「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第二章「最強になった俺と聖女様、世界の真の黒幕を倒しに行きます。」

第61話「楔の選択」

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「……そうだな。約束は約束だ」

 俺も消耗した身体に鞭打ち、剣を構え直した。
 隣ではルミナが杖を握りしめ、レンは静かに短剣を構えている。

 張り詰めた空気が四人の間を支配する。
 誰が最初に動くか。

 だが戦いの火蓋は意外な形で切られなかった。

 楔がひとりでに宙に浮かび上がったのだ。
 そして強い光を放ち始め、俺たち四人をそれぞれ照らし出した。

『……汝らの中に我を継ぐにふさわしい者がいるか、見極めさせてもらう……』

 楔自身の意思。
 どうやらこの楔はただ奪い合うものではなく、自ら主を選ぶらしい。

 光はまずシンとレンを照らした。

『……汝らの魂には深い闇と大いなる悲願がある。だがそれは水の理たる我とは相容れぬ。汝らは主にあらず』

 楔は二人を不適格と判断したようだった。
 光は彼らから離れていく。

「……チッ。選ばれなかったか」

 シンは意外にもあっさりと短剣を下ろした。

 次に光はルミナを照らした。

『……汝が魂は清らかで慈愛に満ちた光を宿す。我を受け入れる資格は十分にある。だが……』

 楔はそこで言葉を切った。

『汝の光はあまりにも優しすぎる。汝が我を手にすれば我に宿る古の水の力は汝の優しさの中でいずれ眠りにつくだろう。それは世界の均衡をわずかに崩す』

「……」

 ルミナもまた主として選ばれなかった。
 彼女は少しだけ残念そうな顔をしたが、静かにうなずいた。

 そして最後に光は俺を照らした。

 楔はまるで俺の魂の奥底まで覗き込むように沈黙している。

 やがてその声が響いた。

『……汝、異界の者よ。汝が魂は何色にも染まっておらぬ無垢な器。光にも闇にもなりうる危うい可能性そのもの』

「……」

『だがその魂の中心には揺るぎない一つの『願い』がある。「調和」を望む心。破壊ではなく創造を。支配ではなく共存を。汝ならば我に宿る力を正しく導けるやもしれぬ』

 光が俺の胸にすっと吸い込まれていく。

『……我は汝を選ぼう。異界の勇者よ。我が力、世界の水の理を汝に託す』

 紺碧の楔はゆっくりと俺の手の中に収まった。

 第四の楔を手に入れた。
 それも戦うことなく、楔自身に選ばれるという形で。

「……ケッ。つまらない結末だ」

 シンはそう吐き捨てると俺たちに背を向けた。

「だがまあいい。今回はお前にくれてやる。我らが目的のためには七つの楔がただ『存在』すればいいだけだからな。誰が持っていても大差はない」

 その言葉の真意は測りかねた。

「行くぞ、レン」

「ええ」

 二人は何も言わずに塔の出口へと歩いていく。

「待て、シン!」

 俺は思わず彼の背中に声をかけた。

「お前が背負っているもの、いつか聞かせてもらうぞ」

 シンは足を止め、振り返らずに言った。

「……フン。お前が俺と対等に渡り合えるようになったら、な」

 そう言い残し、二人は闇の中へと消えていった。

 残されたのは俺とルミナ、そして俺の手の中にある紺碧の楔だけだった。

「……カイ」

 ルミナが俺の隣に寄り添う。

「私たち、勝ったのよね?」

「ああ。勝ったんだ」

 俺たちは互いの顔を見合わせ、安堵の笑みを浮かべた。

 それは完全な勝利ではなかったかもしれない。
 だが俺たちは確かに大きな一歩を前に進めたのだ。

 敵との奇妙な共闘を経て、俺たちはただの力だけではない何か大切なものを手に入れた気がした。

 俺たちの旅はまだ続く。

 だがその道筋に確かな光が差し込んできた。
 そんな予感が俺の胸を温かく満たしていた。
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