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エピローグ「10年後の食卓」
私とアレクサンダーが結婚してから、10年の歳月が流れた。
ベルガリア王国の王宮、そのテラスで、私たちは家族四人で少し遅めの昼食をとっていた。テーブルの上には、彩り豊かな料理が並んでいる。
艶やかな赤いトマトのサラダ、黄金色のトウモロコシのポタージュ、そして、こんがりと焼かれた鶏肉の横には、ホクホクのジャガイモが添えられている。これらの食材のほとんどは、王宮の菜園で採れたものだ。
「母上、このトマト、酸味と甘みのバランスが絶妙です! 僕が交配させた新しい品種ですよ!」
息子のアルフレッドが、目を輝かせながら自慢げに言う。彼は今や、王立農業技術センターに付属して作られた「王立農業大学」の最年少研究員として、品種改良に情熱を燃やしていた。
「まあ、本当においしいわ、アル。あなたのお父様も、きっと喜ぶわね」
「ああ、素晴らしい出来だ。我が国の農業の未来は、安泰だな」
アレクサンダーが、満足げにうなずく。彼は今や、ベルガリア王国を治める賢王として、国民から絶大な信頼を寄せられている。
「お兄様だけずるいわ! このスープのレシピを考えたのは、わたくしですもの!」
娘のリリアーナが、可愛らしく頬を膨らませる。彼女は各国の食文化を学ぶことに夢中で、最近では王宮の料理人と一緒に、新しい料理を考案するのが趣味だった。
そんな子供たちの賑やかな会話を聞きながら、私は目の前に広がる幸せを、改めて噛みしめていた。
10年前、私は悪役令嬢としてすべてを失い、一人で荒れ地に立っていた。それが今では、愛する夫と、かけがえのない二人の子供に囲まれ、国中の人々の笑顔に支えられている。
私が始めた農業改革は、ベルガリア王国を飛び出し、大陸全体の食糧事情を大きく改善させた。かつて私が追放されたアルトリア王国でさえ、今では「リセラ農法」を導入し、飢饉の心配がなくなったと聞く。
悪役令嬢リセラ・ヴァイスハルトは、歴史の中から消え去った。その代わりに、人々は私を「賢妃リセラ」「農業の聖母」と呼ぶ。
それは、私には少し、大げさすぎる称号に思える。私はただ、前世の知識を活かして、自分が信じる道を必死に歩んできただけだ。土を愛し、作物を育て、人々と分かち合う。その繰り返しが、この幸福な今に繋がった。
「リセラ」
アレクサンダーが、私の手を優しく握った。彼の瞳には、10年前と変わらない、深い愛情が宿っている。
「君と出会えて、私は世界一の幸せ者だ」
「私もよ、アレクサンダー」
私たちは、自然に笑みを交わす。
かつての悪役令嬢は、真実の愛と、そして大陸一豊かな食卓を手に入れた。私の物語は、ここで終わらない。この幸せな日々が、子供たちへ、そしてその先の未来へと、ずっと、ずっと続いていくのだから。
窓の外では、黄金色の小麦畑が、豊かな風に吹かれて、どこまでも穏やかに揺れていた。
ベルガリア王国の王宮、そのテラスで、私たちは家族四人で少し遅めの昼食をとっていた。テーブルの上には、彩り豊かな料理が並んでいる。
艶やかな赤いトマトのサラダ、黄金色のトウモロコシのポタージュ、そして、こんがりと焼かれた鶏肉の横には、ホクホクのジャガイモが添えられている。これらの食材のほとんどは、王宮の菜園で採れたものだ。
「母上、このトマト、酸味と甘みのバランスが絶妙です! 僕が交配させた新しい品種ですよ!」
息子のアルフレッドが、目を輝かせながら自慢げに言う。彼は今や、王立農業技術センターに付属して作られた「王立農業大学」の最年少研究員として、品種改良に情熱を燃やしていた。
「まあ、本当においしいわ、アル。あなたのお父様も、きっと喜ぶわね」
「ああ、素晴らしい出来だ。我が国の農業の未来は、安泰だな」
アレクサンダーが、満足げにうなずく。彼は今や、ベルガリア王国を治める賢王として、国民から絶大な信頼を寄せられている。
「お兄様だけずるいわ! このスープのレシピを考えたのは、わたくしですもの!」
娘のリリアーナが、可愛らしく頬を膨らませる。彼女は各国の食文化を学ぶことに夢中で、最近では王宮の料理人と一緒に、新しい料理を考案するのが趣味だった。
そんな子供たちの賑やかな会話を聞きながら、私は目の前に広がる幸せを、改めて噛みしめていた。
10年前、私は悪役令嬢としてすべてを失い、一人で荒れ地に立っていた。それが今では、愛する夫と、かけがえのない二人の子供に囲まれ、国中の人々の笑顔に支えられている。
私が始めた農業改革は、ベルガリア王国を飛び出し、大陸全体の食糧事情を大きく改善させた。かつて私が追放されたアルトリア王国でさえ、今では「リセラ農法」を導入し、飢饉の心配がなくなったと聞く。
悪役令嬢リセラ・ヴァイスハルトは、歴史の中から消え去った。その代わりに、人々は私を「賢妃リセラ」「農業の聖母」と呼ぶ。
それは、私には少し、大げさすぎる称号に思える。私はただ、前世の知識を活かして、自分が信じる道を必死に歩んできただけだ。土を愛し、作物を育て、人々と分かち合う。その繰り返しが、この幸福な今に繋がった。
「リセラ」
アレクサンダーが、私の手を優しく握った。彼の瞳には、10年前と変わらない、深い愛情が宿っている。
「君と出会えて、私は世界一の幸せ者だ」
「私もよ、アレクサンダー」
私たちは、自然に笑みを交わす。
かつての悪役令嬢は、真実の愛と、そして大陸一豊かな食卓を手に入れた。私の物語は、ここで終わらない。この幸せな日々が、子供たちへ、そしてその先の未来へと、ずっと、ずっと続いていくのだから。
窓の外では、黄金色の小麦畑が、豊かな風に吹かれて、どこまでも穏やかに揺れていた。
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