「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

文字の大きさ
83 / 87
第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第50話「天空神殿の試練」

しおりを挟む
 谷底から姿を現した風の古竜は、山のように巨大だった。
 その鱗は磨き上げられた真珠のように輝き、長い髭を風になびかせている。
 その瞳は悠久の時を見てきた賢者のように、深く澄み切っていた。

「……何者だ、小さき者たちよ」

 竜の声は言葉としてではなく、直接俺たちの脳内に響き渡った。
 それは地響きのように荘厳で、有無を言わさぬ威圧感があった。

「我は、この渓谷の主、風の古竜ヴォルトゥーナ。汝らこの聖なる地にて何を求める?」

 俺はごくりと唾を飲み込み、一歩前に出た。

「俺はカイ。こっちはルミナ。我々は天空神殿にあるという、『封印の楔』を探しに来ました」

 俺が正直に告げるとヴォルトゥーナは、その巨大な瞳をわずかに細めた。

「楔……。久しく聞く名だ。あの忌まわしき楔を汝らが求めて、どうするというのだ?」

「世界を狙う邪悪な者たちが楔を狙っています。俺たちは奴らより先に楔を確保し、世界を守りたいんです!」

 俺の言葉にルミナも力強くうなずいた。

「聖女の一族の者として、邪神の復活は必ず阻止します」

 ヴォルトゥーナはしばらく黙って俺たちを見つめていたが、やがて重々しく口を開いた。

「……ふむ。その娘からは確かに聖なる力を感じる。そしておぬし……人間よ。おぬしからは世界の理そのものに触れる、異質で強大な力を感じる。嘆きの沼を浄化したのはおぬしか?」

 どうやら世界の大きな出来事は、この古竜にも伝わっているらしい。

「はい」

「よかろう。おぬしたちの覚悟、信じてみる価値はあるやもしれん。だが天空神殿は誰でも立ち入れる場所ではない。我が主、天空の民が残した試練を乗り越えた者のみが、その門をくぐることを許される」

 試練。
 またか、とは思ったが避けては通れない道だろう。

「その試練、受けます」

 俺が即答するとヴォルトゥーナは満足そうにうなずいた。

「では我が背に乗れ」

 ヴォルトゥーナはその巨大な背中を、俺たちが立つ岩棚へとそっと寄せた。
 俺とルミナは顔を見合わせ、意を決してその背中へと飛び乗る。
 竜の背中は想像していたよりも広く、安定していた。

「行くぞ。振り落とされるでないぞ!」

 次の瞬間、ヴォルトゥーナは巨大な翼を広げ天へと舞い上がった。
 凄まじい風圧が俺たちの全身を叩く。
 眼下には風切り渓谷の壮大な景色が、みるみるうちに小さくなっていく。

 やがて俺たちは雲を突き抜け、天空神殿の眼前にたどり着いた。
 神殿は巨大な浮遊島の上に築かれていた。
 白く輝く石で作られた神殿は風化し所々が崩れてはいるが、それでもなお神々しい威厳を保っている。

「試練は三つ」

 ヴォルトゥーナの声が響く。

「一つ、己が『勇気』を示せ」
「二つ、己が『知恵』を示せ」
「三つ、己が『心』を示せ」

「この神殿の最奥にある『風の祭壇』にて、汝らの資質を我が見極める。もし偽りあれば、汝らはこの天空より奈落へと突き落とされるであろう」

 その言葉を最後にヴォルトゥーナは神殿の入り口に俺たちを降ろすと、再び空の彼方へと姿を消した。
 残されたのは俺とルミナ、そして悠久の時を刻む静寂に包まれた天空の神殿だけ。

「行くか、ルミナ」

「ええ」

 俺たちは互いの手を、強く握り合った。
 世界の命運を左右する第二の楔。
 それを手に入れるための最後の試練が、今始まろうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

転生したら無自覚に世界最強になっていた件。周りは僕を崇めるけど、僕自身は今日も日雇い仕事を探しています。

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ異世界に転生した元サラリーマンの星野悠。 彼に与えられたのは「異常な魔力」と「無自覚に魔術を使う能力」。 しかし自己評価が低すぎる悠は、自分のチート能力に全く気づかない。 「困っている人を助けたい」――その純粋な善意だけで、魔物を一撃で消滅させ、枯れた大地を蘇らせ、難病を癒してしまう。 周囲が驚愕し、彼を英雄と崇めても、本人は「たまたまです」「運が良かっただけ」と首を傾げるばかり。 これは、お人好しな青年が、無自覚なまま世界を救ってしまう、心温まる勘違いと奇跡の物語。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...