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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」
第50話「天空神殿の試練」
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谷底から姿を現した風の古竜は、山のように巨大だった。
その鱗は磨き上げられた真珠のように輝き、長い髭を風になびかせている。
その瞳は悠久の時を見てきた賢者のように、深く澄み切っていた。
「……何者だ、小さき者たちよ」
竜の声は言葉としてではなく、直接俺たちの脳内に響き渡った。
それは地響きのように荘厳で、有無を言わさぬ威圧感があった。
「我は、この渓谷の主、風の古竜ヴォルトゥーナ。汝らこの聖なる地にて何を求める?」
俺はごくりと唾を飲み込み、一歩前に出た。
「俺はカイ。こっちはルミナ。我々は天空神殿にあるという、『封印の楔』を探しに来ました」
俺が正直に告げるとヴォルトゥーナは、その巨大な瞳をわずかに細めた。
「楔……。久しく聞く名だ。あの忌まわしき楔を汝らが求めて、どうするというのだ?」
「世界を狙う邪悪な者たちが楔を狙っています。俺たちは奴らより先に楔を確保し、世界を守りたいんです!」
俺の言葉にルミナも力強くうなずいた。
「聖女の一族の者として、邪神の復活は必ず阻止します」
ヴォルトゥーナはしばらく黙って俺たちを見つめていたが、やがて重々しく口を開いた。
「……ふむ。その娘からは確かに聖なる力を感じる。そしておぬし……人間よ。おぬしからは世界の理そのものに触れる、異質で強大な力を感じる。嘆きの沼を浄化したのはおぬしか?」
どうやら世界の大きな出来事は、この古竜にも伝わっているらしい。
「はい」
「よかろう。おぬしたちの覚悟、信じてみる価値はあるやもしれん。だが天空神殿は誰でも立ち入れる場所ではない。我が主、天空の民が残した試練を乗り越えた者のみが、その門をくぐることを許される」
試練。
またか、とは思ったが避けては通れない道だろう。
「その試練、受けます」
俺が即答するとヴォルトゥーナは満足そうにうなずいた。
「では我が背に乗れ」
ヴォルトゥーナはその巨大な背中を、俺たちが立つ岩棚へとそっと寄せた。
俺とルミナは顔を見合わせ、意を決してその背中へと飛び乗る。
竜の背中は想像していたよりも広く、安定していた。
「行くぞ。振り落とされるでないぞ!」
次の瞬間、ヴォルトゥーナは巨大な翼を広げ天へと舞い上がった。
凄まじい風圧が俺たちの全身を叩く。
眼下には風切り渓谷の壮大な景色が、みるみるうちに小さくなっていく。
やがて俺たちは雲を突き抜け、天空神殿の眼前にたどり着いた。
神殿は巨大な浮遊島の上に築かれていた。
白く輝く石で作られた神殿は風化し所々が崩れてはいるが、それでもなお神々しい威厳を保っている。
「試練は三つ」
ヴォルトゥーナの声が響く。
「一つ、己が『勇気』を示せ」
「二つ、己が『知恵』を示せ」
「三つ、己が『心』を示せ」
「この神殿の最奥にある『風の祭壇』にて、汝らの資質を我が見極める。もし偽りあれば、汝らはこの天空より奈落へと突き落とされるであろう」
その言葉を最後にヴォルトゥーナは神殿の入り口に俺たちを降ろすと、再び空の彼方へと姿を消した。
残されたのは俺とルミナ、そして悠久の時を刻む静寂に包まれた天空の神殿だけ。
「行くか、ルミナ」
「ええ」
俺たちは互いの手を、強く握り合った。
世界の命運を左右する第二の楔。
それを手に入れるための最後の試練が、今始まろうとしていた。
その鱗は磨き上げられた真珠のように輝き、長い髭を風になびかせている。
その瞳は悠久の時を見てきた賢者のように、深く澄み切っていた。
「……何者だ、小さき者たちよ」
竜の声は言葉としてではなく、直接俺たちの脳内に響き渡った。
それは地響きのように荘厳で、有無を言わさぬ威圧感があった。
「我は、この渓谷の主、風の古竜ヴォルトゥーナ。汝らこの聖なる地にて何を求める?」
俺はごくりと唾を飲み込み、一歩前に出た。
「俺はカイ。こっちはルミナ。我々は天空神殿にあるという、『封印の楔』を探しに来ました」
俺が正直に告げるとヴォルトゥーナは、その巨大な瞳をわずかに細めた。
「楔……。久しく聞く名だ。あの忌まわしき楔を汝らが求めて、どうするというのだ?」
「世界を狙う邪悪な者たちが楔を狙っています。俺たちは奴らより先に楔を確保し、世界を守りたいんです!」
俺の言葉にルミナも力強くうなずいた。
「聖女の一族の者として、邪神の復活は必ず阻止します」
ヴォルトゥーナはしばらく黙って俺たちを見つめていたが、やがて重々しく口を開いた。
「……ふむ。その娘からは確かに聖なる力を感じる。そしておぬし……人間よ。おぬしからは世界の理そのものに触れる、異質で強大な力を感じる。嘆きの沼を浄化したのはおぬしか?」
どうやら世界の大きな出来事は、この古竜にも伝わっているらしい。
「はい」
「よかろう。おぬしたちの覚悟、信じてみる価値はあるやもしれん。だが天空神殿は誰でも立ち入れる場所ではない。我が主、天空の民が残した試練を乗り越えた者のみが、その門をくぐることを許される」
試練。
またか、とは思ったが避けては通れない道だろう。
「その試練、受けます」
俺が即答するとヴォルトゥーナは満足そうにうなずいた。
「では我が背に乗れ」
ヴォルトゥーナはその巨大な背中を、俺たちが立つ岩棚へとそっと寄せた。
俺とルミナは顔を見合わせ、意を決してその背中へと飛び乗る。
竜の背中は想像していたよりも広く、安定していた。
「行くぞ。振り落とされるでないぞ!」
次の瞬間、ヴォルトゥーナは巨大な翼を広げ天へと舞い上がった。
凄まじい風圧が俺たちの全身を叩く。
眼下には風切り渓谷の壮大な景色が、みるみるうちに小さくなっていく。
やがて俺たちは雲を突き抜け、天空神殿の眼前にたどり着いた。
神殿は巨大な浮遊島の上に築かれていた。
白く輝く石で作られた神殿は風化し所々が崩れてはいるが、それでもなお神々しい威厳を保っている。
「試練は三つ」
ヴォルトゥーナの声が響く。
「一つ、己が『勇気』を示せ」
「二つ、己が『知恵』を示せ」
「三つ、己が『心』を示せ」
「この神殿の最奥にある『風の祭壇』にて、汝らの資質を我が見極める。もし偽りあれば、汝らはこの天空より奈落へと突き落とされるであろう」
その言葉を最後にヴォルトゥーナは神殿の入り口に俺たちを降ろすと、再び空の彼方へと姿を消した。
残されたのは俺とルミナ、そして悠久の時を刻む静寂に包まれた天空の神殿だけ。
「行くか、ルミナ」
「ええ」
俺たちは互いの手を、強く握り合った。
世界の命運を左右する第二の楔。
それを手に入れるための最後の試練が、今始まろうとしていた。
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