が遥か昔に感じ取った、他の楔が封印されている場所のビジョンらしかった。
『……アリガトウ……タノム……』
守護獣の心の声が聞こえた。
光が消え彼は深々と頭を下げると、静かに鉱山の奥深くへとその姿を消していった。
自分を蝕んでいた楔がなくなったことで、彼は役目を終えたと感じたのかもしれない。
「今の……」
「ああ。他の楔の場所のヒントみたいだ」
俺は拳を強く握りしめた。
落ち込んでいる暇はない。
奴らは残りの楔も同じように手に入れようとしている。
それを阻止しなければならない。
俺たちは鉱山を後にし、クロスロードの町へと戻った。
ギルドに立ち寄り鉱山の魔力汚染が完全に消え去ったことを報告すると、ギルド内は大きな歓声に包まれた。
鉱夫たちからも涙ながらに感謝され、依頼の報酬としてずっしりと重い金貨の袋を手渡された。
だが俺たちの心は晴れなかった。
「楔を、奪われてしまいました。影の教団の残党に」
俺の報告に、ギルドマスターは険しい顔をした。
「……そうか。君たちが解決してくれなければ鉱山は永久に閉鎖されていただろう。感謝する。だがそれよりも大きな問題が動き出してしまった、というわけか」
ギルドはこの件を最重要案件として各国に通達し、情報収集に協力してくれると約束してくれた。
その夜、宿屋の一室で俺とルミナは今後のことを話し合っていた。
テーブルの上にはソフィアラからもらった地図と古文書が広げられている。
「悔しいわ……。私たちが、あいつらの計画を手助けする形になってしまうなんて」
ルミナが唇を噛みしめる。
「ああ。だが下を向いていても始まらない。奴らが言っていた。残りの楔は六つ。奴らより先にそれを見つけ出して、守るんだ」
俺の言葉にルミナは顔を上げた。
その瞳には再び強い光が宿っている。
「ええ、そうね。それが私たちの新たな使命よ」
「クリスタル・ドレイクが見せてくれたビジョンとこの古文書を照らし合わせれば、次の場所が分かるかもしれない」
俺たちは顔を見合わせ、力強くうなずいた。
失敗は許されない。
世界の未来が、俺たちの双肩にかかっている。
敗北感と悔しさを、俺たちは次なる戦いへの決意へと変えた。
俺たちの本当の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
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